「あっ…、どうもありがとう。
 十何年前の9月11日…、オッ
【Climax Together】……演りました。
 ……その時、オープニングの曲、
 ……聴いて下さい」



「ノクターン -Rain Song-」が終わり、暗転したステージにひとり浮かび上がる櫻井敦司。
イヤホンからのモニターの騒音が、数少ない彼のMCを更に印象的に演出している。

この一曲が、唯一、12年前の【Climax Together】で演奏されたナンバー。
そして、12年前は、この一曲で、このスペシャル・ライヴ【Climax Together】は開演している。
12年後の9月11日、BUCK-TICKは、ふたたび、
【悪魔とフロイト -Devil&Freud- Climax Together】本編の最後の一曲に「JUPITER」を選んだ。



ここで、12年前に“Loop”して、
スーパー・ヴィジュアル・ライヴ【Climax Together】の意図を記そう。



(以下『ARENA』誌より、引用、抜粋)


【ROMANCE】


――まずは今回、この時期にライヴ・ヴィデオを作っておこうと思った動機は?

櫻井「特別なものは何にもないいんですけど、
考えてみたら、今までライヴそのものを取ったヴィデオっていうのが無かったし、
個人的にもこの時期(1992年の事)一段落ついたような気がしてたんで、
まあ、ちょうどいいタイミングかなと思って」

星野「3年ぐらい前『sabbat』は、ライヴだけど色々なイメージ・カットとか入ってたし、
今回はステージ上の5人の姿、現時点でのBUCK-TICKっていうのを出せたらというのはありました」

樋口「個人的には『殺シノ調べ』のツアーが、
初めてと言っていいくらい、波のない凄くいい感じのツアーだったんで、
時期的にはいいと思ってたんですよ。
もう少し曲順とか繰り直して、自分達らしさが明確に出るようなものができるんじゃないかと思って」


――でも『殺シノ調ベ』のツアーを撮るという方法もあったと思うんだけど、あえて別にしたわけは?


櫻井「確かに最初、最終日の武道館をヴィデオ撮りしようっていう話もあったんですけど、
あのツアー自体、ツアーとして考えてステージを演って、
それでもう完成してしまっているというのがあったんで、
後からカメラ位置とか決めるのはちょっと不可能だったんですよ。
どうせやるならスタッフも含めて色々な人が力を出し切れるような条件でやった方がいいと思って」

ヤガミ「通常のコンサートにただカメラ入れて撮るんじゃなくて、
逆にヴィデオ・シューティングの為にライヴをするっていう発想ですね。
やっぱりそこまでしなかったら良い絵とか撮れないと思うし」


――今回の選曲は、『殺シノ調ベ』ツアーと大きく変わってないと思うけど、
あえて明るめの曲を外しているのはどんな意図があったんですか?


今井「その流れっていうのは、もともとアッちゃんから出てきた事で、
それが凄く分かりやすかったんです。
そういうカラー…、暗くて、お客さんを突き放した感じの、
で、どんどん内側で盛り上がってるような。それを凄く意識したライヴだったんです」

星野「いわゆる通常のライヴ・ヴィデオっていうと、
最初からイケイケの感じとか、違う緊張感なんですね。
それとは違った一つのストーリー的な感じを出したかったんですよ」

櫻井「今回はアルバム発表後のライヴじゃなかったんで、アルバム・トータルではなく、
今現在のBUCK-TICKのバンド・トータルみたいなものが出したいと思って。

だから個人的に好きな曲であり、
自分のキャラクターとかバンドのキャラクターが一番明確に分かる、
そういう物を選んだつもりなんです。

もちろん個人個人を見れば色々な面を持ってるし、曲のタイプも色々ありますよね。
でも、そんな中で何か一つ、自分かちが納得した上でのイメージってものを形にしたかったというのがあって。
今まではコンサートといえば盛り上がる事が成功だみたいな基準が頭のどこかにあったと思うんですよ。
そうじゃなくて、もっとこう内側で掘り下げたエネルギーを溜め込んで、
コントロールというか意識してやりたかったというのがありますね」


――映像も凄く綺麗だし、カメラ・アングルからライティングまで、本当に良く出来てますよね?


樋口「1ヵ月ぐらいにわたってミーティングしましたからね。
監督さんもこんなに時間をかけてやったことなかっやみたいですよ。
リハーサルの時から来てくれて、皆でアイデアを出して広げていったりして。
とにかく単なるライヴ・ヴィデオにはしたくなかったですから」

ヤガミ「監督の林さん(林ワタル氏)は「悪の華」と「スピード」撮った人なんだけど、
やっぱりライヴ撮るんならあの人にやってもらいたいと思ってたんですよ。
凄くライヴ感のある人だから、メンバーも気に入ってるし」

櫻井「基本的には監督さんに任せられたっていうのが大きかったですね。
照明とか舞台のスタッフもツアーと同じなんで曲も把握してくれてるし、
動きもかなり見てるっていうのがあるから」


――ライヴということで映像も大事だけど、ミックスも含めて短時間で良い音に仕上げるのも大変だったんじゃない?


今井「基本的には昔の音がちゃんと聞こえてればいいかなっていう。
ライヴだから多少間違ってた方が逆にカッコ良いかなっていうのも何箇所かあって、
その辺はあまり神経質にならずにやれましたね」

樋口「昔だったらこの曲入れたくないなとか出てきたかもしれないけど、
今回はある線を越えちゃってるから、ちょっとぐらいトチっちゃたとかミストーン出しても、
それ以上にライヴならではの良さがあると思う。
ある種、妥協点てのがかなり上の方にきてるから、もう充分ていう感じですよね」


――そういえば一度ライヴが終わった感じでテロップが流した後、アンコールの2曲が入るって構成も良いよね?


櫻井「自分としては本編だけでまとめたいってずっと思ってたんですけど、監督さんに説得されて(笑)。
コンサートのエネルギーが一番出ているのがアンコールだと。

そういうのってやっぱり第三者じゃないと見えなくなってきちゃってるんですね。
本人にしてみれば一つの世界が出来上がったからここで終わりにしたいって思うんだけど」


今井「実際、コンサートでもアンコールはおまけみたいな感じだったから、
じゃあ、いったん終わった感じにしてから出てくるのもいいんじゃないかって」


――では最後にお薦めの見所を挙げて下さい。


櫻井「オープニングは今までにない形でやれたんで気に入ってるし、
「太陽ニ殺サレタ」はヴィデオの空間が自分に近いっていうか、
ライティングが理想に近いっていうか、想像以上に良かったですね」

星野「映像的には「太陽ニ殺サレタ」が凄く好きです。
でも全体的に雰囲気が統一されていてて、どれも気に入ってますけど」

今井「特にこれっていうのはないですね。全体を通して見て欲しいっていう。
ただ、こういう感じのをやりたかったっていうか、目指してた事の一つだったと思うんで、
見終わった後ドキドキしたというか、自分で盛り上がっちゃったというか」

樋口「やっぱり頭3曲ですね。あれは自分で見てても凄い緊張感あるし」

ヤガミ「特に1~2曲目は初日の映像で、特別の緊張感があるし、
あとは「HYPER LOVE」とか面白いんじゃないかな。
何か、ライヴなのにライヴじゃないような不思議な感じ、あれは凄いと思いましたね」


(以上、引用抜粋)


【ROMANCE】



ライヴでは、年末恒例の【THE DAY IN QUESTION】で、
すでに頻繁に演奏されて来た「JUPITER」であったが、
この【悪魔とフロイト -Devil&Freud- Climax Together】でパフォーマンスされた「JUPITER」は、
今、現在を以てして、最高のパフォーマンスであったと言える。

演奏自体は、音源に忠実に再現されている印象が強いが、
(※この後のライヴでは、徐々に今井寿によるスペイシーな味付けアレンジに加えられるようになる)
なんと言っても、櫻井敦司の伸びやかなヴォーカルが素晴らしい。


インパクトという点では、1992年の【Climax Together】や、
デビュー20周年記念イヴェント【BUCK-TICK FEST 2007 ON PARADE】(2007年9月8日)の
ラストを飾ったパフォーマンスに軍配が上がるかもしれないが、
「JUPITER」という楽曲のシンプルに聴かせるという特質を考えると、
僕は、このパフォーマンスをNo1の「JUPITER」であったと断言する。


エロスもタナトスも此処に昇華する。


フロイト。あなたも今宵、「JUPITER」に召されよ。







そして、キミは…


「今夜も一人で眠るのかい?」






JUPITER
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:星野英彦 / 編曲:BUCK-TICK)


歩き出す月の螺旋を 流れ星だけが空に舞っている
そこからは小さく見えたあなただけが
優しく手を振る

頬に濡れ出す赤い雫は せめてお別れのしるし

初めから知っていたはずさ 戻れるなんて だけど。。。少しだけ
忘れよう全てのナイフ
胸を切り裂いて 深く沈めばいい

まぶた 浮かんで消えていく残像は まるで母に似た光
そして涙も血もみんな枯れ果て
やがて遥かなる想い

どれほど悔やみ続けたら
一度は優しくなれるかな?
サヨナラ 優しかった笑顔
今夜も一人で眠るのかい?

頬に濡れ出す赤い雫は せめてお別れのしるし
今夜 奇麗だよ月の雫で 汚れたこの体さえも

どんなに人を傷つけた
今夜は優しくなれるかな?
サヨナラ 悲しかった笑顔
今夜も一人で眠るのかい?

【ROMANCE】

【ROMANCE】