「それでいいさ 孤独なほど 生きる無意味さも知らず 」
【FISH TANKer's ONLY 2006 SET LIST】
(東京・名古屋・大阪共通)
オープニングSE: THEME OF B-T
1.EMPTY GIRL
2.・・・IN HEAVEN・・・
3.ANGELIC CONVERSATION
4.月蝕
5.Cabaret
6.DOLL
7.Passion
8.Sid Vicious ON THE BEACH
9.Madman Blues-ミナシ児ノ憂鬱
10.LION
11.ミウ
12.細胞具ドリー:ソラミミ:PHANTOM
13.キャンディ
14.MAD
15.Ash-ra
アンコール-1
16.ノクターン -Rain Song-
17.BRAN-NEW LOVER
18.FLAME
19.夢魔-The Nightmare
20.DIABOLO
アンコール-2
21.空蝉-ウツセミ-
22.蜉蝣-かげろう-
23.ROMANCE
24.LOVE ME
【FISH TANKer's ONLY 2006】は、オープニング初期BUCK-TICKを、
リアル・タイムのクオリティーで聴かせるスタート・ダッシュから、
濃厚な霧の立ち込めるような“降魔の儀”「月蝕」で『十三階』ゴシック・ワールドに突入したかと思うと、
身を翻すかのように今井寿の“ロケン”ブースターを噴射し出した。
暗黒帝国のブルース「Madman Blues-ミナシ児ノ憂鬱」から受難の百獣の王「LION」も、
まさに、2006年アレンジで、味わい深くパフォーマンスされ、
ヤガミ“アニイ”トールのドラム・キットの前で、誇らしげにギターをかき鳴らす今井寿と、
前髪で、顔の見えない櫻井敦司が、観客に語りかけるように唄う嘆きの「LION」。
本当に素晴らしいクオリティーのサウンドが、少しブランクを持っていたBUCK-TICKによって、
積み上げられていく。
衝撃的であったとしても、正直、【SUMMER SONIC 2006】での彼らのパフォーマンスは、
やや、“ロケン”ブースターを暴走気味に撒き散らす今井寿と、
未だ、ゴシックの深い霧の中を彷徨うような櫻井敦司のアンバランスさが露呈していた。
しかし、一ヶ月後のこの【FISH TANKer's ONLY 2006】では、見事に消化されていた。
櫻井敦司の声の状態も最高だと言えるだろう。
そして、「LION」の次には、お馴染みの風の声が聞こえる。
ゴシックの霧を吹き消すかのような、意思の強い風だ。
その風を切り裂くかのように、星野英彦のアコースティックがカットインしてくる。
「ミウ」。
オーディエンスも、唸りをあげて、熱くなった今井寿のブースターを冷却するかのような、
そんな、冷気を星野英彦が、いつも、吹きかけてくれる。
新曲「空蝉-ウツセミ-」を編み上げたばかりの星野英彦は、
優しいライティングの中で、観衆と“見果てぬ夢”の中へ誘う。
“熱”の今井・“冷”の星野。
双方が、互いを労わりながら、走り続けた20年間であった。
同じ“熱”を感じる、Kiyoshiとは違い、互いを補完しあうように紡いだ20年。
やはり、最高のコンビネーションと言えるだろう。
証拠に今井寿は「ミウ」で、気持ち良さそうに舞う。
彼にとっても、お気に入りの一曲に違いない。
ヒデのダイナミックなアコースティックの調べが終わると、
空気が、また、一転する。
ゴシックな讃美歌に続く、サイバーなギター・イントロ。
「細胞具ドリー:ソラミミ:PHANTOM」。
ギター・ソロでは、お馴染みの童謡「メリーさんの羊」も挿入される。
光速メリーが、響き渡るアンドロイドの心。
不完全な、歪な愛を持つのは、人間も、サイボーグも一緒だ。
頭の中の羊が、次々と増殖していけば、どっちが一体、自分かわからなくなる。
そして、「キャンディ」。
ダーク・ロックのど真ん中で、身体が、“ポップさ”を欲していたという今井寿の頭の中では、
童話『北風と太陽』がグルグルと回っていた。
「ええ、ええ。あの太陽の気持ちがぽーんと出てきて(笑)、自分でも驚いて。
そのままスタジオで『どんな話だっけな』と考えていたら、
何となく辻褄が合うというか『ああ、そういう事なのか』と気付いて。
だから、今までが北風の気持ちで無理矢理脱がそうとビュービュー風吹かしてわけじゃないけど……」
正し、そのポップさに呑み込まれないよう、こめかみが痛くなるような“ノイズ”の嵐に、
今井寿の反骨精神が覗える。
“ノイズ”職人たるフラッシーな一曲。
櫻井敦司は、右手を上げて唄う。
赤い照明が点滅すると、【SUMMER SONIC 2006】でもプレイされた「M・A・D」で、
クライマックスを迎えると、鳥肌もののヤガミ“アニイ”トールの16ビートで、跳ねる。
この2曲は【SUMMER SONIC 2006】からの流れだ。
樋口“U-TA”豊のメロディアスなベース・フレーズが身震いさせる。
今回も本編のラストを飾る。
あなたも今宵「Ash-ra」となれ!
今井寿が、スペイシーに、スタビライザーを嘶けかせる。
星野英彦のデストローション・サウンドが地底から湧きあがる。
「花をどうぞ 千切れたバラ 見なよ人間達 誰もが憂い顔 」
「キャンディ」「Ash-ra」が収録されるアルバム『COSMOS』で、
歌詞を書いた櫻井敦司は語る。
「言葉を選ぶ作業はいつもの事ですからそれなりに悩む事もあったけども
……自分にとって重たくならないように、その事だけを気を付けて書きました」
「中身持たせるのも嫌だったし、
――――たった一個の確信とそれを取り巻く言葉達、
というのも『今回はヤメましょう櫻井さん』と言いつつ。自分に(笑)。
中身を煙に巻きたいというか」
「うーん、そういう自分のキャラクターVS世間様、バンドVS世間様みたいな事を、
自分なりにおぼろげに考えた部分もあると思うんです。
だから……一点に集中した『俺達はこれなんだ!』的なものは今回避けようかと」
「そういう意味では言葉の使い方とか上手い具合に行ったなあと。
キネヅカってやつですかね(笑)。
ただ、その単語単語に対して力を込めるではなく、自分のキャラクターを遊ぼうという」
という櫻井らしい単語を使いながらも、個体で意味を持たせずに、
浮遊感の中に、キャラクターを遊ばせた。
その結果、この「キャンディ」なり「Ash-ra」なりは形成されて言った。
「繰り返し輪廻り逢う フロアの隅で君が揺れる 激しく美しい 」
阿修羅とは、おそらく櫻井が、一般的な人間に対して読んだものであろう。
勿論、自分も含めてのすべての人間が阿修羅だ。
サンスクリットで「asu」が「命」、「ra」が「与える」という意味で善神だったとされるが、
「a」が否定の接頭語となり、「sura」が「天」を意味することから、
非天、非類などと訳され、帝釈天の台頭に伴いヒンドゥー教で悪者としてのイメージが定着し、
地位を格下げされたと考えられている。
帝釈天とよく戦闘した神である。
リグ・ヴェーダでは最勝なる性愛の義に使用されたが、
中古以来、恐るべき鬼神として認められるようになった。
「俺は生きる 阿修羅の森に 逃げて逃げまくるさ お前に逢うために」
その鬼神のように血眼なって足掻く人間たち、
「もちろん、俺達も、そうだ」
と言わんばかりの櫻井敦司。
愛の鼓動(リズム)と言って心臓を叩く櫻井は16ビートで光速コーナーを廻り、フロアの隅で君が揺れる。
ここは地獄か?それとも夢?
こめかみ響く、突き刺さる。
琥珀色の陽炎が、いつまでも、このまぶた焦がす。
夜が流れる、月が満ちてく人身蛇尾の神々舞い降り。
俺を誘いに闇をまとって、あふれる程の愛の鼓動(リズム)を掲げてる。
あなただけを愛していた。そして憎んでる、深く・・・。
今宵、FISH TANKer's ONLY・・・
「どうぞ踊りましょう 熱いダンスを・・・」
Ash-ra
(作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
うまくやれる 不安なほど 闇は純粋にも扉を開いてる
それでいいさ 孤独なほど 生きる無意味さも知らず
花をどうぞ 千切れたバラ 見なよ人間達 誰もが憂い顔
あなただけを 愛していた そして憎んでる 深く
繰り返し輪廻り逢う フロアの隅で君が揺れる 激しく美しい
どうか踊りましょう 熱いダンスを 全て呪うような黒いドレスで
どうぞ踊りましょう 熱いダンスを 全て呪うような愛の鼓動で
俺は生きる 阿修羅の森に 逃げて逃げまくるさ お前に逢うために
あなただけを 愛していた そして憎んでる 深く
突き上げる爪先に 愛の鼓動 君が揺れる
繰り返し輪廻り逢う フロアの隅で君が揺れる 激しく美しい
どうか踊りましょう 熱いダンスを 全て呪うような黒いドレスで
どうぞ踊りましょう 熱いダンスを 全て呪うような愛の鼓動で
