2007年9月19日にBMG JAPANからリリースされた
BUCK-TICKのオリジナルアルバム『天使のリボルバー』。
初回盤には「RENDEZVOUS~ランデヴー~」、「Alice in Wonder Underground」の
ヴィデオ・クリップを収録したDVD付特別ジャケット仕様で発売された。

同アルバムには、それまでのBUCK-TICKにはなかった
“ストレートなロックンロール”で埋め尽くされている。

それは、聴けば聴くほどに、味に出てくる音源であったが、
本領を発揮したのは、そのライヴ・アクトでの演奏パフォーマンスであった。

言ってしまえば、この音源だけの状態では、不完全な状態であったと言える。
そうして、補完するように、ライヴツアーではBUCK-TICKの天使のロックンロールが鳴り響く。
アルバム発売のその週末9月22日から、BUCK-TICKは、
20周年記念の余韻すら、味わう間もなく、
ライヴツアー【TOUR2007天使のリボルバー】を開始する。

そして、ライヴバンド“BUCK-TICK”としてのポテンシャルを極限まで発揮することになる。
この年の後半だけで、31本に及ぶ通常公演と、スペシャルな内容を盛り込んだ三都開催の追加公演。

『天使のリボルバー』に収録された珠玉のロックナンバーが、
所狭しと暴れ回り、全国に、現役:ロック・バンド“BUCK-TICK”の存在を知らしめた。

20年という時の流れのなかで、ライヴにも、並々ならぬ心血を注いできた彼らの、
それは、ひとつの“ライヴツアー”に過ぎなかったかも知れないが、
それを、観た者は、口々にこう語った。

「ヤツらは、歳を取らないのか!?」

たしかに、ベテランならではの、安定した演奏技術と演出を兼ね備えたライヴの数々ではあったが、
まるでバンドを始めた頃のような、
初期衝動=パッションが満ち満ちた素晴らしいライヴ・ショウを展開し始めた。



$【ROMANCE】



すでに、2007年の前半で披露しされていた
「RENDEZVOUS~ランデヴー~」「Alice in Wonder Underground」の楽曲としてのポテンシャルも、
「スパイダー」「モンタージュ」によるストレートなロック・スピリッツも、
そして、セルフカバーされた「TIGHT ROPE」「MY EYES & YOUR EYES」のキラメキも、
さらに、ライヴで研ぎ澄まされるように覚醒していった。


巨大なミュージカル・ショウとして高い評価を得たライヴツアー【13th FLOOR WITH MOONSHINE】とは、
対極に位置するライヴ・ショウと言っていい内容の【TOUR2007天使のリボルバー】は、
観終わった後、自宅に帰り、押し入れの奥にしまったままにしてあるエレキギターを、
再び、取り出して、アンプに繋ぎ、音を出してみたい衝動に駆られるような、そんな、ライヴ・ツアーであった。



ツアー前半の9月22日のさいたま市文化センター公演 から
10月28日のサンポートホール高松・大ホール公演までは、以下のセットリストにて本編は進められた。

01.RENDEZVOUS~ランデヴー~
02.Mr.Darkness & Mrs.Moonlight
03.La vie en Rose~ラヴィアン・ローズ~
04.モンタージュ
05.リリィ
06.CREAM SODA
07.MY FUNNY VALENTINE

08.tight rope
09.Snow white

10.見えない物を見ようとする誤解 全て誤解だ
11.スパイダー

12.絶界
13.Alice in Wonder Underground
14.BEAST
15.REVOLVER

16.RAIN


ツアー後半に入り、11月8日の大宮ソニックシティから
12月8日の広島ALSOKホール公演からは若干セットを変更しツアーは続く。




01.Mr.Darkness & Mrs.Moonlight
02.La vie en Rose~ラヴィアン・ローズ~
03.モンタージュ
04.リリィ
05.CREAM SODA
06.MY FUNNY VALENTINE

07.tight rope
08.Snow white

09.見えない物を見ようとする誤解 全て誤解だ
10.スパイダー

11.絶界
12.RENDEZVOUS~ランデヴー~
13.Alice in Wonder Underground
14.BEAST
15.REVOLVER
16.RAIN

このセットリストは、名古屋、大阪、東京の追加公演でも採用され、
天使のロックンロールが、日本全国に展開されたのだ。

アンコールでエントリーした楽曲も“ロック”というカテゴリーからチョイスされた感が高く、
アンコール1では、お決まりとなった今井寿の
「櫻井さんは、一曲お休み」とか「アゲて行きましょう」のMCと同時に、
「Sid Vicious ON TH BEACH」に続いて、
「MACHINE」「悪の華」「極東より愛を込めて」「唄」などがエントリーし、
後半に入って
「ICONOCLASM」「Baby, I want you.」「スピード」などの普遍的ライヴ・ナンバーが、
顔を出し始める。


アンコール2では、セルフカバーで話題となったニューアレンジの「MY EYES & YOUR EYES」が披露され、
名曲の域の到達した「ROMANCE」を初めとして、
「密室」「夢魔-The Nightmare」
また初期なナンバーから「PHYSICAL NEUROSE」「SILENT NIGHT」等がエントリーし演奏された。

「ROMANCE」「密室」では、【BUCK-TICK FEST 2007 ON PARADE】で魅せた
“真知子巻き”姿でパフォーマンスする櫻井敦司の姿があった。


ツアー中盤では、櫻井敦司が、足を痛めるなどのトラブルも有りながら、
明らかに、いつもより、MCの口数も増え、饒舌にファンとの交流を楽しみながらロックンロールする。
気分的に変化があったと櫻井自身も認めている通り、
前回のツアー【13th FLOOR WITH MOONSHINE】では、完璧に役者としての櫻井敦司を堪能させたが、
今回の【TOUR2007天使のリボルバー】では、彼の言葉通り、
「生々しい」ロック・ヴォーカリスト:櫻井敦司が炸裂していて、
どの会場も、彼の煽りに、熱狂を引き出されるようにシェイクしていた。
挑発する櫻井敦司の姿は、初期のBUCK-TICKを思わせるようなものでもあったし、
同時に、熟練したその台詞(セリフ)は、まるで、哲学者のようでもあった。
それは、漆黒の天使が、舞い降りてロックする瞬間と言えた。



ロックマン・スタイルを貫く今井寿は、アルバムでは抑えて挿入されなかったノイズ・アートを、
『天使のリボルバー』収録楽曲にも、挿入して演奏する姿も見られた。
アノ楽曲では、テルミンを足で演奏したり、今井キックが高く高く蹴り上げられたり、
とにかく、ツアーを通じてハイテンションで、暴れ回った。
長く伸びた髪を振り乱しながら演奏する彼の姿は、正しく堕天使ルシファーだ。
クラッシックなフレーズも駆使して紡ぎだされる彼の指先からの旋律は、
まるで生き物のように、蠢いていた。



髭を蓄えマッチョな雰囲気になった星野英彦も、
新アイテム、フェルナンデスのJAZZMASTER(土屋昌巳の愛用機はフェンダー)を多用し、
ロック・ギタリストに徹していたように感じる。
彼は、ヴィジュアル系ギタリストというよりも、
こちらロックマン・スタイルのブルース・ギタリストみたいなほうがしっくりくる。
ギター・ソロ・フレーズの多い今回のナンバーでは、
今井寿と並んで、互いギター対決とも言えるアクションも披露している。
非常にスリリングなライヴ・パフォーマンスを見せ付けてくれた。


ヤガミトール&樋口豊のリズム隊も、
誤魔化しの効かないシンプルなバンド・アンサンブルのなかで、
本当に素晴らしいプレイを魅せつけてくれた。
こういったストレート楽曲を演奏することで、
彼ら兄弟の鉄壁のリズム・グルーヴが本領を発揮したと言えよう。
いつも、より、アクションは少な目であったが、
自分のポジションで、じっくりと楽器と会話をしながら、
ベテランならでは、安定感と、まるで、新人バンドのようなダイナミックさを、
バンドの底辺から、今回も支えてくれた。
彼らが回転させる天使のローリングこそが、今回のライヴツアーの醍醐味であったと言えよう。
特に、ハードロック・テイストのダイナミズムは、
アニイ・トールのハートの鼓動だ。




ライヴ会場で、彼らの楽器を通じて、繰り出されるサウンドのすべてが、
【ON PARADE】から引き続く、“祝福”の鐘を打ち鳴らすような、
幸福の思惟を感じるものばかりであり、
今井寿によると、

「“リボルバー”という言葉を使いたかったダケだけど、
あまりにも恐れ多い人達のアルバムと同じになってしまうので、
誰でも使うような“天使”という言葉を付けただけ」

という『天使のリボルバー』【天使のリボルバー】というタイトルにも、
示唆的に体現されていったような風情を感じた。

言葉は、大切なのだ。
その人の言動が、人格に反映する。




そして2007年も年末12月に入ると、この年は異例的に、
年末ライヴ【THE DAY IN QUESTION】ではなく、
ライヴ【TOUR2007天使のリボルバー】追加公演として、パフォーマンスされることになる。

2001年以降、【THE DAY IN QUESTION】が行われないのは、初めてのことであるが、
今や生きる伝説と化した12月29日のい日本武道館公演も、
この【天使のリボルバー】のタイトルを冠したスペシャル・ライヴとして敢行されることになる。

それだけのライヴの自信をリアルタイムの『天使のリボルバー』に込めた
メジャーデビュー20周年目のBUCK-TICKの姿は、
翌年2008年5月7日にDVD映像作品『TOUR2007天使のリボルバー』として収録され、
リリースされることになる。


このライヴツアーで登場したSEが、この『天使のリボルバー』を集約した存在「ANGELS」である。

実際、このDVD作品が発売されるまで、オーディエンスは、
このタイトルで、このSEを聴いていた訳ではないが、こう記されたDVDのメニューを見て、
大きくうなづいたに違いない。

「や、やはり、我々は、アノ時、たしかに“天使”の光臨を目撃していたのだ!」

と。


このSEのサウンド自体は、例によって、今井寿と、
その相棒マニピュレーター:横山和俊によるものであるが、
横浜みなとみらい新港埠頭特設野外ステージでの【BUCK-TICK FEST 2007 ON PARADE】
で、テクノゴッド:KEN ISHIIが演奏した「THEME OF BT」を強く意識して作られたような出来だ。

テクノの太陽を再び昇らせたいと語るKEN ISHIIの魂と、
今井寿/横山和俊の二人の「ANGELS」が、まるで、深い夜を越えて光臨し、
光の世界を再興させるために、動き出すような、そんな空気観を感じる。

この2007年の12月29日の日本武道館公演【TOUR2007天使のリボルバー】も、
この期待感が充満するような光へと向かい、
三角と四角で印象的に張り巡らされた緞帳に、ツアータイトルとバンド名が浮かび上がると、
この時を待ち受けた多くのオーディエンスから怒号のような歓声が沸き起こり、
興奮と光の満ち満ちたロックンロール・ショウへと突入していくことになる。

ただし、登場するメンバーは、やはり、悪魔のような風貌をしている。
しかし、外見に騙されてはいけない。
やがて、彼らはロックの神々しい光を放ち始め、天使のような輝きを認めざる得ない状況になる。

人間とは、まさしく生きているうちは、不完全な存在であるが、
“死”を通過し、天に召されることで、完全な存在になるというが、
もし、“死”というものが、天使になるため試練であるならば、
ここに、天使が光臨したのは、紛れも無い現実である。

そして、ロックは生き続ける。



断言しておこう。


この日の日本武道館ライヴを以って、
BUCK-TICKの14枚目のオリジナルアルバム『天使のリボルバー』は、完成を見る。



それは、ひとつのロック・バンドの“完成”でもあったのだ。






$【ROMANCE】


$【ROMANCE】