「嗚呼 今夜も血が欲しい闇をゆき闇に溶け込む」
「ROMANCE」のモチーフ=吸血鬼に関しては、作詞を担当した櫻井敦司が公言している。
彼は、何としても、ヒロインの血が欲しくて、様々のロマンスを駆使して、
彼女に近づこうとする吸血鬼ヴァンパイアの姿を描いたと語る。
そのストーリー性質から言ってアルバム『十三階は月光』に収録された同曲に、
「ROMANCE-Incubo-」とサイドネームを付けた今井寿の趣旨は、
「夢魔-The Nightmare」とのリンク付け(※Incuboはインキュバス、男性の姿をした夢魔)したとしても、
人間の“魔”を“誘惑”する存在としての悪魔の姿に違和感はないだろう。
吸血鬼は、人の生き血を吸う怪物として、
古来、多くのフィクションにおいて題材として取り上げられてきた。
ヴァンパイヤ、ノスフェラトゥ、カーミラなどとも呼ばれる。
一般に吸血鬼は、一度死んだ人間がなんらかの理由により不死者として蘇ったものという設定が多いが、
現代の吸血鬼・ヴァンパイアのイメージは東ヨーロッパの伝承に起源を持つ。
実際、カトリック教会地域における吸血鬼伝承は12世紀ごろから急激に消滅し、
それ以降「夜間活動する死者」の伝承は、肉体性をまったく持たないもの、
すなわち幽霊のようなものへと変化している。
これはキリストの復活を重視するローマ教会としては、
それ以外の死者の復活を許容できなかったことが、原因にあげられる。
また、東欧やバルカン半島においては、
ヴルコラク、ストリゴイ、ヴコドラク、クドラクなどさまざまな吸血鬼伝承が存在しているが、
それらは人狼・魔女・夢魔・怪鳥などの伝承と融合し区別が難しい場合がある。
まさに、今回、BUCK-TICKの扱った“ゴシック”というテーマには、
必要不可欠な要素といえるが、先行シングル「ROMANCE」の吸血鬼ドラキュラ伯爵のイメージで、、
アルバム『十三階は月光』の持つ“悪夢”の“誘惑”というテーマには、
さらに“吸血鬼”が“夢魔”であるという今井寿のアイデアが、実に、ハマってしまう印象だ。
よって、シングル盤の「ROMANCE」とアルバム盤「ROMANCE-Incubo-」には、
聴いた感覚に差異が、生まれてくる。
勿論、アレンジの差がそう感じさせるのかも知れないが、
ファースト・インパクトの美麗なるシングル盤「ROMANCE」の精悍な闇の紳士たるイメージが、
アルバム内で聴くアルバム盤「ROMANCE-Incubo-」では、
少し揺れ動くような哀愁漂う“嘆きの不死者”のイメージとなって、我々の胸を突くのだ。
吸血鬼の伝承は世界各地で見られ、ヨーロッパのヴァンパイアに加え、
アラビアのグール、中国のキョンシー等があるが、
この場合、吸血鬼という名称がもちいられているが、
人間の生き血を吸う行為はすべての吸血鬼伝承に共通するものではない。
「ROMANCE」の場合は
やはり、ここでは吸血鬼の代名詞としてドラキュラ伯爵を取り扱ったモノという解釈が妥当だろう。
文学的モチーフとしての吸血鬼も、
バイロンの主治医ポリドリの作でバイロン作と伝えられた"Vinpire"を嚆矢とする。
19世紀末から20世紀初頭にはブラム・ストーカーのヴラド・ツェペシュをモチーフとした
恐怖小説『吸血鬼ドラキュラ』が、そのイメージを確立することとなる。
モデルとなったヴラド・ツェペシュなる人物は実在し、
15世紀ルーマニア、トランシルバニア地方出身のワラキア公のヴラド3世を指す。
ツェペシュとは、「串刺し」の意味で、苗字ではなく串刺し公と言う意味を込めたニックネーム。
苗字はない為、ヴラド3世とするのが正確である。
存命時はむしろツェペシュよりもドラキュラというニックネームの方が多く用いられたのではないか
と言われ、本人筆と思われるサインにも「ヴラド・ドラキュラ」
(正確にはWladislaus Drakulya、ヴラディスラウス・ドラクリヤ。"ヴラド=竜の息子"の意)
と書かれたものが存在する事から、
ドラキュラというニックネームは本人も喜んで使用していたと推測される。
ツェペシュのニックネームは、トルコで罰を与える時に使われた処刑で、
パラ(尖った杭)で断末魔の苦しみが続くように、直腸から口までを“串刺し”にするもので、
彼はこの方法で、一回の遠征で23,883人の囚人を串刺しにしたと伝えられる。
彼が少年の頃、十字軍派兵の最中に人質としてオスマン・トルコのスルタンの宮廷に送られた際に
受けた性的虐待が、彼の妄想に取り憑かれる原因ではないかと言われる。
実際のところモデルとして使われているのはドラキュラというヴラドのニックネームと、
出身地が現在のルーマニアという点だけである。
◆◇◆◇◆
最近の研究では、
「ドラキュラの人物像のモデルは、舞台俳優のヘンリー・アーヴィング卿であろう」
といわれている。
これは、原作者のブラム・ストーカー自身がヘンリー・アーヴィングのマネージャーであり、
アーヴィングの劇団の世話人と、劇場支配人も兼ねていた為である。
ヘンリー・アーヴィングは、その名声とは裏腹に、傲慢で我侭な性格であったことが伝えられている。
このため、昼夜を問わずアーヴィングに呼びつけられ、用を言い付かっていたストーカーは、
精神衰弱に陥っていたと言う。
「この性格がドラキュラ伯爵に受け継がれた」というのが今の研究者達の見方である。
実際、書きあがった原作をストーカーはいち早くアーヴィングに見せている。
舞台化を前提とした小説であり、アーヴィングにその提案をしたにも関わらず、
アーヴィングは「つまらない」と一蹴したとされる。
このことからも「ドラキュラ伯爵」はヘンリー・アーヴィングの「当てつけ書き」である、
という説はかなり有力なものである。
また、ストーカーはイングランド人貴族地主による搾取が常態化していた
アイルランド平民階級の出身であり、
「人の生き血を吸う、滅びゆく貴族」
というのは政治的にもかなり意味深な暗喩であるとされる。
ドラキュラはルーマニア語で「ドラゴンの子供」「悪魔の子」という意味を表す。
小説執筆時の題名は「不完全な死」という題名だったが、
本小説が余りにも有名になったため、現在ではドラキュラと言えば吸血鬼の意味として使われることが多い。
先述したが、ヴラド3世がドラキュラと呼ばれていた、及び自称していたのは事実であるが、
これは単にヴラドの父が竜公(ドラクル)と呼ばれた事に起因する。
竜公の息子の小竜公ドラキュラという訳だ。
ストーカーは恐らく、そういったバックグラウンドは知らずに
単純に、この名前の響きを気に入って吸血鬼の名前に採用したものと思われる。
◆◇◆◇◆
これを映画『魔人ドラキュラ』としてユニバーサルが映画化。
世界的にヒットし、戦前のホラー映画ブームを巻き起こした。
ユニバーサルは怪奇メーカーとして名をはせ、
ドラキュラ役で主演したベラ・ルゴシも世界に知られる怪奇スターとなった。
オールバックの髪型に燕尾服、赤い勲章を下げたネクタイに襟を立てたマントのイメージが
定着したのもこのベラ・ルゴシのもの。
それより先に映像化が試みられた吸血鬼映画に
F・W・ムルナウにより1922年に作成されたドイツ表現主義映画『吸血鬼ノスフェラトゥ』があるが、
ムルナウは当初ブラム・ストーカーの小説『吸血鬼ドラキュラ』を原作に映画を製作する予定だったが、
彼の制作会社は版権元から映像化の権利を得られなかった。
このためムルナウは独自の解釈と話の筋をわずかに変えることでこれを解決した。
「Dracula」のタイトルは「Nosferatu」に、ドラキュラ伯爵がオルロック伯爵に変更された。
1958年に映画『魔人ドラキュラ』は『吸血鬼ドラキュラ 』として、
英国のハマー・フィルム・プロダクション製作でリメイクされた。
これがホラー映画史上屈指の傑作として名高い。
前年に公開された『フランケンシュタインの逆襲』の大ヒットを受け、
同じ主要スタッフ・キャストを起用してハマー・フィルムが制作した古典派ホラー第二弾となった。
初のカラーフィルムによるドラキュラ作品でもある。
さらに『地獄の黙示録』のフランシス・フォード・コッポラ監督により、
1992年に『ドラキュラ (Bram Stoker's Dracula)』としてアメリカで再度、映画化された。
この作品では、
ゲイリー・オールドマン演じるドラキュラ伯爵とウィノナ・ライダー演じるミナのロマンスを中心とした映画で、
これまでのドラキュラ作品とは一味違った内容になっている。
アンソニー・ホプキンスは司祭役とヴァン・ヘルシング役、
ウィノナ・ライダーはエリザベータ役とミナ役とそれぞれ二役演じている。
1993年の第65回アカデミー賞で、衣裳デザイン賞(石岡瑛子)、メイクアップ賞、 音響効果編集賞受賞。
美術監督賞、美術装置賞の2部門ノミネートと数々のタイトルを手にした。
櫻井敦司の書いた「ROMANCE」は、
このコッポラ作品と1994年製作の米国映画
『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(原題:Interview with the Vampire)が
ミックスされたような感触だ。
こちらのクリスチャン・スレーター扮するインタビュアー役は、
当初リバー・フェニックスが演じる予定であったが、当人が死亡したために演じられなかった。
他にヴァンパイア役で、トム・クルーズとブラッド・ピットが競演して話題となった。
アン・ライスによる小説「夜明けのヴァンパイア」が原作で1973年に執筆され、1976年に出版されたモノだ。
ここで描かれるドラキュラ=ヴァンパイア像は、まさに「不死者」の哀愁を嘆くもので、
「ROMANCE」にも、そのファクターが多分取り入れられる。
嘆く不死者を扱った楽曲には「カイン」が存在するが、
今井寿のゴス・テイストの曲調の中に、櫻井敦司は、この嘆きを感じ取っていたのかも知れない。
◆◇◆◇◆
2005年12月14日リリースされたLIVE DVD【13th FLOOR WITH DIANA】にも、
クレジットされていないが、今井寿の沈黙の名作「13秒」が収録されている。
蝋燭の灯る楽屋裏・・・
バレリーナ=ベッキーの眠りは、いつまで続くのだろう。
今、万感の思いを込めて、「ROMANCE-Incubo-」前の「13秒」が数えられる。
ステージでは、2度目のアンコールに応じたメンバーを拍手で迎え入れる観客。
今、まさに、最期の場面が、始まろうとしている。
この“夢”の果てに待ち受ける“ROMANCE”・・・。
◆◇◆◇◆
追加公演【13th FLOOR WITH MOONSHINE】NHKホールでも、2度目のアンコールの開幕とともに、
この美しくも物悲しいイントロが響き渡る。
紫の霧は立ち込めている。
ヴラド伯爵はルーマニアトランシルバニア城の城主だった。
1462年コンスタンチノーブル陥落。
ワラキア公国の王ヴラド・ドラクル伯爵は、
キリスト教世界に攻め込んでくるトルコ軍をせき止める為、勇猛果敢に戦う。
勝利を収めるが、逃げ去る敵兵が城に「ヴラド戦死」の偽の手紙を放った為、
夫の死を悲しんだ妻エリザベータは川に、身を投げて死ぬ。
キリスト教では自殺者の埋葬は許されず、その魂も天に召されることもない。
キリスト教を守る為に命を懸け戦ってきたヴラドは、主の無情を怒り、神への永遠の復讐を誓う。
ヴラドが剣で突き刺した十字架からは血が流れ、ヴラドはその血を飲み干すのだった。
この“不死”の契約をヴラドが結んだ者は、悪魔と化した堕天使ルシファーであろうか?
もしくは、今井寿の頭の中で、この“誘惑者”こそ、“夢魔”インキュバスであったのかも知れない。
櫻井敦司が、囁く
「ロメェ~ンス」
今井寿が、トレードマークの赤マイマイを奏でる。
今宵の13th FLOORにも、最期の叙事詩が始まる。
櫻井敦司は、まるで、オーケストラの指揮者のように、この懇情の旋律を誘導する。
「月明かりだけに許された
光る産毛にただ見とれていた」
1897年、若い英国の弁護士であるジョナサン・ハーカーは、
年老いたドラキュラ伯爵という高貴な男がロンドンの不動産を購入する手続きを行うため
トランシルヴァニアのドラキュラ城を訪れていた。
成功すれば昇進を約束するという上司の言葉にミナ・マーレイとの結婚を控えて野心に燃えていた。
しかし、狼の遠吠え、城の入り口の地獄の青い炎、
実際の動きとは無関係な伯爵の影、すべてが恐ろしい。
「眠り続けている君の夢へ
黒いドレスで待っていて欲しい」
イギリスでは、ジョナサンの婚約者ミナは、
友人で美しいルーシー・ウィステンラの屋敷に滞在していた。
ルーシーは将来有望な3人の男たちから求婚されていたが、
ある夜、夢遊病のルーシーが彷徨って行くのを見たミナは後を追いかけると、
怪しく乱れるルーシーの上に赤い目をした獣が覆い被さっていりのを目撃する。
ミナに気付いたその獣は「見るな」と哀しそうな目をして姿を消す。
ルーシーの首筋には二つの赤い点がある。
それをヴァン・ヘルシング教授はノスフェラトゥによるものだと気付く。
「嗚呼 君の首筋に深く愛突き刺す」
ミナはロンドンの町の中で、ヴラド伯爵と名乗る不思議なある外国人男性に出逢う。
時を越えてエリザベータの生まれ変わりであるミナに出逢う為に、
ドラキュラ伯爵は遥々ワラキアからやって来た。
伯爵と逢ううちにエリザベータの気持ちが甦ってくるミナは、激しい情熱を伯爵に対して感じるのだったが、
ドラキュラ城から決死の脱出を行ったジョナサンから
結婚式を挙げるためにブタペストに来るようにと手紙を受ける。
貞淑なミナは伯爵との約束を反故にして、ジョナサンの許へ向かう。
「嗚呼 僕の血と混ざり合い夜を駆けよう
月夜の花嫁」
ミナの結婚を知ったドラキュラ伯爵は、
狼の姿に変身して、怒りと悲しみでルーシーにとどめを刺す。
ヘルシング教授は吸血鬼となったルーシーに死の安らぎを与える為、
彼女を愛した3人の男とともに彼女の墓を訪れ、棺を開けると中は空っぽ。
幼女をさらって戻ってきたルーシーがヘルシング教授に血を吹きかける。
悪魔と化したルーシーを見て、婚約者のひとりホルムウッド卿は意を決して
ルーシーの心臓に杭を打ち込む。教授が首を切り落とす。
「天使が見ているから月を消して
花を飾ろう綺麗な花を」
結婚したミナとジョナサンは、ヘルシング教授に聞き、
伯爵が戻って来れれないようにその住処を清めに行く。
その時、精神病院に匿われたミナはドラキュラ伯爵に忠誠を誓うレンフィールドに出会い、
彼から早く逃げるように忠告を受ける。
「嗚呼 ひとつは君の瞼の横に」
煙となって精神病院に現れたドラキュラ伯爵は、自分を裏切って忠告を与えたレンフィールドを殺す。
そしてベットで眠っているミナのもとへ忍び込んでくる。
ドラキュラ伯爵の正体を知ったミナは、ルーシーを殺したと彼を打つが、それでも愛していると抱きしめる。
そんなミナに自分と同じ永遠の命を与えようとする伯爵だったが、
愛する人を呪われた者には出来ないと思いとどまろうする。
しかし、すでにミナの想いは止められず、伯爵の胸から血を飲むのだった…。
そこへヘルシング教授達が戻ってくる。
伯爵は、無数の鼠と化して姿を消す。
「嗚呼 そしてひとつは君の死の窓辺に
闇夜の花嫁」
ヘルシング教授はドラキュラ伯爵の花嫁となったミナに催眠術をかけ、
伯爵が海路故郷トランシルヴァニアへ戻っていることを知る。
海は伯爵が嵐を起こしていた為、ヘルシング教授一行は陸路、トランシルヴァニア・ワラキアへと向かう…。
「嗚呼 こんなに麗しい跪き祈りの歌を
嗚呼 今夜も血が欲しい闇をゆき闇に溶け込む」
ドラキュラ城では、ミナとヘルシング教授のところへ3人の女吸血鬼が現れ、
ミナに教授を“誘惑”するように惑わせる。
しかし、ヘルシング教授はその“誘惑”を振り切り、
朝になると城で眠る女吸血鬼の首をはねる。
夕日が沈む頃、
ジプシー達が馬車で運ぶ棺に入ったドラキュラ伯爵をジョナサンたちは猛スピードで追いかけ、銃で撃つ。
ドラキュラ伯爵の危機を知った魔女ミナは吹雪を起こしてジョナサンたちの行く手を阻む。
日没ぎりぎりに城に到着し、ジプシーとの激闘の末、ジョナサンは伯爵の入った棺を開け、
伯爵の首に傷をつけ、伯爵の胸を銀の剣で刺す。
そこへ銃を持ったミナが立ちはだかる。
私の胸を刺すことが出来たら刺せというミナの前に、ジョナサンは崩れ落ちる。
ミナは城の教会の中へ伯爵とともに入って行く…。
「嗚呼 そして最後の場面が今始まる
嗚呼 君のナイフが僕の胸に食い込む
そう深く・・・さあ深く」
ミナのおかげで心に愛を取り戻すことができた伯爵の顔に十字架から光が射し、
獣の顔から若きヴラド伯爵の顔へと戻って行く。
そして伯爵は自分に安らぎを与えるようにミナに告げる。
ミナは愛するヴラド伯爵の求めに応じ、胸に刺さった銀の剣をより深く突き刺す。
天井を見ながら永遠の眠りにつこうとする伯爵の顔は至福の喜びが満ちている。
ミナがふと見上げた教会の天井には、ヴラドとエリザベータの睦まじい姿が描かれている。
「嗚呼 こんなに麗しい跪き祈りの歌を
嗚呼 いつしか腐りゆく跡形も無く消えてゆく」
◆◇◆◇◆
「君の首筋に・・」
自分の首筋に手をやり血を求める魔王櫻井敦司。
「闇夜の花嫁・・」
とマイクスタンドを斜めにして、ミナをそっと抱きしめるようにする櫻井の仕草が、
400年もの間、想い続けたヴラド伯爵の“愛”を感じさせる。
キリスト教の死生観では、“輪廻転生”はないはずのストーリー。
この物語では、エリザベータの想いは、ミナの愛の魂となって転生した。
それは、禁忌=自殺者としてエリザベータの魂が、天に召されず彷徨っていた為。
間奏に入るとライヴ独特のスリリングなギターソロを聴かせてくれる今井寿。
左袖から、バレエリーナ=ベッキーが再び登場する。
ベッキーは、羽根が付いた仮面で顔を隠し、華麗なトゥダンスで現れる。
ソファに座っている櫻井敦司に、ベッキーは、その羽根の付いた仮面を渡す。
再び櫻井敦司唄い始め、追い縋るように彼女の側に跪く。
櫻井は、彼女に、触れることも出来ない・・・。
櫻井敦司の横を幻影のようにすり抜けて行く。
感動的に“美しい”ワンシーンだ。
「ROMANCE」の旋律が鳴り響く中、ひとり櫻井は幻影を追い求め・・・
崩れ落ちていく・・・。
ROMANCE-Incubo-
(作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
月明かりだけに許された
光る産毛にただ見とれていた
眠り続けている君の夢へ
黒いドレスで待っていて欲しい
ああ 君の首筋に深く愛突き刺す
ああ 僕の血と混ざり合い夜を駆けよう
月夜の花嫁
天使が見ているから月を消して
花を飾ろう綺麗な花を
ああ ひとつは君の瞼の横に
ああ そしてひとつは君の死の窓辺に
闇夜の花嫁
ああ こんなに麗しい跪き祈りの歌を
ああ 今夜も血が欲しい闇をゆき闇に溶け込む
ああ こんなに麗しい跪き祈りの歌を
ああ いつしか腐りゆく跡形も無く消えてゆく
ROMANCE
ああ そして最後の場面が今始まる
ああ 君のナイフが僕の胸に食い込む
そう深く・・・さあ深く
ああ こんなに麗しい 跪き祈りの歌を
ああ 今夜も血が欲しい闇をゆき闇に溶け込む
ああ こんなに麗しい跪き祈りの歌を
ああ いつしか腐りゆく跡形も無く消えてゆく

