「悲しみに染まる事も
 気づかずに抱き合う

 涙でくるんだ笑みが
 震えながら胸に転がった」





感動的な「die」の音響を残しながら、
櫻井敦司は、会場のファンたちに感謝の言葉を発した。

「今日は、みなさん、どうも、ありがとう!」

あと・・・あと、2曲。

首筋に少し・・・美辞麗句の爪を立てて、
メジャーのフィールドにしっかりと立ち上がった20年前。

さあ、あの時に還ろう。




2007年6月6日のシングル盤「RENDEZVOUS~ランデヴー~」にカップリング収録された
「MY EYES & YOUR EYES」のニュー・アレンジ・ヴァージョンは、
対バン形式のライヴツアー【PARADE】から、
ニュー・アルバムの『天使のリボルバー』のツアー【TOUR2007 天使のリボルバー】まで通して、
象徴的に演奏された「RENDEZVOUS~ランデヴー~」と
先行披露されていた新曲「スパイダー」「モンタージュ」に並んで、
「スピード」とともに、最も2007年に演奏された楽曲となった。

この夜、12月29日のアンコール2のラスト2曲目が、
この「MY EYES & YOUR EYES」の為に用意された特等席として、
この日本武道館を含む追加特別公演には、すべてエントリーした。

それは「SEXUAL×××××!」と共に、
20年前のメジャー・デビュー・アルバムに収録された事もあろうが、
BUCK-TICKのベスト・セレクションライヴ【THE DAY IN QUESTION】でも、
頻繁にプレイされて来たナンバーである。

メンバーも、特別な“想い”をこの楽曲に乗せて演奏したのではないだろうか?

それも、そのはずで、メジャー・デビュー前のライヴ・アクトでも、
クライマックスに演奏される事が多かった楽曲でもある。

「MOON LIGHT」「FLY HIGH」「HURRY UP MODE」等と共に、
熱い【バクチク現象】の数々のステージで、クライマックスを演出する一曲。

インディーズ・シーンで頭角を現し出したBOOWYの故郷:群馬出身の新進気鋭。
派手に突き立てられた髪の毛と鋭い目つき、其処に存在するメロディアスなポップ性。
はたまたキャッチーなサウンドに見え隠れするパンキッシュな反骨精神。

そういったバンド・イメージには、
甘い恋心を唄う歌謡性を秘めたセンチメンタリズムも混ざり合わされた。

今井寿というひとりのモンスターの片鱗を見せるダイヤモンドの原石と言えるだろう。

ここに、磨き上げられし、原石は、キラメキを讃えながら日本武道館に至る。



12月29日。

それは、まだ、あどけないふたりの“初夜”の出来事。


「きらめく数えきれない想いが あふれ出して
 AH わかり合えずに I・・I LOVE
 OH CRUSH IN THE NIGHT」



緊張感の伝わる淡い想い出・・・。
ふたり、触れあっては、お互いの存在を確かめ合っている。
そして、溢れる想いが、その指先から伝わってくる。
でも、それを、なんとか食い止めているのは、未来への不安?

この一線を越えてしまったら、ふたりはどうなってしまうのか!?
OH CRUSH IN THE NIGHT!
砕け散る初めての夜。
その背中を押すモノは、若さ?勇気?それとも・・・恋。
いや、それは言葉では、説明出来ない感情だろう。

そうして少年は、少女は、・・・大人に、なる。


「求める事もしないで 確かめ合う夜には
 AH 忘れかけてた I・・I LOVE
 OH CRUSH IN THE NIGHT」



震えてる体を包んだMETROPOLISは、
時を止めて隠した心を、夜に引き出す。
月明かりに、許された、光る産毛にただ見とれていた。
そして、ここを乗り越えると、ふたりは後戻りなど出来やしない。

ポイント・オヴ・ノー・リターン。

互いに信じ合えた、あの夜を過ごそう。
でも、その不安は、君に触れた瞬間に、溶けてなくなった。
君の体温が、ふたりのものになる。
力を抜いた身体が、窓に透ける月光に照らされた。




「砕けた二人の想い 両手でかき集めて
 AH 声にならない I・・I LOVE
 OH CRUSH IN THE NIGHT」




君はつま先立ち、瞳にあふれる悲しみは嘘。
ときめいていた HEART の細工を粉々にする。
この青の世界では、悲しみに染まる事も、気づかずに抱き合う。
君の涙でくるんだ笑みが、震えながら僕の胸に転がった。
今井寿のギブソンES-335サンバーストから、儚げなフレーズこそばゆい。
なんともチャーミングなベテラン達だ。
しかし、其処には、大人になってしまったからこその、
感慨が、あるということだ。



「初めて知る夜の 月の青さによく似た

 凍てつく MY EYES AND YOUR EYES

 トケズニイタダケドスベテハ」



だけど、すべては、とけずにいた。

その時にはわかるまい。
それが青春というものだ。
見つめ合う瞳の奥に、その答えが在ったような気がする。
ただ、アノ夜は、ふたりとも、凍りついたまま、
目を反らすことも、出来・ず・に。

そんな、ふたりだけの、月夜のひととき。

Moon-light あやしい暗闇ドレスに変えて。
Star-dust 嘘を散りばめ氷の街へ。

Moon-light すべて染める涙も嘘も。
Star-dust 今宵、闇に二人抱かれて。


二度と戻らない二人だけの夜。
一人探し
忘れるその日まで眠り続けよう。
夢をさがし


誰の胸にも、その瞬間のことが蘇る楽曲・・・。

その為の、普遍性をBUCK-TICKは持ちうるロック・バンドであった。
そんな事は、当然、20年前には、きっと、わからなかった。
きっと、演ってる本人達ですら、それに気付かないまま・・・。

日本武道館の観衆の瞳に、キラリと涙が浮かぶ。

それは、その夜に戻った彼女・彼らだけの胸の「密室」にしまわれた宝物。
それを掘り起こす20年目のロック・バンド“BUCK-TICK”に、
これほど、相応しい楽曲はなかったであろう。

そして、彼らが、こんなにもストレートなラヴ・ソングを書くのに、
20年の時間が必要であったとも言える。
この「MY EYES & YOUR EYES」から20年・・・
大人へと、人の親へと成長した彼らは「RENDEZVOUS~ランデヴー~」を書きあげた。

ほんの少し我慢ができるなら、
つまづきながら探し求められるね。
空に全てをかざし海の底で感じたら、
夜は青に覆われ口づけて・・・


こんなに涙が溢れ出すのは、きっと、この楽曲のマジックだ。
大切なのは、目の前に人だけだと気付くのだ。



そんな間にも世界は廻る。



この世界は哀しみに満ちている。
中東では、凄惨な殺し合いが続いている。
アフリカでは、何万人という人々が、飢餓とエイズで死んでいく。
「あなたはこの現実から目をそむけるのですか?」と、
青年は訊ねる。

そして僕は生真面目に答える。

「世界中で今も、罪のない命が失われていることは知っている。
 しかし、それは私には、関わりのない出来事だ」と。

青年は、怪訝な顔で、僕を見た。
その青年は、不正義や、暴力や、悲惨な現実の前に苦しんでいた。
無力な自分に対し、抑えきれぬ怒りを持て余していた。

僕達は、世界が不条理なものということを知っている。
自分一人のチカラでは、どうにもならないものと諦めても、いる。
だが、彼は、それが許せなかった。

彼の純粋さには、心を揺さぶるチカラがあった。
しかし、それを素直に受け入れるには、僕は、現実を見過ぎていたようだ。

人は誰しも、或る種の生き難さを抱えている。
それは、家族との確執や職場での鬱屈だったり、
異性への実らぬ想いだったりする。

僕達は「自由」な社会に生きている。
だが、そこで、すべての欲望が満たされるわけではない。

社会は、僕達が自由にならない多くの他者によって構成されている。
当り前だが、他者もまた自由に生きる権利を持っており、
僕達はその権利を侵害することができない。

人を好きなように操れるのなら、すべての願いは叶うだろう。
そう、例えば、ルシファーや、サキュバスのように・・・

だが現実には、社会の中の無数の自由を共存させるために、
ほとんどの欲望はあらかじめ禁じられているのだ。

僕達は往々にして、この生き難さを他に転嫁しようとする。

青年は、世界中の不正義と闘っていた。
絶対的な悪に苦悩する自分は、常に純真無垢なのだ。
彼は、自分の苦悩が世界を正しい方向に変えるチカラを持つと信じていた。
自らの手で理想の世界を一挙に実現しようとした。

しかし、彼もある女性を愛し、「絶望」と直面する。

自分のチカラの無さ、と、実はあまりにも利己的だった自分を思い知る。
自分には、その愛しい人を守ることすらできなかった。
なんて無力な、自分か!

月明かりだけが、それを照らしている。
全てを閉じて今は眠りにつけばいいさ。
眠りにつけばいいさ。



自分持つチカラというものが明らかになってから、数ヵ月後、彼はひっそり姿を消した。
失意の内に田舎に帰り、やがて結婚し、子供も生まれたと聞いた。

僕も含めてほとんどの人は正義のために生まれてなどいない。
自分と愛する人(それが家族というカタチじゃなくても)の幸福を守るために生きている。

たとえ遠い世界で多くの尊い命が失われようとも、
僕達の日常は変わらない。
だから、ニュースを見ながら小さな溜息をつき、日々の仕事へと向かうのだ。

理不尽なこの世界で。

僕達は、目の前にある問題を、一つひとつ解決していくしかない。

今なら彼も、そのことがわかるだろう。




すべての愛する者の為に、“Loop”を繰り返し、
この月夜に還って来た5人。

それは、“初めて知る夜の 月の青さによく似た”ラヴ・ソング。
若さゆえの、青臭さが、奇跡をメイクすることもある。
大人は、自分を知り過ぎる。
自分の限界を知り過ぎる。
だから、もう、限界突破に挑戦することも、
この世界を変えてやろう!なんてことは、想いもしない。

それでも、このメロディとともに想い出す。
恋、衝動、・・・。
そして、ふたりの想い出は、いつまでもこの「密室」に宿る。
それは、少しさめてしまった青い月の温度で宿る。


それを、思い起こさせてくれるBUCK-TICKの、
大人の「MY EYES & YOUR EYES」。


今からでも、遅くは、ない。
あなたの隣の大切な人に、言ってみて欲しい。
アノ夜、凍りついて、言えなかった“ひとこと”を・・・。

「君を愛してる」って。




そう、無鉄砲と言えた、アノ夜を想い返して・・・


「互いに信じ合えた あの夜を過ごそう
 力を抜いた体が 窓に透ける光に照らされた」



今井寿のアルペジオが涙を誘う。
僕も、歳を重ねすぎたのかも、知れない・・・。
そんなことを想いながらアノ夜を思い出す。

震える肌の感触と、あの幸福感。

そして、少年は、男となり、社会という戦場で、戦士となる。


「悲しみに染まる事も 気づかずに抱き合う
 涙でくるんだ笑みが 震えながら胸に転がった」



アノ夜、様々の感情に、自分でも驚きながら、
分かち合える喜びと将来への不安で溢れ返り、
親への罪悪感と自立心を、育んだ少女は、女性となる。

不条理な社会と何処かで折り合いを付けながら、
夢見た白馬の王子は、結局、現われはしなかったが、
自分のことを、愛してくれる男性にめぐり合えた。

そして、いつかの少女も、・・・母となる。



「凍てつく MY EYES AND YOUR EYES
 トケズニイタダケドスベテハ」



アノ夜、とけずに、いた、すべては、
なんだったのか?


少しだけ、わかったような気が、した。




















“ダムドラの店”。

ここは、私の店。

私は夢魔:Succubus。


あなたの夢を誘惑するもの。


私も、あの時、イエスに記憶を消されたもののひとり。


イエスは、あの天空の神にも、興味はなかったの。


そして、すべての人の心の中に、入った・・・。


そして、ルシファー以外の、地上の者すべての記憶を消し去った。
そう、人間の罪の記憶を消し去った。
天使や悪魔、妖精など、神秘的なものの誘惑や幻想の記憶、
または、そういったものすべての記憶を消し去った。

そして、人間には、地上にあるものには、現実だけを残したの。

実は、私も、そうされたのだけど、
この術は、不完全だったのかしら・・・。
私の記憶の断片に、ノイズで歪んだ映像で、少しだけ、そういった記憶が残った。

他人に確認したことは、ないから、わからないけど、
ひょっとすると、みんな、私と同じかもしれない。

記憶は、遺伝子に残ってるんだけれども、
そんな不可思議なっことを口走っていると、変人扱いされるから、黙ってるだけかも知れない。
もしかしたら、他のすべての人は、そんな記憶は綺麗に消えてしまっているのかも知れない。
それは、どちらか、わからないのだけれども。

それを確認する術を、私も、他の者も持ち得ていないのが事実。

そう、あれは、長い長い夢だったような気もする。
夢魔が夢を見せられて、本当に洒落にもならないのだけれど、
イエスってそういうことをする男だったような気がする。


私は・・・。

正確には、前世っていうのかしら?

それもすごく遠い昔々・・・。
私は、サキュバスだったのよ。

そう、“夢”のお話よ。

天空と地上を行き来する悪魔だったの。

サキュバスは悪魔ではあるが、その地位は低かった。
ただ数が少ないので魔界では人間界で言う天然記念物のような扱いを受けているの。

そんな私が、神の後継者ルシファーに誘惑をしかけたなんて、
今では、信じられないことよね。

女は、怒らせると怖いのよ。

ソレくらいの衝動=怒りを、私は感じていたの。
それはね。
とっても、人間らしい感情だって、地上に降りるようになっ気が付いたわ。

“嫉妬”なのよ。

私は天空の神に嫉妬したの。
それで、神が一番大切にしているもの奪ってやろうと、ね。
ホント、ささいな感情で、これほどの行動力があるって、
女って怖いでしょう。

それでね。

大天使長のルシファーに囁いたのよ。


「あなたね。ルシファーって!
エリート顔して!いい気なものよね。

ルシファー。
あなたが、天空でこんなに面白可笑しく過ごしてるのは、
すべて、下界の被造物のお陰なのよ。わかるかしら?
あの愚かな人間たちに支えられてこの天空は成り立ってるのよ。
ちょっと、下を覗いて御覧なさいよ。
人間って面白いのよ。
みんな泣いたり、わめいたりしてるでしょう。
あれは、神の所為なのよ。

ルシファー。

ちょっと、地上に降りてみない?」


それまで、エリート中のエリートだった彼は、そういう下々の存在なんて、
それまで、考えたこともなかったのね。
すぐに興味を持ち始めて・・・。
それで。

「ルシファー。きっと、あなたには神以上の才能があるわ。
だから、あの人間たちを神から奪ってみない。
神はあんなにも厳しいから、きっと、みんなあなたに付いて来るわ」


その後の顛末はご存知の通り。


ルシファーは、見違えるくらい活き活きとして、
神に挑みかかっていったわ。


生き甲斐に燃える男は、美しいわよね。
実際、闘ってる時のルシファーは、他に変え難い位、輝いて見えたわ。
女の私が見惚れるくらい・・・。
素敵よ。



それは、イエスも一緒かしら。

イエスも、自分の使命を見つけた時に、
命の炎:FLAMEを燃やしたのよ。

ただ、その輝きは、皆には、眩しすぎたのかも知れないわね。


夢魔だった私には、特に眩しく見えたわ。


夢魔サキュバスはね、一般的には女性型の夢魔を指すのよ。
男性型の夢魔もいるわ。インキュバスって呼ばれてるわ。
数は少ないけどね。

サキュバスは魅惑的な裸で現れて、
餌となる男性はその誘惑から逃れるのが凄く困難なのよ。
それは人間の女も、同じだって?
その通りかもしれないわね(笑)。

私達から逃れるには自力で目覚めるしかない。
サキュバスが夢に現れると、現実同然の世界(目を覚ました時の自分の視点)が広がり、
そこに私達が全裸で現れる。
サキュバスの催淫術にかかった「餌」は、性交渉中は一切体を動かすことができず、
仮に動かせたとしてもそれは私達の意思によって好きなように操られてしまうの。

もちろん、「餌」は暴れることもできるけど、
大抵は私達の誘惑の魅力によって無駄な抵抗と化してしまう。

「餌」が性交渉中にできる唯一の行動は「声を発する」ことなの。

イエスは、ひとつも私の誘惑には乗らないで、
ひとこと憐れんだわ。
「可哀想に・・・」って。
失礼しちゃうわよね!まったく。

サキュバスとの性交渉は全て現実と連動していて、
私達に全裸にされると目を覚ました時の本人も全裸になってのよ。、
脱がされた服は私達が置いたところに実際に置かれてるから目覚めたあなたは、
現実と夢のLIMBOでエレクトすることになる。

「声を発する」ことも例外ではなく、夢の中で何か喋れば、
現実の自分も同じことを喋っていることになるから・・・。

あの時も、周りの人間たちは、
「嗚呼、またイエス様が、この世を憐れんでおられる」って思ってたようね。
イエスったら、あんなエロティックな夢みてたのに、ね。



サキュバスは性交渉が終わると天空の世界へと帰っていくの。
夢の途中で「餌」が目を覚ましても同じなんだけど、
私達はその「餌」となる男性からすべての精を奪うまで、
毎晩彼のところへとやってくることになるわ。

そして完全に性交渉が終わると、子供を産むためにしばらく「餌」のところへは現れなくなる。
つれないものでしょ。
でも、恋愛の基本よね。
そういう駆け引きって・・・。
男達は私達を恋焦がれながら生きるのよ。
【ROMANCE】でしょ?

そして私達サキュバスは、その男性の御子を宿すのよ。
それが、次々と悪魔の覇王サタンの手先となるの。
まあ、しばらくの間、このサタンの地位にあったのはルシファーだったから、
彼のオーダーにも、かなり答えたんだけど・・・。

ルシファーはどちらかというと、純粋な悪魔より、普通の人間のほうが面白いって言ってたから、
私は夢魔としての役割は休業という感じで、ただルシファーのそばにいたわ。

私が、ルシファーに惚れてたかって?

まあ、どうでしょうね。

でも、それまでの「餌」の中では最高に“SEXUAL×××××!”な存在だったことは確かね。


サキュバスの風貌は大抵、美女なの。
髪形や髪の長さや色、爪の色、瞳の色などタイプ一人一人違っているわ。
好みのサキュバスが現われるといいわね。
あなたは、どんなのが、好みかしら?

身につけているモノと言えば、ネックレスなどの装飾品と尖ったブーツのみ。
“SEXUAL×××××!”でしょ。
蝙蝠の様な羽を生やしている一般的ね。
でも、上位種になると天使のような羽を持つ女もいたわ。
私には“漆黒の翼”が生えてた。
自分では結構気に入ってたわ。


私は違ったけど、サキュバスのなかには大人しい性格の女もいて、
誘惑の方法も一人一人違っているのよ。
純愛っていうのかしら?
プラトニックな関係で精と吸い尽くす女もいるってことよ。
この“魔”を愛情と勘違いしてしまうのが人間の特徴ね。

それでも、“愛”にはいろんなカタチがあるってルシファーは言ってたから、
それは、人間としては、正常なのかもしれないけどね。

基本的には、すべて“幻想”なのよ。

身勝手なモノよね。

でもサキュバスは、夢の中で、誘惑するぐらいしか実効的攻撃手段を持っていないの。
人間に攻撃されたら反撃することもできないのよ。

だから、唯一の攻撃手段が「夢を操ること」なのよね。
「餌」に虚偽の夢・幻想を見せ、私達の前で痴態を露にさせる、という方法を取るのよ。

人はそれをサディストっていうけど、サディストって、ホントは弱いものなのよ。
それを、理解しているのが、本当のサディストっていえるんじゃないかしら。






・・・きっとね。

強い女っていうのは、マグダラのマリアみたいな娘のこというんでしょうね。
彼女も感情豊かで、すぐに泣いたり笑ったり激しいけど、
いつからか、そんな少女から、女となって、強い母親に変わっていったわ。



イエスの磔刑の後、マグダラのマリアはイエスの御子を身籠ったまま南フランスへ避難したわ。
そして、その土地のユダヤ人共同体に入り込み、そこでイエスの子孫を守ったの。

そうね。これはペテロの創始したローマ・カトリック教会では、“TABOO”とされてることね。
こんなスキャンダルを裏付けるような歴史的証拠はなにもないもの。

マグダラとペテロの使徒の争いは、イエスの死後も続いたというのが現実よね。
その為に、イエスは記憶を消し去ったのだけれど、ね。

私が想うに、マリアの記憶は消しきれなかったんじゃないかしら。
私達のように。


でも、なぜそのようなことが言えるかというと、
欧州にイエスの子孫を名乗る王家が存在し、その血族を守り、
彼らを栄光の座につかせようとして12世紀から今日に至るまで活動を続けている
秘密結社が存在するからよ。

イエスの秘儀を伝承したマグダラに残された道は、
その血を絶やさないことだったの。
マリアには、イエスは復活し、天空へ還るということになっていたのだけどね。
きっと勘のいい娘だったから・・・。

マグダラは、或る家系と繋がりを持って、その血筋を護ることにしたの。
その王家はメロヴィング家という家系でね、
その秘密結社の秘密文書によれば、
同家のルーツはセム系イスラエル人で12部族中のベニヤミンに属するっていわれてるみたいだけど、
事実はどうかわからない。

このメロヴィング家には、様々な噂があって、イエスの血族というのも、
その噂のひとつに過ぎないことではあるのよ。

並べるだけでも、妖しい家系よね。

メロヴィング朝の始祖は、ギリシャ神話の神ポセイドンの子孫である云々。
メロヴィング朝の始祖は、トロイの王族の血を引く云々。
メロヴィング朝の始祖は、ナザレのイエスとマグダラのマリアの子の血を引く云々。
メロヴィング朝の末裔には44人ものアメリカ合衆国大統領がいる云々。

一般にはゲルマン諸族中の一部族が同家のルーツっていうのが通説で、
その秘密文書とはまた、違っているのよ。

その族長メロヴィスの息子メロヴィスが、
448年に「フランク人の王」を名乗って王朝をたてた。

それが、有名なフランク王国よ。

メロヴィス以降も領地の拡張はすざましく、
メロヴィング家の子孫は西ヨーロッパと中央ヨーロッパの大半を支配下に治めたの。
神がかり的よね。

もちろん、その頃の人間に、私達“魔”が係わっていたとしても、
イエスの生前のように、大っ平には、動いてないはずよ。
ただ、かなりの割合で、“魔”や“天使”と人間は混ざり合っていたから、
明確な境界線はなくても、そういった遺伝子は、人間に溶け込んで行ったのかも知れない。

それこそ、私やあのルシファーのように。

そう、あのルシファーも、人間の姿で生活する時間が増えた時代よ。

あんな12枚もの大仰な翼で、歩いてたら見世物小屋に捕獲されちゃうもんね!

・・・まあ、冗談はさておき、

メロヴィング家は、6世紀末に、領土が分割され少し衰退の兆しを見せたけど、
7世紀には、また、カリスマが誕生したわ。

クロタール1世、ダゴベルト1世っていう有能な国王があいついで現れて、王国の栄光を取り戻したの。
でも、その栄光も長続きはしなくって、
7世紀末になると、実際に政治を執行していた宮宰のピピンに、
メロヴィング家はフランク三分国の実権を握られるてしまうのよ。

そして8世紀には、宮宰のピピン3世が王権を奪い、
ここにメロヴィング朝は滅び、カロリング朝が創始された。


でもおかしいわよね。
イエスやマグダラのマリアはユダヤ人。
とすればその子孫もユダヤ人ということになる。

一方、メロヴィング家のゲルマンの血だから、
彼らがイエスの子孫を名乗るのは、常識的に考えれば噴飯ものだわ。


秘密文書にはこうあるわ。

「おそらく5世紀にイエスの家系の者がフランク人の王族と婚姻関係を結ぶことによって
メロヴィング朝が創始されたのだろうと推測する」って。

マグダラの子孫は、なんとか生きながらえ、オカルト的な力を欲したメロヴィング家と、
繋がりあって生き延びたのよ。
私達、悪魔のように、ね。
悪魔もそうよ。
悪魔だけでは、滅びてしまうわ。
人間の欲望が必要のなのよ。

というのもメロヴィング家には、そう思わせるにいたる謎めいた伝承がいっぱいあるのよ。

伝承によれば、メロヴィング家の君主は、王でありながら、
同時に類まれなる「オカルトの熟練者」であったって。
彼らはしばしば「魔王族」や「呪術王」と呼ばれたが、そう呼ばれるには理由があったの。

文書にはこうあるわ。

「彼らの血に宿る奇跡を起こす力により、手をかざすだけで病気が治せたり、
衣服の縁の房飾りに奇跡的な治癒力があるとみなされていた」

ってこれは、生前、イエスが頻繁に行っていた巡業よね。
それにマグダラはルシファーから授かった香油を持っていたわ。
イエスにそれを塗油して、メシア=支配者としてイエスは復活するってシナリオだったの。
最初、ルシファーが、書いたシナリオは、ね。

でも、それは、イエスの意向で変更されたの。

人間の「愛」には「死」が必要だっていう彼の想いよ。


それだけじゃないわ。

秘密文書には、

「その君主は、千里眼を持ち、獣や周囲の自然と霊的な交信が可能で、
強力な魔力を持つネックレスをしていたといわれる。
さらに、自分たちの身を守る秘密の呪文を持ち、残念ながら歴史的には確認できないが、
驚くべき寿命を与えられていたらしい。
そして、その身体にはほかの人と区別する明確な痣があり、
これによって彼らの半神的で神聖な血統という素性がすぐに判別できた」

って書いてあるの。

どういう意味か?わかるわよね?

ここに出てくる「半神的で神聖な血統」というのは、
要するにアレよ。
イエスの血統のことでしょ?

であればこそ、メロヴィング家の君主には、
人間ばなれした数々の超常現象能力を遺伝的に身に付けているといった伝承が生まれた。

今、君主って言ったけど、このメロヴィングの君主は、
通常の君主と大いに異なっていたようなの。

文書にあるわ。

「メロヴィング家の血筋を引く息子は王の候補ではなく、12歳の誕生日を迎える自動的に王と見做された。
これは塗油や戴冠などの公的儀式はなど一切なく、権力は神聖な権利として与えられた。
王は自分の領土に至高の権限を持ち、統治のための俗世の仕事で手を汚すことは期待されなかったし、
決して行ってはいけないことであった。
王は儀礼化された人物、司祭王で、彼らにはいっさい何の役割もなく、ただ存在するだけでよかった。
ひとことでいえば、王は君臨するだけで統治はしないものであった」


・・・。


このような司祭王が、権謀術数の渦巻く政界を生き抜けるはずがないじゃない、ねぇ。
事実、彼らは実務を担当する宮宰ピピン一家に王朝を奪われるに至るのだけれども、
その背景にはイエスの血統に生き残ってもらっては困る
ローマ・カトリック教会の陰謀があったんじゃないかって。

「ローマ教会はイエスの血筋、せめてメロヴィング家だけでも抹殺するためにあらゆる手段を試みたが、
うまく運ばなかった。
この血筋は一部カロリング家のなかに行き続け、
王位の簒奪にローマ教会よりは罪の意識を感じていたカロリング家は、
メロヴィング家の王妃たちとの王朝結婚により自分たちの正当性を訴えようとした」

って文書にもあるからカロリング朝を始めたピピンにも、
黒幕がいたんじゃないかしらって思うのよ。


まあ、そんな感じで、マグダラの悲願:イエスの血統は。
南フランスのメロヴィング家とカロリング家のなかに生き続け、
ローマ・カトリック教会は、それを抹殺しよう画策したって図式よね。

これじゃ、イエスの生前のペテロとマグダラの確執のまんまよね。
ルシファーが居たら言いそうよね。

「人間って、ホント。面白いナ!」って。


歴史的には、ローマ教会とメロヴィング家の間に何らかの秘められた確執があったらしい消息が、
確かに認められてるわ。

たとえば、496年、ローマ教会は、猛烈な勢いで版図を広げ、
欧州全域の支配者になろうとしていたメロヴィング家の当主クロヴィスと協定を結んだの。
クロヴィスは洗礼を受けてキリスト教に改宗することで、
すでに滅び去った神聖ローマ帝国の「新皇帝」の称号を教会から公認され、
一方の教会は「ローマ教会の剣」を手に入れた。

念のため言っておくけど、メロヴィング当主が仮にイエスの子孫であったとしても、
だからと言ってキリスト教徒だったわけではないのよ。
イエス個人とキリスト教は、いうまでもなくその時までに、まったく別の存在となってたから。

そのイエスを独身者とし、神の子とするローマ教会側から言えば、
万が一にもイエスの子孫などの実在が確認され、
それが公なれば、みずからの存在意義が一瞬にして消えうせることは確実なのよね。

また、メロヴィング家にしてみても、マグダラの血筋と交わったことで、
仮に同家がイエスの血族であるならば、
彼らはローマ教会の最大の標的としてねらわれ、抹殺される可能性がきわめて高い。

お互いに取ってリスキーな火薬庫みたいモノになってたのよ。

“TABOO”には、触れないのが、賢明ね。

私はナニしゃべってるのかしら?
私の中に、ナニカが、いつも急に騒ぎ出すのよ。
「アンタは夢魔よ。白夜の空を 我 朱に染め逝け」って。
狂ってるのかも知れないけど、こんな事誰にも相談出来ないじゃない。

でも、もしこれが事実だったら・・・。
496年の協定は、メロヴィング家の秘密の保持と教会に存続のための政治的妥協の産物だった
可能性はあるわよね。

けれども協定を結んでみたところで、
ローマ教会にとってメヴィング家が目の上のコブであることには変わりはなかったわ。

王家と教会のとの領地争いこそが、“GOTHIC”の流血の原因そのものだったからね。

679年、宮宰ピピンが刺客を放ってダゴベルト2世を槍で突き殺したとき、
教会はこの暗殺とただちに公認したのよ。
さらには756年にローマ教皇がピピンを正当なフランク王として公認して、
メロヴィング朝最期の王を廃位したの。

これは歴史的推測でしかないわ。


そんな“GOTHIC”な噂は、危険なのわかってるわよね。


悪魔サタンが、現われそうだわ。


そうそう、今度ね。

いいギタリストと“契約”したのよ。

なんと名前が、Lucifer っていうのよ。


冗談みたいな名前でしょ。


何処かの国では。子供に“悪魔”って名付けようとしたら、
国の許可が、下りなかったらしいけど・・・。

それが、賢明よね。

それは、危険なことだわ。










「・・マダム 酒をくれよ」

「ウィ ムッシュ、 ケ・セラ セラ!」

「「一杯 トロケル様なアブサン!」」




どんなもんだい?いい店でしょ?

“ダム・ドラの店”っていうんだよ。

そう私は生きているのさ。

ここは私のステージさ。

さあ、一緒に踊ろう。


死に場所を、そう、探して、彷徨っているんだよ。

ここが私の墓場さ。

さあ、一緒に踊ろう。


御後は、ご勝手に!






※参考文書:『レンヌ=ル=シャトーの謎 』
フランスのミステリー作家ジェラール・ド・セード( Gérard de Sède )は一連の著作を出版した。
テーマは「レンヌ=ル=シャトーの呪われた財宝」、
「カタリ派の財宝」、「テンプル騎士団の秘密」等々であった。
これらは1970年代にフランスのジャーナリズムで話題となった。

1969年、英国のテレビ作家ヘンリー・リンカーンは
ド・セードのミステリー小説『呪われた財宝』 を入手した。
内容に興味を引かれたリンカーンはド・セードから資料提供を受け、レンヌ=ル=シャトーの謎を追った。
その成果は1972年にBBCテレビの歴史番組として放映された。
これが好評であったため、彼は更に調査を進め、プランタールのアドヴァイスなどを元に、
先の『秘密文書』を「発見」する。
リンカーンは1982年に英国で協力者とともに
『The Holy Blood and the Holy Grail』(邦題『レンヌ=ル=シャトーの謎』)を出版した。


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MY EYES & YOUR EYES
 (作詞・作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK・中山努)



きらめく数えきれない想いが あふれ出して
AH わかり合えずに I・・I LOVE
OH CRUSH IN THE NIGHT

求める事もしないで 確かめ合う夜には
AH 忘れかけてた I・・I LOVE
OH CRUSH IN THE NIGHT

互いに信じ合えた あの夜を過ごそう
力を抜いた体が 窓に透ける光に照らされた

砕けた二人の想い 両手でかき集めて
AH 声にならない I・・I LOVE
OH CRUSH IN THE NIGHT

悲しみに染まる事も 気づかずに抱き合う
涙でくるんだ笑みが 震えながら胸に転がった

初めて知る夜の 月の青さによく似た
凍てつく MY EYES AND YOUR EYES
トケズニイタダケドスベテハ

互いに信じ合えた あの夜を過ごそう
力を抜いた体が 窓に透ける光に照らされた

悲しみに染まる事も 気づかずに抱き合う
涙でくるんだ笑みが 震えながら胸に転がった

初めて知る夜の 月の青さによく似た
凍てつく MY EYES AND YOUR EYES
トケズニイタダケドスベテハ


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