「逃げ出すサイレンの渦 想い出す優しさだけを」
2006年8月12日(土)大阪、13日(日)東京(千葉)
【SUMMER SONIC 2006】BUCK-TICK - LIVE
【SET LIST】
01.夢魔-The Nightmare-
02.Passion
03.月蝕
04.ROMANCE
05.die
06.M・A・D
07.ノクターン-Rain Song-
08.蜉蝣-かげろう-
09.細胞具ドリー:ソラミミ:PHANTOM
10.Ash-ra
オープニングの“唐突”とも言える「夢魔-The Nightmare-」からスタートした、
BUCK-TICKのパフォーマンスは、多くのリスナーの予想を反して、
前半は、完全な『十三階』攻めで、その独自の世界感を誇示した。
キメの楽曲となる前シングル・ナンバー「ROMANCE」で折り返すと、
これまた、疾走感を演出する事の多い、こういったフェスティバルでは、
以外な楽曲といえる独特の世界感、死生観を表現した「die」に突入していった。
「僕は両手を広げ 全てを許したいと願えば ・・・」
想えば前年のライヴツアー【13th FLOOR WITH MOONSHINE】のアンコールで、
頻繁にフューチャーされていた「die」。
これも“ゴシック”の調べの中に、優しく、そして、やがて、激しく響き渡る。
そして、ここまで意図的に抑えて来たかのようなドライヴィング・ナンバーが、
エントリーした。
「M.A.D」だ。
やや重い展開でプレイされてきたこの【SUMMER SONIC 2006】BUCK-TICK - LIVEも、
この「M.A.D」で、一気に破裂した。
「僕は狂っていた ひざをかかえながら
傷をなめていた 汁を垂らしながら」
このようなフェス・イベントでは、彼らの代名詞的な
「ICONOCLASM」や「Baby,I want you.」といったナンバーがエントリーしていない
今回の【SUMMER SONIC 2006】では、印象的に演奏された「M.A.D」。
マイクスタンドを抱え込むように膝を着く櫻井敦司。
「M.A.D」を演る時はいつもそうだ。
今井寿が、そのギター・ソロまで、微動だにせず、リフレインをかき鳴らしている。
結婚したばかりの星野英彦は、ブラックのシックなスーツに身を包み、
のノイジーなギター・サウンドで、空間を“狂気”で埋めていく。
ステージ天井からのライトがまるで星空のように、
この“狂気”に蝕まれた5人を照らす。
櫻井敦司が、少しオーディエンスを挑発するかのように、
尻を突き出し、それを叩く。
真っ赤に染まったヤガミ“アニイ”トールの、ドライヴが鋭さを増す、
“アウェイ”と言える会場も、この曲なら唄える、とばかりの大合唱。
星野英彦は、コーラスにも参加する。
樋口“U-TA”のゼマティス・ベースがギラリを光る。
前髪で顔の見えない櫻井敦司は、途中、苦しそうの悶えた後、
髪の毛を掻き上げると、耳から、モニター・イヤホンを外してしまう。
惡夢の耳鳴りが、彼を襲ったのだろうか?
お馴染みフレーズの繰り返しで、楽曲が終了しても、
ひとり「狂っちまえよ・・・」とつぶやく櫻井。
「M・A・D」でクライマックスまで登り詰めると、
どうしても、『Climax Together』を思い返してしまう。
あれから、15年以上の時間が過ぎ去っているのだ。
しかし、「M・A・D」の狂気の刃は、ひとつも鈍っちゃいなかった。
間違いなく「スピード」と並ぶ、BUCK-TICKクラッシックの名作だ。
次も意外な選曲ではあるが、「ノクターン-Rain Song-」。
これも、前ライヴツアーのアンコールにフューチャーされた一曲だ。
不思議なのは、BUCK-TICKの楽曲は、
単体で聴くとその楽曲自体のキャラクターが全面に押し出されるが、
ライヴツアーでのコンセプトによってその印象もまた、違った側面が光って見えるのだ。
まるでダイヤモンドのカッティングによって、その輝き方が変わるように、
BT楽曲もまた、様々な光を放っている。
「ノクターン-Rain Song-」はこの日、やはり、ゴシックの輝きの中にあった。
不安定に片足立ちして唄う櫻井敦司。
それが終わるとMC。
「ミナサン 夏 タノシンデクダサイ」
外国人タレント並みのカタコトMCは、この会場の雰囲気に合わせたものだ。
そしてやはり、この新曲は、BUCK-TICKの夏を表現する楽曲なのだろう。
「蜉蝣-かげろう-」。
ここに、BUCK-TICKの最新曲がエントリー。
本当に、狂おしくも、美しい楽曲だと、想う。
「ROMANCE」の後が、この楽曲でよかった。
そう、想う。
“夏”が似合わないといわれる彼らの“夏”を切り抜いた名曲だ。
お次も久々に登場のサイバー・ゴシック「細胞具ドリー:ソラミミ:PHANTOM」
この楽曲の歌詞の一節「一度生まれて 一度死ぬ」を英語表記にしたものが、
名盤『ONE LIFE,ONE DEATH』だ。
今井寿の悪夢は、ここら辺から、急加速する。
「命短し 恋せよ乙女」
真夏の眠れぬ夜には、ドリーを数えよう。
フィニッシュは、ライヴ映えという意味では、彼らのナンバー1ソング。
“輪廻転生”の「Ash-ra」。
熱い夏、夢魔サキュバスも、きっと、阿修羅となりて、
人々の夢に侵入し、彼ら惑わすリリスとなる。
「惑わされない蛇は木の根元に巣をつくり、
アンズー鳥はその若鳥を木の枝で育て、
闇の娘リリスは住処を幹に作っていた」
夢魔からスタートした、熱いBUCK-TICKの夜も、
繰り返し輪廻り逢うフロアの隅で、君が揺れる、激しく美しい。
【SUMMER SONIC 2006】の唯一の“暗黒ステージ”もこれで終了だ。
「ああ 輝きが消えてゆく もうすぐ太陽の破片」
そして、次は、三都開催(東京・大阪・名古屋)となる
【FISH TANKer's ONLY 2006】 。
夏の終わりに、また、逢おう。
M・A・D
(作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
僕は狂っていた ひざをかかえながら
傷をなめていた 汁を垂らしながら
逃げ出すサイレンの渦 こうして生きてゆくのか
僕は狂っている 舌を溶かしながら
赤い海の底で溺れる夢を見る
想い出す優しさだけを そうして眠りにつくよ
アスファルトを抱いて 熱にうなされている
僕を破裂させてくれ
僕は狂っていた もう二度と会えない
全て狂っていたどうって事無いサ
逃げ出すサイレンの渦 想い出す優しさだけを
子守歌の中で聞いた あなたの鼓動
僕を狂わせてくれ
ああ ただ星が綺麗だね 僕はお前にはなれない
ああ 輝きが消えてゆく もうすぐ太陽の破片
アスファルトを抱いて 熱にうなされている
僕を破裂させてくれ
子守歌の中で聞いた あなたの鼓動
僕を狂わせてくれ
ああ ただ星が綺麗だね 僕はお前にはなれない
ああ 輝きが消えてゆく もうすぐ太陽の破片
ああ ただ星が綺麗だね 僕はお前にはなれない
ああ 輝きが消えてゆく もうすぐ太陽の破片
僕は狂っていた もう二度と会えない
全て狂っていた どうって事ないサ