「アリ~~ス!!!

 イン・ワンダー・アンダーグランド!
(迷子になりに出掛けよう!)」



『BUCK-TICK FEST 2007 ON PARADE』
横浜みなとみらい 新港埠頭特設野外ステージ
星野英彦は人指し指を立て、オーディエンスを盛り上げていた「Baby, I want you.」。
4打ちのBUCK-TICK定番のビート・ナンバーで幕を開け、
まさしく、この9月8日の為にあるようなアニヴァーサリー・シングル「RENDEZVOUS~ランデヴー~」に、
続く最新シングル「Alice in Wonder Underground」では、客席から手拍子が巻き起こる。
櫻井敦司は、いつものようにミネラル・ウォーターをぶちまける。
観客にも、そして自分にも。これで一緒。
いつものように、びしょ濡れの櫻井敦司の手拍子で水が飛び散っている。
トレードマークの赤マイマイに持ち替えた今井寿も手拍子する。
すこし変則で、難しい手拍子だ。
でも、間違えても、全然OK!
なにが正しいか、なんて、言える人はいないのだから。
参加することが、大切だ、って、なんかマラソンの標語みたい。

恐らく、この「Alice in Wonder Underground」をこの場所で、
ライヴ初体験した人間がほとんどであろう。

まるで、夢幻の童話の世界へと“GOTHIC”なリズムが、我々を誘う。
マーチング・ソングとも取れるような躍動感が、会場に響き渡る。

もし「RENDEZVOUS~ランデヴー~」が最愛の人への“遺言(ゆいごん)”であったなら、
「Alice in Wonder Underground」は、その“死”の先にある新世界なのかも知れない。
その新世界へ赴くテーマソングが、こんな楽曲であったら…なんて素敵だろうか?
人は、それを“黄泉”だとか、“天獄”だとか、“地国”だとかいうが、
それを、証明出来た者はいない。

そんな新世界は、存在しない、という“空”“無常”の思想もあるが、
どうして、死んだ人間が、すべて、同じ所へ逝くとわかるものか。
すべての人が、別々の“Wonder Underground”の向かうのかも知れないし、
ある人は、消えてなくなり、
ある人は、夜空の星となり、
ある人は、“黄泉”へと向かうのかもしれない。

それは、生きているうちは、誰にもわからないのだ。

わからないものに、不安を感じ、恐怖することは、意味がない。
今、目の前にあるものを享受していくしか、あるまい。
わたしが、快楽主義者かって?
それすら、たしかな確証はないのだから、
笑いたければ、笑えばいいし、泣きたければ、泣けばいい。

わたしは死んだとき葬式で誰が泣いてくれるだろうと考えることがあると彼女は言った。
そんなことに意味はないとわたしは思った。
自分の葬式を見ることはできないからだ。
だが、自分の葬式を眺める方法がひとつだけあるのだと彼女は言った。



わたしは庭に佇んでいる。
この景色が夢なのか、そして夢ならいつかは覚めて現実に戻れるのか、
あるいは見たこともないこの庭がわたしの現実なのか。はっきりとしない。

わたしは背の高い植物が群生する回廊を歩いている。
わたしの背後には誰かいるような気がするが、その人物は決してこちらに話しかけようとしない。

広大な庭だ。

花壇を巡らした遊歩道があり、その奥には鬱蒼とした森が広がっている。
左側には池があって、ボートを係留するための桟橋もある。
池の中央には円錐形の東屋が建てられている。
視界の端に白鳥に似た影が見えるが、卵を暖めているのか、
またはそれが精巧に作られた彫刻なのか、決して動こうとしない。

ここへは、ウサギを追いかけてやって来たのだ。
わたしはそう思い込んでる?
そう、これが、夢幻か現実か、わたしにはわからないのだ。

やあ、またわたしの悪口を書いている。
エピキュリアンのにせ貴族だってさ。
こいつは、当っていない。
神におびえるエピキュリアン、とでも言ったらよいのに。
ごらん、ここにわたしのことを、人非人なんて書いていますよ。違うよねえ。

行為に結果として付随するはずの快楽そのものを目的として、
得ようと努力すればするほどかえって快楽を得るのは難しくなる、という逆説がある。
例えば、スポーツで最も快い瞬間は脇目もふらずそれに打ち込んでいる時であるが、
快楽を気にしすぎていてはスポーツに熱中できず、
従って快楽を目指していない時のほうがかえって多量の快楽を得ることが出来る、というもの。
それが、快楽のパラドックスだ。


そして、快楽とは人それぞれに、違ったカタチをしている可能性がある。
ある人には、とんでもない“苦痛”や“苦悩”が、“快楽”を呼び起こす人もいる。
そうして、そういった相反するモノが、存在するお陰で、“快楽”も存在出来ている可能性は高い。

永遠に最高度の快楽を与えられ続ける機械が発明されたなら、
快楽主義者は死ぬまで快楽機械を使い続けるのか、という批判。
哲学者には悩ましい批判である。

G.E.ムーアは、善を自然物によって定義する態度を自然主義的誤謬と呼び批判した。
快楽主義は「善とは快である」とする倫理学説であるので自然主義的誤謬にあたる。

高名なるエピクロスは、
現実の煩わしさから解放された状態を「快」として、人生をその追求のみに費やすことを主張した。
後世、エピキュリアン=快楽主義者という意味に転化してしまうが、
エピクロス自身は肉体的な快楽とは異なる精神的快楽を重視しており、
肉体的快楽をむしろ「苦」と考えた。

自然で必要な欲望のみが満たされる生活を是とする思想であったが、
しばしば欲望充足のみを追求するような放埒な生活を肯定する思想だと誤解されるようになった。
しかしこうした生活については、エピクロス自身によって「メノイケウス宛の手紙」の中で、
放埒あるいは性的放縦な享楽的生活では快がもたらされないとして否定的な評価が与えられている。

しかし、どんなに思想を展開したところで、
本人の「密室」にのみ、本人だけの「快楽」が、あるのかも知れないので、
これを理論付けようとすること自体が、無謀な挑戦なのかも知れない。

一人の人間の中に、正反対の要素、すなわち、「エロス」と「タナトス」というものが、
共存しているくらいなのだから。



櫻井敦司は髪を振り乱しながら歌い、大観衆は手拍子に酔いしれている。
今、この時だけが、自分に許された快楽であるならば、
今、この時の価値は、なにものにも代え難い価値である。

「迷子になりに出掛けよう」

という誘いに乗って、一歩踏み出せた自分が存在している。
それ以上でも、それ以下でもない。

樋口豊の身体が揺れる。
この快楽主義の“GOTHIC”なリズムに乗りながら、
これならば、わたしでも、新世界が見れるような、そんな気がした。
横浜みなとみらい 新港埠頭特設野外ステージに、更にスモッグがたかれて、
幻想的な雰囲気が、増している。

しかし、BUCK-TICKの存在感とは、不思議なモノである。
これだけ、様々な世界観の参加アーティストのパフォーマンスを魅せ付けられて、
エンドルフィンも、α波も、抽出し尽くされたかと想いきや、
そのドレとも異質な圧倒的な存在感を持って最新楽曲を唄っている。


「ベットの中 流星 君の孤独を抜け出そうよ 今夜」


アリスは、底のない穴へと誘われていった。
どうして、なんの恐怖感にも、苛まれず、この穴の中へと進むことが出来たのだろう?
きっと、愉快な先導者が、居たんだろう、ね。

彼はウサギの格好をして、少女の耳元で、囁いた。

「本当の新世界をみせてあげようか?」

この巨大な庭の回廊を歩いていこう。
これこそが、わたしの人生なのかも知れないから。
不思議とどんなに歩いても、息が切れることは、ない。
そのうち、歩くこと自体が、快楽と変わっていく。


「アンドロメダ タンバリンはピエロ UP SIDE DOWN」


土屋昌巳が「猫は話せる」って言っていたけど、
ここじゃ、ウサギばかりか、あらゆる動物が、しゃべりだすじゃないか?

櫻井敦司が、名指しで指さす、今井寿がソロで歌う間奏部。
堕天使:今井は、「こっちを見ろ!」とばかりに手でコイコイする。
オーディエンスも、「ああ、本当に唄うのか!」と盛り上がりをみせる。
ルシファーが誘う“Wonder Underground”は、どんな“トロピカルSEXY天国”か!?
想像するだけで、もう、快楽の波。


「さあさあ寄っておいで覗いてみな
 今宵皆様お贈りするはbaby

 ありとあらゆる愛ヌラリ
 お楽しみあれ」



そして、 新港埠頭特設野外ステージ横にある観覧船。
二階の観覧席を見ると、それまでに出演した多くのアーティストが、
まだ残って彼らのパフォーマンスを楽しげに見つめているじゃないか!


他のイベントでは、主催者が寄せ集めたアーティストは出番が終わったらすぐ帰る、
というのが、この業界の常識であるハズだ。
ここでは、そんな常識もまかり通らぬ“Wonder Underground”だ。
横浜みなとみらいの夜景が、うれしそうに、祝福している。

なにより、ステージ上の“黒い悪魔”が、“天使”ように輝いている。
天使のように完全、天獄より禁断。
宇宙、世界中、体中・・・。

これでは、参加アーティストも、相当重要な用事でもない限り、動けなくなってしまう。

ジダンの煙、殻のボトル、
ひび割れた声、なる様になれ。
ふたりなら飛べるさ。

そんな“誘惑”に駈られて、彼らを観ずにはいられなくなる。
そんな躍動感を持つメランコリックなマーチング・ゴシック。
高く、そう高く沈んでいく・・・。
わたしが、ナニを言っているか、わからないって?
そうさ、わたしは夢、わたしは欲情する奴隷みたい。
わたしは夜、わたしは悦びに涙流す。
わたしは月、わたしはドロの様に濡れたままで。
わたしは蜜、わたしは垂れ流す独りきりで。
そうさ、わたしに、意味なんてないのさ。一緒に踊ろう。
大丈夫。なぜならば、キメテい・る・の・です、から、、ね。

そして、20年という年月にも、意味なんてないのさ。
と、でも言うように、キャッチーなBTロックが、横浜の夜に充満している。
いや、意味がないからこそ、ここで、やるんだ。
意味がないことこそ、懸命にやる。
そのパラドックスの中にこそ、真実の“快楽”あるんじゃないかな、って。
そんなこと、言ってるように聞こえるアリス。



そして、想うんだ。



君の“Wonder Underground”と、
わたしの“Wonder Underground”が、同じ、“綺麗な場所”にあれば、いいなって。



「OH!YEAH!ALICE IN WONDER UNDERGROUND
 DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN!」




わたしのなかの“DEVIL”も、
君のなかの“ANGEL”も、同じ、“Wonder Underground”にあれば、いいなって。






櫻井敦司は、歌い終えると、彼女にも感謝を述べる。




「ありがとう・・・・アリ~~ス」

って・・・君の耳元で囁いた。






【BUCK-TICK SETLIST】

SE (with KEN ISHII)
1.Baby,I want you(with KEN ISHII)
2.RENDEVOUS~ランデヴー~
3.Alice in Wonder Underground
4.ROMANCE
5.DIABOLO
6.夢魔-The Nightmare
~ENCORE~
1. スピード(with MCU)
2. JUPITER





Alice in Wonder Underground
 (作詞・作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)


愛とか世界 儚い 羽をたたんだ皆殺しの天使
お願いだ 天使のラッパ鳴り響く

残酷だね ダーリン 愛と血肉をむさぼるゾンビーナ
泣いたりしない 愛はネコソギだぜ NIGHTMARE

いくよ もういいかい まだだよ
君の耳元で息を吐く

OH!YEAH!ALICE IN WONDER UNDERGROUND
DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN LET'S GO!

ベットの中 流星 君の孤独を抜け出そうよ 今夜
アンドロメダ タンバリンはピエロ UP SIDE DOWN
真っ逆さま 跳んで 迷子になりに出掛けようパレード
高く高く 息を止め潜って FALLING DOWN

高く そう高く沈んでいく
君の耳元で囁いた

OH!YEAH!ALICE IN WONDER UNDERGROUND
DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN LET'S GO!

OH!YEAH!ALICE IN WONDER UNDERGROUND
DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN LET'S GO!

ENTER DIABOLO

いくよ もういいかい まだだよ
君の耳元で息を吐く
高く そう高く沈んでいく
君の耳元で囁いた

OH!YEAH!ALICE IN WONDER UNDERGROUND
DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN

OH!YEAH!ALICE IN WONDER UNDERGROUND
DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN

OH!YEAH!ALICE IN WONDER UNDERGROUND
DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN

OH!YEAH!ALICE IN WONDER UNDERGROUND
DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN LET'S GO!

DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN LET'S GO!
EPICUREAN LET'S GO!
EPICUREAN LET'S GO!
DEVIL,ANGEL AND EPICUREAN LET'S GO!






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