『夜想』


夜の舞台があがる

時を止めて・・・


見つめろ 

目の前を 

顔を背けるな

愛と死 

激情が 

ドロドロに溶け迫り来る



ケロイドの男が歌う 

ドレスをひる返し

君が笑う 

きれいだね


舞台の中の 

裸の僕は誰だい?




さあ 安らかに 

眠るように瞳閉じておくれよ

もう疲れたろ 

演じること 

夢見ること

全て

枯れた指が落ちる 

ずっと見つめてる

声にならないけど 

そっと呟いた

「すぐに行くよ・・・」 

蒼い部屋で


逃れる術も知らない

月が満ちる前に 

そっと舞い降りて

波がさらって行く 

波がさらって行く

ずっと「永遠さ」

ちぎれた体に救いはない

もう一度 ここで眠る

今度は上手に歌う

もっと上手に

キラメク星が消えた

最後は愛と泣ける

さあ安らかに 

眠るように瞳閉じておくれよ

もう疲れたろ 

演じること

夢見ることも 

夢見ることも 

全て

月が満ちる前に 

そっと舞い降りて
 

波がさらって行く 

ずっと「永遠さ」

ごまかす痛みに

もう涙はない

クスリは悲しい

もう一度 ここで会えるなら

こんどは上手に笑う

キラメク海が枯れたなら

最後は愛と笑う・・・



祈りは空を目指す

救いそれは雨に変わる

幾千の月の夜も

息を殺し誰かを待つ

灼熱の砂を噛んで

傷の痛み忘れて

市場は妖しい匂い

広場はもう踊り狂い

仮面の夜のカーニバル 狂乱のパレード

ほんの少し血を流したら

愛し合って

許しあって

さあ笑って・・・








ねえママ・・・ 

今夜でサヨナラ 

その血で目覚める

羊水 波打ち際 

はしゃぐ 僕がいる

飛び散る星屑彼方へ 

腐りゆく 美しい

幾千幾億の死 

煌めく愛の詩

水平線にたたずみ 

その羽濡らしている

完璧な程 孤独だ

愛してる 

今夜僕は飛び立つんだ

愛してる 

雨や風に負けないんだ

愛してる 

人を傷つけ生きてゆくんだ

愛してる

誰かを壊してしまおう 

最悪な気分だ

跡形も無いくらい 

誰も彼もみんな

ねえ神様

あなたの真赤な葡萄酒

残らず飲み干したら 

何か見えるかい

過ち犯すばっかり帰れる子宮は無い

自尊心たっぷり行こうぜ

愛してる 

今夜僕は飛び立つんだ

愛してる 

雨や風に負けないんだ

愛してる 

人を傷つけ生きてゆくんだ

愛してる 

今夜僕は旅立つんだ

上昇気流に乗って無常へ 

遥か高みまで

羽が溶けてゆく空に溶けゆく

眩しすぎる世界

震えているけど 

鼓動は歌う

愛してる 

この空は広すぎる

愛してる 

独りきりじゃ広すぎる

愛してる 

この空は青すぎる

愛してる 

独りきりじゃ青すぎる

愛してる

この空は広すぎる

愛してる

今夜僕は飛び立つんだ

愛してる 

雨や風に負けないんだ

愛してる 

人を傷つけ生きてゆくんだ

愛してる 

お体だけは気を付けて

愛してる 

この空は広すぎる

愛してる 

独りきりじゃ青すぎる

愛してる 

今夜僕は旅立つんだ

愛してる 

今夜 さあ・・・

見えるかい子供達よ

歌 唄いながら

君に似てる

愛だけがそこにある

君を思い 

僕は果てる

君が揺れるたびに 

君を殺すたびに

君が揺れるたびに 

君を殺すたびに

君を想い果てる

誰を愛したり

誰を憎んだり

誰を愛したり

誰を穢したり


お前が流す 

赤い血の意味は 

生きている証と 

罪と罰のせいさ


溶け合うな入り込むな

傷つけ合うってしまうだけ

震えても涙するな

傷の場所も知らないで

愛するとか生きるとか

傷つけ合うってしまうだけ

絶望とか希望とか

傷の痛み知らないで

君の声が聞こえる・・・

帰ろうか

冷たいあの部屋へ

僕は愛サレテイル?

イケナイ

君のもとへ・・・

2004年7月14日 櫻井敦司、初の単行本、初の詩集、『夜想』発売。
映像は付録DVDからで、櫻井敦司自身の朗読が鑑賞できる。
この映像は、2004年7月20日に発売された
櫻井敦司写真集『SACRIFICE』(限定商品&通常商品同時発売)の内容とリンクする。

音楽情報誌『音楽と人』の監修により、ついに完成を見た櫻井詩集。

BUCK-TICKから初のソロ・アルバムまで、17年から厳選した歌詞、
さらにはこの詩集だけの書き下ろしも含めた珠玉の言葉たちからは、
櫻井敦司の表現の核となる愛、絶望、孤独、希望、を確かに感じることができる。






【ROMANCE】


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