「静かに叩きつける 雨は鎮魂歌」


この『BEAT MOTION』のスペシャル・ライヴでは、
番組オープニングの耽美結晶とも言える「ROMANCE」、
トーク後の大胆なゴス・ワールドを披露した「DIABOLO」に続き、
アグレッシヴな魂の鎮魂歌「残骸」がパフォーマンスされた。

ハイパーなギター・サウンドをメイクする今井専用スタビライザーが、
トーク・セットの後に、黒マイマイと一緒に、用意されていたので、
もしや…、と思ったが、アルバム『十三階は月光』リリース前の放映に付き、
新曲ではなく、前作『Mona Lisa OVERDRIVE』からのエントリーとなった。

この時期に、この「残骸」が聴けるというは、ある意味では意外な選択とも感じるが、
マスメディアのNHKとしては、前作アルバムの先行シングルで、
しかも、オリコンのシングル・ランキング初登場4位とTOP10入りを果たした「残骸」は、
その認知度と視聴者へのプレゼントとして、妥当であったのであろう。

しかし、聴けば聴くほど、「ROMANCE」とは、逆の方法論で作り上げられた「残骸」が、
この場で、演奏されたのは、BUCK-TICKの創作の振り幅広さを改めて感じるのに、
持ってこいのモチーフと言えるだろう。

シングル発売の順としては、この「残骸」と「ROMANCE」の間に、
星野英彦のメロディアス・バラッドの完成体と言える「幻想の花」が挟まれるカタチになったが、
制作時期が、「幻想の花」は2002年の前々作『極東I LOVE YOU』であることから、
この「残骸」から「ROMANCE」への展開は、BUCK-TICKという楽隊が、
苦悩の現実世界から、昇天し、神々の棲む“天空”へ舞い上がった如き凄味を感じる。

コンポーザーとしての今井寿は、この思念の残骸を焼き尽くし、
更なる高見を目指して、飛天するのだ。

同時に、今井寿の作る独特のギターリフは、間違いなく、我々の耳に“残骸”を残す。
単なるスピード・ロックで、終わらない音の欠片を、
我々の心に刻み込んでしまうのだ。

彼がスラビライザーの弦に、ピックを引っ掛けた瞬間に、
我々のハートは、この永遠のビートを、記億の何処からか引っ張り出し、
“攻撃精神”を剥き出しにして、夜の彼方を疾走出来るのだ。

これこそ、が、
ロックの持つ魔法と言えよう。

「DIABOLO」で、酔いどれのヴァッカスを演じていた櫻井敦司も、
闇夜に、一撃を喰らわすが如くに、走り出す。

素直に、“カッコいい”としか表現出来ないような、
そんな、刹那のスリルとスピード感…。

これこそが、ロックン・ロールの破壊力を爆発させた
2年前のアルバム『Mona Lisa OVERDRIVE』の本質であった。
この破壊力と攻撃性を一度、極めた彼らであったから、
一寸の躊躇なく、次の徹底したゴシック・ワールドに、頭の先まで浸ることが可能だったのだろう。
実際、今井寿によれば、このハイパーなロックをプレイしながら、
次のトータル・コンセプトが、“自然と”湧きあがって来たというのだから…。
彼の思考回路には、脱帽せざるを得ない。


我々は、まさしく、この後、展開される
ダーク・ファンタジー『十三階は月光』の世界にどっぷりと浸かってしまう前に、
このリスキーな、スピード・ロックを魂に焼き付ける必要があったのかも知れない。

NHKのやや打算的な選曲であったかも知れないが、
そうした偶発的な要素すら、彼らは己の武器として突き進むことが出来る地点にいた。




これは“偶然”ではない。“必然”なのだ。




パフォーマンス後半では、櫻井敦司のアドリヴの叫びが聞こえる。

「もっと! もっと!」と繰り返し、

「深く!  深く!」と要求する。



「残骸」を燃焼し尽くしたら……、

さあ、行こう!

BTファンタジック・ダーク・ワールドへ。





『ヨハネの黙示録』第22章

「見よ、わたしはすぐに来る。報いを携えてきて、それぞれのしわざに応じて報いよう。
わたしはアルパであり、オメガである。最初の者であり、最後の者である。初めであり、終わりである。

いのちの木にあずかる特権を与えられ、また門をとおって都にはいるために、
自分の着物を洗う者たちは、さいわいである。

犬ども、まじないをする者、姦淫を行う者、人殺し、偶像を拝む者、
また、偽りを好みかつこれを行う者はみな、外に出されている。

わたしイエスは、使いをつかわして諸教会のために、これらのことをあなたがたにあかしした。
わたしは、ダビデの若枝また子孫であり、輝く明けの明星である」

「しかり、わたしはすぐに来る」。アァメン







残骸
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)


瓦礫の上で歌う 気の狂えた天使
静かに叩きつける 雨は鎮魂歌

残骸が 残像が 残酷に燃える
お前は夢見る 明日が来ることを
雨に 撃たれ

止まない激しい雨は 誰の鎮魂歌
麗しいお前の肌を 俺は汚すだろう
戯れ言は お終いだ 欲望だけだ
俺はもう夢見ない 明日が来ることを

深く もっと深く 俺は穢れて行く
腐りきった日々よ 最後は お前の中で 深く…

残骸が 残像が 残酷に燃える
お前は夢見る 明日が来ることを

戯れ言は お終いだが 絶望だけだ
俺はもう夢見ない 明日が来ることを

深く もっと深く 俺は穢れて行く
腐りきった日々よ 最後は お前の中で

深く もっと深く 深く 愛してくれよ
砕け散った日々よ 最後はお前の中で

深く …深く

雨に 撃たれ


【ROMANCE】