「I LOVE YOU! ALL!!!」





巨大なスクリーン・モニターに、お馴染みとなった“髑髏”が映し出されると、
爆発音とともに砕け散り、そこには・・・

【 BUCK-TICK 】

新みなとみらいの大観覧車の時計は【8:08】を指している。
待っていた!あなたたちの降臨を!

まだ、ゴッドハンド:KEN ISHIIは、この特設ステージに残っている。

ナニが起こるんだ!?

なんとそのままBUCK-TICKのライヴがスタート!!
DJブースではKEN ISHIIがSEに合わせプレイを続けている!

ナニが起こってるの?

鼓動が高まる。





ステージ袖では、星野英彦と今井寿が現れた。

いつも、冷静な表情のギタリスト:ヒデ。
少し、ストレッチする今井寿。

リズム隊の兄弟よりかは、明らかに、その本音を表情に出さない二人。
昼間のライヴ・アクトに、へべれけで乱入していった堕天使も、少しいつものシリアス感を取り戻してる。

ヒデは、ステージを見守りながら、少し、いつもより心地よい緊張に包まれている。
この男でも、緊張することがあるのだろうか?
顔には、出さないが、きっと彼も“感謝”の気持ちでいっぱいだ。
今日は、彼が個人的に仲の良いアーティストも複数、演奏してくれている。



一方、ステージでは、テクノ・シーンの第一人者:KEN ISHIIが、
あのテーマを奏でている。

「THEME OF B T 」

これは、彼らのメジャーデビューヴィデオ『バクチク現象』に収録されるテーマ。
正直な話、数えきれない彼らのライヴツアーで、繰り返しオープニングSEとして改編が続き、
原曲の原型を止めては、いない帰来もあるが、

この日、この夜、この「THEME OF B T」は、
世界的テクノ・フロンティアKEN ISHIIの手によって、演奏されている!
独自のアレンジによる、一夜限りのスペシャルバージョンに
新みなとみらいの特設会場が揺れる。


そして、待ちきれないオーディエンスと同じ想いの兄弟が、
ステージに姿を現した!


客席からは、津波が起きたかと思うくらいの大声援で迎えられる
樋口“U-TA”豊&ヤガミ“アニイ”トール!
手を振りながら、この大声援に応える樋口“U-TA”豊。
一目散にドラム・キットに飛びつきスタンバイOKのヤガミ“アニイ”トール。


その後ろからは、二人のギタリストが登場する。
星野“ヒデ”英彦&今井寿!
星野“ヒデ”英彦が、颯爽と手ぶらで現れ、手を振っている。
今井寿は、すでに、シルバーPODを肩から下げて、マイク・スタンドの前で、ポーズを決めている。

スタッフからグリーンのグレッチを受け取る星野“ヒデ”英彦も定ポジションに付くと、
今井寿は、まるで、恐竜のうめき声のような轟音を、早くも轟かせ、
大観衆の大声援に応え、KEN ISHIIの「THEME OF B T」に割って入る。

樋口“U-TA”豊とヤガミ“アニイ”トールは、
コントラストを表現するようなドレス・スーツを纏っている。

樋口“U-TA”豊が、黒いロング・ジャケットに、白い襟の高いシャツ、白いパンツ。
漆黒のゼマティス・ベースが、照明を跳ね返し美麗に光る。

ヤガミ“アニイ”トールは、オレンジ色のド派手なラディックに、
白を基調としたスーツ上下。襟縁は、黒いシャープなラインが引かれている。


二人のギタリストも、シンプルとド派手という意味では、コントラスト。

星野英彦は、少し伸びた前髪を耳にかけ、
「Alice in Wonder Underground」のヴィデオ・クリップ時ようなモード光沢のシルバー・スーツ。
インナーはブラックのTシャツで、ワイルドな佇まい。

今井寿は、二度の登場で、お派手な衣装をすでに披露していたが、
そのどちらとも違う真っ赤に燃えたジャケットに、パープルのフリルシャツ、レッドのブーツ。
土屋昌巳ではないが、“とっておきのよそいき”姿だ。


。。。


・・・あの男は、何処だ!?

。。。。。


彼がいないと、BUCK-TICKは、始まらない。


。。。。。。



櫻井敦司



今井寿の“とっておきのよそいき”姿すら、霞んで見える
ぶっ飛んだ衣裳で、ステージに、彼が登場するのは、その直後で、あった・・・。






∇∇∇∇∇∇





登場した櫻井敦司の出で立ちを見て、
会場にいた大観衆のほぼ全員は、息を呑み込む・・・。


「うわぁぁぁぁ・・・ナニが起こったんだ!」

「あっちゃん!?!?!?」


「常に、刺激的でありたい」そうメジャー・デビューした時から言い続けて来た櫻井。
その精神に20年経った今も変わりはない。

それを、態度で表したような“衣裳”であった。

“衣裳”?

そんな、表現では、生ぬるい。

デビュー前から、“重力”という自然の法則に逆らったヘアー・スタイルで登場したBUCK-TICK。
そして、その形態を常に変化させながら、
前人未到のロックの荒野を突き進んで来たBUCK-TICK。

そのバンドの象徴ともいえるフロントマンは、
常に、前日を超える努力を惜しまない。

精神は一緒だ。

かつて、バンドの精神的支柱ヤガミ“アニイ”トールは、

「普段着で、ステージに現れるアーティストの気持ちがわからない」

と語っていたが、大一番で、その日々、増殖し続ける観る側の“期待”に応えていくのは、
想像を絶する“努力”と“重圧(プレッシャー)”。
それを、跳ね除けて、今を生きる。

「どうだ!観てくれ!オレこそが、道化師Aだ!!」

そんな道化師:ピエロ役に、苦悩した日々もあった。

「歌詞の内容なんて、誰も聴いてはくれないじゃないか!」

でも、それは、自分の問題で、あったと気付くしかなかった。

「聴かせる為に、魅せる為に、酔わせる為に、この魂を“悪魔”にも売ろう!」

そう覚悟を決めた瞬間に、すべてが変わり、周囲の彼へ注がれる視線も変わっていった。
他の人を変えることは出来ない。変えられるとしたら・・・自分自身のみだ。

「自分の奥底にある“闇”を表現したい」

いつしか、そんな欲望に駆られた彼は、
ひょっとすると“悪魔”との契約にサインしたのかも知れない。

そして、彼は、“魔王”の羽を手に入れた。

相棒の今井寿がプレゼントしてくれた羽だ。

今井寿の正体は、ひょっとすると本当に堕天使サタンなのかも知れない。



見ろ!この櫻井敦司の出で立ちを。


これは、“衣裳”ではない。


“戦闘服”だ!



そして、“闇”を表現するという欲望からか、
彼の衣裳は、“暗闇”を表現する“黒”か、
もしくは、“血”を表現する“赤”が、圧倒的に多かった。


しかし、この日は、“白”。


これは、神聖なる日に因んだモノかも知れないが、
櫻井が、“白”を着る時、“死”を覚悟したような印象を受ける。
所謂、“死装束”だ。
わかりやすい例は、1993年のシングル「die」のヴィデオ・クリップで魅せた、
“死化粧”に“死装束”。


彼は、この大舞台に“死装束”を選んだ。


そして、それは、生きることを“闘い”に例えたかのような騎士のようなスタイル。
“KNIGHT”のようなモノであった。
騎士(KNIGHT)は騎馬する戦士をいう。

西欧における騎士とは、
主に中世において騎馬で戦う戦士に与えられる名誉的称号及びそこから派生した階級を指す。
称号としての騎士を騎士号という。


中世ヨーロッパにおいては、重装騎兵が戦闘の主役であり、
そのためには優れた技量と精神的、肉体的な鍛錬が必要だとされ、
その資格を有するものに騎士という称号を与えるようになった。

騎士になるにはまず、7歳頃から小姓(ペイジ)となり、
主君の元に仕え、使い走りなどの仕事をする一方で、
騎士として必要な初歩的技術を学んだ。
20歳前後で一人前の騎士と認められると、主君から叙任を受け、
金もしくは金メッキの拍車をつけるようになった。

叙任の儀式は基本的には、主君の前に跪いて頭を垂れる騎士の肩を、
主君が長剣の平で叩くというものだが、騎士の戦士としての重要性が薄れると、
かえって叙任の儀式は複雑化して、宗教色や騎士道精神といったものが強調されるようになり、
聖職者が式に絡むことも多くなった。

騎士道においては一般にキリスト教的観念に基づく、
忠誠、公正、勇気、武勇、慈愛、寛容、礼節、奉仕などが徳とされてきた。


騎士への敬称は主にSir(卿)という。

また、自らの力を試したり、ロマンチックな冒険を求めて方々を渡り歩く騎士を遍歴騎士と呼んだ。


白い騎士。

死を覚悟し、戦闘に赴くKNIGHT。


アメリカン・フットボールで使用するようなプロテクターを、
肩に取り付けて鎧とし、豹柄のスカーフを兜に見立てて、
完璧なる戦闘・死闘の準備をして、ここに登場した魔王。

半端な覚悟では、ない。


それは、櫻井敦司の「騎士道」とも言えるもの。


騎士が身分として成立し、次第に宮廷文化の影響を受けて洗練された行動規範を持つようになった。
騎士として、武勲を立てることや、忠節を尽くすことは当然であるが、
弱者を保護すること、信仰を守ること、貴婦人への献身などが中世の「騎士道」徳目とされた。

特に貴婦人への献身は多くの騎士道物語にも取上げられた。
宮廷的愛(courtly love)とは騎士が貴婦人を崇拝し、奉仕を行うことであった。
相手の貴婦人は主君の妻など既婚者の場合もあり、
肉体的な愛ではなく、精神的な結びつきが重要とされた。
かくて騎士側の非姦通的崇拝は騎士道的愛だが、
一方、貴婦人側からの導きを求めつつ崇拝するのが宮廷的至純愛。




騎士が守り倣うべき「騎士の十戒」がある。

1.PROWESS 優れた戦闘能力 (fighting skills)
2.COURAGE 勇気
3.HONESTY 正直さ 高潔さ (no weaseling)
4.LOYALTY 誠実<忠誠心> (true to your leaders and your friends)
5.GENEROSITY 寛大さ (open handedness)
6.FAITH 信念 (commitment to ideals)
7.COURTESY 礼儀正しさ、親切心(dignified and mannerly behavior)
8.FRANCHISE 崇高な行い、統率力 (noble behavior and leadership) 

これらが代表的な美徳とされるが、それ以外にも清貧、気前のよさ 信心、弱者の保護、などがある。




軍事的栄光と勇気は、結果であって、それ自体が問題ではなく、
価値ある目的の為に発揮されてこそ意味のあるものであり、そうでないものは、悪であり蛮勇である。

テンプル騎士団に対して聖ベルナールは、こう記している。

「キリストの兵士が剣を持ち歩くのは、故ないことではありません。
それは邪悪を懲らしめ、正しい者の栄光のためなのです」

また、シャルトル大聖堂に刻まれる騎士の祈りには、こうある。

「この上なく聖なる主、全能の父よ
・・・あなたは邪まな者の悪意を砕き正義を守るために剣を使うのを、我々にお許しになりました
・・・どうか貴方の前にいるこの下僕の心を善に向けさせ、
この剣であろうと他の剣であろうと、
不正に他人を傷つけるためには決して使わせないようになさって下さい。
この下僕に、常に正義と善を守るために剣を抜かせて下さい」








そして「真知子巻き」でその美麗なる顔を隠す櫻井敦司。

「真知子巻き」とは、首から頭にかけてショールを巻くスタイルの一種。
「真知子」はラジオドラマ『君の名は』のヒロイン名に由来する。

「真知子巻き」の「真知子」は、
1952年に放送された菊田一夫原作のラジオドラマ『君の名は』のヒロインの名前。
東京大空襲の夜に数寄屋橋で出会い、再会を約束することから物語が始まるメロドラマで、
放送時間にはお風呂屋さんの女湯がガラガラになると言われたほどの人気番組だった。

翌1953年に松竹で映画化された際は、
主人公のショールの巻き方が「真知子巻き」と呼ばれ、女性の間で流行した。
これは、撮影の合間、岸惠子(主演)があまりの寒さにショールを肩からぐるりと一周させ、
耳や頭をくるんでいたことによる。
この姿はカメラが回っている時にも使われることになり、
「真知子巻き」が誕生したというエピソードがある。

ショールの右側を長めにとって頭に被せ、長いほうを首に巻きつける、といった感じ。
これが「真知子巻き」と呼ばれ、日本中で流行した。


なんという【ROMANCE】か!?



豹柄のショールで、男女性別すら超越した姿で登場した櫻井敦司。


その姿を見て、横浜新みなとみらい特設会場の大観衆は、
茫然と立ち尽くす。

登場した櫻井敦司は登場直後、手拍子を求め、マイクを手にこう叫ぶ。



「I LOVE YOU! ALL!!!」


「すべてに対して、“愛”と“祝福”を!」



そして、けたたましいデジタル音のイントロを聴いて、
オーディエンスも、正気を取り戻す。

今井寿が、早くもテルミンで、いつものノイズ・フレーズを鳴らす。

そして、オープニングナンバーとなった「Baby,I want you.」では、
BUCK-TICK+KEN ISHIIという豪華コラボレーションが実現した。

KEN ISHIIと今井寿のテクノ対決。
ふたりのエフェクティヴなプレイが交差する。
この日は、本当に何から何まで、夢のような出来事の連続だ。


櫻井が叫ぶ!

「Oh!! Babyyyy!!!」

BUCK-TICK正式聖典アルバム『ONE LIFE、ONE DEATH』からのエントリーだ。
当時、この楽曲が、ライヴでの定番ナンバーとして浸透していたが、
いつも、ライヴが最高潮の盛り上がりを魅せる終盤でのセットリストが多かった。

しかし、この日は、本命BUCK-TICKのライヴ・アクトも、
初っ端から、“最高潮”だ!
そんな意気込みを感じた。


「トロピカル SEXY天国 飛び散るステーキソース
 美味いぜ 血も滴る様なBABY 」



初っ端から、向かって左下手花道へ進む「真知子巻き」のKNIGHT:櫻井敦司。
妖艶なアクションから、その素顔は、ストールと髪の毛の全く見えない。


「ハードにディープに縛られ 自由が燃え上がる
 あなたも 疼いてくるだろうBABY 」



今度は珍しく頭からノリノリの星野英彦がツイストする。
向かって右上手花道へとすすみ、グリーン・グレッチを嘶かせる。
セクシーな腰付きだ。


「さあ今 踊れよこの世で お前の腰がSWEET
 可愛い あのむ娘を抱いて踊れ 」



樋口“U-TA”豊も、髪の毛を振り乱しながらリズムを刻む。
出番まで、本当に待ちどおしかった!早く逢いたかったよ!
と、気持ち良さそうに、嬉しそうにプレイしている。


「クールに生くのか デラシネのBoys&Girls. 愛の夜に 」


オレンジ色のドラム・キットに姿勢正しく座り、今宵もワイルドにドライヴする
バンド・マスター、ヤガミ“アニイ”トール。
彼も待ち切れなかった出番となり、スタートから短期決戦とばかりビートを走らせていく。


「さあ踊ろう 泣けてきちゃうくらい喜びで 狂おしいほど震えるさ 」


今井寿は花道で踊りながらシルバーPODを奏でると、
テルミンを絡めたエフェクティブなプレイで楽曲を彩る。
KEN ISHIIのスペイシーなスクラッチと融合して、渾然一体のトロピカルSEXY天国を醸し出す。


櫻井“真知子”敦司が、感謝を込めて叫ぶ!


「KEN ISHII!!! HA~HA!!!」


ゴッドハンド:KEN ISHIIは、サディステックにニヤリと笑うと、
ヘッドホンを外して、DJブースを離れ、ステージを去る。

「後は・・・ドウゾ、お楽しみアレ♪」




櫻井“真知子”敦司が、ISHIに愛を込めて叫ぶ!


「FUCK'N GREAT!!!(最高だぜ!!!)」


同時に、今井寿のシルバーPODが、嘶く。
Lucyの「REDIO GAGA」のイントロ・フレーズだ。
この時期より、「Baby, I want you.」に挿入されるニュー・アレンジだ。
常に、何か、新しい演出を探し求めているロケン・ローラー今井の、
ゴッドハンド:KEN ISHIIへの“感謝のしるし”だろう。


これで、正規のBUCK-TICK5人のみのプレイヤーとなった。
すでに、オーディエンスも一曲目から、“エクスタシー”に達している。
この後に待ち受けるのは、“メランコリア”か?“タナトス”か?
しかし、この日のライヴ・アクトは、いつものように充分な時間はない。





その瞬間、瞬間に、すべてを込めて、
その命を燃やすが如くに・・・


愛し合おうぜ!BABY!!











【BUCK-TICK SETLIST】

SE (with KEN ISHII)
1.Baby,I want you(with KEN ISHII)
2.RENDEVOUS~ランデヴー~
3.Alice in Wonder Underground
4.ROMANCE
5.DIABOLO
6.夢魔-The Nightmare
~ENCORE~
1. スピード(with MCU)
2. JUPITER






Baby, I want you.
 (作詞:櫻井敦司/作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)


トロピカル SEXY天国 飛び散るステーキソース
美味いぜ 血も滴る様なBABY

ざわめく獣の瞳を かすめるピンヒール
逃がした 魚デカイゼBABY

タフに生くのさ デラシネのBoys&Girls. 愛の夜に

ハードにディープに縛られ 自由が燃え上がる
あなたも 疼いてくるだろうBABY

さあ今 踊れよこの世で お前の腰がSWEET
可愛い あのむ娘を抱いて踊れ

クールに生くのか デラシネのBoys&Girls. 愛の夜に

もう少し 側にいてくれるかい後少し 夜が逃げていくその前に
さあ踊ろう 泣けてきちゃうくらい喜びで 狂おしいほど震えるさ

勇気を見せるか デラシネのBoys&Girls.
胸を張るのさ 美しきBoys&Girls. 愛の夜に

さあ踊ろう 泣けてきちゃうくらい喜びで 狂おしいほど震えるさ
さあ踊ろう 濡れてきちゃうくらい喜びで 気が狂うほど震えるさ

$【ROMANCE】


$【ROMANCE】