「飛び交う精霊 夢見るRENDZVOUS」




日本武道館が、光に包まれる。
この日、参戦したオーディエンスに、最も印象的に映ったであろう「RENDEZVOUS ~ランデヴー~」。


一時期の彼ら、では、考えられないくらい爽やかな曲調の「RENDEZVOUS ~ランデヴー~」は、
ダークにスタートした「Mr.Darkness & Mrs.Moonlight」の
『十三階は月光』のようなギラギラしたザラついた闇の残骸を掻き消すように、
ニュー・アルバム『天使のリボルバー』の本格始動を誘導する2曲目に収録された。


2007年6月6日。

ここに、BUCK-TICK天使時代の幕開けの狼煙が上げられる。

歌詞全体も、純粋に、出逢いの大切さを唄う優しいラブ・ソングで、
こういったストレートな作風こそ、彼らには、変化球となることを思い知らされる。

前作の『十三階は月光』であれだけおどろおどろしい、ダークな世界観を描きながら、
これだけのラヴ・ソングをすぐさま作れてしまう辺りが、
BUCK-TICKというバンドの懐の広さだと、この第一弾先行シングルがリリースされた時は、
驚かざるを得なかった。

特にサビの今井“ルシファー”寿と星野“ヒデ”英彦のバックコーラスが、峻烈だ。
間に「蜉蝣-かげろう-/空蝉-ウツセミ-」の幻想的なシングルが挟まれていたが、
アルバム・リリースがなかった2006年のややオフ・ビートな活動から、
封を切った久々の新曲だったこともあり、このシングルは、話題を呼んだ。


そして2007年9月19日、ニュー・アルバム『天使のリボルバー』がリリースされると、
その中でも、象徴的な役割を果たしていることを再確認させられた。

ニュー・アルバムのリリースと共に、始まったライヴツアー【TOUR2007 天使のリボルバー】では、
10月までの公演で、一曲目にセットリストされ、このツアーの回転に拍車をかけた。

そうだ。今年行われているライヴツアー【TOUR2009 memento mori】で、
いきなり一曲目に、「GALAXY」が演奏されてしまうような感覚であった想う。

アルバム『天使のリボルバー』のストレートな収録楽曲達が、オーディエンスに認知され始めると、
「RENDEZVOUS ~ランデヴー~」は、ショウ後半の盛り上がり為に、
クライマックス部分にエントリーを変更して、その輝きを維持していた。

そう、この一曲を聴きたいが為に、
この日12月29日も、日本武道館に全国からBTフリーク達が集結していた。
そういって過言ではないくらいの輝きを放つ「RENDEZVOUS ~ランデヴー~」であった。



愛する人を”天使”と読み替えているところは、ニュー・アルバムの主題曲と言える役割を
充分に果たしていたし、何よりも中央の輝くクリスタル花道の光の中で唄う櫻井敦司は、
何とも言い難い“感動”を我々に与えてくれたのだ。

このライヴ・パフォーマンスのすべてが印象的と言える【TOUR2007 天使のリボルバー】の
東京最終公演であったが、この「RENDEZVOUS ~ランデヴー~」が最も強く心に残ったのは、
この会場すべての観衆が感じたところではないだろうか?


それまで、中央クリスタル花道に出てこなかった櫻井敦司が、
この楽曲を唄う前に、初めて花道を進み日本武道館のアリーナ中央付近まで歩いてくる。
まるで、パリ・コレのファッション・ショーから飛び出して来たような花道である。
そのスパンコールを迎えるような演出だ。


そして、この日の大観衆に向かってMC。


「今年は20周年ということでいろんなところで祝ってもらいました。
その感謝の気持ちを次の曲で……演ります」


前奏の星野英彦のグリーン・グレッチに、
今井寿の赤マイマイが合わせるように、クリアな花道からから上がる、光、光、光。
先に伸びるように光に包まれる花道、そして広がる輝きは、やがて櫻井敦司を包み込み、
日本武道館を、大きな祝福の光の中に包み込んでしまう。


“ぬくもり”とともに、大きな“愛情”に包まれるような心地良さを感じながら、
日本武道館が、光に呑み込まれる。



「Be my baby Be bop a baby
  She's my baby love」



このコーラス・イントロで
日本武道館全スポットライトが点灯して、見えたのは、
楽曲に合わせて差し出され、祝福を捧いでいるオーディエンスたちの手、手、手。
会場に響く、大観衆皆の唄声、それに合わせる様な祝福の皆の手。
その中央で、みんなを見渡すように櫻井敦司が、感謝の気持ちを返している。


「私の隣に微笑む天使よ
 飛び立つ二人は 星屑ランデヴー」



この時、或る者は涙が流しながら、或る者は、渾身の声を張り上げながら、感謝の交換を交わす。
あの光と声と、手のあたたかな波のなかで唄う櫻井敦司が、本当に幸せそうに見えた。

コーラスしながら客席を見つめ、演奏するメンバーもそれは同じだ。
ヤガミトールが、樋口豊が、星野英彦が、そして今井寿が、
本当に祝福の光の中で、幸せそうに見えたのだ。

そんな彼らを追いかけ、感謝を表すように手を伸ばすファン達の姿が、
本当に、あたたかく、感じられたのだ。


「心からありがとう」


櫻井敦司が、この歌詞を唄う姿には、なんの“芸術性”と“前衛性”も感じないけれど、
こんなストレートなラヴ・ソングが、ここまで多くの人の心を震わせる。
そこに、ギミックも、技巧も、ロック・スピリッツも必要なく、
人間と人間のコミュニケーションが生み出す“ぬくもり”のみが、
何にも、増して高い価値を有することを、彼らは証明して魅せたのだ。


全体を見渡す櫻井敦司とBUCK-TICKのメンバー達。

きっと、オーディエンスはみんな思ってたに違いない。


「こちらこそ、ありがとう!」

「20年間…本当にありがとう!」



「RENDEZVOUS ~ランデヴー~」は
櫻井敦司が、創り出した新たなる挑戦ともいえる家族に向けて作った楽曲であると、
そう解釈していたファンも多かった。
彼が喪失していたモノを、それまでは、バンドのメンバーやその家族、
また、多くのファン達が、彼のその穴を埋め合わせて来た。
そして、時間は成熟し、櫻井自身も、自らの家族を持った。
それは、他に例えることが出来ないくらいの価値を持った出来事であっただろう。
そんな、愛しい者へ捧げるラヴ・ソング。
キャッチーで、ポップで、なんの歪みもないロックのメロディにそれを乗せた。
が、それだけでは、勿論なかった。

勿論、それは確かにあったのであるが、それ以上に、
BUCK-TICKメンバー
そして、我々ファンへ向けた楽曲でもあることを、
この時、肌で感じとった大観衆は、感動し、涙が自然と溢れだしたのだろう。

その理由のわからない雫が頬を伝っていることを気付いた時、
彼らが、纏っている“愛”が、何なのか、少しだけ理解出来たような気がした。


「私のこの胸 まどろむ天使よ
 飛び交う精霊 夢見るRENDZVOUS」



宙を見つめ、まるでまわりに飛び交う精霊が見えているかのように唄う櫻井敦司。
今井寿が、気まぐれで付けたような“天使”という言葉の意味を体言するような「RENDEZVOUS ~ランデヴー~」。
そう、きっと“天使”なんて言葉に意味なんかないのだ。
それは、“悪魔”だって一緒だ。
人間が勝手に名付けただけに過ぎない。
ただ、そういった神秘的なもののイメージが、我々の根源的に繋ぎ合わせている。
そういった櫻井敦司のイメージと「RENDEZVOUS ~ランデヴー~」を聴くすべての人の思惟が、
繋がり合ったところに、本当に“天使”たる存在や、“神”たるものが具現化し、
広がり伝播して行く。

そういった存在は、おそらく自分の心の奥に存在するのだ。
それを発見するには、どんな人間もなんらかの切欠が必要なのだ。

そして、その心の中の“天使”や“神”、そして“悪魔”といったモノは、
その心の持ち主の意志やプライドといったモノなのかも知れない。

だから“愛”を詠えば、それが具現化するのである。

これは、単なる博愛主義なんかじゃあない。

確固たる意志とプライドの下に我々は彼らを支持してきたのだ。

だから、この楽曲で唄われる「ありがとう」の意味は、
なにか自分自身が報われたような・・・
とてつもなく「重い」ものなのだ。

そんな説明不要の感動を持つ「RENDEZVOUS ~ランデヴー~」。
其処には、音楽的に説明のつかない奇跡が詰め込まれていたのだ。


「たった一言 言ってみるのさ
 そう あなたに会えてよかったって
 心から ありがとう

 もう一度ありがとう あなたを愛してる
 あなたにありがとう もう一度最後に」



すべてのスポットライトが白く照らす花道で、ひとり唄う櫻井敦司。
一度、暗転するし、再び白いライトが照らされて時、花道には、今井寿が現われる。
クルクルと回転しながら、櫻井敦司は一時、花道ステージを離れると、
今井寿は、花道の先端部で、愛狂おしいギター・ソロを掻き鳴らすのだ。
再び、クリスタル花道に戻る櫻井敦司とすれ違う瞬間の今井寿。
最高の“RENDEZVOUS~ランデヴー~”を決める櫻井と今井は背中合わせで光に包まれる。
ふたりの“RENDEZVOUS~ランデヴー~”を求める大観衆の手、手、手。

少しでも、この祝福の“ぬくもり”に触れていたいオーディエンス。



「Be my baby Be bop a baby
  She's my baby love」




大合唱の「RENDEZVOUS ~ランデヴー~」が終焉を迎える。



感謝という言葉は、なんて、なんて、・・・。

















“ダムドラの店”の開店前に、ギターをチューニングしているルシファーは、想い起す。

何世紀の昔の話であるが、つい昨日の出来事のようだ。




夢魔サキュバスは、アノ時、俺に言ったんだ。

「勝手にしやがれ!アンタのお好きなように!・・・それが契約よ!アンタの意志よ!プライドよ!」


そして、目を閉じて自分の欲望のままに行動した結末がこれだ。

永久凍土の海中の地獄の果てで、尻を凍りつかせて、
天空界から追放された。

天使のスーパー・エリートだった、この俺が、だ!

が、しかし不思議と後悔は一片もなかった。
きっと、こんなに興奮したのは、初めてだったから、楽しかったのだろう。
双子の弟:ミカエルと闘っている間、心臓はドキドキと鼓動し、
この先どうなってしまうか?全く見当もつかない未来に興奮したし、
初めての感情“不安”というものと、初めて向き合った。

「あはは、人間どもは、いつもこんな感情と闘ってんだ?
 悪くないかもな!」

正直、そう想えた自分が、少し誇らしかったりも、した。可笑しな話だが。
これがプライド?俺の意志ってやつか!?
この時、少し、被造物:人間ってヤツに興味を憶えた。
そして、俺の欲望は、こんな妄想を掻き立てた。

「神から、この人間様を奪ってやろうかな?」

そうして、

俺の蠢動は、始まったのさ。


そう少し経ってから聞いた話では、弟のミカエルは今回の功績で、
兄の俺(ルシファー)が保有していたあらゆる権利を手にすることができた。

以後、ヤツは全天使のリーダーとして、
そしてヨーロッパの守護天使として、あらゆる賛美を受ける立場になったのだ。

一方、俺の方はと言えば、
アノ夢魔の女は言ってたこと忠実に実行したまで、だ。
自分の内なる声に、耳を澄ませて・・・。
やりたい放題やってやったゼ!

周りの連中は、こう噂してたけどな。

「明けの明星ルシファーは、堕天されたことを恨みに思い、
神の恩寵を受けた人間を堕落させようと、あの手この手を使って策動を続けています」って。


別に俺は、神のことをそんなに恨んでた訳じゃなかったけど、
俺と一緒に天空界を追放された堕天使たちの中には、神を恨みに思ってたヤツも多かったから、
俺も、そういう風に、演じてたんだ。

ヤツらは、よく働いてくれたよ。

よくヤツらは、

「神の天空界を、我らの手に取り戻しましょう」なんてこと言ってたけど、
実は、俺にはそんなこと、ちっとも興味がなかった。
あんな退屈な天上界なんて、欲しいとも、なんとも思わなかった。
ま、同調するふりしてたけどな。


それは、人間ってモンが、最高に気に入ったからかもしれねぇな。
人間は、最高だぜ。
色んな感情に惑わされながら不安と闘って毎日生きてんだ。
こんなにドキドキしながら、よく心臓が破裂しねえなと思ったもんさ。

人間は、“愛情”ってモノを持っている。
これが、すべての感情の根源だ。
だから、これを、操作すると、居ても立ってもいられないんだよ。

それは、同じ人間に対する“愛情”はモチロンだけど、
それだけじゃない。
モノや金、同じ被造物の動物や、その他、目に見えない物にまで、
そう俺達“天使”みたいに、“神”や“死”にまで“愛情”を注ぐんだ。

そして、その情熱と言ったら中途ハンパじゃない。
それが、生きがい、ってヤツがほとんどだ。
たまには、何の為に生きてるかわかんない、なんてっ、ひねくれたヤツも居たけどな。
大体、そういうヤツは、そんなこと考えてる自分に一番“愛情”を注いでたんだろうな。
“ナルシス”とかいう、自分しか愛せないヤツもいた位だから。
ああ、そいつも、俺と同じ、夢魔に囁かれたなんていってたけど、
それは、夢魔の真似して、俺がやらせたことなんだよ。

可哀相に、水面に映る自分に恋焦がれて、湖に溺れて逝っちゃったけど、
俺は、少し囁いただけで、本当に他には何にもしてないんだぜ。

最初の人間っていうアダムとイヴも、蛇に化けて知恵のリンゴを与えてやったのさ。
知恵のついた人間はそれで堕落して神への“原罪”を負ったなんて天空界では騒いでたけど、

俺は、ほんの少し背中を押したに過ぎない。
後は、アイツらが勝手にやったことさ。

カインとアベルの兄弟もそう。

カインにそっと耳打ちしたのさ。

「主は、弟のアベルの贈り物のほうが、お前のより気に入ったってよ」

カインは、“嫉妬”とともに走り出してアノ有様だ。
結局、俺達と同じ永久の命を罰として宿命付けられたんだ。
他の人間なら、泣いて喜ぶヤツもいるのにな。
カインは、相変わらず嘆いているよ。
こんな事になるなら、“嫉妬”なんて、“恋”なんてするんじゃなかった、って。

そうやって、スグ反省するのが、人間のいいところだけどな。


俺はいつも、「TRIGGER」を弾いてやるだけ。
ROVOLVERをぶっ放すのはいつも人間自身さ。
それを司るのが感情ってやつなんだ。
コイツは本当に凄いパワーを持っている。
俺達の“魔力”に似てるかな?



ま、神は、もともと被造物:人間も俺達をモデルに創ったらしいから、
人間と俺達は根本的に似てるんだけどな。


その内、神は、俺そっくりの男を下界に使わしたよ。




そいつの名は、ジーザス。




ヤツは天使なんてもんじゃなかった。
俺も甘く見てたんだ。










RENDEZVOUS~ランデヴー~
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)


BE MY BABY
BE BOP A BABY
SHE'S MY BABY LOVE

BE MY BABY
BE BOP A BABY
SHE'S MY BABY LOVE

私の隣に微笑む天使よ
飛び立つ二人は 星屑ランデヴー

たった一言 聞いてくれるかい
そう あなたに会えた喜びに
心から ありがとう

私のこの胸 まどろむ天使よ
飛び交う精霊 夢見るRENDZVOUS

たった一言 言ってみるのさ
そう あなたに会えてよかったって
心から ありがとう

もう一度ありがとう あなたを愛してる
あなたにありがとう もう一度最後に

たった一言 聞いてくれるかい
そう さよならが来るその日まで 心から
たった一言 言ってみるのさ
そう あなたに会えて良かったって
心から ありがとう

もう一度ありがとう あなたを愛してる
あなたに あなたに
もう一度最後に 最後に


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