「(BUCK-TICKとは?)
…自分自身っていうか」
2008年4月2日リリースのスペシャルDVD『BUCK-TICK FEST 2007 ON PARADE』
完全予約限定盤 リミテッドコレクターズ・エディション(DVD2枚組)に付属されるディスク2より。
6/16(土)宮城/Zepp Sendaiでのステージとバックステージの模様。
そして、ここからこのディスク2では、各メンバーにフォーカスしていく。
一番打者は、BUCK-TICKのギタリスト“星野英彦”。
BTファミリーの四男坊。
このメンバーを、他のメンバーが、評価する表情やコメントが、この映像の本命ということであろう。
間違いなく、ファンは、この映像に熱中するであろうし、
バンドとして、ややいつも、口数が少ないメンバーで構成されているBUCK-TICKであるからこそ、
この20年という年月が、このままのメンバーでクリア出来たのだろうと想う。
それは、“お互いを尊重する”という最もシンプルなコミュニケーション術であろうが、
口にするだけならば、誰でも出来ることであろう。
星野英彦を見ていると、それを無言でやっているようで、凄いなと感じてしまう。
やはり、構想するのと、実践するのでは、違いがあるであろう。
星野英彦という男。
2006年には、メンバー中3人目の公式HPにて、
入籍を報告している。
ヴィジュアル系というフレームからすると、ナチュラルな雰囲気を振りまく異質の存在感がある。
ある意味において、BTのメンバーの中で、最も神秘性が高い人物という評価も存在する。
クリエーター特有の世界観と持つセンシティヴなイメージと、
凡人というと失礼かもしれないが、そういった素朴な一面。
そして、BTという人間組織の中においての彼の立ち位置(ポジション)が、
彼をして、“星野英彦”という唯一無二の存在感を作り上げているのだろう。
そのソロプロジェクトも、アーティストとして自身をアピールするのではなく、
コンポーザーとしての星野英彦をクローズアップして魅せ、
女性アーティスト・ケリー・アリをどのように魅せるかというプロ-デュース的側面で、
パフォーマンスしたのも、彼のミュージシャンらしい部分を顕したといえよう。
映像では、彼の高校の同級生であり、
BUCK-TICKに、彼を誘い込んだ張本人=樋口“U-TA”豊のコメント。
ここから、『Focus to 星野英彦』がスタートする。
U-TAが語る“ヒデ”
「ヒデですか?いたって真面目です。
謙虚で、真面目で、……身体付きが大きいです。いいヤツです」
BUCK-TICKの空気感を埋めるサウンドは、この二人の存在感のようだ。
決して、他の三人の象徴的なプレイの邪魔はしない。
しかし、しっかりとした音色と背景世界をカタチ作る存在感がある。
そう、絵画に例えるならば、優美な背景、もしくは狂気を表現する背景。
それは、“光”や“闇”をいかに、印象的に映えさせるかを、
最適に、最高に、最強に、映し出すキャンパスのようでもある。
そして、その兄ヤガミトール。
「ヒデですか?
……やっぱり弟の同級生なんで。そういう感じで知り合ったし。
彼も、結構、性格的には、おとなしいですよね。
基本的に、そんな、ギャー、ギャー騒ぐっていうメンバーじゃないんですよね。あっちゃんも含めて。
まあ、いちばんうるさいのが、弟(U-TA)とオレぐらいの感じで(笑)」
U-TAとヒデのBTキャンパスに、命の鼓動を吹き込むのが、“アニイ”だ。
そんな同級生二人を、同じ弟のように見るバンドマスター。
ヒデのことを、アニイは、一時「あいかわらず、抵抗感のないサウンドを生み出している」と。
そんな評価をしていたが、名曲「ミウ」のデモを持ち込んだ星野英彦の事を、
「今回は、ヒデが自信満々で持ってきたから(笑)」
と表現していたが、カワイイ弟分が、創り上げた名曲を愛でるようなこと語っている。
そして、その愛情は、バンドという、組織BUCK-TICKを
ひっくるめてのコメントにまで発展していった。
◆◆◆◆◆
こうしてライヴツアー【PARADE】の第二幕は6月16日、仙台にて開ける。
この夜の刺客“J”。
『PYROMANIA』、すなわち放火魔の異名をとる彼だけに、火をつけるのはお手のもの。
普通の感覚で言うなら“場内をあたためること”が彼の使命ということになるはずだが、
「俺が来たからには、タダじゃ帰さない」
という彼自身の言葉どおり、
超満員の【Zepp Sendai】はウォーム・アップの域を超えてヒート・アップしていた。
“J”が、BUCK-TICKファンを煽りまくる。
「みんな!行くぜ!!!」
「おぉーーーっ」
「ドレスルームにいるBUCK-TICKの兄さん達に聞こえるように!もっと!!」
「おおぉーーーっつ!!」
「まだまだ!!そんなもんか!?BUCK-TICKファンは?(笑)」
「おおおぉーーーっ!!!」
MCが、最高に楽しい“J”。
1曲目の「REBEL tonight」からラストの「Feel Your Blaze」まで、
大音量の灼熱ロックは一瞬たりとも温度を下げることなく炸裂し続け、
終盤に“J”ヴァージョンによる「ICONOCLASM」が披露された際、ステージは最大の山場を迎えた。
「20周年・・・」
まるで、自らの音楽活動を振り返るかのように、首を振りながら
ティーンのオーディエンスを指差して…“J”は語る。
「……まだ……産まれてない、よ、ね?」
「いえぇーーい」
「行くぜぇーーー!!!」
“J”のBTトリビュート楽曲「ICONOCLASM」。
“J”は、すべてが、この一曲から始まったと語る。
また、彼の言動のひとつひとつから、
BUCK-TICKとの信頼関係の強さを痛感させられたことも付け加えておきたい。
確かに言葉は荒いかもしれない。
が、まさに“J”なりの流儀での“スジの通し方”がそこに貫かれていた気がする。
恐らく、この親友の【PARADE】参戦は、BUCK-TICKにとって最も心強いものではなかったろうか?
彼らの競演の話は、幾度となく、立ち上がりは消え、立ち上がりは消え…。
念願のステージがここに実現したと言える。
MCでは、BUCK-TICKとのバックステージのワンシーンを披露する。
「今井サンにさぁ~、“かまして来い!”って言われたんだよね。オレ(笑)」
「うん。本当に、リスペクトしてます!」
映像のバックステージでは、今井寿も、“J”の気持ちに応えてる。
「“J”と写真撮って」
BUCK-TICKメンバーと嬉しそうに記念撮影する“J”。
この対バン形式のライヴツアー【PARADE】の大きな参加記念に“J”自身もなったに違いない。
そして“J”のライヴ・パフォーマンスに火をつけられたのは、オーディエンスばかりではなく、
当のBUCK-TICKにとっても同じだった。
ステージに櫻井敦司が登場した瞬間、彼の佇まいに普段とは違ったテンションの高さを感じる。
そして冒頭の3曲を歌い終えると、櫻井敦司は
「“J”にもう一度拍手を!」
とオーディエンスに呼びかけ、こんなふうにMCを続けた。
「“J”も言ってましたけど、20年もやってます。
何も要りませんよ、何も……。
お前がそこにいるだけでいい!」
シリアスに決める櫻井敦司。
しかし、このツアー【PARADE】での櫻井はいつもと一味違う。
この発言の直後、櫻井は
「使えるね、今の」
と言って笑いを誘ってみせた。
そんな場面を目撃できただけでも仙台のオーディエンスは貴重な体験をしたといえるはずだが、
この夜の“レアさ”はそれだけでは終わらなかった。
そして“6月16日”。
この日は映像の主役:星野英彦の誕生日であったのだ。
本編のセットリスト終了後、バンドとによる“ハッピー・バースデー”の大合唱。
引きずり出されるようにしてステージに現れた星野英彦は、マイクを通じて「ありがと!」と一言。
その彼を追いかけるように出てきたのは、
ヒデの似顔絵(ちなみに原画は櫻井によるもの)があしらわれた巨大なケーキを載せたワゴン。
ロウソクの火は瞬時にして吹き消され、大きな拍手と歓声のなか、
アンコールは「DIABOLO」へと突入した。
さらにはそのアンコール終了間際、星野英彦がステージから飛び降りるという光景も見られた。
イリュウジョニスト=ヒデ。
このライヴツアー【PARADE】について星野英彦は語る。
「なかなか、こういう、色んな人と周る機会っていうのが、
なかなかないので、凄く貴重な体験というか、いい経験出来たかな、という、感じです」
そして同ツアーで、星野英彦が印象に残った楽曲を訊いている。
「まあ、あの、アルバムは、まだ発売される前ということで。
やっぱり新曲を発表する「モンタージュ」と「スパイダー」を演った、と思うんですが。
2曲ですよね?その2曲が印象に残ってます」
【PARADE】第二幕、
6/16(土)
宮城/Zepp Sendaiでのセットリストは以下の通り。
オープニングSE THEME OF B-T
01.ANGELIC CONVERSATION
02.Baby,I want you
03.BUSTER
04.MY FUCKIN' VALENTINE
05.GIRL
06.ノクターン -RAIN SONG-
07.RENDEZVOUS~ランデヴー~
08.スパイダー【新曲】
09.ROMANCE
10.夢魔-The Nightmare
11.ICONOCLASM
アンコール
星野英彦“ハッピーバースデー”
01.DIABOLO
02.モンタージュ【新曲】
03.MY EYES & YOUR EYES
04.スピード
親友U-TAは言う。
「同級生なんですけど…。ひとつ先に行かれましたね。
まあ、すぐに追いつくから……待ってて下さい」
星野英彦
「ハハッ、なんでしょう。
まあ、皆さんに祝ってもらって、まあ、いい誕生日でした。41歳です」
彼らを見ていると、BUCK-TICKというのは、本当にファミリーなんだと、想う。
それは、スタッフや、“J”などアーティスト、ファンも含めて、
家族的な人間関係が、織り成す“ぬくもり”がある。
この日の打ち上げは、そのまま星野英彦のバースデー・パーティーとなった。
そこに参加する面々みんなが笑顔だ。
櫻井敦司の描いたバースデー・ケーキを囲んで皆、記念撮影をするシーンを見ると、
この日本ですでに忘れ去られた“家族”というものを連想させられる。
頼りになる長兄、破天荒な次男坊。
自分の世界を構築する三男。
寡黙な職人気質の四男に、愛らしい末っ子。
そして、それを取り巻く親戚たち・・・。
だから、皆、我が家へ帰るように、BUCK-TICKへと向かっていくのだ。
そう、まるで“家”に帰るように。
HOME SWEET HOME。
ここが永久(とわ)。
