さて、『MUSIC ON! TV BUCK-TICK SPECIAL』も、最終局面を迎える。
正直に言って、この結成20周年の2005年には、まだ、BUCK-TICKメンバー本人達も、
アニバーサリーというよりも、大作『十三階は月光』を全面に押し出していた感がある。

が、しかし、周辺が、20周年をあまりに、騒ぎ始めた。

それで、本人達も、

「エッ?20年…スゴイことなの?」

と気付いた節がある。

そして、周辺関係者も含めて準備を進め、メジャー・デビュー20周年の2007年を満を持して臨むことになる。
2007年は、周囲も、そして、彼ら自身も、しっかりと意識しての“祝福の一年”を演じたのである。
いうなれば、この2005年は、その2007年の活動の下準備的な要素があったと言えよう。

その経緯からしても、BUCK-TICKメンバーは、オリジナル・メンバーで、20年目を迎え、
今だ、CD,DVDセールスを伸ばし続けているという快挙だけに止まらず、
ジャパン・ロックのヴィジュアル・シーンやミックスチャー・ミュージック、デジロックを、
自ら発掘、開発し、昇華させていった功績に、やや自己評価すら低い感覚だ。

勿論、毎回アルバムをリリースする度に、その内容に自信を覗わせるコメントを残しているが、
それでも、“わかんない人には、わからんだろうなぁ”という感覚は、拭えない。
彼らは、よって、非常に控え目な露出で、活動を続けていた。

この傑作ゴシックの世界を描いた『十三階は月光』も同様の姿勢であり、
恐らくは、“リスナーを選んでしまうだろうな”と予想しつつリリースに至ったように思える。

それには、20周年というアニヴァーサリー・イヤーという事項すら、
言い方は悪いが、少し重くて“邪魔”であったのかも知れないのだ。



そんな中で、この『MUSIC ON! TV BUCK-TICK SPECIAL』は、
非常に貴重な番組と言えた。

そこら辺の微妙な事情を制作部も踏まえた上で、インタビューしているのが伝わってくる。
だからこそ、いつになく、リラックスした表情で、やや雄弁に語る今井寿の表情は、
貴重なものであるし、いつも、ほぼ沈黙を守るか、おちゃらけてしまう星野英彦のコメントも、
非常に、BUCK-TICKという存在の真の迫るコメントになったと思う。

また、いつも、スポークス・マンとして活躍している樋口兄弟は、
やはり、櫻井敦司も含むこのフロント3人衆のフォロー的なコメントに至るが、
昔話を、嬉しそうに語るヤガミ“アニイ”トールや、
20年という歴史を噛み締めるように、語る樋口“U-TA”豊によるヴィジュアル論も、
興味深く、このバンドの年輪を感じる言葉たちと言えた。

そして、ゴスを標榜する以上、どうしても主役を演じずにはいられない櫻井敦司の、
自信に裏付けされてはいるものの、いつもの謙遜気味なコメントにも、
ベテラン・ミュージシャンの“情熱と冷静”を感じるモノとして貴重であった。

さらに、彼らは、ミュージシャンズ・ミュージシャンと言える側面を持つ。
すでに、ブレイクしキャリアを積んだ同業者も、彼らのアクションに注目している。
今井寿にしろ、櫻井敦司にしろ、彼らの背中を見て、他のミュージシャンも時代の流れを見る。
アーチスト達が、新たにナニカを生み出そうとする際に、インスピレーションを与えてくれる存在。
“そうか!BUCK-TICKは、そう来るか!じゃあ、俺達は……”と。

それは、2007年に多くの先輩・後輩ミュージシャンが賛同した【TOUR PARADE】や、
アニヴァーサリー・イヴェント【BUCK-TICK FEST 2007 ON PARADE】の様子を観るとうなずけるハズ。




そして、此処に悪夢の協奏曲集『十三課は月光』が完成した。



そこに存在したのは、完全なるフィクションの世界。
そして、そこに存在するドラマ世界を完全のコントロール下に置いたという点で、
もし、このドラマが、“魔界”というモノを表現しているとしたら、
そのすべてを“支配する”君臨者としての称号として、

櫻井敦司=魔王

という方程式は、物理的に成り立つと言える。



そんな確信を持ちつつ、魔界のアルバム『十三階は月光』を引っ下げて、
20年目のBUCK-TICKが、ライヴツアーに繰り出すのだ。

この番組でも、「Q LIVEとは?」という、ある種“哲学的”な質問をそんな彼らに投げかけている。



樋口「みんなとの共有物ですかね?」

ヤガミ「まあ、ファンとのコミュニケーションの場っていうか。
でしょうね。ま、リアルに感じてもらえる場というか」

櫻井「その瞬間しかない、といいますか……。
確かに其処に居た、っていう現実という事実が、あの、あるっていう。
そういう意味では、ホントに、面白い瞬間瞬間だなとは、感じたことありますけど」

今井「なんか、発散できる場……。だと、思いますケド」

星野「成長する……処、っていうか。
まあCD出して、ライヴやって、また、そこで成長して。
で、その時には、また次に向ってる、っていうか」



ここでの各メンバーのコメントも興味深い。
ファン達、または、ツアー・スタッフを含めての“共有物”である、と答える樋口“U-TA”豊。
そのベクトルは、兄弟のヤガミ“アニイ”トールの実際に触れあうコミュニケーションの場としての、
ライヴの存在とリンクする。
そして、櫻井敦司の語る“時間”という“価値”を共有する“瞬間”という意味では、
この3人は、同義の事を語っているように感じる。

また、先のコメントにあったように、神が乗り移る“瞬間”を供に迎えようという今井寿は、
自らも、そして、オーディエンスをも“発散”=“解放”しよう挑戦する場と捉えているようだ。
そうして、皆が、【進化のモード】を開くのだ。
星野英彦は、その挑戦の先にある、進化を“成長”と捉える。
その“Loop”こそが、次への第一歩となるために、
ライヴは、己と他人との距離を測り直す絶対必要条件なのかも知れない。

結論としては、ライヴこそが、BUCK-TICKを、常に“Loop”させる起爆剤と言えよう。

この後に控えているライヴツアー
【TOUR 13ht FLOOR WITH MOONSHINE】 
一体、どんなモノになるのだろうか?


櫻井「やっぱり、その音で表現した、歌で表現したゴシックの世界をですね、
今度は視覚を通じて、総合芸術といいますか、舞台を含めて、灯りも含めて。
で、昔のそのサーカス団みたいな感じで、
アチコチ、こう、手造りといいますか、ルナパークというか、
アチコチ、みんなの町に行きますよ、って感じですね」


“サーカス団”と称して巡業に廻るイメージが、
このライヴツアー【13ht FLOOR WITH MOONSHINE】にピッタリだ。



続く、結成20周年の捉え方。

「Q 20th Annversaryを迎えて」という質問には?

星野「よく言われるんですけど。
まあ、単純に、“もう20年か”っていう感じは、しますけど」

ヤガミ「いや、早いなっていう。
遂、この間、東京、出て来たのに(笑)。
東京出て来る目的は、このバンドに入る為ですから。
U-TAに連れられて(笑)」

櫻井「いや、20年て、言葉を聞くと“長いな”と思うんですけども、ねぇ。
自分自身は、ホント早かったな、って思いますけど……。
う~ん、でも、やっぱり、こういった、刺激を受けて、
誰かに刺激を与えられるようなアルバムが、出来たっていうので、
それが、たまたま、20周年だった、と言いますか」

樋口「10年経った時が、結構、、なんか、早いな、っていう言葉が、すぐ、ポッと出たんですけどね。
20年って言われると、う~ん、
その後の10年は、結構長かったかなって印象ありますけどね」

今井「んん……。なんにもないんスよね、別に。ない。ないですよね。ホントに。
まあ、成人したぐらいのカンジ。(成人式ですね?)ですね(笑)」



ここでも、少し拍子抜けの返答をするメンバー。
やはり、この2005年には、20周年を意識するというよりも、
特に、この時期は、後に控えるライヴツアーが、楽しみでならない、といった印象である。
それほどまでに、アルバム『十三階は月光』の出来には、満足していたのだろう。
20周年も、たまたま、時期が重なったダケ…。





質問は更に“哲学的”になる。
「Q BUCK-TICKとは?」一体何か?

樋口「うわぁぁ、コレ、みんなに訊いてみたいですねぇ。
BUCK-TICKってなんだろうな?…BUCK-TICKとは?……う~ん」

櫻井「えへへへ。5人編成のバンドです(笑)」

ヤガミ「う~ん。だいぶBUCK-TICKになりましたね、ってカンジですね(笑)。
まあ、ホントに。
うん、ビジネスでもあるし、ブラザー的っていうか。
まあ、こんだけ長い間、良くやれたな、と。ホントの結成者で長くいるじゃないですか。
だからホントに、血は繋がってないけど、ブラザー的っていう感覚あるし。
で、なんかあれば、いまだに、飽きなくて面白くできるっていう…メンツですよね」

今井「シンプルな、バンドです。…ハイ」

星野「自分自身っていうか。そういう感じですかね、はい」

樋口「あまりにも簡単な言葉で言えなくなってる自分が居て……。
う~ん、……“たいせつなもの”です。一番簡単になっちゃいましたかね?(素敵です…)」




答えに迷ってしまう素直な“U-TA”と、ポイントをまとめ“ブラザー”と表現するアニイ。
照れからか、“バンド”という物理的な側面で返答し、感情を敢えて押さえる櫻井と今井。
そして、いつも、一番寡黙なヒデが答える
「BUCK-TICKとは、自分自身である」
これこそが、実は見えない物を見ようとする“真実”であろう。





そうして、また、彼らはライヴツアーを始める。
まるで、人が死に、また、人が、産まれ出るかのように…。
夜が深け…、朝が来るかのように…。







ヨハネの黙示録 第1章

「恐れるな。わたしは初めであり、終りであり、 また、生きている者である。
わたしは死んだことがあるが、見よ、世々限りなく生きている者である。
そして、死と黄泉とのかぎを持っている。
そこで、あなたの見たこと、現在のこと、今後起ころうとすることを、書きとめなさい。
あなたがわたしの右手に見た七つの星と、七つの金の燭台との奥義は、こうである。
すなわち、七つの星は七つの教会の御使であり、七つの燭台は七つの教会である」



「もがき 産まれ
 足掻き 歌え
 もがき 産まれ
 足掻き 歌え あああああ・・」

「LIVE TOUR 13ht FLOOR WITH MOONSHINE」が始まる…。



【ROMANCE】