「愛とか世界 儚い
羽をたたんだ皆殺しの天使」
ライヴツアー【TOUR2007 天使のリボルバー】で、
最も感動を呼んだ楽曲が「RENDEZVOUS~ランデヴー~」であったなら、
一番の盛り上がりを魅せたのは、この不思議の国へと我々を誘う
「Alice in Wonder Underground」で間違いないだろう。
前作『十三階は月光』収録の「DIABOLO」的世界観と“Loop”を見せる
「Alice in Wonder Underground」は、参加して楽しむBUCK-TICK醍醐味を充分に伝える楽曲であった。
アルバム『天使のリボルバー』では、
フィナーレを飾る「REVOLVER」の一曲前、12曲目に収録され、
アルバム後半の目玉的役割を果たした。
ストレートなロック・テイスト一辺倒で押してくるこのアルバムの中で、
ユニークなアプローチが印象的に光るのは、
シリアスな“GOTHIC”の霧に包まれるアルバム『十三階は月光』のラストで、
「DIABOLO」がコミカルに終幕を告げているのと同じ役割とも言える。
ライヴツアー【TOUR2007 天使のリボルバー】の最終公演として開催された
12月29日の日本武道館でも、それまで毎年行われていた
年末スペシャル・ライヴ【THE DAY IN QUESTION】のパーティー感覚のパフォーマンスを、
この一曲に込めて演奏したような、そんな感覚もするBUCK-TICKのパフォーマンスであった。
実際、アニヴァーサリーなこの2007年の最後に、
過去の名曲が、ズラリとセットリストに並ぶ、
スペシャル・ライヴ【THE DAY IN QUESTION】の開催を望むファンの声もあったようであるが、
バンド側は【TOUR2007 天使のリボルバー】の追加公演を決定した。
そこには、最新の楽曲こそがすべてに勝るという彼らのプライドとポリシーを感じ取ることが出来よう。
音楽雑誌などでのインタヴューでも、ベテラン・バンドのBUCK-TICKは、
常に、メンバー自身が気に入っているアルバムについて質問されるが、
返答は、大抵、いつも同じ、そのリアル・タイムのものがベストだと思っている、
という一貫した意見を返している。
そんな記事を読んでいると、
そのような同じが答えが、いつも、返ってくるので、読者達も安心を憶えるのだ。
それは、我々が、いつの間にか、そういった彼らのポリシーを、
自然と理解しているからに他ならないだろう。
しかし、先に言ってしまえば、この2007年の最終公演たる【TOUR2007 天使のリボルバー】
日本武道館公演のアンコールには、BUCK-TICK歴代の“ベスト・オヴ・ベスト”とも言える楽曲が、
並んで演奏され、その圧倒的な密度に、長年のファンもお腹一杯で帰路につくことになるのだ。
その辺の聴き手の裏を画くような手法や、
意外性を常に演出し、いつまでも飽きず、刺激を与え続けてくれる彼らの姿こそ、
デビュー当時から、変わらないショウマン・シップの表れなのだろう。
そんな彼らの性質を端的に表現した一曲が、この20年目の「Alice in Wonder Underground」
なのかも知れない。
この楽曲には、彼らのサーヴィス精神が注入されているし、
なによりも、世界一有名な童話『不思議の国のアリス』をモチーフに選んだことで、
BUCK-TICKらしい、エンターテイメント的な少しいたずらっ気のある自信を感じる。
なんと、チャーミングなベテラン・ミュージシャン達なのだろうか!
と想うような「Alice」パフォーマンスが、この日の日本武道館でも爆発を魅せていた。
オーディエンスが、ここを起爆点にして、最高潮を迎えてしまったのも仕方なかろう。
DVD映像作品の『TOUR2007 天使のリボルバー』では、
「絶界」での縦割り、横割りのスクリーン処理を施した演出に続き、
この「Alice in Wonder Underground」では、
まるで、コミックを読んでいるような、
スピーディなコマ割りの芸術的演出で林ワタル監督が魅せてくれる。
次から次へとコマ進行するメンバーのパフォーマンスに、
ファンタジックなエンターテイメントの真髄を見ることになる。
これは、当然、モチーフとなる『不思議の国のアリス』を意識しての演出となるが、
ライヴ会場でもバック・スクリーン・モニターにトランプの柄が映し出され、
童話『不思議の国のアリス』の世界観が再現されている。
こういったファンタジックな夢を魅せる手法においても、
BUCK-TICKは、世界に誇るクオリティーを有していると言えよう。
その瞬間に、日本武道館は、ファンタジーの世界に包み込まれる。
だから、ライヴを見終わったオーディエンスの多くが、
「まるで、夢でも観ているようなライヴだった」という感想を述べるのも当然である。
ノンドラッグ、ファンタジー。
ノンドラッグ、エクスタシー。
これが、人間の脳医学的に可能なのかどうかは僕にはわからないが、
BUCK-TICKが、それに近い現象を巻き起こすことの出来るロック・バンドのひとつであることは間違いない。
そんなファンタジーの世界から飛び出してきたようなシルクハット姿の櫻井敦司。
この格好が、彼より似合う日本人は存在しないだろう。
それは、確かに彼の演技力によるものなのであるが、
不思議なのは、そういったファンタジックな世界の住人がリアルに存在しているような、
そんな素の表現にも、感じてしまう点だ。
櫻井敦司は、寧ろ、このファンタジック世界での姿が自然な状態で、
普段、現実社会での行動こそが、彼が巧みに演技をしている姿であるような錯覚を持ってしまう。
これは、まことに不思議なことで、簡単な言葉で言ってしまうと、
“生活感が感じられない”ということになるのであろうが、
真実がわからなくなってしまうような神秘性は、
そのファンタジックとの自然な関係にあるような気がしてくる。
これは、個人的な希望的な妄想に他ならないが、
ファンタジックな世界に棲んでいる櫻井敦司のほうが、ストレスなく生き生きと呼吸している。
そういう、櫻井敦司に対する印象を、上手く楽曲のイメージに結び付けているのが、
今井寿のマジックのひとつとも取れるだろう。
こうして、この日本武道館の夜も、ファンタジック世界の幕が開く。
まるで、水を得た魚のような、天性のファンタジスタ“櫻井敦司”の
ステッキを振り回すパファーマンスに酔い痴れることになる。
ある意味においては、サードアルバム『TABOO』から、脈々と流れる櫻井の“GOTHICの血”は、
この姿に昇華した言ってもいいのではないか、と言うほど完成度だ。
僕には、この姿のイメージが、今井寿が堕天使ルシファーと被るのと同じように、
櫻井敦司が、『聖書』というファンタジック・ワールドで、
人類の業をひとり背負った男:ジーザス・クライストと重なって見える。
魔王:櫻井の正体が、ジーザス・クライストだなんて、
スキャンダラスにも、ならないゴシップだけれども・・・。
「いくよ もういいかい まだだよ
君の耳元で息を吐く」
“天使”も“悪魔”も“快楽主義者”も、そろそろ逝こう、だなんてセリフを吐けるのは、
おそらくルシファーかジーザスくらいのものだろう。
このパラドクス的な歌詞は、ニヒリストの今井寿一流の愛情表現だ。
そして、ルシファー今井寿は、ジーザス櫻井敦司に、
この歌詞を唄わせることに、意義を見つけ出した。
「あっちゃんが誘い出すからいいんだ」
そして、自身は「ENTER DIABOLO」として、司会役に徹している。
この“不思議のアンダーグランド”へ、直接、我々を誘っているのは、
あくまでも、シルクハットのジーザス櫻井敦司だ。
フィクサーのルシファー今井寿の狙いは、まさにその点に尽きる。
「高く高く 息を止め潜って FALLING DOWN」
クリスタルの花道へとステッキを振り回しながら、進む誘惑者:櫻井敦司は、
我々に冒険を求める。
そう、ちょっとだけ、息を止めるだけでいいから、さぁ、と。
そうすれは、メクルメク、ファンジック・ワールドが展開するのか?
いや、感覚的には“FALLING DOWN”=“堕ちる”だ。
この穴ぼこへ堕ちてしまおうと誘っている。
それは、天空なんかより堕天した天使のほうが、楽しいよ、誘っているようだ。
「高く そう高く沈んでいく
君の耳元で囁いた」
社会の上層部のほうが、空気が澄んでいるなんて“幻想”だ。
そう、諭しているかの如くに、櫻井“ジーザス”敦司が誘っている。
映画『ゴッドファーザーPARTIII』(原題:The Godfather Part III)でも、
主役のアル・パシーノ扮するマイケル・コルレオーネが、
唯一残された実の兄妹コニー・コルレオーネに語るシーンがある。
「コニー。私は生涯かけて社会の上層へ登ろうとして来た。
そこではすべてが合法的だと信じてな。
だが高いところほど、不正が渦巻いていた。
フッ、どこまで逝けば終わるのか・・・。
ここ(故郷シシリア島、もしくはこの狂った世界)では、何世紀もの間殺し合って来た。
金の為や、誇りや、ファミリーの為に、だ。
既存の特権階級の奴隷にならない為でもあった。
今日は懺悔をして来たよ。洗い浚い告白して来たよ」
「あなたらしくないことを、してきたのね」と糖尿病の注射を打つ妹コニー。
マイケルは、マフィア組織を合法企業へと昇華させるために、
あらゆる手段を講じて、その生涯をかけて、登りつめて来た。
しかし、そこに待ち受けていたのは、
ローマ・カトリック教会の不正と政治家たち暗躍する魑魅魍魎の世界であった。
上に言ったからってすべてが浄化される訳ではないのだ。
そんなことは、この狂った世界では、当たり前の事なのかも知れない。
しかし、過ぎ去った過去の過ちや罪は、取り返すことは出来ない。
その為に、喪失してきた“愛”や“情”や“夢”の数々。
本当に大切なことはなんなか?
それが、この胸にわかるまで、あがき、もがき、苦悩して人間は人生を終える。
そんな多くの人々に向かって耳元で囁いた。
“堕ちろ”と。
堕ちて、わかることも、この世には、多いのかも知れない。
だから、櫻井“ジーザス”敦司は、登りつめることに意味などないと、
そう言ってワンダー・アンダー・グランドへと誘っているようにも、
聴こえてくる・・・。
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“ダムドラの店”でルシファーは、想い返している。
昨日のことのように、記憶に残っている遠い遠い昔の出来事を・・・。
「天使は誰だ!?」
って、神の口癖だったんだぜ。
そんなこと、俺達に訊かれても、困っちゃうよな。
こんな俺達を生み出したのも創造主たるアンタの責任だろ、って思うけどな。
たぶん、神も幻想を抱いてたんだと思うよ。
俺達に、期待し過ぎ。
だから、マリアっていうヴァージンから、
イエスって子が生まれた時も、どうせ、また、神のいたずらだろ?って思ったもんだ。
でも、このイエスは、子供の頃から、ただモンじゃなかった。
欺瞞に満ちた大人の人間たちに、説教を始めやがったのさ。
それでも、俺達“悪魔”は、どうせまた、愚かな偽善の被造物だろって高をくくってた。
あっ、そうそう、その頃から、俺達“堕天使”は“悪魔”=サタンって呼ばれ出したんだ。
“天使”と同じように“悪魔”にも色々いてさ。
ベリアルってヤツは、少し俺に似てるかもな。
“竜”に化けてエヴァを誘惑して水に混ぜた自分の精液を飲ませたとか、
ソロモン王の魔術によって瓶詰にされ、バビロン郊外の井戸に投げ込まれたとか、
とにかくいろいろ言われている。
そしてとにかく神出鬼没で、気まぐれなヤツさ。
生まれながらの性悪で大嘘つきだってもっぱら噂だけど、
ヤツも堕天使の一人で、
闇の子らの指揮官だったから、光の子らを従える大天使ミカエルの軍勢と
よくやりあってたよ。
「光の子らの最初の攻撃は、闇の子として割当てられた者どもに対し、
すなわちベリアルの軍勢に対し、……始めらるべきこと」って
弟のミカエルも鼻息を荒くしてたよ。
っていうのも天使時代は、ミカエルよりも上位の大天使だったんだ。
綺麗な翼を持っていてね。
ソロモン72柱の魔神の1柱で、序列68番の強大にして強力な王なんて言われたもんだ。
80軍団を率いていてたからね。
大したモンだったよ。
噂じゃ、俺に次いで創造された天使って話だ。
自分で言ってたから信用ならんがね。
悪魔になってからは、ベレト、アスモダイ、ガープの連中と並んで72柱の悪魔達を率いてた。
燃え上がる戦車に乗って闘う姿、美しい天使そのものさ。
でも、根っから悪魔的性格をしてたなベリアルは。
召喚者が生贄を捧げないと要求に対して真実を答えようとしない。
もともと悪魔になる前のベリアルって名前は、
「邪悪な者」や「無価値な者」を意味する名称に過ぎないかったんだ。
まあ、悪魔になるのが、天職だったようなヤツだよ。
綺麗な顔して、おっかねえもんだぜ。
逆に見てくれは良くないが、俺の右腕としてよく働いてくれたのが、ベルゼブルだ。
蠅の王なんて呼ばれてて、髑髏みたいな顔してる。
でも、かつて、天界では最高位の熾天使で、
蝿騎士団という騎士団を作ってて、ホント、強かったんだ。
そこにはアスタロトとか悪魔の名士がそこには参加してたし、
頭もあって“賢王”にふさわしい威厳あるヤツだったよ。
地獄では極悪って呼ばれてた俺に次いで罪深く神には目の仇にされてたよ。
神にとっては、ヤツ強大なパワーが邪魔だっただろうな。
権力と邪悪さでルシファーに次ぐと言われてても、実は実力では、実はルシファーを凌ぐとも噂されてた。
まあ、俺も賢明だったから、ヤツとは争わなかったよ。
真剣に殺りあったら、ドッチが強かったかな?
でも、まあ、いいヤツだったよ。
喰えない悪魔さ。
作物を荒らすハエの害から人間を救う力も持っている。
ベルゼブルを怒らせると炎を吐き、狼のように吼えるんだ。
羽根にドクロの模様がある羽虫の姿してる時もあった。
だから、蠅の王なんて陰口叩かれてたけど、本人は結構気に入ってたみたいだぜ。
笑えるよな。
喧嘩が強かった悪魔がもうひとりいたな。
たしかモレクだ。
ヤツはもともと中東では神様扱いされてたみたいだ。
ソロモン72柱の一体では、大いなる伯爵にして総裁って評判で、36の軍団を率いてた。
召喚した者の前に男の顔を持つ大きな雄牛のような姿で現れては、力技で人間を契約を交わしてた。
雄牛の角は、魔王の角だ、なんて言われて、
将棋でいうとベルゼブルが“飛車”で、モレクが“角行”ってところだな。
まあ、悪趣味は一緒だがベルゼブルの蠅よりかはマシだな。
天文学やその他の教養学に詳しくってメチャメチャ賢いんだけど、
やっぱり変わり者だったよね。
よく使い魔から、人間どもに薬草や宝石が持つ力についての知識を与えて、
人生を惑わしてたな。
変わったヤツだよ。
でも酷いのはマモンかもしれねな。
金銭・物欲を司る天使で、吝嗇の魔人でもあったんだけど、
七つの大罪のうちの「強欲」を司り、金銀財宝で人間を誘惑しては更に私服を肥やすのさ。
マモンの真似した人間が、異様に増えたよな。
財テクとか言って、数字の書いた紙に、情熱燃やして。
きっと、全部アイツの責任だぜ。
でも、傑作なのは、マモンの誘惑で手に入れた財宝は、
しばらくすると馬糞や灰に変わっちまうってオチが付くんだ。
まあ、ペテン師の一種だけど、この誘惑は強力なんだと。
だから、騙されたヤツらの末裔は、みんな金の亡者になっちまう。
俺は、紙幣や株券が快楽なんて、信じられないけど、な。
まあ、或る程度、経済力は、権威にも変わるからな。
手っ取り早い方法では、あるよな。
金欲しさに殺しやるなんて、今じゃ、人間の常識だもんな。
とにかくマモンのオイシイ話には、気を付けたほううがいいと思うよ。ホントに。
そうそう、地獄では、俺はルシファーじゃなくってサタンて呼ばれたんだけど、
地獄を統治する者の役職名みたいなのなんだ。
アダムとイヴを誘惑する時に、俺は蛇に化けたんだけど、
ベリアルは、竜に化けたりしてて、エヴァを騙したり、
そんな時、神が言ったんだ。
「お前達は、サタンだ!」って、ね。
それ以来、俺達、天空界を離れた三分の一の堕天使は、皆、悪魔って呼ばれるようになった。
中にはモレクみたいな助っ人外人もいたけどな。
サタンってのは、普通、目に見えないんだ。
耳打ちするだけなのさ。
俺やベリアルみたいにね。
人間には、それで充分なんだよ。
後は、面白、可笑しく、すべて事を運んでくれる。
天空のヤツラ共との戦いみたいな肉弾戦は、ほとんど必要ないのさ。
もともとサタンってのは神の命を受けることで、
はじめて人間に害を加えることが許されるヤツの名称だった。
そういう意味じゃサタンと天使の間には大きな違いがないと考えられていた。
実際、サタンとは本来「妨げる者」や「告発者」ってことを意味した。
だから、俺はサタンだって言われたんだけど、
なにせ、俺が告発した相手が、神本人だったから、
さすがに、頭にきたんだろうな。
あの時は・・・。
でも、それが、面白くって堪らなかったんだ。
本当の快楽ってそういうもんだろ?
俺はちょっと変か?
マモンみたいな「お金命!!!」ってヤツも多いけど。
俺は、なんの興味もなかった。
夢魔の女は、自分に正直にやれって言ったからさ。
人間に取っちゃ厄介な存在だったかもな。
目に見えないからサタンは純粋に霊的な存在でもあり、
その姿を人間の目で明確に知覚することはできない。
サタンは人を惑わし、堕落へと向かわせる精霊だから。
それゆえ、俺は悪霊とか、世を支配する諸霊、人を惑わす霊、なんて恐れられた。
人間ってのは、見えない物のほうか、怖わがるんだよ。
見えない物のほうが、影響力が強いんだ。
十二枚も翼があるんだぜ!とかって見せびらかしても、
人間にゃ「それが、どうかしたのか?」ってなもんだ。
だからサタンってのは“言葉”そのものとも言える。
こんなこと言ってた人間もいる。
「忍び寄る言葉があり、わたしの耳はそれをかすかに聞いた。
夜の幻が人を惑わし、深い眠りが人を包むころ、恐れとおののきが望み、わたしの骨はことごとく震えた。
風が顔をかすめてゆき、身の毛がよだった。
何ものか、立ち止まったが、その姿を見分けることはできなかった。
ただ、目の前に一つの形があり、沈黙があり、声が聞こえた」
(「ヨブ記」四章12~16節)
そうやってビビらせるのが快楽だったんだ。
悪魔には、快楽主義のヤツが多かったかもな。
ある意味では、俺もそうだよ。
俺に取っちゃ人間以上の快楽はなかったんだけど・・・。
天使も悪魔も、快楽の対象にはなんなかった。
で、人間が面白いのは、そうやって囁くだけで、
「預言者だ!」とか「神のご神託だ!」とか勝手に取る人間もいたりするんだ。
ホント、見えないほうがいいんだよ。
目えないものを見ようとする誤解が、人間を惑わすんだ。
案外それも的外れじゃないんだけどな。
ただの誤解なんだよ。
イエスが成長していく姿を見て思ったよ。
確かに的外れじゃない。
サタンも神の子であり、いずれは地上で肉を受ける権利を有していた。
しかし、神に反逆したサタンは霊体のまま地上に投げ落とされ、
人間として肉を受ける機会を永遠に失った存在なのかもしれねぇな。
神は、ミカエルと一緒に俺らと戦った天使たちに対して、
地上を試しの場として与え、受肉においてさまざまな経験を積ませることで、
ヤツらを自らに似た者にしようとした。
その究極の目的は神の子:被造物人間に、天使たちと同じ、
永遠に朽ちない不死不滅の身体を与えることだったみたいだ。
でも、結局、人間は、そんなもの望んでなかった。
カインを見てればわかるだろう?
ヴァンパイアになって、神に反抗したいって俺達に泣きついてきたヤツラもいたよ。
神や守護天使を信じて、今までやって来たのに、なんだって。
神が憎いから、死なないようにしてくれっていうから契約して不死者にしてやったのに。
ヤツラ、いっこうに、喜びやしないで、嘆いてばかりだ。
死にたい、死にたい、ってね。
死んで、愛する人の下に行きたい、ってね。
人間は、“不死”なんてちっとも欲しくなかったんだ。
俺は、人間を知って快楽と同時に哀しみの存在を知ったんだ。
人間が欲しかったのは、“愛”と“死”さ。
だから、イエスが遣わされたんだろうな。
アイツこそ、本当の人間の欲望のすべてだ。
“愛”と“死”を体言した男だった。
その前では、すべては、無力だった。
その初穂は神の長子であるイエス・キリストが普通の天使や悪魔と違ったことだ。
人間がイエスと同じ不滅の身体を与えられ、神に似た者となることは、
はるか天地創造の前から定められた神の計画でもあったんだ。
なぜなら、人類の贖い主のイエスは、はるか天地創造の時代からその栄光を与えられ、
メシアとしての権威を与えられていたからだ。
でも、そうならなかった。
神はきっとこう思ってるんじゃない?
受肉する権利を失ったサタンどもは不滅の肉体を受けたまま、神へと近づく道程を絶たれた。
サタンは今も霊のまま地上を徘徊している。
ヤツラが目にするのは、
かつて俺達を奈落の底へと落した天使たちが、不死の肉体を受けて活動している様子だ。
ヤツラはそれが気にくわない。
人間は受肉した段階で前世、すなわち天使だったときの記憶を全て失っている。
ゆえに、ヤツラ悪魔はあらゆる手段を使って人間を堕落させ、
自らと同じ悲惨な境遇に突き落とそうと画策してくる。
サタンは闇の支配者だ。って。
それは、或る意味当たってるけど、正解じゃない。
人間ども、知ってしまったんだ。
そんな不死よりも、“愛”と“死”のほうが魅力的だって・・・。
それは、きっと、父なる神にも誤算だったろうよ。
それは、皮肉なことに、あのイエスの所為に違いないんだ。
俺の見る限り、イエスだけは、違ったんだ。
他のどんな天使や悪魔とも・・・。
Alice in Wonder Underground
(作詞・作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
愛とか世界 儚い 羽をたたんだ皆殺しの天使
お願いだ 天使のラッパ鳴り響く
残酷だね ダーリン 愛と血肉をむさぼるゾンビーナ
泣いたりしない 愛はネコソギだぜ NIGHTMARE
いくよ もういいかい まだだよ
君の耳元で息を吐く
OH!YEAH!ALICE IN WONDER UNDERGROUND
DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN LET'S GO!
ベットの中 流星 君の孤独を抜け出そうよ 今夜
アンドロメダ タンバリンはピエロ UP SIDE DOWN
真っ逆さま 跳んで 迷子になりに出掛けようパレード
高く高く 息を止め潜って FALLING DOWN
高く そう高く沈んでいく
君の耳元で囁いた
OH!YEAH!ALICE IN WONDER UNDERGROUND
DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN LET'S GO!
OH!YEAH!ALICE IN WONDER UNDERGROUND
DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN LET'S GO!
ENTER DIABOLO
いくよ もういいかい まだだよ
君の耳元で息を吐く
高く そう高く沈んでいく
君の耳元で囁いた
OH!YEAH!ALICE IN WONDER UNDERGROUND
DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN
OH!YEAH!ALICE IN WONDER UNDERGROUND
DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN
OH!YEAH!ALICE IN WONDER UNDERGROUND
DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN
OH!YEAH!ALICE IN WONDER UNDERGROUND
DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN LET'S GO!
DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN LET'S GO!
EPICUREAN LET'S GO!
EPICUREAN LET'S GO!
DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN LET'S GO!


