シングル「ROMANCE/DIABOLO」リリースと、
待望新作アルバム『十三階は月光』の発売に際しての、
TVK『Music Tomato Japan』(音楽情報番組)での
櫻井敦司と今井寿のインタヴューである。
そう、この時、4月6日アルバム『十三階は月光』がこの世に姿を現そうとしていた。
以下、内容。
Q ニュー・アルバム『十三階は月光』タイトルの由来は?
櫻井「今井のどういう心理から来たのか?それは、わかりませんが。
まあ、話の端々で、なんだろうな……。
不気味な印象といいますか。。。そういうのを、少しこう、
タイトルとして欲しかったのかな、と思いますけど」
Q テーマは「ゴシック」という事ですが、アイデアはいつ頃浮かんだのでしょうか?
今井「『Mona Lisa OVERDRIVE』のツアーをやってる時に、
いつも、そういうツアー中に、次は何やろうかなっていう。
そういうアタマになる時にあって、で、まあ、
ホッと、キッカケとか、原因みたいなものは、自分では何も感じてなくって。
ツアー中、リハ中に、なんか、そういうアイデアが出てきて。
で、なんか、それをずっと温めてて、
今回、そのまま、考えが変わらなかったんで、やろうかな、と」
Q 櫻井サンのソロ活動も関係しているそうですが。
今井「関係してるというか…。
ツアー中にそのアイデアが出て、で、ソロ活動に入って。
で、彼のライヴを見に行って、
で、その一連の流れが終わって、BUCK-TICKに戻って来た時に、
そういえば、俺。ゴシックやりたい、って思ってたんだよな、って所に、上手く着地出来るなって。
なんてこう、綺麗な、流れなのかなっていうので、。
ますます、やりたいと思った」
Q 今井サンからアルバムのテーマを聞いた時は、いかがでしたか?
櫻井「ええ。最初聞いた時は、意外だなと思ったんですよ。
それは、あのソロのコンセプトのひとつで、
ニュー・ウェイヴとゴシック、ゴスっていうコンセプトがあったんですね。
で、割と、ソロ活動の中で、ゴスは、まあ、消化じゃないですけども、
一度、ソロで区切ったっていうのがあって。
一度、誰かがソロでやったことを、またやるって意味で、意外だな、
と思ったんですけども。
まあ、すごい好きな世界なんで。
もう、思いっ切り出来るな、と思いました」
Q 好きな世界という事ですが、作詞については?
櫻井「まあ、スンナリってわけでは、ないですけども。
でも、その“核になる”―― 一曲の中で、核になる、そのアイデアっていうのは、自然に出て来て。
あとは、、それに肉付けをしていくっていうので。
本当に、好きこそモノの上手ではないですけど。
楽しんで、やりましたね」
Q 初期のB-Tにも、ゴシックの要素は、あったと思うんですが?
今井「このテの音のテイストは、今までもあったと思うんですけど。
これだけ、っていうのは、初めて、だと思うんですけど。
あと、今までは、そういう音を演りつつも、
やっぱり、新しいモノを取り入れたりだとか、ロック的なリフだったりとか。
結構、色んなモノを、ミックスして創った……
ある意味“歪(いびつ)”だったのかなってところで。
だから、綺麗な、このストレートに、ド真ん中に“ゴス”の感じっていうのは、
多分、初めて」
Q 「ゴシック」をテーマにしたジャケット、音、PVと統一感がハンパじゃないです。
櫻井「デザイナーさん、日本でゴスをやらせたらこの人っていう秋田サンて方なんですけども。
ジャケットは勿論、PVもその方に監修してもらって。
なるべく軸をズレ無いように、ホントに最後まで、統一して行きたいと思ったんで」
Q という事はライヴも?
櫻井「引き続き、このライヴのコンセプト。
ライヴの舞台といいますか。秋田サンのほうに力を借りてってカンジで。
すごく、ライヴの最後まで統一されてると思います」
Q アルバムでは雄大なストーリーが展開されてますが、
ライヴでは、アルバム丸ごとやるとか?
櫻井「ああ、それも面白いですね。
まあ、今はまだ、アタマの中で考える段階でしかないんですけど。
ありがちなノリノリのコンサートっていう、
そういったモノには、ならないと思いますね。
視覚的に楽しめるように、なんか、本当に舞台じゃないですけども、
そういった、“息遣い”まで、観て欲しい、といいますか」
Q 約30ヵ所のツアーですが、これだけ長いと打ち上げがスゴいのでは?
今井「多分…、スゴいと、思いますけど。……スゴいです」
Q だいたい、どのくらいまで、飲むのですか?
今井「最近は、あんまり、そういう事をやってなないのですけど、昼のソバまで。
昼の蕎麦屋までですね。
11:30に、蕎麦屋が開くのを待って…呑んで、帰る…」
Q 12月には結成20周年を迎えます。なにか特別な事は?
櫻井「ちょっと、そういうの照れるほうなんで…。
そ~としておこうかな、ってくらいなんですけども。
でも、まあ、やっぱり、ファンの人あってのと想うんで。
まだ今年ありますんで、何かいいアイデアがあったら、
実行に移したいな、とは思いますけども」
櫻井「まさに、今日、アルバム『十三階は月光』発売になりました。
もう、聴いて頂けましたでしょうか?
4月10日からは、このアルバムを以て、ツアーに出ます。
近くに行ったら、遊びに来て下さい。
とってもファンタジーな夢のある……悪夢でもあるんですけど……。
そういうステージにしたいと思ってます。
それでは、また。
BUCK-TICKの櫻井でした」
‡‡‡‡‡
そうして、2005年4月6日、彼ら最新アルバム『十三階は月光』がリリースされた。
先行アルバムの「ROMANCE/DIABOLO」で、ある程度、このコンセプトの世界は、
すでに、世の中に知られていたが、恐らくは、誰もが、ここまで徹底した姿勢を彼らが魅せるとは、
予想していなかったのでは、ないか?
もし、【ROMANCE】をお読みお方で、このアルバム『十三階は月光』をお持ちなら、
この作品は、是非、ヘッドホンで通して、お聴きいただきたい。
そうすれば、(※他のBUCK-TICKアルバム全てに言える事なのかも知れないが、)
特に、この『十三階は月光』の細部に渡る彼らの魂が、おわかりいただけると思う。
その緻密なまでに、創作されたダーク・ファンタジーの背景が、
まるで、生命を得たように、組み合わされて、
どのロック・アルバムにも、見当たらない空気感で充満している。
古びた、空気の音感というか、その温度、味、色、二オイ、肌ざわりなど五感と通じて、
否、精神的な第六感すら起動するような、感覚に、身体が襲われるはずだ。
その壁に生える苔の滑りの感触をも、音を通して表現しているような作品とでも言おうか…。
魔物の“呼吸”が、脳を侵食していく…。
とにも、かくにも、まだ耳にしていない方は、一度、ヘッドホンを通して、
その脳内に、オリジナルのストーリー体験して頂きたいのと同時に、
手元に御持ちの方も、是非、もう一度、お試し頂きたい。
あなたを、アノ異空間が包みこむだろう。
そして、櫻井敦司も言及している『十三階は月光』及び「ROMANCE」の
ジャケットデザインを担当した秋田和徳の存在も、この一連の活動に驚異的な貢献をしている。
シングル「ROMANCE」からライヴツアー【13th FLOOR WITH MOONSHINE】まで、
トータルして、このコンセプトのもと統一デザインをこなしているのが秋田和徳氏であるが、
特筆すべきは、「ROMANCE」ヴィデオ・クリップの完成度であろう。
このPVのお陰で、この一連の活動に、究極の耽美を極める軸が、聳え立った。
そして、アルバム『十三階は月光』は歌詞カードの中のイラストまで、
ゴシックの最大公約数を表現したモノで埋め尽くされ、血肉化している。
これを見れば、櫻井敦司が、
「ゴスをやらせたら日本一」
と紹介する意味が自ずとわかるだろう。
アルバム『十三階は月光』は、こういった意味で、
BUCK-TICK初の“総合芸術”と言えた。
これまでも、彼らが、この“総合芸術”を目指した傾向は見られるが、
このアルバムにて、コンセプトを一点集中的に絞り込んだ事で到達した世界は、
いままで、目にすることのない“完成度”を誇る作品となった。
確かに、個人的趣向の好き嫌いは、発生するかもしれない。
が、だとしても、アルバム『十三階は月光』は、
この時点での彼らの一寸の妥協もない“最高傑作”である事は間違い、なかった。
ヨハネの黙示録 第21章
「事はすでになった。わたしは、アルパでありオメガである。
初めであり、終わりである。
かわいている者には、いのちの水の泉から価なしに飲ませよう。
勝利を得る者は、これらのものを受け継ぐであろう。
わたしは彼の神となり、彼はわたしの子となる。
しかし、おくびょうな者、信じない者、忌むべき者、
人殺し、姦淫を行う者、まじないをする者、偶像を拝む者、すべて偽りを言う者には、
火と硫黄の燃えている池が、彼らの受くべき報いである。
これが第二の死である」
「さあ、きなさい。小羊の妻なる花嫁を見せよう」
『十三階は月光』
