「I KNOW YOU LOST YOUR HEART もがき続け」


2006年の【 THE DAY IN QUESTION 】。
「…IN HEAVEN…」「MACHINE」に続き、
3曲目にエントリーしたのは、「JUST ONE MORE KISS」。


彼らのブレイク・ポイントとなった一曲が、ここに登場した。
これは、ヒット・シングルとしてのエントリーではなく、
この後に続く、彼ら初のロンドン・レコーディングで制作されたアルバム『TABOO』からの、
貴重なエントリーへの、オマージュである。

アルバム『TABOO』で、偶像破壊を目指したBUCK-TICKのブレイクの局面を彩る
ヒット・シングル「JUST ONE MORE KISS」には、様々な解釈が存在するが、
この2006年の【 THE DAY IN QUESTION 】に関しては、
メジャー・20周年の翌年を控えて、そのポイントを押さえるという意味では、
「…IN HEAVEN…」的な扱いといえるが、その後のセットリストを鑑みると、
「MACHINE」同様に、“過去”に別れを告げているようにも聞こえる。

彼らBUCK-TICKにとって、そして、作詞を担当した櫻井敦司にとって、
“KISS”とは、“別れ”の象徴なのだ。


証拠に、『TABOO』の次のアルバム『惡の華』のフィナーレを飾る甘美的なバラード
「KISS ME GOOD-BYE」でもそうであるし、
死への旅立ちの瞬間を唄うシングル「die」でも、最後に、“KISS”を求めて、
突き抜けてていくのである。

「声はちぎれて風に舞う 泣きたいくらい幸せよ
 Kiss me good-bye 最後の言葉 Make me cry」

「ここでお別れしようよ 悲しい事は何もないはず・・・
 軽く最後のKissして」

まさに、“KISS OF DEATH”という感じではあるが、
こういったキーワードから考えると、この「JUST ONE MORE KISS」も、
死への別れ、そんな“KISS”をもう一度、と。
そう、要求しているのかも知れない。

もしくは、“KISS”して「殺してくれと」。


「DREAM & DREAM 胸に刻む
 SLOW MOTION 一夜の夢」



この「JUST ONE MORE KISS」も、最高のヴォーカル・クオリティーで、
櫻井敦司によって唄われる【 THE DAY IN QUESTION 】。
この年末の舞台にしては、ややシックな衣裳の2006年の櫻井敦司には、
アダルトな雰囲気で、大き目のワインレッドのジャケットとボルドーのマフラーが、
雪の中での“KISS”を連想させる。

例年とは違い、序盤でのエントリーとなったことから、
観衆に、コーラスを求めるでもなく、
その分、櫻井敦司は、しっかりと唄い込む「JUST ONE MORE KISS」。
他のメンバーも、派手なアクションは無しで、定ポジションで、じっくり演奏に集中している。
星野英彦は、少し俯くと大き目のサングラスを外して、真っ赤なBUNNYから、純白のフェルナンデスへと持ち替える。
今井寿が、この楽曲に“キラメキ”を封じ込める。


まるで年末の喧騒など、存在しないかのように、
観客も、このビッグ・ヒットの唄を聴き入って逝く。


「NIGHT & NIGHT 人は踊る
 ILLUMINATION やがて眠る」



クリスマスの喧騒の中、銀色の空下、抱き合う恋人たち
そして、その年末の喧騒が落ち着き、年の瀬に向かう時間の流れの中で、
最後のキラメキを、愛おしいあなたと一緒に過ごす。
この刹那こそ、永久の価値を有する時間…。

眠りにつく前に、もう一度だけ、あなたの唇の感触を…。

最後の時に、最愛の人の“くちづけ”を味わいながら逝く。
或る意味においては、最も、理想的な“別れ”の瞬間になるだろう。
あなたの香りに包まれながら、もう一度だけ…。


「JUST ONE MORE KISS むせ返る香り
 薄れゆく意識だけが…」



そんな溢れ出すような、ロマンスに身を委ねて、2006年も終わりを告げようとしている。

月夜だけが、その光景を優しく包んでいる。

ふたりの“愛”は、たしかに存在した。

たとえ、どんなに、悲しい別れになろうとも、あなたの唇の感触は永久なのだ。

だからこそ、もう一度だけ…。

そう、“KISS”を求め続ける中で、空から訪れる。

迎えの刻が、近づいている。
楽しい夢は終わる、瞼を閉じて、永遠(とわ)を感じて、
肌に死という“ぬくもり”。

月に抱かれ、もう、このまま
全て消えてしまえばいい……。

時を止めて、もう、ふたりの
幕を閉じてしまえばいい……。

溢れる瞳閉じたまま、冷たく濡れた唇に、KISSを。
そして、零れる月の雫が、頬を伝われば、
僕は両手を広げ、全てを許したいと願うんだ。



ありがとう。

もう一度だけ、“くちづけ”を。





「GOD KNOWS I LOST MY HEART 叫び続け」






JUST ONE MORE KISS
 (作詞:ATSUSHI / 作曲:HISASHI / 編曲:BUCK-TICK)



DREAM & DREAM 胸に刻む
SLOW MOTION 一夜の夢
JUST ONE MORE KISS 横顔はまるで 刹那の美貌
JUST ONE MORE KISS むせ返る香り
薄れゆく意識だけが…

NIGHT & NIGHT 人は踊る
ILLUMINATION やがて眠る
JUST ONE MORE KISS 抱き合えば そこは架空の都
JUST ONE MORE KISS 爪立てた腰は
はかない恋に揺れて…

天使のざわめき 悪魔のささやき 月夜に甘いくちづけ

キラメキは届かない つぶやいた
I WANT YOU TO LOVE ME
I KNOW YOU LOST YOUR HEART もがき続け

トキメキは返らない 愛してる
I WANT YOU TO KILL ME
GOD KNOWS I LOST MY HEART 叫び続け

AH-AH ONE MORE KISS......

JUST ONE MORE KISS 横顔はまるで 刹那の美貌
JUST ONE MORE KISS むせ返る香り
薄れゆく意識だけが…
JUST ONE MORE KISS 抱き合えば そこは架空の都
JUST ONE MORE KISS 爪立てた腰は
はかない恋に揺れて…

天使のざわめき 悪魔のささやき 月夜に甘いくちづけ

キラメキは届かない つぶやいた
I WANT YOU TO LOVE ME
I KNOW YOU LOST YOUR HEART もがき続け

トキメキは返らない 愛してる
I WANT YOU TO KILL ME
GOD KNOWS I LOST MY HEART 叫び続け



【ROMANCE】