2007年9月8日、『BUCK-TICK FEST 2007 ON PARADE』
デビュー20周年記念イベントが繰り広げられる
横浜みなとみらい 新港埠頭特設野外ステージにて、
KEN ISHIIは、リズムから緻密に音を重ねていくことでその場で創られたとは思えない程、
質の高いサウンドを構築していく。

モニター・スクリーンにはDJプレイに集中するKEN ISHIIの姿が映し出され、
多くの観客は真剣に彼のプレイに魅入っていた。

KEN ISHIIのスクラッチ・プレイが、横浜の夜を広げ続けると同時に、
会場の照明と美しい夜景によって、贅沢なクラブ空間が創り上げられる。



そして、そのクラブ空間で、踊り明かすスペシャル・ゲストが必要だ。



もう、アーティストは、彼らしか、残っていなかった。

すでに、出番を我慢出来ない!とばかりに、
ステージ袖で、KEN ISAHIIの合い図を待つ兄弟がいる。

落ち着きなく、ステックを宙にシャッフルする兄を、
ステージを見つめ、身体をほぐすような仕草をする弟。

「20周年」

恐らく、共に歩んだこの二人の時間の中では、
「通過点」に過ぎないのだろう。

「今は、とにかく、早くステージに上がって思いっ切り演奏したい」

そんな表情の二人。

それほどまでに、この日、彼らは、あらゆるアーティストの様々な想いの籠った
演奏をステージ袖で、また、観覧船の上で、魅せつけられて来た。

いや、この兄弟だけじゃない。

スタッフも、含めて、BUCK-TICKファミリーは皆、
はち切れそうな“想い”で、この時を待っていたハズだ。

「20周年?
…たしかにそれもある。
しかし、あんなに魅せ付けられて…
我慢出来るハズないじゃないか!

早くアソコに登って、思いっきり音を出したい!」








人間は「エゴイスティック」な生き物だ。

他人の持っているモノを欲しくなる。
隣の芝は青く見える。
なんて、隣にいる人は愛されてるんだろう、と感じる。

しかし、この兄弟は、そんな「エゴ」とは、別の所に、自らの「エゴ」を所有している。
単純な衝動とも言える。
他の人達が、走っているの見て、自分達も、走り出したくなる。

それは、その他の人の走りとは、フォームも、スピードも、気分も別のモノかも知れない。
でも、自分達の走りを、そこで、せずにはいられない性分だ。

或る意味「いやらしい」言い方をすれば、
放置プレイとも言えるかも知れない。
放置プレイとは、主にSMプレイにおいてマゾヒストを長時間放置するプレイだ。

SMではさまざまな方法でマゾヒストに身体的・精神的な苦痛を与えるが、
その中の放置プレイは性行為の最中にパートナーに放置・無視され精神的苦痛を与えることによって、
極上の快楽を得ることが目的のプレイである。


そして、それが、果たされる時間が、訪れる快感。


言い知れぬ「カタルシス」の波が、訪れるのだ。


それを、待つ時間でも、あった。







サディスティックな指先で、軽やかに笑うゴッドハンドKEN ISHIIは、
或る意味それをコントロールする今宵のキーポイント・プレイヤーだ。

焦らされて、その“愛”が、零れ出す瞬間を待ちながら、
そのゴッドハンドから、繰り出すサウンドの麻薬的なウネリで大観衆を酔わせている。

恍惚の表情のオーディエンスも、限界まで、焦らされている…。
それは、あの兄弟と一緒だ。

「もう、我慢出来ない」

確かに、素晴らしい参加アーティストのパフォーマンスであった。

チケット代?

そんなモノは、一曲目の“大花火”清春と櫻井敦司の夢の競演で元が取れた。

彼らの様々なトリビュート楽曲で、参加アーティスト達のめくるめくような世界観で、
満たされる時間もあった。
“午前3時の顔”をした天才ギタリスト:今井寿のプレイの二度ほど拝めたし、
ミリオン・セールスを記録する人気者の姿も堪能した。


だが、しかし!


「やっぱり、早く彼らが見たい!」


そう、何よりも、今日、この日は…。
台風で延期も予想された、この日だけは…。
しっかりと彼らの“目撃者”となる為に、集結したのだ。


参加アーティストのパフォーマンスが、素晴らしかった。

しかし、やっぱり…。



「BUCK-TICKが、好き!」


「そう!彼らを、愛しているのよ!」



自分に、“嘘”は付けない。

やっぱり・・・
人間は、「エゴイスティック」な生き物だ。








そんな相思相愛の熱が頂点に達した時・・・。


その時が来た!








巨大なスクリーン・モニターに、お馴染みとなった“髑髏”が映し出されると、
爆発音とともに砕け散り、そこには・・・


【 BUCK-TICK 】


大観覧車の時計は【8:08】を指している。
待っていた!あなたたちの降臨を!




まだ、テクノ・ゴッドKEN ISHIIは、この特設ステージに残っている。



ナニが起こるんだ!?



なんとそのままBUCK-TICKのライヴがスタート!!
DJブースではKEN ISHIIがSEに合わせプレイを続けている!


ナニが起こってるの?

鼓動が高まる。









ステージ袖では、星野英彦と今井寿が現れた。

いつも、冷静な表情のギタリスト:ヒデ。
少し、ストレッチとする今井寿。

リズム隊の兄弟よりかは、明らかに、その本音を表情に出さない二人。
昼間のライヴ・アクトに、へべれけで乱入していった堕天使も、少しいつものシリアス感を取り戻してる。

ヒデは、ステージを見守りながら、少し、いつもより心地よい緊張に包まれている。
この男でも、緊張することがあるのだろうか?
顔には、出さないが、きっと彼も“感謝”の気持ちでいっぱいだ。
今日は、彼が個人的に仲の良いアーティストも複数、演奏してくれている。



一方、ステージでは、テクノ・シーンの第一人者:KEN ISHIIが、
あのテーマを奏でている。


「THEME OF B T 」


これは、彼らのメジャーデビューヴィデオ『バクチク現象』に収録されるテーマ。
正直な話、数えきれない彼らのライヴツアーで、繰り返しオープニングSEとして改編が続き、
原曲の原型を止めては、いない帰来もあるが、

この日、この夜、この「THEME OF B T」は、
世界的テクノ・フロンティアKEN ISHIIの手によって、演奏されている!


独自のアレンジによる、一夜限りのスペシャルバージョンに
新みなとみらいの特設会場が揺れる。


そして、待ちきれないオーディエンスと同じ想いの兄弟が、
ステージに姿を現した!


客席からは、津波が起きたかと思うくらいの大声援で迎えられる
樋口“U-TA”豊&ヤガミ“アニイ”トール!

手を振りながら、この大声援に応える樋口“U-TA”豊。

一目散にドラム・キットに飛びつきスタンバイOKのヤガミ“アニイ”トール。


その後ろからは、二人のギタリストが登場する。
星野“ヒデ”英彦&今井寿!


星野“ヒデ”英彦が、颯爽と手ぶらで現れ、手を振っている。
今井寿は、すでに、シルバーPODを肩から下げて、マイク・スタンドの前で、ポーズを決めている。

スタッフから美麗なグリーン・グレッチを受け取る星野“ヒデ”英彦も定ポジションに付くと、
今井寿は、まるで、恐竜のうめき声のような轟音を、早くも轟かせ、
大観衆の大声援に応え、KEN ISHIIの「THEME OF B T」に割って入る。


樋口“U-TA”豊とヤガミ“アニイ”トールは、
コントラストを表現するようなドレス・スーツを纏っている。

樋口“U-TA”豊が、黒いロング・ジャケットに、白い襟の高いシャツ、白いパンツ。
漆黒のゼマティス・ベースが、照明を跳ね返し美麗に光る。


ヤガミ“アニイ”トールは、オレンジ色のド派手なラディックに、
白を基調としたスーツ上下。襟縁は、黒いシャープなラインが引かれている。


二人のギタリストも、シンプルとド派手という意味では、コントラスト。


星野英彦は、少し伸びた前髪を耳にかけ、
「Alice in Wonder Underground」のヴィデオ・クリップ時ようなモード光沢のシルバー・スーツ。
インナーはブラックのTシャツで、ワイルドな佇まい。


今井寿は、二度の登場で、お派手な衣装をすでに披露していたが、
そのどちらとも違う真っ赤に燃えたジャケットに、パープルのフリルシャツ、レッドのブーツ。
土屋昌巳ではないが、“とっておきのよそいき”姿だ。





。。。



・・・あの男は、何処だ!?


。。。。。



彼がいないと、BUCK-TICKは、始まらない。


。。。。。。



櫻井敦司


今井寿の“とっておきのよそいき”姿すら、霞んで見える
ぶっ飛んだ衣裳で、ステージに、彼が登場するのは、その直後で、あった・・・。













【BUCK-TICK SETLIST】

SE (with KEN ISHII)
1.Baby,I want you(with KEN ISHII)
2.RENDEVOUS~ランデヴー~
3.Alice in Wonder Underground
4.ROMANCE
5.DIABOLO
6.夢魔-The Nightmare
~ENCORE~
1. スピード(with MCU)
2. JUPITER

$【ROMANCE】