「さあさあ寄っておいで覗いてみな」
SOPHIA松岡充がホスト進行した『BEAT MOTION』のトーク・ショウが終わると
「DIABOLO」「残骸」が、「ROMANCE」に続いてパフォーマンスされた。
この「DIABOLO」は、先行シングル「ROMANCE」のカップリングとしてリリースされた。
後にアルバム『十三階は月光』に「DIABOLO-Lucifer-」として収録され、
同アルバムのエピローグ的な役割を担っており、
ライヴツアーでも【13th FLOOR WITH MOONSHINE】を始め、
一連の『十三階は月光』プロジェクトでも終盤に演奏されることが多い一曲となる。
“DIABOLO”は、恐らく今井寿の造語で、そのままのスペリングでは、
ジャグリングの道具の一種で、空中で回転させるタイプの独楽(こま)という意味になる。
ライヴツアー【13th FLOOR WITH MOONSHINE】の追加公演から参加した
ピエロのクラウンによるジャグリングとの関連を意味したものかも知れないが、
明らかに、櫻井敦司による歌詞の内容から類推すると、
ディアブロ (Diablo)で、イタリア語で“悪魔”を意味する処に由来がありそうだ。
しかも、アルバム収録アレンジでは タイトルも「DIABOLO-Lucifer-」と、
サブタイトルが加えられたことからも、まさに、堕天使=悪魔を連想させる一曲となった。
今井寿によると、“ゴシック”“ゴス”のトータル・コンセプトを、
BUCK-TICKのメンバーに説明する段には、シングル・タイトルの「ROMANCE」よりも、
むしろ、こちらの「DIABOLO」のほうに、
アルバム『十三階は月光』のテーマ・イメージを定義したようだ。
それは、今井寿自身が、語っている。
「むしろ「DIABOLO」のほうがそうですね。
悪魔の手下みたいのがいて、人間界に降りてって、
だっさーいバンドをバックに二枚目風に歌ってる、みたいな(笑)。
そういう映像が浮かんできました。
精一杯頑張ってんだけど、演奏がチンドン屋、みたいな(笑)」
このような説明が、今井寿から、メンバーにあり、
櫻井敦司が、
「そういった具体的なシュチュエーションとか聞いて。
そのすごくイメージがはっきりして、自分のなかでもつながった感じでしたね」
と語る通り、アルバム『十三階は月光』の詞世界の構築に一気に拍車がかかったようだ。
だとすれば、
この「DIABOLO」こそが、アルバム『十三階は月光』の世界観を反映した楽曲といえるだろう。
そして、ダーク・ファンタジー『十三階は月光』で“悪魔的”な童話世界を演出した後、
デビュー20周年記念的に制作された“天使的”『天使のリボルバー』の先行シングル
「Alice in Wonder Underground」のギター・ソロの代わり?に挿入された今井寿の歌ソロ、
“ENTER DIABOLO”の歌詞にそのまま使用されることになる。
BUCK-TICKのゴス世界の象徴は、まさにこの一曲「DIABOLO」となるのだろう。
月下の一群の巡業公演とも言えるライヴツアー【13th FLOOR WITH MOONSHINE】も、
この“DIABOLO”一団の巡業めぐりのような雰囲気で、
櫻井敦司は、“サーカス”団と表現していたが、統一されたゴシック・ショウが展開された。
それが、BS放送とはいえ、全国ネットで放映されたこの映像は貴重と言えるだろう。
今井寿も、BMGレーベルの人間に「ROMANCE」とこの「DIABOLO」を同時に聴かせて、
こちらを先行シングルのタイトルに推したというエピソードからも、
今井寿、会心の“ゴシック・ナンバー”と言えるだろう。
コメントの通り、櫻井敦司の歌詞も、
このストーリーに沿って、彼にしか、書き得ることの出来ない“ゴス”ワールドを展開している。
この楽曲を聴いているいると浮かび上がってくる“ダムドラの店”。
そこは、有象無象の魑魅魍魎が跋扈する海の中のあの世界のようだ。
彼が飲み干そうとしているのは、酒か?血液か?
ダーク・ファンタジーをこういったアングルで切り取るのは、
並大抵の傾倒ではないし、この感覚は彼のソロ作品でも見当たらない。
さすがに、今井寿プロデュース・櫻井敦司楽曲の特異性である。
誰にも、真似出来ない世界と言えるだろう。
そこで、上機嫌で唄う“バッカス”を、
櫻井敦司は、ジャケットを脱いで、肩にかけ、
シャツの袖のボタンを外し、酔いどれた雰囲気いっぱいにパフォーマンスしている。
ここでも、
「ROMANCE」同様に、不純物は一切含まれない徹底したゴス世界を表現していると言えるが、
櫻井のヴォーカルは、始終、深いデストローションの歪んだラム酒の海の中にあり、
最後の小節に入り、酒樽から首だけ出したようなアップテンポな櫻井ヴォイスが、響き渡る。
まさに、ここでは“上手に唄えるシンガー”というだけでは役不足で、、
演出としても、演技が冴え渡る櫻井敦司にしか実現出来ないパフォーマンスの一曲とも言えるだろう。
「ありとあらゆる愛ヌラリ お楽しみあれ」
DIABOLO
(作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
さあさあ寄っておいで覗いてみな 今宵皆様お贈りするはbaby
ありとあらゆる愛ヌラリ お楽しみあれ
歌にダンス妖しい酒 テーブルの下張り裂けそうな
ハシタナイモノ光らせて御気の召すまま
貴方の夢に あなたのその儚い
乾杯しましょう ほら天使が泣いている
ああ 今夜も血に塗られた 魔王の羽ブルーベルベットbaby
尖るシッポ 群がる淑女 眠れない夜
貴方の闇に あなたのその暗闇に
乾杯しましょう 最後の血が涸れるまで
貴方の夢に あなたのその儚い
乾杯しましょう ほら天使が泣いている
涙涸れ果てるまで
御機嫌よう さようなら
貴方の闇に あなたのその暗闇に
乾杯しましょう最後の血が涸れるまで
貴方の夢に 貴方の闇に
乾杯!
