「嘆きの霧に体をねじる
血染めの昏 Terrorの匂い
Let's Bloody dance with me 」
2006年、12月29日【 THE DAY IN QUESTION 】を印象的に彩ったセットリスト、
「MACHINE」、「SEX FOR YOU」、「“J”」の3曲、
櫻井敦司のオクターヴ歌唱が、美しく日本武道館に響き渡る。
特に、アルバム『TABOO』からの2曲のパフォーマンスが、この年の【 THE DAY IN QUESTION 】を象徴している。
彼らが、ここで再現した初期の疾走感と淫靡な空気感。
「SEX FOR YOU」に続く「“J”」。
「“J”」とはロンドンを震撼させた猟奇殺人犯、切り裂きジャック(Jack The Ripper)。
この楽曲に込められる猟奇性、刹那主義、デカダンス、ロマンチシズム、ダンディズム。
この楽曲が書き上げられた背景に、収録アルバム『TABOO』の
ロンドン・レコーディングが、大きく関係しているのは、間違いない。
「花を愛してた day by day
恋人との day by day
許されぬ夢を閉じこめられて」
それまでのビートロックから発展的に脱却し、
貪欲な自虐主義、耽美主義の時代へとその第一歩を
踏み出した作品と言う意味で非常に重要なアルバムである。
『TABOO』は前作『SEVENTH HEAVEN』までの外見に反する突き抜けたポップ性、
或いはエフェクトを大量に盛り込んだノイズ・アートであったり
ザクザクと刻みこんだ尖ったギターリフ・フレーズであったり、
バンドサウンドとしてのBUCK-TICKを残しつつ、
「キャッチーさ」つまり楽曲の音色のポジティヴさを排除することに徹している。
「EMBRYO」「TABOO」の宿命的な淫靡と陰鬱が象徴するように、
彼らがゴシック的世界観、そして生への渇望としてのタナトスを楽曲に反映させ始めた出発点であり、
ビートロック時代から枷を破るように変化する荒々しいエネルギーが未熟さも含めて、
それを、そのままにパッケージされている。
「月の光にニヤリと笑い
夢遊のほとりに目覚めたGent
Let's Bloody dance with me 」
「ICONOCLASM」で偶像破壊(脱アイドル)の警告をしつつ、
パッションを騙る冷たいハンマービート。
背徳への特別なファンファーレである。
そして、ここは“LONDON”ではなく“TOKYO”。
破壊のソドムとゴモラ、街の情景。
この崩壊の街に逃げ込んだ危機にある2人の姿。
“SEX”“愛”において、エゴイスティックに欲望都市に溺れる市民達ロマンチストは、
多くの場合、その過程の中で大事な何かを見失う。
ロマンチストの皮を被ったエゴイストの愛情に生じる“SEX”を捧げる姿こそ、“禁忌”。
これは許しがたい“原罪”である。
“EMBRYO”=胎児は親を選べない。選択の権利は一切無い。
未来を選べない不自由な子宮の中で感じる歓喜は、
何もかも失った人間が感じる無為の快楽に等しい。
胎児が望む唯一の事象は孤独の中で子宮を独占する唯一の自由。
そして別れを告げるサインは、此処でもやはり「KISS」…。
“FEAST OR DEMORALIZATION”
どれほど美しく言葉を飾ってみても、“TOKYO”に逃げ込んだ二人は、
いつしかお互いの不可侵な領域を冒し踏み込まなければならない。
I wan't you “sex”!
「誘惑」と「破滅」のための美学。
“ANGELIC CONVERSATION”でのゴシックの世界は、
極端な象徴主義の領域に踏み入り始める渇望の“夢”。
偶像を掲げた少年が見たワンダー&アンダーグランドは、
此処からBUCK-TICKが入っていく世界の原風景、彼らだけの細密画。
訪れる“SILENT NIGHT”で二人は一線を越えてしまう。
銀色の空の下、恋人達が過ごした聖なる夜の物語。
すべての偶像を捨て去った後、二人に残されたのは、溢れ出す情熱。
その深い愛情に報いるために選べるのは、たったひとつの選択肢。
ここに二人は永久を得る為に“原罪”を捧げる。
だから、最後の“KISS”を、もう一度……。
ねだるように、“JUST ONE MORE KISS”
偶像破壊を決意して始まったこの『TABOO』は、
消え去りゆく偶像への熱狂的な“KISS”で幕を下ろす事になる。
幻想の都、自らの命、持てる物を全て捧げて偶像の前に独り朽ちていくファントム。
「I'm busy at every weekend
Midnight theather Junk out 」
“ J ” こと切り裂きジャック(Jack the Ripper)は、
1888年8月31日 - 11月9日の2ヶ月間にロンドンのイースト・エンド、ホワイトチャペル地区で、
少なくとも売春婦5人をバラバラ殺人にした連続猟奇殺人犯。
奇しくも『TABOO』遠く極東日本のロックバンドBUCK-TICKのサード・アルバム、としてその百年後に発表される。
署名入りの犯行予告を新聞社に送りつけるなど、「劇場型犯罪」の元祖とされる猟奇犯罪。
結局、犯人の逮捕には至っていないのでこの「ジャック」の名称も仮名である。
神経症患者から王室関係者まで、その正体については現在まで繰り返し論議がなされているが、
事件から既に100年以上も時間経過しているため、真相は闇の中である。
切り裂きジャックは、「売春婦」を殺人の対象に選んだ。
犯行は常に、公共の場もしくはそれに近い場所で行われ、
被害者は「メスのような鋭利な刃物」で喉を掻き切られ、
その後、特定の臓器を摘出されるなどした。
そのような事実から解剖学的知識があるとされ、ジャックの職業は医師だという説が有力視されている。
ただ、このような事件が起きていた間に、
被害者の女性たちが警戒心もなく犯人を迎え入れている形跡がある事から、
実は女性による犯行とする説もあり、「切り裂きジル」と呼ばれた時期もあった。
よって、BUCK-TICKは、このロンドンの猟奇犯罪をモチーフにし、タイトルを「“J”」とした。
切り裂きジャックの被害者について、他説あるが、確実に彼の犯行とされているのは以下の5名。
1888年
8月31日(金)メアリ・アン・ニコルズ(42歳)
9月8日 (土)アーニー・チャップマン(47歳)
子宮と膀胱を犯人により持ち去られる。
9月30日(日)エリザベス・ギュスターフスドッター(44歳)
犯人が目撃されている唯一の事件。
9月30日(日)キャサリン・エドウッズ(43歳)
左の腎臓と子宮を犯人に持ち去られる。
11月9日(金)メアリー・ジェイン・ケリー(25歳)
皮膚や内臓を含めほぼ完全にバラバラという最も残忍な殺され方をした。
犯行は夜、人目に付かない隔離されたような場所で行われ、
週末・月末・もしくはそのすぐ後に実行されている点が共通しているが、相違点もある。
キャサリン・エドウッズはただ一人、シティ・オブ・ロンドンで殺害された。
メアリ・アン・ニコルズはただ一人、開けた通りで発見された。
アーニー・チャップマンは他の被害者とは違い、夜明け後に殺害されたと見られている。
(wikipedia参照)
「夜にひらいた 悲劇は始まる
Because my name is Mr. J
夜にひらいた 茜にさまよう
Because my name is Mr. J 」
切り裂きジャック事件は、現在まで正体の知れない神秘性などから、
多くのフィクション作家の創作意欲を刺激してきた。
特に、同時代・同じロンドンという設定の名探偵シャーロック・ホームズとの対決は
それ自体1つのジャンルともなっている。
日本の作品でも、コミック『ジョジョの奇妙な冒険 Part1ファントムブラッド』で、
吸血鬼ディオの手により、ゾンビになったという設定で登場。
体内から奇妙な形状のメスを放出して攻撃する。
主人公ジョナサンが初めて本格的に波紋で戦闘した相手である。
同じく最近コミックでは『黒執事』において、女王の命により“切り裂きジャック”の事件を暴く。
主人公の執事セバスチャン・ミカエリスが仕えるシエル・ファントムハイヴの
叔母 アンジェリーナ・ダレスが主犯で描かれ、動機は子供を堕胎する娼婦達への嫉妬からであった。
実行犯グレル・サトクリフ という血を好む狂気に満ちた死神に、魅入られ、
最後には、シエルに正体を見破られ殺そうとするが、躊躇してしまったために
グレルに見限られ、殺害された。
BUCK-TICKのサード・アルバム『TABOO』で描かれる世界観では、
この破滅の都市“TOKYO”に舞台を変えた悲劇的な二人の男女の生き残りの片方が、
ゴーストとなり、夜な夜な、街角に現れ、猟奇犯罪を犯し、被害者の子宮を奪い去ったのではないか?
だと、するならば、「SEX FOR YOU」「EMBRYO」は「“J”」の重要な伏線となる。
「夜にひらいた 心はくずれる
Because my name is Mr. J
夜にひらいた 涙が止まれない
Because my name is Mr. J」
"J"
(作詞・作曲:HISASHI / 編曲:BUCK-TICK)
I'm busy at every weekend
Psychedlic masked hall
嘆きの霧に体をねじる
血染めの昏 Terrorの匂い
Let's Bloody dance with me
I'm busy at every weekend
Midnight theather Junk out
月の光にニヤリと笑い
夢遊のほとりに目覚めたGent
Let's Bloody dance with me
花を愛してた day by day
恋人との day by day
許されぬ夢を閉じこめられて
I'm busy at every weekend
Psychedlic masked hall
嘆きの霧に体をねじる
血染めの昏 Terrorの匂い
Let's Bloody dance with me
花を愛してた day by day
恋人との day by day
許されぬ夢を閉じこめられて
I must kill to live
I must kill to love
やつれた心は するどくとがる
夜にひらいた 悲劇は始まる
Because my name is Mr. J
夜にひらいた 茜にさまよう
Because my name is Mr. J
夜にひらいた 心はくずれる
Because my name is Mr. J
夜にひらいた 涙が止まれない
Because my name is Mr. J
I must kill to live
I must kill to love
やつれた心は するどくとがる
夜にひらいた 悲劇は始まる
Because my name is Mr. J
夜にひらいた 茜にさまよう
Because my name is Mr. J
夜にひらいた 心はくずれる
Because my name is Mr. J
夜にひらいた 涙が止まれない
Because my name is Mr. J
