「いいか忘れるなよ いいさ忘れちまえ」






主よ、あなたはこの者に未来永劫、解けることのない呪いをかけた。
肩身を震わせる者、お前は神に呪われてしまった。

見よ、神の子の心は斯様にも移ろい易く、傷つき易い。
見よ、神の子の体は斯様にも脆く、容易く崩れ行く。
見よ、神の子の魂は斯様にも幼く頼りない。

主よ、あなたはこれを見て何を成せと云うのか。
赤子のように無垢な魂は、永久の安閑を求めて止まない。

しかれども主は、このか弱き魂を千尋の谷に突き落とした。
燃え尽きぬ炎でその身を焦がし、千早振る刃を以ってこれを斬りつけ、
吹雪に身を晒せて温もりを奪い、薔薇の棘で縛り上げ血の一滴を残さず絞り取った。

主よ、あなたは これ以上、この者から何を奪わんとするのか。
この者は強さと英知に満ちた 神の如き者ではなかったが、
ひとつの魂として世界を歩き、正しき道を求めて彷徨い、
心の内に ささやかなる幸いを願う者ではなかったか。

この者から全てを奪って、この者に生きる価値など有ろうか。
この者は己が産み落とされし意味を 知る事など出来ようか。
この者に更なる重荷を課し、これからの歩みを望めようか。
この者は己の呪うべき人生を 全うする事など出来ようか。

見よ、いつ受けられるとも知れぬ祝福を目の前に、
この者は志半ばにして 倒れようとしている。
なればこそ この者に、苦痛からの解放が必要ではあるまいか。

見よ、両足を朱に染めて長き道を行く者は、その背にある荷を捨ててしまった。
終わりなき 責め苦から逃れんとし、暗い闇の奥底に 身を委ねてしまった。
僅かな陽光も差さぬ暗黒の中に、永久の安閑を 見出してしまった。

されど我は、これを救う者なり。
しかして この魂に、戒めを宛がわぬ者なり。
我は等しく全ての者を 求めるままの欲望で満たす者なり。

我が名はルシファー…主を告発する者。
地獄にて彷徨える魂を、誠 無に還す者。

我 暗黒の者 Lucifer





「無常だ 無常だ 無常だ 絶界」

いいか忘れるなよ、いいさ忘れちまえ、と言い捨てながらも、
この世の矛盾、無常、無情などの極論を唄っているような楽曲「絶界」。

アルバム『天使のリボルバー』の“天使”というテーマからいっても、
こんな世の中の何処に“神”はいるんだ、?と嘆きながら、
結局は全て“夢”なんじゃないか?、と櫻井敦司らしい哲学を感じる歌詞に、
フラメンコとも言える星野英彦のスパニッシュ・ギターの音色と、
今井寿の歪んだエレクトリック・カッティングが炸裂している「絶界」。

この「絶界」も、ライヴツアー【TOUR2007 天使のリボルバー】を経て、
完成の極みに至ったBUCK-TICK哲学の至宝と言えよう。





今井寿は「絶界」について語る。


――「絶界」がこれまでのイメージと近い気がしんたんですけど。

今井「そうですかね。そう思える部分もあるけど、全部それだなって思う部分もあります」

――形を変えて出てるだけであって、別に何かが変わってるわけではないと。

今井「そうですね」

――それはアルバム全体に通じることなんでしょうか。
今回はこういう手法を取っただけと言うか。

今井「前のアルバムの段階のときに、バンドサウンドっていうのはもうコンセプトとしてあったし、
だから前もデジってる音は入ってないし。
ただ、コンセプトがしっかりあってピンポイントに着地点が決まってたので、
そこからはずれないようにっていうのがありました。
だから、音を楽しむと言うより世界観を楽しむって言うか、
音より映像感があったと思うんですよ。
そういう前の『十三階(は月光)』をねじったらこうなったみたいな」

――そういう風に突き詰めたせいか、前作は閉ざされた印象があったんですけど、
今回はすごい開けた感じがありますね。

今井「前はわかる奴だけでいいよ、みたいな、そういうストイックさがあったけど。
それが今回は全くなく、キャッチーさを前面に出して、
音とかバンド感、ライヴでただ楽しめるっていうそっちのほうの印象が強いと思います」




BUCK-TICKのメンバーによって、開放された歪なる“GOTHIC”ワールドは、
此処に凝固され、昇華する。

「絶界」のギター・アンサンブルは、ヨーロピアンな“GOTHIC”の響きを、
中南米のカンクーン・リゾートで、楽しむような贅沢な仕上がりだ。
こういったノーヴルな楽しみ方は、まさしく大人の“BUCK-TICK”という、
ベテラン・バンドだからこそ、可能な高度のロック・チューンとなっている。

アルバム『天使のリボルバー』の主題“バンド・アンサンブル”を極めると、
こんなにも、ストレートで、陽気で、悲しげな、シンプルな躍動感に至ったという事象である。



「退くか 戦闘か 生き抜け 絶界」



「生きろ!」そう叫びながら心臓はビートを刻んでいる。

これは、BUCK-TICK哲学の結論である。




血まみれの愛の中で、あがき、もがき、のたうちまわる、人生。
たしかに、狂ったこの世で、生き抜くことは、並大抵ではない。

“生き抜く”ことの真の達成感や充実感は、
多大なコストとリスクと危機感を伴った作業の中にあり、
常に“失意”と“絶望”が隣り合わせに存在している。


自分の壁を理解する時、人間は“不安”と“絶望”を知る。

常に人には、不安材料というのがあって、それを無視するような人はただの馬鹿だ。
メンタルといったが身体的なモノと、肉体や生理と、精神を区別することは本当はできない。
神経が露出して骨を削らなくてはいけないほど、歯が痛いときは、タフになるのがとても難しい。

タフなヤツというのは逆境に強い者だが、それは単に気分の転換が早いとか、そういうものじゃない。

不安材料と戯れることの出来る奴、それが本当のタフネスだ。
プレッシャーを楽しむことの出来る奴だ。

そして、不安材料の全くないヤツは、
メラネシアやポリネシアや一部のアフリカ以外ではほとんどもてない。

一歩でも深く踏み込もうとすれば必ず不安材料というモノは発生するものだ。
不安材料がなければ人間は深く考えない。


誰かに何かをしてあげたい、何かをしてあげることができる存在になりたいという思いが、
どれだけ普遍的で切実なものなのかを、思い知るようになると人は“絶望”を知るのだ。

他人にどれだけ、自分が関与出来たか?
それを基準にすることは、とても高等な事であるが、
それは、どうしようもない“絶望”を背負いながら疾走を続けることになる。

だから、社会を変えよう、とかそんな次元ではなくても、他人に関与して生きること、
そう考える人間は、大きな“絶望”を背負うか、
もう何も見えない、盲目になるしかないのであろう。




“絶望”した時に発狂から救ってくれるのは、友人でもカウンセラーでもなく、プライドである。


自分は、大いなるものにも、屈していない。

そういうプライドである。


堕天使ルシファーには、確固たるプライドがあった。

それは、神よりも、自身が優秀であると勘違いをしてしまうような、
無謀な、根拠のないプライドでもある。

その結果、天空より冥府に陥っても、
再び、立ち上がり、新たなる楽園を求めて、蠢きだす精神的“絶界”のなせる技だ。



「約20年前に円が対ドルで200円を切った、
 そのときに日本の近代化は終わった、
 近代化が終わるということは国家的な大目標がもう終わったということで、
 そのあとは国家から個人へと価値観をシフトしていかなければいけない、
 この国ではそれがまったくできていないし、それが必要だというアナウンスもない、
 働くおとうさんはどんなにがんばって業績を上げても、
 会社以外では、家庭でも、同窓会でも褒められることがないし、
 褒められないから生きがいも持てない、
 日本人の中心的な感情は敗戦と近代化途上における“悲しみ”から、
 国家的目標の消失の次に来るべき個人的な価値観と目標を
 未だに見出せないという“寂しさ”に変わりつつある。
 特に国家的目標に従って働いてきたサラリーマンや中小企業経営者のおとうさんは、
 急に生き方を変えられるものではなく、ものすごい寂しさの中にいて、
 それが寂しさだとも気づいていない人が多い」

作家:村上龍がこの文章を書いたのは、
新しい時代を告げるような例の神戸で発生した14歳少年による殺人事件に前後した頃のこと。
オウムによるサリン事件、女子高生の援助交際といった
これまでの日本社会では理解不能事件が増えてきたことについて分析を試みた。

その集約が上記の発言だ。



Les Enfant Terriblies
そんな高度成長の黄昏時を身を持って経験してきた父親の背中を見て育った子供たち。
彼らが、堕天使ルシファーのプライドを持ち合わせるのは、不可能なように思えた。

停滞感の中、蠢く「絶界」の「狂った太陽」の炎に焼かれながら、
己の「密室」に「FLAME」を灯して来たFive for Japanese Babies 。

この世代が取り巻く世の中は、いい意味でも悪い意味で新しい時代だ。
物量やパワーだけでは、割り切れない因数分解。
BLANKEY JET CITYの浅井健一によれば、



「古い世代のヤツは、金でなんでも買いあさった

 だけどオレ達は自然の掟のなかで生きる獣の世代さ」




この豊かな日本でなぜこのような不可解な出来事が起きるのか?
と外国メディアの取材を受けたことが、
村上龍に、この言葉を書く動機を与えたらしい。


「外国のメディアはこのように話すとすぐに分かってくれる。
 分かった、ありがとうといって録音テープを切って、インタビューは終わる。
 では日本はどうするのか、とは絶対に聞かない。
 個人的な価値観の創出が自明のこととなる国のジャーナリズムなので、
 『では日本はこれからどうするか』という質問そのものが不毛と知っているのである」

「相変わらず過去に学ぼうとしているのは価値観のない中高年の男たちだ。
 織田信長とか、坂本竜馬とか、吉田茂だろうが、時代から学ぼうといって、
 例えば帰国子女の悩みに答えることができない。それなのに信じられないことだが、
 『織田信長に学ぶ危機管理術』というような特集を組む雑誌が後を絶たない。
 だが、バカな中高年の男たちのことはもう放っておくしかない」


このように21世紀を前にして村上龍は、辛辣な言葉を並べ、先輩の団塊の世代を鋭く批判した。

そして、この結果、自己評価の低いマゾヒストだらけに日本はなってしまったと彼は嘆くのである。
堕天使ルシファーの精神構造は、その反対のサディストの見本とも言えるでモノであろう。
僕は何も、皆がみんなサディストになれ、と推奨しているのではない。
それは、一個人の中で、相反する“矛盾”する自己として、内在する悩みを持っている。
一個の人間の中に、内在するサディズムとマゾヒズム。
それは、フロイト博士の“エロス”と“タナトス”に似ている。



同様に「絶界」の哲学的な歌詞は、なんと、ラヴ・ソングへと昇華していくのだ。



「沈みゆく太陽 空に煌く星
波の音と 俺とおまえ Baby ,I Love You.」



ここが、BUCK-TICKというバンドの最も特徴的に、美しいところであろう。
人間の、世の中の、卑劣な部分、醜悪な部分を散々に上げつらったあげくに、
「愛してる」と。
「それでも、ともに生きよう」と。

それこそが、彼らの美意識のセンター・ピンとして、
常に、立ち残るからこそ、彼らは、自身のプライドを守り抜き次のステージへと向かわせるのだ。
どんなことになっても、例え此処が「絶界」であったとしても、だ。

「絶界」の極限状態の中でも、太陽はやがて沈み、夜空には煌く星。
隣を見れば、あなたがいる。

それ以上でも、それ以下でもない。

「愛してる」

この「絶界」の果てでも・・・。



この日の日本武道館でも、ライヴの生々しい「生きろ」という鼓動がビートする。


繰り返すが、「スパイダー」から本編ラスト「RAIN」までの
ライヴ【TOUR2007 天使のリボルバー】は、まるで一瞬の出来事のように疾走する。


レッド・サンバーストの今井寿の精神を掻き毟るカッティング・プレイが、
アダルトな味付けのアルバム『天使のリボルバー』に収録される原曲「絶界」に、
生々しい血脈を注ぎ込む。
スパニッシュ・ギターの星野英彦のクールな情熱が炎を上げる!


「Oleeee!!!!!」


フラメンコの雄たけびをあげ、手拍子をする櫻井敦司。
父なる狂った夕陽が巨大な母なる海に沈み、まばたく星の夜空。
この星は、きっとあなただ!
俺が、夜の闇になって包み込もう。
そうすれば、きっと、朝日が生まれる。
自然の掟に従って、愛するあなたと、翳りゆく狂ったこの世界(絶界)を行くのだ!














“ダムドラの店”で、サキュバスのマダムと出逢う前、
ルシファーは、一度、彼女を合っていた。


悪魔の大王といういかがわしい渾名を付けられる前、
俺はかつては上級第一位の天使、熾天使(セラフィム)のリーダーだった。
その後、俺は神に叛逆して地上へ堕とされた敗北者にもかかわらず、
今は、6666億人いると言われる全悪魔の総帥であり、地獄軍の大総統と呼ばれた。

俺は地獄の大判官(最高裁判所判事)でもあり、
すべてのアジア人とヨーロッパ人をその影響下に置く存在。
地獄の最有力悪魔(The Devil)のひとりであり、
「Satan(敵対者)」の名前で呼ばれる数少ない存在のひとりでもある。

俺はまさに「悪魔の大王」と称するに相応しい存在であり、
自分で言うのもなんだが、実力的にも地位的にも俺を凌ぐ者は地獄には存在しないだろう。

ベルゼブルやモレク、ベリアルなどといった連中も、
なかなか優秀な悪魔であるが、俺の前では膝を屈する。

キリスト教徒やユダヤ教徒にとってはまさに憎んでも憎み足りない、人類の敵、神の敵が俺だ。


まだ、俺が天空にいた頃、
俺の名前はラテン語で「光り輝くもの」「光を与える者」を意味する「明け(宵)の明星」
すなわち「金星」と呼ばれる天使の一人だったんだ。

金星は、太陽と月を除けば全天で最も明るい星(マイナス4.4等級)のひとつで、
都市の明かりの中でも見られる数少ない星のひとつだ。

しかし、太陽とともに昇り、ともに沈むため、しばしばその姿は太陽の中に消える。
だからこそ俺は「明け(宵)の明星」と呼ばれたんだけど、
俺は主:父なる神とず~~~と一緒に居たんだ。

こんなクソみたいな称号にふさわしく、俺は他の大天使たちの中でもトップの地位にいた。
大天使長という最高位にいて、きっと、神からもっとも愛されていた天使だった。

え?本当の事はわからない?その通り!
俺の取り巻きの連中が、勝手に毎日毎日、俺にそう言うもんだから、
お調子者の俺は、すっかりその気になってたんだ。

「神から一番愛されてるの俺だぜ!」って感じで。

その時、俺は、唯一神の玉座の右側に侍ることが許され、
天使の中でも最高の気品と美しさを備えていた。

その時の俺の役職は、押しも押されもせぬトップエリートだった。
熾天使(セラフィム、上級第一位の天使)のリーダーと力天使(ヴューチャーズ、中級第二位の天使)
の司令官を務める、まあ、いわば、天空の司令塔ってやつ?
背中に持つ羽の数も、通常はどんなヤツでも6枚までと定められているのに、
俺だけは特例として12枚の羽を許された。
主が俺にどれくらいの信頼を置いていたかが分かるだろう?
とにかく、のぼせあがってたんだ。

そのまま行けば、同じ大天使のミカエル、ガブリエルらとともに、
歴史に残る天使なんて言われて尊敬を分かち続けていたに違いないんだ。

でも、俺は、後悔なんてしてないぜ。
俺は、目を閉じて、自分の声に従ったんだ。

そう、目を閉じた時、現れたのが、アノ女だったんだ。

“マダム”さ。

アイツは、俺に言いやがった。


「アンタのハナもちならないエリートのプライドは、
何十億の被造物:人間の屍の上に築きあげられた砂の城だよ」って。

「見て御覧。下界を。
愚かななる被造物は、天空の存在も知らずに、懸命に働いているだろう?
それが、アンタらの血となり、肉となるのさ。
そのアンタの純白に輝く翼の羽の一枚一枚が、そういったモノのお陰で創り上げられいる。
ホントに、くだらない話だけど、それが真実さ。

天空で、それを消費するだけのアンタらには、知る必要もない事だけどね」


夢魔の女は、そう言って、艶めかしい目で、俺を見るんだ。

「この身体が欲しいかい?それが欲望っていう“大罪”なんだよ」

俺は欲しい物は、それまですべて、手に入れて来た。
そう想っていた。
しかし、それは、間違いだった。
俺は、主に与えられてただけで、何にひとつ自分で手に入れたものなどなかったんだ。
俺は、それが、欲しくて、欲しくて、堪らなくなった。

でも、夢魔はそれを俺に与えてくれなかった。

その代わり「“契約”しろ」って言うんだ。

「アンタのその真っ白なキレイな十二枚の羽を、この漆黒の翼と交換しないかい?」

「そんな事できるのか?」

「ああ、それは、アンタが望めば、“簡単”な事だよ。
アンタが、そう望めば、物事はそうなるように徐々に動き出す。
気付けば、アンタはこの漆黒の翼も手に入れているだろうよ」

「本当か?」

「ああ、本当だよ。
でも、それには、真実を見る目が必要なんだよ。
アンタのその透き通った綺麗な目を、しっかり開けて、下界の様子を見ることだね。
そうすれば、すべて、誤解だったとアンタにも、理解出来るだろうよ。

じゃあね。

愛おしき、王子よ
我らが許されざる者どもの王子よ

会い見えようぞ
我らが眷族…

渇望の福王よ」


そう言って消えた・・・。



そして、俺は突如、天空の神に叛旗を翻す。

理由は自分でもよく分かってないんだ。
しかし、俺の本性が、そこで、表れたと言ってもよかったね。
なにせ、それまでになかったくらい、楽しくて、苦しくて、哀しくて、可笑しくて、堪らなかった。
これこそ、本当の俺だ!と想ったよ。


理由は後付けで、色々噂された。
ルシファーは、“魔”と契約を交わして狂っただとか、
自意識過剰になりすぎて、発狂しただとか、
周りの連中は、噂したけど、中には、俺に同調するヤツらもいたんだ。

他の天使たちも、きっと俺と同じモノを燻っていたのかも知れない。
ひょっとすると。俺なんかよりも崇高な理由があったかも知れない。

初めて告白すると、俺は、自分の欲望に従っただけなのさ。

しかし、周りが勝手に、俺に反逆の理由を上手に取り付けてくれた。

神が、人間や異教の神々たちにあまりに甘すぎるのが気に入らなかったからとか、
己の力を過信して自分が神に成り代わろうと考えたからとか、
そんな、最もらいしい理由をつけてくれた。

でも、きっと、そんなんじゃないんだ。
俺は、神に、嫉妬したのさ。
唯一、自分の意志のままに、すべてを司るプライドを持つ父たる神に。
俺も、そうなりたかったんだ。
地位とか、じゃなく、それは、快楽だった。
俺にとっては。

いずれにしろ、俺は天界の3分の1に及ぶ勢力を率い、神に戦いを挑んだ。

それに対し、天空は俺の双子の弟ミカエルを総司令官に任命して俺に攻撃を仕掛けてきた。
ああ、弟さ、俺にそっくりなんだ。
いいエリートになったもんだ。
ずっと、俺の影で、日の当らないヤツだったから、意気揚々として攻撃してきやがった。
俺も、もう、楽しくて、楽しくて、涙が出たよ。
そう、哀しくて、哀しくて、笑いが止まらなかった。
こんな想いをして、人間どもは、生きてると思うと、羨ましくて仕方なかった。

その時、きっと、俺の頭の中には、もう構想があったんだと思う。
この闘いが終わったら、俺は下界へ逝こう、って。

双方多くの天使が滅せられる大激戦の末、天空側は辛くも勝利を収め、
俺の一派はことごとく天界を追放された。
大粛清だ。
神は気分がよかったかもな。
邪魔者は、みんな、居なくなったんだ。

俺自身も稲妻のように投げ落とされたので、その身体は地中に深くめり込みんだ。
「まだまだ!」って負けず嫌いの俺は、立ち上がろうとしたけど、
地下は「氷結地獄(コキュートス)」と呼ばれる酷寒の地で、尻が凍り付いちゃって、
立ち上がれなかった。

仕方なく俺はその場所に本拠を作り上げ、
仲間の堕天使、いやその時はすでに悪魔たちだな、ヤツらを呼び、この帝国を築き上げたんだ。

それが人間どもには地獄って呼ばれた。

俺が投げ落とされた場所は、たしかエルサレムの正反対側にある今では南半球の海の中だ。
その時はまだ、その場所は陸地だったんだけど、上空からぐんぐん迫り来る堕天使の姿を見て、
「ぶつかってはかなわん」と陸地の方が慌てて北方に避難したんだ、
だから、今でも陸地は北半球に集中しているだよ。



振り注ぐ堕天使の群れを見て人間どもは言った

「誰よりも高い実力を持ちながら、それを過信したために太陽(神)に敗北した哀れな存在」だって。

俺達は、その時、人間どもの目には、流れ星の見えたんだ。




そう、俺は、シューティング・スタア。


我が名はルシファー…主を告発する者。
地獄にて彷徨える魂を、誠 無に還す者。

我 暗黒の者 Lucifer




此処は、絶界だった。









絶界
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)


無常だ 無常だ 無常だ 絶界
蠢(うごめ)く 渦巻く 荒れ狂う 絶界

沈みゆく太陽 空に煌く星
波の音と 俺とおまえ Baby ,I Love You.
いいか忘れるなよ いいさ忘れちまえ
この世は全部 おまえの夢 Baby ,I Love You.

無常だ 無常だ 無常だ 絶界
退くか 戦闘か 生き抜け 絶界

流れる血は赤く ひどく紅く紅く
あなたが好い あなたじゃ解らん I Love You.
流るる涙何故、もろく果敢無い夢
あなたが好い あなたが好い Baby ,I Love You.

無常だ 無常だ 無常だ 絶界
蠢(うごめ)く 渦巻く 荒れ狂う 絶界

沈みゆく太陽 空に煌く星
波の音と 俺とおまえ Baby ,I Love You.
いいか忘れるなよ いいさ忘れちまえ
この世は全部 おまえの夢 Baby ,I Love You. 

無常だ 無常だ 無常だ 絶界
無常だ 無常だ 
無常だ 
絶界

$【ROMANCE】