「俺は幻追い駆ける 狂っていなけりゃ生きられない」
咆哮する今井寿のブラック・ギブソン・レスポール・カスタム。
激しいヤガミ“アニイ”トールのドラミングで突入する20年目のハードロック「BEAST」は、
この2007年12月29日の日本武道館のステージに、ハードロックバンド“BUCK-TICK”の姿を浮き彫りに、
文字通り“ケダモノ”になってパフォーマンスされる。
繰り返される今井寿の印象的なダウンスケールのイントロ。
ソリッドなギター・サウンドのブラック・レスポールを今井寿の対称形で構える星野英彦。
彼も、ダヴルコイルの重厚なデストローションの効いたリフを描いて“ケダモノ”になる。
長身を低く構え、攻撃的にギター・プレイを繰り広げる星野英彦の背後には、
へヴィでハードなグルーヴを躍動する樋口“U-TA”豊がスウィングする。
丁度、この五角形の頂点部分には、シルクハットを脱いだ櫻井敦司。
普段は、ロマンチックな彼も、この時ばかりは、牙を剥き出しの状態で近寄り難い雰囲気だ。
ハードロックを奏でるBUCK-TICKは、まさしく、“ケダモノ”となって、
この狂った世界を、暴れまくる。
見果てぬ“幻想”を追い求めるのは、もう、止めだ。
自分の野生本能で行動する“ケダモノ”の嵐が必要だ。
夜行性の獣のように目を光らせる櫻井敦司。
元来、悪魔とは、普段、“ケダモノ”の姿をしている。
映画『オーメン(The Omen)』で登場する悪魔の子ダミアンは、野犬の姿をしていた。
その他にも狼、豹、ライオン、トラと牙を剥く“ケダモノ”の姿は、
悪魔には、ストレスが少ないのかも知れない。
「俺は檻の中で暴れる獣の様さ」
「LION」での、櫻井敦司は、“ケダモノ”である。
暗黒時代の到来を告げるアルバム『darker than darkness -style 93-』の
“ケダモノ”を模したアルバム・ジャケットが示した咆哮。
野生の本能が、表面化する時、人間は、覚醒を迎えることになる。
この“ケダモノ”は架空世界の怪物だ。
この獣を求め、ペリノア王、パロミデス卿、パーシヴァル卿などが冒険を繰り広げた。
この怪物は頭と尾がヘビ、胴体は豹で尻はライオン、足は鹿という異形の姿をしている。
その吠え声が、まるで30組の猟犬を使って狩をしているようだ。
この吠える獣は純白であり、狐よりも小さく美しいとされている。
獣をキリストの象徴として描写しており、
古き法、すなわちイスラエルの12部族の指示者によって殺されるのである。
13世紀の詩人、ジェルベール・ド・モントイユによれば、
クレティアン・ド・トロワの『パーシヴァル、または聖杯の騎士』において
吠える獣は「非常に巨大」と描写されており、
さらには神聖なるミサ中に私語にふける不熱心なキリスト教徒の象徴として
凄まじい騒音を立てていると解釈される。
天使のアルバム『天使のリボルバー』に、この“ケダモノ”の姿が顔を出す。
ストレートなロックが満載に盛り込まれた同アルバムに、
リリースに先行して演奏されていた「モンタージュ」「スパイダー」に続き、
収録された“ストレートさ”が強調された「BEAST」。
この中でも、最もダイレクトなハードロック「BEAST」が、
ライヴツアー【TOUR2007 天使のリボルバー】で疾走する。
このスピード感、ハード感、を実現したレコーディングには、
今まで、クールでジャストな完全パート別の録音方法を、
ロックバンドの疾走感を醸し出す為に、若干変更した帰来がある。
――「BEAST」は、逆にインパクトがあるぐらいストレートですが。
今井「これはギター中心に考えました。
バンドサウンド、ギターサウンドって言うと、こういうのが自然に出てくるし、
ギターソロも増えて来るし。ごく自然ですね」
――意識したっていう感じではなく?
今井「バンドサウンドがテーマとしてあったし。
初期の頃と言うか、1stの頃は仕方なくああいう音になってた部分もあるし、
こうしなくちゃ、5人でやって再現できなきゃみたいな、そういう意識もあったし。
でも今回はわざと、こういう手法を意識してってことですよね」
――そうなると、一発録りとか、プレイ面でも意識するところが変わったり?
今井「そのニュアンスは欲しいなっていうのはありましたね。
例えばヘッドホンでクリック聴いてやってたのを、
クリックも聴かないでやってみようかなとか、
そういうので面白い感じになればいいかなって」
櫻井敦司に言わせると、「ヴォーカルも含めて生々しさ」を意識して、
録音が進められたアルバム『天使のリボルバー』。
そのハード・サウンド面を象徴するような一曲となった「BEAST」。
2本のセクシーなブラック・レスポールの艶めかしいソリッド・ロックは、
ライヴツアー【TOUR2007 天使のリボルバー】の終盤でまさしく咆哮の時を魅せていた。
「破滅へ突っ走るのさ 噴出すExtasy」
“ケダモノ”になって、破壊への道を突っ走る彼ら。
このハイウェイの先には、何が待ち受けているのだろうか?
不毛の荒野をバックに赤いレーシング・カーが、カーヴに突っ込んで逝く。
空気抗圧を科学的に分析してシェイプされたそのボディは、流線型のSEXY STREAM RAINERだ。
“Extasy”は、EcstasyまたはXTCと表記して、
昨今、業界に話題を振りまいている錠剤型薬剤の名称でもある。
正式名称はメチレンジオキシメタンフェタミン (3,4-methylenedioxymethamphetamine)。
合成麻薬の一種である。
略称として MDMA、という通称を持つ。
心理学者のラルフ・メッツナーがMDMAに対して、
エンパソーゲン(empathogen、共感をもたらす)という言葉を作った。
またエンタクトゲン(entactogen、内面のつながりをもたらす)と呼ばれ分類されている。
類似の薬物として MDA(3,4-メチレンジオキシアンフェタミン)、
MDEA(3,4-メチレンジオキシ-N-エチルアンフェタミン)なども知られ、
MDMA と同様にエンパソーゲンないしエンタクトゲンへ分類される。
常温では白色の結晶または粉末で、分子構造はメタンフェタミンに類似し、
メタンフェタミンのフェニル基の一部を置換したものと同一である。
このためMDMAもメタンフェタミンと同じく光学異性体を持つ。
MDMAはその分子構造からしばしば覚醒剤に分類されるが、
他の覚醒剤とされる薬物とは主だった作用機序が異なる。
また、特有の精神作用により幻覚剤にも分類されるが、
この「幻覚」は多幸感や他者との共有感などといった幻覚体験を指すもので、
主作用として幻視や幻聴(一般に言う幻覚)を伴うことは稀である。
MDMAは1985年まで主にアメリカにおいて心的外傷後ストレス障害 (PTSD) の治療に用いられてきた。
PTSDは患者が自身に起きたトラウマ体験を自己の記憶として受容できないことによる疾患だとされているが、
MDMAを摂取した状態でカウンセリングを行うことにより、
通常の精神状態では許容しがたいトラウマ体験を想起させ、
自己に起きた事実であることを受け入れることによって
疾患が軽減もしくは治癒するという理論に基づいたものである。
「エクスタシー」は本来MDMAを指す隠語である。
しかしMDMAは錠剤の形を取って流通する場合が多いため、
単に(MDMAを含むと期待される)錠剤型麻薬を総じてエクスタシーと呼ぶことも多い。
錠剤型麻薬としては他にも「X」、「E」、「アダム」など多数の俗称を持ち、
また日本では、丸い錠剤が多いことから「玉(たま)」、
また「X」から転じて「バツ」、「ペケ」の俗称をも持つ。
そこから、派生してBUCK-TICKとともに、
ヴィジュアル・ショックを気付いたロックバンドX JAPANは、リスキーなイメージを付加して、
自らのレコード・レーベルを【EXTASY RECORDS】と名付けた。
現在でも社長はYOSHIKIであり、LADIES ROOMのGEORGEなどが取締役などの職に就いている。
なお製作部長はhideであった。
LUNA SEA、GLAYなどのスーパー・ヴィジュアル・バンドを輩出し、
工藤静香なども所属している。
「俺達獣なのさ震えるSextasy」
そんな“快楽”Extasyと韻を踏む櫻井敦司のSextasyは造語であろうが、
これも、ドラッグの隠語として使用される例もある。
とにかく、限界ギリギリの極限状態で、“ケダモノ”となって疾走するBUCK-TICKの姿は、
“死”に近づいて、ナニカを求める姿なのかもしれない。
そこに、進化の芽を見つけてこちら側に戻ってこれるか?
はたまた、野獣の世界を彷徨うことになるか?
櫻井敦司が片足を上げて、愛撫をせがむように吠える。
すでに、ジーザスと化した櫻井敦司には、恐らくこんな事は、造作もない事。
「私はセックスには何の興味もないよ。
動物にだって出来るものだものね。
よく、男でさ、自慢そうに、オレは何人の女とやったなんて言う奴いるじゃん。
私馬鹿かと思うよ。
セックスなんて、いくらやったって、何の自慢にもならないよ。
そんなの食べることや眠ることや排泄することと一緒でしょ。
やっぱりねえ、人間でなければ出来ないメイクラブをしなくちゃいけないよねえ」
(山田詠美『セックス』より)
そう、人間は生殖としての性交から脱却を見せ、快楽の淵へと堕落していく原罪を持つ。
メイクラヴが、単なる種の保存の為の行為とは、決して言い切れないだろう。
アルバム『天使のリボルバー』でのドラッグとセックスの描写は、鮮烈だ。
初期の頃のエロスを凌駕する描写で、我々をドギマギさせるくらいだ。
それは、やがて、ロックンロールとして昇華していく。
「月夜のエロス ベットにタナトス
お前の愛撫が欲しい」
とにかく、もう、今夜はお前が欲しい。
「暴れるリビドー 背中のネイル
焼け付く愛撫が欲しい」
熱い熱いお前の鼓動が欲しいんだ!
そう、僕らは“ケダモノ”になる。
BUCK-TICKの“ノンドラック・ファンタジー”で幻覚を見て、
BUCK-TICKの“ノンドラック・エクスタシー”で快楽を得る。
ケツに火がついたぜHoney! Get it on Get it on Baby.
もう止まらない“ケダモノ”の本能のナチュラル・ハイテンション。
ハートに火がついたぜHoney! Get it on Get away Baby.
溢れ出すアドレナリンに、メスカリンやアスピリンでは、止められない鼓動。
そうして、
「俺は幻追い駆ける 狂っていなけりゃ生きられない」
そして、
「お前の匂い死の香り 何度も何度も鳴き叫ぶ Yeahhh!」
この“叫び”が、聞こえるかい?
「お前を愛しているのに!」
そう、俺の中の“ケダモノ”が騒ぐ。
この不毛の地を、ともに踏み締めたいんだ。
傍にいて、お願いだBABY、触れてくれ、千切れ、破れ、壊れそうだ!
今井“ルシファー”寿は、クリスタルの花道を逝く。
フルスピードのギター・プレイで、アクセルをベタ踏みのままコーナーへと突っ込んで逝く。
レスポールの音圧が、首にかかるGのように、圧倒的なパワーを生み出す。
キレキレのラインをノーズを引き摺り火花を散らせながら潜り抜けて逝く。
ダウン・スケールを基調とした、スピード感溢れるギター・ソロであるが、
決して早弾きをしている訳ではない。
しかし、野獣の咆哮を表現する今井寿の野性的なソロ・ワークは、
ロック・ギタリスト:今井寿の意外なスピード感溢れる
基本中の基本とも言えるピッキングに支えられている。
日本武道館のオーディエンスは、叫びながら、このプレイに見惚れる他ない。
このコーナーを抜ければ、フィニッシュが見えてくる・・・。
ああ、今夜は、逝けそう、だ・・・。
リボルバーのトリガーを弾いてくれ・・・。
「BEAST」の咆哮が、「REVOLVER」の「TRIGGER」を弾く。
今夜、俺は、昇天出来るだろうか?
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“ダムドラの店”の開店前。
ルシファーは、マイナー・ブルース・スケールから、
マイナー・ペンタトニック・スケールへの運指を繰り返しながら、
イエスのことを想い返していた。
俺は、成長したイエスを見て驚いたよ。
実際、美しいのさ。
なんていうかな、説明出来ないんだけど、俺達、悪魔が化けてる美しさとは違ったし、
天空のエリートたち、天使の美しさとは違うんだ。
闇。
そう、闇の美しさだ。
身なりなんて、最初、酷いもんだったからな。イエスは。
驕り。
でも、アイツを見てて想ったんだよ。
やっぱり、神に謀反を犯したのは、俺の驕りだったかもしれねな、って。
最高の権威と力を与えられたルシファーの俺は、それにうぬぼれてしまった。
そこに俺の心に“魔”が差した。
だから、アノ女がやって来て囁いたんじゃないかって。
始めは、俺も、嫉妬だと思ってたんだ。
神に嫉妬したんだろうなって。
そして、さらに神は人間を創り人間にこの上ない寵愛を注ぎ、
なおかつ天使以上の優遇を与えようとした。
なんで、あんな愚かな被造物に、そんな目をかけてやるんだって。
でも、それは、悪魔になってから違うと気付いた。
愚かだからこそ、神も色々したくなったんだろうなって。
でも、基本的に神と人間との“契約”は絶対服従と決まっていた。
で、俺達は、もっとフェアにやるぜ、って、人間に囁きかけたんだ。
神は一方的だけど、俺達、悪魔は相互利益の為に“契約”するぜ、ってさ。
それが俺達の驕りだった。
神よりも、人間の性質を知ってるのは、俺達だって、
そう想ってた。
でも、イエスは、その更に上を行っていた。
勿論、其処ら辺にいる天使なんて、比べ物になんないぜ。
アイツらは、常に上から目線だからな。
そして、俺達、悪魔はちょっと下から人間にアプローチしてた。
それが、いいと想ってたんだ。
でも、イエスは、真正面から行くんだ。
同じ目線で、真っ直ぐ相手を見て、そして、自信満々に説教するんだ。
後でわかったんだけどな。
イエスたる御子を生み出した時、神は俺をモデルに御子を創り上げたらしいんだ。
堕天した俺のかわりに創り出されたのがイエスだった訳さ。
だから、アイツと俺は表裏一体とも言えた。
このイエスに最高の栄誉を与えられたことが、俺の嫉妬を煽ったという噂もあった。
この時、怒り狂う俺の頭から「罪」が生まれ、俺は人間との間に交わって「死」を誕生させた、って。
でも、実際はこうだ。
当時、初期の人間は神様の言葉の恵みよりも、目に見える物に弱かった。
だから、六日目の朝に美しい白蛇に化けて、人間が理解出来る知恵のある者、知恵の実として、
俺の姿をイヴとアダムに魅せつけたんだ。
イヴは、知恵の実(禁断の林檎)を食べたら「死」が訪れると神に言われてたんだけど、
この俺が、あまりに美しい姿だったので、悪魔ルシファーに魅入られ「死」を受け入れたんだ。
今じゃ、誰もこの美しい翼を見ても感心もしないけどな。
当時の人間は、まだ、素直だったんだよ。
衣服すら、身につけることを知らなかったからな。
そこら辺にいる野良猫や犬っコロと一緒だよ。
それが、愛らしくもあった。
きっと人間の初めての感情だったかもな。
イヴは、それで死んでもいいから、この天使の姿と知恵の実を自分のものにしたいと想ったんだ。
その時、“欲望”が生まれたのさ。
そして、彼女は自分の夫として、神から与えられた本来の夫アダムを一番の夫に選ぶのではなくて、
知恵の堕天使、美しき悪魔ルシファーを自分の一番の夫として選んだ。
不倫が禁断の林檎の象徴になったのは、ここからだ。
更に、イヴは、自分の本来の夫アダムにも、
美しい天使の姿の堕天使を連れて行き、自分と同じ罪を犯させたんだ。
こうしてー人の女性イヴから“原罪”が人間に入った。
それは神の言葉通り、肉体の「死」が必ず人間には訪れるという“罰”でもあったんだ。
だから、人間は自分の目で見て欲するパンや知恵の実だけで生きられなくなった。
神の口から出る一つ一つの言葉を聞かないと、生き続けられなくなった。
“依存”しないと駄目なんだ。
でも、“奴隷”になることは、楽なんだ。
これがマゾヒズムさ。
マゾヒズムは凄く快楽的で、自分を他者のものにすることで、自分を確認するのさ。
そうしないと、自分で、どれが自分かわからないんだ。
だから、人間の根底には、マゾヒズムが潜んでいる。
それは、“依存”という名の“魔”だ。
これを利用することは、俺には、凄く有効だった。
自分のものにしたいと望む、人の欲しいと願い思うようなものは、
全て、この世の君主、堕天使、悪魔ルシファーに属するものになったんだ。
それが、この俺だ。
この世の支配者として君臨したのさ。
サディスト夢魔サキュバスの女と共謀してさ。
人間たちの“欲望”を満たしてやったのさ。
“契約”として、俺は、人間どもの魂を頂いた。
御子イエスは、後に、この人類のこの「原罪」を償うためにマリアに受胎して
地上に降り立つメシア(救世主)として現われたんだ。
簡単にいうと、マッチポンプだ。
俺が火を点けて、イエスが火を消す。
その間に、人間どもは、右往左往して、数々のドラマを創り上げていった。
サディストとマゾヒストが混濁さたカオス世界となった。
それまでは、この俺ルシファーのコスモスで一応、魔の秩序が守られてたんだけどな。
これが、神のシナリオか、どうかは、俺にもわからない。
俺は、三度、イエスに“誘惑”を試みたことがある。
アイツはマゾヒストじゃなかった。
といって支配することで欲望を満たすサディストでもなかったんだ。
人間として、受肉したイエスは水の浸礼バプテスマの後、
すぐにエホヴァ神の霊によってユダヤの荒野に導かれた。
イエスはこの不毛の荒野で四十日四十夜過ごした。
その間、アイツは断食をしてたんだ。
人間として欲望を知るためかも、知れねぇな。
だからイエスは、人間らしい感情に素直なところがあったんだけど、
ひどく空腹になっていることがよくわかったんだ。
俺はチャンスだ!と想って。
アイツを誘惑してやろうと想ったんだ。
そう、夢魔の女が、俺に囁いた時のように・・・。
俺は悪魔サタンだったから、姿も見えないはずなんだけど、
こう囁いてみたんだ。
「空腹なのか?お前が神の子であるなら、
これらの石に、パンになるように命じてみろよ。
空腹から解放されて快楽を得られるゼ」って。
イエスは、自分に神から委ねられた奇跡を行う力を、
個人的な欲求を満たすために用いるのは間違いであるということを知ってたので、
「・・・エホヴァの口から出るすべての言葉によって人間は生きねばならない。
『人はパンだけで生きるものではない』って父が言ってたよ」
って、あっさりこれを退けたよ。
でも、ここまでは、俺も予想してた。
次は、ヤツの虚栄心を擽ってやろうと想って、挑発してみたんだ。
「お前が神の恵みであるなら、証拠を見せてみろよ。
この神殿の外壁から飛び降りてみろ。
きっと神の下僕天使たちが救ってくれるから出来るだろう?
さあ、お前がメシアだって証明してみろよ!」
でもイエスは、憐れむような表情でこう言うんだ。
「そのような華々しいことを行って見せるようにと言う、誘惑に乗られないよ。
僕はそんなマスターベーションはしないよ。
そんなやり方で神を試みるのは間違っていることを、あなたが一番知ってる癖に、
『あなたの神である主を試してはならない』って、
あなたが昔天空で作ったルールなのに・・・。
そんなに寂しい想いをして・・・辛いのかい?」
って、見えないはずの俺をしっかり見つめて言いやがった。
憐れみをその透明な瞳に、浮かべて・・・。
これは効いた。
あの日恋を知った。炎みたいな。
実は、この時、俺はアイツに嫉妬ではなく、“恋”を感じてしまったのかも知れないんだ。
いや、正確には、恋するが故に、嫉妬したのかも知れない。
俺は、神と同じように、俺よりも人間に深く関与しょうとするイエスに縋りたかったのかも…。
フフ。
ホント、俺は、天邪鬼だよな。
大好きなアイツに、俺は、いつの間にか、ムキになってイエスに誘惑を仕掛けていった。
この三番目の誘惑では、俺は、ほとんど奇跡的な方法で、
この世の全ての王国Kingdom Comeを、俺の支配する闇の世界をイエスに魅せつけて、
これでもか!ってくらいの贅沢と権威と生きがいってヤツを示して、
「もし、お前がひれ伏して俺に崇拝の誓うなら・・・、
俺はこれら全てをお前に捧げよう。
そう、この世の“覇王”として君臨させよう。
この地上も地獄も闇も魔も、俺の持ってるものをすべてお前に譲ってもいい。
だから、お前は俺のモノになれ。
俺と“契約”するんだ!」
ってね。
・・・・。
これって、言ってて、俺も気付いたけど、
完全に、“愛”の告白だよな。
こんな感情にさせられたのは、始めてだった。
天使の時も、悪魔になってからも・・・。
ホントさ。
だってそれまでは、いつも、逆の立場だったんだよ。
みんなが、俺に、無償で、愛を与えてくれてた。
そう、愛以外のすべても、無償で捧げて、逆に、俺に、命令してくれ、って。
求められても、求めたことなんて、なかったから。
でも、気付いたら、俺はこう言ってた。
「俺のすべてをお前にやるから、お前は、俺のものになれ!」
って。
「嗚呼・・・サタン。かわいそうなルシファーよ。
『あなたの神である主を拝み、/ただ主に仕えよ』
これも、あなたが作ったルールじゃないか・・・。
嗚呼、サタン。あなたは、そんなにも、神を想っているんだね。
かわいそうな、ルシファーよ、あなたに幸あれ。
そう、僕は祈るよ。」
・・・。
俺はもう、我慢出来ないくらい、言葉を口にしようとしたんだけど。
それを、言ってしまうと、イエスが消えてしまうような気がしたんだ。
だから、呑み込んだ。
「違うんだ!イエス!俺が愛してるのは、神じゃなくって、お前だ!
イエス!お前を愛してるんだ!!!」
・・・。
なんて、鈍感なヤローだ!って想ったよ。
でも、涙を浮かべて、俺を憐れむイエスは、こう言いやがった。
「ルシファー。あなたの罪は、“赦される”」
・・・。
この時、この被造物:人間の地上を俺は、自分の所有物だと思ってたけど、
違ってた。
うまくやれる、不安なほど闇は純粋にも扉を開いてる
それでいいさ孤独なほど、生きる無意味さも知らず
花をどうぞ 千切れたバラ 見なよ人間達 誰もが憂い顔
あなただけを 愛していた そして憎んでる 深く
繰り返し輪廻り逢う フロアの隅で君が揺れる 激しく美しい
大好きだ。俺の手に入らないなら、殺してしまいたい、って。
俺は、イエスを殺したいほど、愛してたんだ。
その日、俺は“ケダモノ”になったんだ。
BEAST
(作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
破滅へ突っ走るのさ 噴出すExtasy Yeahhh!
ケツに火がついたぜHoney! Get it on Get it on Baby.
俺達獣なのさ震えるSextasy Yeahhh!
ハートに火がついたぜHoney! Get it on Get away Baby.
月夜のエロス ベットにタナトス
お前の愛撫が欲しい
暴れるリビドー 背中のネイル
焼け付く愛撫が欲しい
俺は幻追い駆ける 狂っていなけりゃ生きられない
お前の匂い死の香り 何度も何度も鳴き叫ぶ Yeahhh!
月夜のエロス ベットにタナトス
お前の愛撫が欲しい
暴れるリビドー 背中のネイル
焼け付く愛撫が欲しい
お前は幻追い駆ける 狂っていなけりゃ生きられない
お前の匂い死の香り 何度も何度も鳴き叫ぶ
お前は幻追い駆ける 狂っていなけりゃ生きられない
お前の匂い死の香り 何度も何度も鳴き叫ぶ Yeahhh!
