2007年6月6日、24枚目シングル「RENDEZVOUS~ランデヴー~」をリリースしたBUCK-TICKは、
同日より、対バン形式のライヴツアー【PARADE】を開始。
そして、7月15日までの予定だったが、最終日の沖縄公演は台風4号の影響により、
半年後の2008年1月20日に延期となった。

その間には、8月8日、25枚目のシングル「Alice in Wonder Underground」をリリース。
8月17日、すぐに北海道で開催されたロックフェス【RISING SUN ROCK FESTIVAL '07】に初出演を果たし、
9月5日、ビクター時代のオリジナル・アルバム10作品と、ベスト2作品を含む全12タイトルを、
紙ジャケット仕様で再リリースに到る。

記念すべき9月8日には、
デビュー20周年記念イベントとして横浜みなとみらい 新港埠頭特設野外ステージにて
【BUCK-TICK FEST 2007 ON PARADE】を大々的に開催した。
ちなみにこの一大イベントも、
前日に台風9号の直撃を受けたが、
当日は晴天に恵まれ、イベントは無事成功を収めることとなる。

すぐに9月19日、待望のニューアルバム『天使のリボルバー』がリリースされると、
9月22日、ライヴツアー【天使のリボルバー】を開始。
追加公演を含み12月29日の日本武道館最終公演まで、
アニバーサリーな2007年を
まさしくライヴ尽くめの一年で過ごした。

年は明け2008年。

彼らに残されたのは、最後の祭り後の花火。
【PARADE】の延期分の沖縄公演であった。

2008年1月20日、沖縄NAMURA HALL。

BUCK-TICKにとっても箱ツアーの締めには定番となっていたナムラのステージが、
この年の彼らの仕事初めとなり、
その後、すぐに、長めのオフが待っていて、その先の新音源も、
その期間にじっくりと構想が練られる予定となっていた。


公約通りに、沖縄の地に上陸を果たすBUCK-TICKのメンバー。
2008年4月2日にリリースされたDVD映像作品『BUCK-TICK FEST 2007 ON PARADE』の
特別限定版に収録された「RESTROOM」の最後の映像は、
ライヴツアー【TOUR2007 天使のリボルバー】を挟んで実施されたこのライヴハウスで締められる。

この沖縄NAMURA HALLとは、
「ダンスクラブ松下」が「ナムラホール」に名前を変えて営業される多目的ライヴハウスで、
各種イベントから個人パーティーまで一気に引き受けるダンスクラヴでもある。

ここでのBUCK-TICKのライヴ・ギグも彼らの箱ツアーでは、定番化していると言えよう。
ダンスクラブ松下時代から演奏を続けている南の聖地でもある。

新春の冬ではあったが、沖縄でBUCK-TICKのメンバーを待ち受けるスタッフも、
Tシャツ姿で、常夏の沖縄で、彼らも20周年ツアー最後のギグを決めることとなった。

この日、東京では雪の舞い散る一日となったのが印象的だ。

この沖縄公演の後は、ニューアルバム『memento mori』の前哨戦として、
11月29日・30日・12月6日・7日、FC限定ライヴ【FISH TANKer's ONLY】で姿を現すまで、
BUCK-TICKは、沈黙を守ることになる。
(11月29日、名古屋DIAMOND HALL、30日、大阪なんばHatch、
12月6日、Zepp Tokyo、7日横浜BLITZ)。



沖縄NAMURA HALLに入場するメンバー。
リハーサルも、ややリラックスした雰囲気が伺える。
櫻井敦司のコメント

「では~【PARADE】最終日。
AGE of PUNKの皆さんと、スタッフの皆さん。
宜しくお願いしま~す」

と始まり、20周年アニヴァーサリーの緊張感も解け、余韻を楽しむような表情も見られる。



櫻井敦司はライヴツアー【PARADE】を想い返して語る。

「・・・なんか、暖かい、人と人との係わり合いとか、
そういう、人間味溢れる、
そういうツアーだったような気がしますけど・・・はい」



今井寿は?
【PARADE】はどうだったのだろうか?

「・・・なんだろ、まぁ、ノリで、楽しく、っていうことかなって」

まるで、このツアー【PARADE】が“夢”だったかのように語っている。
他のアーティストとの交流を20年間の区切りとなるツアーで、コンセプトにしたのは、
2005年12月21日にBMG JAPANよりリリースされたBUCK-TICKのトリビュート・アルバム
『PARADE~RESPECTIVE TRACKS OF BUCK-TICK~』
が起因となっている。

この年結成20周年を迎えたBUCK-TICKは、
そこから、メジャー・デビューまでの2年間を過ごすかのように、
2005年~2007年を、祝福ムードいっぱいに駆け抜けた。

そのヤリ方は、いかにもBUCK-TICKらしいヤリ方であったし、
メンバー自身も、やや苦手な過去を振り返るという事の切欠にはなったようだ。

その結果として、導き出された答えが、
流行とはまた違ったカタチの、
最新型のBUCK-TICKというバンドの在り方を魅せつけるという手法となった。

そして、それには、対象物が必要となった。

他の個性的なアーティスト達と並ぶことで、
BUCK-TICKは、他の何物でもないBUCK-TICKとしての在り方を、
より端的に表現することが出来たといえるのではないだろうか?

ツアー【PARADE】と【BUCK-TICK FEST 2007~ON PARADE】で、
他のアーティストを描いていて気付いたことではあるが、
そのアーティストそれぞれに、取り巻く環境と、そうなるべく条件があったことに気付く。

それは必然が、そうさせたことだとしても、
非常に、どのアーティストもドラマチックなキャリアというモノで、
時間を一刻一刻と刻んで来た事がわかる。

其処には、様々な“感情”“衝動”“思惟”が存在し、
そのアーティストをそう在らしめる“ナニカ”があった。

だから、その時のアーティストのシェイプは、必然である。
そう、確信出来るものであった。


そんな中で、勿論、このBUCK-TICKも例外ではない。


それが、浮き彫りとなったような2年間とも言えるだろう。




2008年1月20日。沖縄。

この日も当然、【PARADE】には対抗バンドが同伴する。


【PARADE】の見せ場のひとつは間違いなく対バンドとのBUCK-TICKコラボレーション。
嵐に巻き込まれる愛の伝道師ASAKIとLucy の岡崎達成を要するAGE of PUNKという、
BUCK-TICKとは親和性が高いバンドが、このツアー最後のゲスト・アーティストとなった。


沖縄NAMURA HALLのステージ、AGE of PUNKのライヴ・アクトも当然白熱する。

「今日はお祭りだから

 …ハッスルしちゃっていいですか!?

 “夢”叶えちゃって、いいですか!?」

と2007年9月8日の夢の続きを演出するASAKI。
当然、2007年の夏に“おあずけ”を食らった分、
溜まったものをぶつけるかのようにパンキッシュなナンバーをパフォーマンスしていく。

そして、当然・・・


「夢の続きやっちゃっていいでしょうか?

 ご紹介しよう!今井寿!!」

のMCで、
ここでも今井寿が登場し、そして始まったのはトリビュート・ナンバー「PHYSICAL NEUROSE」。

ハイタッチを決めるASAKIと今井寿。
【BUCK-TICK FEST 2007~ON PARADE】でのパフォーマンスの再現とも言えるコラボを、
ナムラホールで繰り広げることになる。


樋口豊はライヴツアー【PARADE】の印象を語る。

「20年経っても出来た!っていうのが、やっぱ、その“うれしい”っていうか。

影響受けたアーティストや、
ホントにその自分達に対して、影響受けましたって言ってくれた人たちと
一緒に出来たっていうのが、ホントに光栄だし。
うん。ホントに自分でも“感謝”と・・・“ありがとう”。

うん“ありがとう”だな・・・。
“感謝”ってより、ホントに“ありがとう”って言いたいツアーだったと思いますね」


素直な樋口豊は、“感謝”という堅苦しい表現よりも、
その表情に気持ちを込めて、参加してくれたゲスト・アーティストすべてに、
そして、そのブッキングから、セッティングのすべてと実行してくれたスタッフに対して、
“ありがとう”と言いたいと語る。

その“ありがとう”の一言が、このライヴツアー【PARADE】を象徴していた。
そして、その気持ちを胸に秘め新たなるステージへと向かうのだ。


それは、高校時代からの親友:星野英彦も同じ意見のようだ。

「色々、その、(対バン形式が)刺激にもなったし、
色んな対バンの人たちと演ることによって。・・・うん」


そんな対バン形式を延期となった振替だからと言って変更には出来ない。
AGE of PUNKのメンバーも快くこの年明け早々の沖縄遠征に同行してくれた。
20年目のBUCK-TICKは、まだ、終わっていなかったのだ。


それが、このバンドの宿命にも似ている。


2008/1/20(土)
沖縄/NAMURA HALL
【SET LIST】

01.Baby, I want you.
02.ICONOCLASM
03.CREAM SODA
04.リリィ
05.モンタージュ
06.Snow white
07.スパイダー
08.絶界
09.RENDEZVOUS~ランデヴー~
10.Alice in Wonder Underground
11.ROMANCE
12.REVOLVER
13.RAIN



アンコール

01.Sid Vicious ON THE BEACH(ASAKIも参加)
02.JUPITER
03.スピード




このセット・リストで実行された最後の【PARADE】。
内容は、【PARADE】というよりも【TOUR2007 天使のリボルバー】の内容に近いが、
小箱のライヴハウスの臨場感が、オーディエンスを【PARADE】と【天使のリボルバー】が、
見事に融け合った地点に連れて行った。

客席からステージのメンバーまでの距離が、驚くほど近い。

そこに登場したBUCK-TICKのメンバー。

衣裳は【TOUR2007 天使のリボルバー】と【BUCK-TICK FEST 2007~ON PARADE】との
フルスペックでの登場となった。

櫻井敦司は黒の光沢のあるタキシードにシルクハット、漆黒の羽が付いたストールを纏い、
まるで、光臨した天使のリボルバー・スタイルそのままに現れ観客の目をくぎ付けにした。


一方、今井寿は 【BUCK-TICK FEST 2007~ON PARADE】での衣装で登場する。
真っ黄色のシャツに白いジャケット、白地に黒の花柄パンツ。
ド派手な衣装は、【PARADE】のラストを飾るに相応しい。


星野英彦は、モデルのようなモードスーツで、
【PARADE】から【天使のリボルバー】一貫してシックでワイルドだ。
長らく伸ばし続けている無精ひげも彼のタフさ良く表現していてフィットしてきた。


樋口“U-TA”豊は、シルバーグレーの光沢のスーツにシルバーのシャツ。
キュートなキャラクターに掛け合わせてワイルドに胸元開けてロック感を醸し出している。
いつものように輝くような笑顔で手を振りながら登場する。


ヤガミトールは、白いスーツで、いつものタテガミを揺らしながら、
颯爽とドラム・キットに座り込む。
いつもより近く感じるが、オールスタンディングのこのライヴハウスでは、
姿が隠れてしまうその分、ドラムのラウドなサウンドで、存在をアピールすることになる。



一曲目は【BUCK-TICK FEST 2007~ON PARADE】のBUCK-TICKライヴのオープニングを飾った
「Baby, I want you.」

櫻井敦司は、頻繁に「沖縄Baby!」を連発し、やっと沖縄の地を踏めたことに感謝と捧ぐ。
今井寿ものっけからテルミンで最高潮スタート。
このナンバーからのスタートは反則技だ。


オーディエンスの炎は、最初から最高温度まで引き上げられいる。


なんという妥協の無さ!
狭いステージでも一切の妥協無き姿勢は、彼らを唯一無二にする魔法だ。
沖縄のオーディエンスも恐ろしいほどの盛り上がりで、
ラストの歌詞は「Baby I おきなわ~~~」で締める櫻井敦司。

そして最初のMCは「めんそ~れ、baby!」


「沖縄に来るのに半年かかりました。今日は一杯楽しんで行って下さい。

 OK! じゃあ、踊れ!狂わせてくれ!」


2曲目「ICONOCLASM」3曲目は『天使のリボルバー』から「CREAM SODA」と、
狂気のドラッグソングを披露してくれる。

頭からトップスピードで突き抜けるつもりだろう。

この長い2007年からのライヴツアー。
本当に、全力疾走のライヴを繰り広げてきたといえる20周年のベテランBUCK-TICK。
最年長ヤガミトールは、このロードサーキットについて語る。



「まあ、結構長かったんで、体調維持とか大変でした、というか。

ええ、やっぱり、アノ、調子に乗ってきて力んでくると、フォーム崩すんですよ。
やっぱ大振りになってきちゃうんですよね。調子に乗って(笑)。

で、それを、また、最初の頃みたいにコンパクトにシャープに振るっていうか。
そういう感じで、また、最後の方、また、直してきたっていうか」


ベテランでも、長い期間のライヴツアーには気を使うようだ。
まるで大リーガーのアスリートみたいなコメントに、
ロッカーも身体が資本に違いないと実感する。


そして、そのステージでも印象に残るBTマジックを魅せつけてきた彼ら。
20周年を迎えて、更に彼らのことを好きになれる。
そんな素晴らしい音楽を我々に贈ってくれた。

それは、樋口豊ではないが、“感謝”というよりも“ありがとう”と言いたくなるモノだ。


そんな“ありがとう”を体現するような愛の唄「リリィ」で、漆黒の翼で舞い上がりそうな櫻井敦司。
今井寿のホワイトペンギンも美麗に輝く。

黒い天使と白い悪魔の競演に、コーラスも大合唱の沖縄。
NAMURA HALLがひとつになる。

次々ともう耳に木霊するくらい聴いたニューアルバム『天使のリボルバー』から、
「モンタージュ」のシンプルでストレートなロックが鳴り響くと、
やっとNAMURA HALLにも、クールダウンの時間が訪れる。

「Snow white」。

櫻井敦司の印象的なMCが入る。

「東京は今日は雪みたいですね・・・。
 ここ沖縄にも雪を降らせたい・・・」

そして、珠玉の哀愁のメロディを奏で出す星野英彦。
オーディエンスもそれまでの大合唱が嘘のように静まり返り、
じっくりとこの美しいロッカ・バラッドに聴き入っている。

ホールで聴くような涙を流す観客は恐らくいなかったが、
心の「密室」で自身の大切なものに触れるかのように、
ナイーヴな感情を想起させる観衆。
皆、ゆっくりと櫻井敦司のファルセットに合わせて揺れるように舞う。

確かに、この時、1月の沖縄:NAMURA HALLに“雪の白”が舞い散った。


この感傷から、目を醒ますようなロックンロールの咆哮「スパイダー」。
この展開はアルバム『天使のリボルバー』と一緒だ。
今井寿と星野英彦のツインギターが暴れ回る。
櫻井敦司は、セクシーにケツと叩いて魅せる。
そしてなんと観客にお尻を叩かせる大サービス。
もっともっと糸をたぐり寄せ!とファンとのスキンシップも、
櫻井敦司のサービス精神の表れだ。
一人の手を引っぱってたぐり寄せる。

その流れで、エレクトリックなギター・リフが鋭い悲鳴を上げる「絶界」。
星野英彦は、スパニッシュ・ギターでフラメンコな空気感が、
本当に、この沖縄の地にピッタリであると気付く。

「oleeee!!!」

と煽る櫻井敦司の手拍子に、必死に合わせようとするオーディエンス。


そして【TOUR2007 天使のリボルバー】でも一番の感動的シーンを作り上げて来た
「RENDEZVOUS~ランデヴー~」。

櫻井敦司は少し素に戻って語り出す。


「今日はどうもありがとう。
去年からやってきたツアーを沖縄で締めくくることができて嬉しく思います。

それでは、21歳のBUCK-TICKから20年目に作った曲です。
聴いて下さい」


前年の12月29日のステージでは、

「21年目も宜しくお願いします」

と最後のMCで語ってた櫻井敦司。


「1」という言葉で、“新たなる始まり”を感じさせるコメントとなった。
20年には確かに価値がある。
しかし、それに埋没するつもりなど、微塵もないよ、
という彼らの意志表現とも取れるMCで始まった「RENDEZVOUS~ランデヴー~」。

我々も感謝の祝福を贈るのと同時に、「頑張らなきゃ」という気持ちにさせてくれる。
その後の「RENDEZVOUS~ランデヴー~」の大合唱が素晴らしいモノになったことは、
語るまでもないだろう。


「Alice in Wonder Underground」。


アルバム『十三階は月光』のモチーフを引き継ぐBUCK-TICKエンターテイメントの傑作。
“GOTHIC”な調べは、完璧と言える櫻井敦司のパフォーマンスと今井寿の間奏ヴォーカルソロで、
夢の世界へ我々を誘ってくれる。

それまで外していた天使三点セット;シルクハットと漆黒の翼ストール、
それに髑髏のステッキをしっかりと身に付けてパフォーマンスする櫻井の姿は、
まるで、ファンタージーの絵本から飛び出したキャラクターのように映る。

そ、し、て、

「『十三階』からの曲を演ります」

とコールして、前作の代表楽曲「ROMANCE」へと“GOTHIC Loop”を完成させていく。

こんな世界を描けるアーティストは本当に世界でBUCK-TICKだけだろう。

『天使のリボルバー』のストレートなロック・ナンバーに包まれて、
そのダイヤモンドのような輝きが、さらに、際立って見えるのは、贔屓目だろうか?

そのまま“GOTHIC Loop”は「REVOLVER」の堕天大戦争へと突入していく。

観衆も、なんて時間が経つのが早いのだろう?
と時を止めたいと願うのは、クライマックスが近いと知るからだ。

「REVOLVER」演奏後のMC。


「では、どうもありがとう。
そして、此処で【PARADE】も終わりになりますが、また、何処かで逢いましょう。

ええ、スタッフの皆さん!
今日集まってくれたみ、ん、な!
・・・そしてAGE of PUNK!

今年が皆さんにとって良い年でありますように。どうもありがとう」





本編ラストは、此処沖縄でも、「RAIN」。

切々と、音と言葉と届けるような櫻井敦司。

本当に、すべてにおいて全力疾走したと言い切れる2007年のBUCK-TICK。
「やっぱり、終わりは来るんだ」
と少し寂しげに美しい今井寿のギタープレイに酔い痴れる観客。

そう、忘れるな。

世界は輝いている。

この雨が光るように。

そんなレイン・ソング。



見ろ。此処はこんなにも、輝いているじゃないか!



本当にありがとう!








アンコールのコールは響き渡る沖縄NAMURAHOLL。

再び登場したヤガミトール、樋口豊、星野英彦、そして今井寿。

櫻井敦司がいないので、「アレ」だろう。

此処ではお馴染みとなった今井寿がMCを担当する。


「楽しんで・・まっけ?」

「YEAHHHH!!!!」

「楽しい~ねぇ~。
今日はスペシャルゲストを呼んでます。
・・・っていうか、ASAKIちゃんなんだけどね(笑)。
今日はパンクな感じで」


とアンコールの始まりは「Sid Vicious ON THE BEACH」!

嬉しそうにAGE of PUNKのASAKIが登場して、今井寿と共に、
“ロケン”の金字塔を唄う。

始終笑顔の樋口“U-TA”豊も、ノリノリで全面に張り出し、ステージはまたもや熱狂に包まれる。

ASAKIがステージを去ろうとすると、笑いながら登場した櫻井敦司とバトンタッチ!
「ASAKIちゃん、よかったね~」と声をかける。

ラスト2曲は、【BUCK-TICK FEST 2007~ON PARADE】のアンコール逆パターン。
「JUPITER」&「スピード」。


いつものようにアコギを奏でる星野英彦は語る。

「今回、参加アーティストも在っての“ツアー”だったんで。
なんかこう、参加してくれた人には感謝してます」

と照れくさそうに語るヒデ。
感謝の向こうに、野心が燃える。
彼が、この「JUPITER」を超える名曲を生み出すのは、いつのことだろう。
「JUPITER」は、それが不可能なんじゃないかというくらい美しい楽曲だけれども、
それは、スグ明日のことかもしれないのだから。
だから星野英彦も、他のアーティストからの刺激と糧に、新たなる領域へと歩み出すに違いない。

櫻井敦司も感動的に「JUPITER」を唄い上げると、
今井寿がスタビライザーからお得意のShooting Star!!!


「スピード」イントロで櫻井敦司はファンへの愛を語る。

客席からはそれを返すように、ピースサインがあがる。

僕らの共通言語は「スピード」。

最後の一曲も「アイシアオウ!」。

締め括り「スピード」が突き抜けて逝く。

「スピード」は凄い楽曲へと育っていった。

そう、想う。

この20周年に向けて、たしかに若干のアレンジ変更はあったものの、
ほぼ原曲に忠実に演奏される「スピード」は、BUCK-TICKというバンドの存在感と、
等身大のオーラを放ちながら、進化していった。

言いかえれば、この楽曲がBUCK-TICKそのものとさえ、言えるだろう。

そして、この進化に終わりは、ない。

「スピード」は、そして、BUCK-TICKは、どこまで行ってしまうのだろうか?





ヤガミトールは「Rest Rooms」で語っている。

「うん。たぶん流れから言って、レコーディングになると思うんですよね」


その先には、彼らの新たなるデビュー・アルバムとも言える作品が待っていた。
それは一見ルーティン・ワークのように見える。
しかし、その“Loop”の繰り返しに、無駄なモノなど存在しない。



今井寿。

「また、次に、気持ちのいいアルバムとか、作れそうな、そんな感じかしますけど。
ええ。結構そういう、なんだろ。
ヒントというか、刺激というか、色々。
うん。なんだろ。多分、影響は受けてるし、これから(それが)出てくると思う」


天才は他者に全くないものを創り出してる訳ではない。
他者からのインスピレーションを最大限に活用して、
自分流に料理して、妄想を続けるのだ。

だから、今井寿は、きっと無限だ。



樋口“U-TA”豊

「そうですね。また、みんなでまた。
いい音をドンドン作って生きたいなって意欲が湧いてきたし」


モチベーションを支えるものが、基本だとしたら、
このバンドの基本ルートをしっかり把握して進んでいるのはU-TAだろう。
だから、どんなに冒険しても、脱線することはない。
それが、次へのモチベーションへと繋がるからだ。



櫻井敦司は?

「まあ、【PARADE】はこれで区切りで。
まあ、あと、その20年の・・・。デビューして20年っていう、
そういう一種のお祭りみたいなモノは、区切りますけども。

ええ、去年から今年の頭にかけて、
あの凄いロック・バンドっていうストレートな感じで。
こういう感じで素のカッコ良さが元になって。

で、他に演りたい事があれば、
ドンドン演って行きたいなと思いますけども」



そうだ!BUCK-TICKってロックバンドだったんだよな。
と、不思議に想い返すような一年と言えた。

そして、それに、色んな要素を加えて行けばいい。

そして、櫻井敦司が唄う限り、
今井寿、星野英彦がメロディを奏でる限り、
U-TAとアニイが、疾走を辞めない限り、

BUCK-TICKは此処に在る。

夢でも、幻でも、ない。








さあ、一呼吸おいて・・・。


彼らは、この後、とてつもない世界へ入って逝くのだから・・・。


ひと休みが、必・要・だ・ろ・う?





















携帯電話がバイヴで震え、僕は目を醒ます。

「嗚呼っ、俺、寝ちゃった?」

長い夢を見た遠大なストーリーだ。

それは、悪魔ルシファーと、神の子イエス・キリストの物語。

だったような、気がする。

どんなメッセージを僕に、誰が送っているのだろう?

そんなことを考えながら、携帯電話に出る。


「おい!何やってんだ?
今、何処にいんだよ?
探しても見つからねぇし・・・。

何回か電話したんだぞ」

その声は、同僚だ。

「ごめん。ちょっと・・・」

とまさか居眠りしてましたとは言えない。

「まあ、いいや。
これから出られるか?
何処にいるの?」

「ああ、今、上にいるよ。
スグ、降りられるから、ちょっと待っててよ」

「わかった。じゃあな」

「うん。じゃ」

と電話が切れる。



・・・・僕は、買収したばかりの新宿のビルディングにいた。
同僚も、このビルの中にいるのだろう。

少しだけ、休憩を取ろうと内装を解体した、骨組みの鉄骨と剥き出しのコンクリートに包まれた
まるで、廃墟みたいなフロアの隅で、缶コーヒーをすすっている内に、
眠ってしまったようだ。
少し、不快な汗が滲む。
このビルの案件が出てから、このところ、ろくに睡眠を取っていない。
平均睡眠時間は3時間弱ってところだろうか。
でも、別に何をしてるって訳でもない。
僕等は指示命令に従って動いているだけだ。
それが、カネを生み出している?
なんて、便利な世界に住んでいるのか、とさえ想う。
しかし、そんな世界の僕に、自由は、無い。
そんな会社員は、腐るほどいるだろう。
すなわち、僕の交換は、誰でもいいって訳だ。
別に、それを、拗ねて社会をかえてやろう、なんて想ってる訳ではない。
それは、僕にとっても非合理的な事だから・・・。
これから、僕は、その仕事相手と睡眠時間を削って接待へ出掛けて行く。
別にナニカを創り出している訳ではないが、
これで、売上があがることもある不思議な世界が現実だ。

ウチの会社のトップは、もう75歳になるジイさんだが、
この業界では、屈指の経営者で、社長の座を息子に明け渡した後も、
企業の玉座は譲らずに、会長職という冠の黒幕として組織を牛耳っている。

そういうと、凄く悪いイメージかもしれないが、
実際、彼の経営手腕に敵う者は、僕の会社には存在しない。
跡取りの息子社長も、この会長が、退いたら、
この会社は一気に“不安”に苛まれるだろう。

会長のニラミが解除されれば、周囲の利害関係者の魑魅魍魎どもは、
その利権を我がものにしようと手ぐすね引いて待ち受けている。

だから、仕事はキツイな、とは想いながらも、
その会長に依存し切っているのが、現実なのだ。

この会長が、この物件の買い上げを決めた時、
総務部のフロアで、電話連絡を待っていた彼は、
その一報を聞いて、普段口にすることもないような声で、
「ヒャッフォウ!」と言って飛びあがったそうだ。
これも“感情”の起伏と言えるだろう。

この業界では、直接、このビルディングを手に入れることは難しかった。

在る破たんした銀行が持主の物件で、リース会社を通じて間接的に買い上げることが出来たのだ。
こういったスキームに、実際、どのくらいのカネが動いたかは、わからないが、
とにかく、とてつもない額が動いたのは間違いない。
このカネを動脈に、資本労働生産性の基本に則って、更なる利益追求するのが、
不動産売買の基本である。
そんな話をしながら、価値がどのくらいあるかわからないような高い飯を消費して、
話は進み、僕の現実は廻っていた

そこには、“感情”とか“恋愛”とか“衝動”とかいうものは、必要ない。
僕の中で、ぐるりと廻る現実。
そこで、首を擡げる怪物は、“クールにやれ!”と僕にけしかける。
経済合理性だけが、すべてに優先される。

埃だらけの鉄骨ビルディングのフロアの隅で、僕の現実が再び廻り出す。
スーツにかかった埃を掃い、僕はスクッと立ち上がる。
緩めていたネクタイを、少し整える。


どのくらい眠ってしまったのか?



高層の窓の外には、下弦の月が嗤ってる。

そう、アノ夢では、ルシファー役が今井寿で、イエス役が櫻井敦司の顔をしていた。
あれは、あの遠大なストーリーは僕の妄想?錯誤?願望?だろうか?

僕は狂っちまったんだろうか?

でも、そんな【ROMANCE】とは、関係なしに、僕の現実は廻る。

「下に降りなきゃ」と想う。

同僚が待っている。

その13階フロアの窓には、眩い月光が差し込んでいた。


僕は、更にネクタイを締めあげた。


月が嗤ってる。







・・・13階は月光、だ。








$【ROMANCE】






※付録したモノガタリで、バイブルの内容、“のようなモノ”がありますが、
すべて、僕の妄想や夢を想起しただけの代物です。
もし、不快に想われたクリスチャンの方が居ましたら、ごめんなさい。
この場を借りて深くお詫び申し上げます。



yas



$【ROMANCE】