「眠り続けている君の夢へ」
全国ネット番組出演は、NHK『POP JAM』の西川貴教に続き、
NHKBS放送の音楽番組『BEAT MOTION』からのライヴ映像とトーク・ショウ(インタヴュー)。
司会を務める松岡充は、1995年、メジャー・デビューのロックバンドSOPHIAは日本のヴォーカリスト。
彼も1971年生まれで、西川貴教の一期下の後輩ということになる。
この世代はまさに、
「JUST ONE MORE KISS」「惡の華」と、スターダムを駆け昇りつつあるBUCK-TICKを、
目撃し、追い掛けたバンド・キッズの夢物語であった。
伝説の先輩バンドBUCK-TICKのメンバーを目の前にして、緊張しつつも、
松岡充は、自身の憧れのロック・スターをキラキラした眼差しで見つめている。
こういったシーンを目の当たりにすると、BTというバンドの存在が、
いかに、日本のロック・バンドに、大きな勇気を与えてくれるか実感する。
彼らは、この世代にとって“生き続ける伝説”そのものである。
血脈は、螺旋のように流れる。
松岡充は、SOPHIAの全ての楽曲の作詞・一部の楽曲の作曲を手掛ける。
また、SOPHIAのヴォーカリストという顔の他に、俳優、タレントとしてもマルチな才能を発揮している。
大阪に生まれた彼は、1994年にSOPHIAを結成し、翌1995年にはメジャーデビューに漕ぎ着けるが、
ロックバンドを始めたきっかけは、
高校時代にごく普通で真面目なクラスメイトから「ケンカの時の声が大きいから」という理由で、
バンドのヴォーカルに誘われた為とされている。
(当時、松岡は野球部を辞め暴走族の一員だったという)
大阪で活動していた頃に、
当時すでに大阪で一世を風靡していた西川貴教率いるLuis-Maryと言うバンドのローディーをした経験があり、
Luis-Maryが関東でライブを行う時は便乗して自分のバンドのチラシを貼らせてもらうなど、
後輩として可愛がられていたようだ。
後に西川貴教はバンドを解散しソロで活動、松岡充もその後SOPHIAを結成し上京する。
SOPHIAのインディーズ時代、上京した時、ろくに知り合いもいなかったため、
当時、既にブレイクしていた元LUNA SEAの河村隆一の家に押しかけ、
自作の楽曲を聞いてもらったというエピソードがある。
河村隆一は初対面に関わらず、
「君はいい目をしているね」
と言ったらしく、それから現在まで長年の付き合いがある。
その後、SOPHIAでメジャーデビューを果たし、マルチな才能を発揮し始めた松岡充は、
2003年に、彼が司会の担当に抜擢されたNHKBSの音楽番組この『BEAT MOTION』で、
ゲスト出演した西川貴教と再会を実現している。
しかし、このとき再会するまで何年も空いていた為、
西川貴教は大阪時代の後輩と「SOPHIA松岡」が心の中で結びつかず、初対面と信じていた。
それまで松岡充はスタッフ等を介して西川貴教に間接的なアプローチを数回かけていたが気づかれず、
共通の友人である河村隆一に
「西川さん、ボクの事忘れてるんですかね?」
と相談したりしていたという逸話がある。
そんな河村隆一も、「惡の華」世代で、BUCK-TICKを目撃した一人である。
音楽番組『BEAT MOTION』の前任司会者は、彼の所属していた元LUNA SEAのドラマー真矢であったから、
この血脈も大きく螺旋を描きながら“Loop”し続けている。
そんな螺旋の上部に、間違いなく、BUCK-TICKは存在していた。
BUCK-TICKが結成20周年を迎えるのと同じように、
また、ジャパン・ロック界も1980年代のBOOWYショックから発生した一大バンド・ブームを経て、
1990年代のヴィジュアル・ロックの資本主義を露呈するような戦略から、
2000年のパーソナルな個性重視の流れの中、BUCK-TICK以外に活動を続けるフォロアー達も、
確実に年を重ね、それぞれのキャリアを積み重ねているのだ。
そんな中に、君臨する“BUCK-TICK”という存在の特異性に、
時代の経過に対する不可思議な感覚が付き纏う。
風貌は、確かに変化しているかも知れない。
しかし、彼らの放つアイデンティティは、何ひとつ変りはしなかった。
ヤガミトールは言う。
「確かに、こう影響を受けたというバンドっていうのは、見受けられましたよね。
後から出たバンドで。で、例えば高校の時にコピーしてて、
“コピーしてました”とか言われたり。
でも、こっちは知ったこっちゃないですからね。別に(笑)。
申し訳ないけど、影響を受けるのは自由だし、別に影響を与えたい訳じゃないし、
ただ、自分達のスタイルってのを模索してやっただけで……。
未だに、模索しているかも知れないし……」
そして、結成20周年の記念すべきシングル楽曲が、この「ROMANCE」で、あった。
今までのBUCK-TICKのスタイルの集大成とも言えるし、
また、逆に、今まで、到達したことの無い、地点まで、磨き上げられた楽曲とも言えるだろう。
シンプル、かつ、どの楽曲よりも、BUCK-TICKらしく、BUCK-TICKのひとつの理想の姿……。
そんなものを、この「ROMANCE」という楽曲には、感じずに居られない。
松岡充は、どんな心境でこの楽曲を見つめていたのだろう?
その「ROMANCE」のパフォーマンスが、全国に放映されていた。
ROMANCE
(作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
月明かりだけに許された
光る産毛にただ見とれていた
眠り続けている君の夢へ
黒いドレスで待っていて欲しい
ああ 君の首筋に深く愛突き刺す
ああ 僕の血と混ざり合い夜を駆けよう
月夜の花嫁
天使が見ているから月を消して
花を飾ろう綺麗な花を
ああ ひとつは君の瞼の横に
ああ そしてひとつは君の死の窓辺に
闇夜の花嫁
ああ こんなに麗しい跪き祈りの歌を
ああ 今夜も血が欲しい闇をゆき闇に溶け込む
ああ こんなに麗しい跪き祈りの歌を
ああ いつしか腐りゆく跡形も無く消えてゆく
ROMANCE
