「vodka.tequila.japanese SAKE 世界が回るトロけている」


「ALIVE」⇒「CLOWN LOVES Señorita」⇒「Goblin」


この流れは、
ライヴツアー【13th FLOOR WITH MOONSHINE】一貫してパフォーマンスされる。
このステージで一番の躍動感を持ってプレイされるシーンと言えるだろう。
ここより以降の【13th FLOOR WITH MOONSHINE】は、どんどん深く濃い霧の立ち込める
ダーク・ワールドに突入していく。


ここら辺で、酒でもあおって、一度“魂”を解放させるのだ。


「Goblin」の演奏が始まると、この13th FLOORは、“舞踏会”に姿を変える。
今井寿が、今やトレードマークと言える赤マイマイに持ち替えて、
この“舞踏会”のステージを、星野側から、今井サイドへと猛ダッシュを決める。
定ポジションに戻ると、彼は、仰向けに寝転び、巨大なクラウン・シューズを天井に向けバタバタをさせる。

それから、おもむろにスクッと立ち上がると、マイクスタンドに飛びつき、

「Oh! Yaeh~~(a~ha)Oh! Yaeh!!」

と、あの印象的なコーラスを決めるのだ。

「死に神にとり憑かれ 墓場で歌う娑婆dabada
 キマッテルかい?黒いマント自分で踏んづけ1回転」


そして、更に「Goblin」歌詞そのままに、
◆◇◆◇◆柄のフロアに、華麗なスライディングを決め……1回転!
勿論、演奏したままで……。

これには、観衆も歓声をあげて喜んだ。

さらにクラウン・シューズを大きく蹴り上げる独特の“新”マイマイダンスを披露しながら、
クルクルと回る今井寿。

まるで“goblin”に取り憑かれたかのような今井寿の“狂気”のアクションは続く。
ヤガミトールのドラム・キットの前に攀じ登り、仁王立ちすると、
次の瞬間、赤いソファの踏み台にして、13th FLOOR にジャンプ!!

もう、手がつけられない。



◆◇◆◇◆



“goblin”は、欧州民間伝承物語(いわゆる昔話)に頻繁に登場する伝説の生物である。
日本の昔話の“赤鬼”“青鬼”とは違い、人間よりもその身体は小さく、
日本語では、“子鬼”“小鬼”などと訳されるようで、その姿に定型はないようだ。
“goblin”が登場する様々な物語でも、
“精霊”であったり、“妖精”であったり、“幽霊”あったり、
様々なイメージで捉えられている。
共通する点は、おふざけが好きで意地の悪いいたずら者、といったところで、
一般に醜く邪悪な小人として描かれることが多い。

恐らくは、“人間”の“魔”が、表面化した状態を表現しているようでさえある。
“goblin”は、人間そのものと言えるかもしれない。

David Bowieが主演したダーク・ファンタジー映画
『ラビリンス 魔王の迷宮』(ジム・ヘンソン監督1986年)では、
マペットと小人の俳優が演じた多数の“goblin”が登場したが、イメージは“鬼”というより、
“小人たち”という印象で、魔界の一般市民といったイメージだ。
そして、その“goblin”の君主たるDavid Bowie 演じる魔王ジャレスは異形の生物ではなく、
ハンサムで強大な魔力を持ち、冷酷ではあるが決して邪悪ではない存在であった。

E・R・エディスン著作『ウロボロス』(The_Worm_Ouroboros)でも、
“goblin”は、勇敢で正義心に富む種族として登場し、
王である快傑ガスラークに率いられて主人公勢力であるデモンランドを助けてウィッチランドと戦うという、
善玉で描かれている。


また、有名な所では、
映画でもヒットしたJ・R・R・トールキンの長編小説『指輪物語』(The Lord of the Rings)で、
オークという名に変えられ登場しているが、この“goblin”も、中つ国(Middle-earth)という
トールキンの作り上げた架空の世界の“住人”という役割で、邪悪で狡猾な種族という側面もあり、
この姿が、現代の“goblin”像に強い影響を与えたと言える。

その他、大ヒットした映画シリーズ『ハリー・ポッター』でも“goblin”は登場するが、
地下に生息するコボルト(Kobold, kobalt)の生態・イメージである。
コボルトははドイツの民間伝承に由来する醜い妖精、精霊である。
このコボルトの最も一般的なイメージは、
時に手助けしてくれたり時にいたずらをするような家に住む小人たちというものである。
彼らは家事をしてくれたりもするが、住人の人間にいたずらをして遊んだりもする。
いわば、これも“小市民”という側面が大きい。

すなはち、こういった物語での“goblin”のイメージは“群衆”であり、
名もないその他大勢の表現するのに使用されたのでは、ないだろうか?


櫻井敦司は、この楽曲「Goblin」のイメージを

「お人好しでドジな小悪魔が、軽快に酔っぱらってる雰囲気」

と語っているが、更に言うと、
この“goblin”こそ、我々“一般市民”を描いた姿なのではないか?


善良な“一般市民”たる“人間”の我々が、酒の力を借りて、ハメを外している姿。
これこそ、「Goblin」で唄われている世界観と言った気もしてくる。



◆◇◆◇◆



日本でもダーク・ファンタジーの傑作といえる荒俣宏原作の映画『帝都物語』に登場する小柄な鬼が、
工事中の地下鉄トンネル内でトロッコに乗って出現し工事を妨害する。
この鬼の生態・姿は、広義の“goblin”のイメージから創作されたものと思われる

この『帝都物語』は、荒俣宏の小説デビュー作(1985年発表)で、第8回日本SF大賞受賞。

内容は源平大戦に敗れた平将門の怨霊により帝都破壊を目論む魔人・加藤保憲と
その野望を阻止すべく立ち向う人々との攻防を描いたSF超大作で、
著者の荒俣宏がこれまでに蓄積した博物学や神秘学を総動員しており、
風水を本格的に扱ったおそらくは日本最初の小説と目される。
陰陽道、風水、奇門遁甲などの魔術用語を定着させた作品でもある。

また明治末期から昭和73年まで約100年に亘る壮大な物語であり、
史実や実在の人物が物語に絡んでいるのが特徴。
登場人物には、渋沢栄一、幸田露伴、寺田寅彦、森鴎外が登場し、
出版者の角川春樹も 奈須香宇宙大神宮の大宮司として東京の破滅を見届けるという役柄で、
物語に参画している。

映画『帝都物語』には、渋沢栄一役を勝新太郎が演じ話題を呼び、
また西村晃が、學天則の製作者である実父・西村真琴を演じている。

こういったダーク・ファンタジー物では珍しく、
配給収入は10億5千万円で、その年の日本映画の8位という成績を挙げている。



◆◇◆◇◆



「裸のjudas jesus抱き合う
 King & Queen.Joker!Mesdemoisells!
 だんだん俺はハイになってきたぜ」


櫻井敦司は、その“人間”の心の底に巣食う“魔”を開放すべく、
ハイテンションに、酒をすすめ、謳い上げる。

ここで、その凝り固まった“魂”を解放するのだ。

腰を激しく叩き鼓舞するかのように、観衆の煽り立てる。



「dadada dadada dadada dadada
 dadada dadada dadada dadada」




この楽曲では、樋口豊も、ステージ前面に出て来て、今井寿とのランデヴューを決める。
酒の力が、このバンドのパワーを増幅させる装置であるのは明白である。
“魂”を解き放ち、【進化のモード】を開くのだ。

その時、愛も死も、忘却の彼方へ吹き飛ばし、己の欲望のままに、

「解き放て!!!」




アルバム『十三階は月光』のコンセプトが話し合われたのも、酒の席であった。
酒は、人間の“妄想”をも膨張させる。
そして、幾度となく、それを利用し、素晴らしいクリエイティヴな幻想世界を創り上げてきたのは、
他でも、ない。

彼ら、BUCK-TICKだ。

「Goblin」は、そんな彼ら自身の事を唄っているのかも知れない。



そんな「Goblin」は、そのコンセプト会議(飲み会)に入る前に、
櫻井敦司が、書いていた楽曲のひとつのようだ。



「コンセプトについて話しているときに
「DIABOLO -Lucifer-」っていう曲についてなんですけれども、
今井の中で世界っていうものについて話をしていて、それに対しての印象を話したりはしましたね。
まぁ、酒の席でのことだったんですけど。
そこでお互い感じてることにズレがないことを確かめられた、っていうことはありました。
でも、実際に言葉でやりとりしたのはそのくらいでしたね」

――では、まだコンセプトが固まる以前から楽曲自体はいくつかでき上がっていたわけですね。

「なので詞も「Goblin」だったり、先にシングルになった「ROMANCE」だったり、あと「異人の夜」か。
そのあたりは、勝手に自分で書いてました」

――にもかかわらず、このアルバムには大きな流れといいますか、
ひとつのストーリーの存在を感じることもできると思うのですが、
それは前述の4曲以降の楽曲ができていく中で、櫻井さんのなかで生まれていったものですか?

「ええ。コンセプトが決まって、そこからは加速していきました」

(『PATi PATi』誌より)


そういった意味では、此処で「Goblin」が演奏されるのは、
いよいよ『十三階は月光』の世界へと我々を誘っていく最終確認を、
酒とともに、この「Goblin」達が送り出しているようにも聴こえる。

今井寿の見せたエキセントリックな“狂気”も、
その“覚悟”を我々に確認しているかのように見えた。



後戻りは……、出来ない。


人生と、一緒だ…。







Goblin
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)


Arabian night 黒い瞳 思わず腰が揺れていた
vodka.tequila.japanese SAKE 世界が回るトロけている

裸のDevil & Angel抱き合う
裸足のLadies & Gentleman!
だんだん気が変になってきたぜ

dadada dadada dadada dadada

死に神にとり憑かれ 墓場で歌う娑婆dabada
キマッテルかい?黒いマント自分で踏んづけ1回転

裸のjudas jesus抱き合う
King & Queen.Joker!Mesdemoisells!
だんだん俺はハイになってきたぜ

dadada dadada dadada dadada

裸のAdam Eve抱き合う
踊りなBaby!stripppper!

dadada dadada dadada dadada
dadada dadada dadada dadada





【ROMANCE】

【ROMANCE】