「予感がする……
君に薔薇の死の訪れ」
アルバム『愛の惑星』に収録される「予感(2004 re-construct)」。
櫻井敦司というピースと田中淳一というピースで、
この「予感」が収録されたことは、
ある意味では“奇跡”でもあり、
ある意味では“必然”とも言えた。
「予感(2004 re-construct)」は、田中淳一企画の『DANCE 2 NOISE』という、
1991年にリリースしたコンピレーション・アルバムの2作目に櫻井敦司が参加した時の楽曲である。
田中淳一は、初の櫻井敦司のソロ・アルバムに、この楽曲を再収録した。
いかに、いかに田中淳一が、
櫻井敦司という“幻想”に、この『愛の惑星』に“妄想”を抱いていたことか!
そう、それから実に13年の時を経て、「予感」は、再び我々の前に姿を現したのだ。
あの時、新たなる時代の“予感”を胸に…。
新たなる新世界の“希望”と“可能性”に、若きアーティスト達が集った。
ここに『DANCE 2 NOISE』の一作目のライナーノーツをここ記そう。
(以下、ライナーノーツから引用抜粋)
『DANCE 2 NOISE』
90年代という新たな時代の幕明けとともに、
世界の音楽シーンは、これまでとは明らかに異なった動きを見せ始めたようだ。
パンク/ニュー・ウエイヴの衰退とともに、停滞しきっていたイギリスのシーンは、
シカゴのクラブ・シーンを起源にするハウス・ミュージックをロックに導入し、
現代感覚あふれる独自のグルーヴ感を生み出す事に成功した
The Stone Roses,Inspiral Carpets,HAPPY MONDAYSなどのマンチェスター勢や、
RIDE、My Bloody Valentineを代表とする
アシッド感覚の強いノイジーなギター・バンドの登場によって、かつての様な活気を取り戻し始めた。
アメリカでは、アンダーグラウンド・シーンが産み落としたSONIC YOUTH,Dinosaur Jr.
といったバンドがメジャーでブレイクを果たし、
Red Hot Chili PeppersやLimbomaniacsといった連中を筆頭に、
パンク、ジャンク、ファンク、ハード・ロックの様々な要素をミクスチャーさせる
クロス・オーヴァー・ロックと呼ばれるサウンドが好評となっている。
そして、それに呼応するようにここ日本においても、何かが確実に変わり始めているのだ。
その兆候は少し前から現われていた。
例えば、BUCK-TICK、SOFT BALLETといった個性派アーティストのメジャー・フィールドでの活躍は、
そのひとつと言えるだろう。
相変らず、ストーンズやツェッペリンやピストルズのモノマネをする事がロックである
とカン違いしている連中の多い中、彼らの時代を的確に捕えた、ある種マニアックな音楽性は、
新鮮かつ強力な魅力を放っていた。
そして重要なのは、以前ならば間違いなく異端として終わっていただろう彼らが、
大きなポピュラリティーの獲得に成功した点にあるのだ。
そう、アーティストのみならず、リスナー・サイドにも好ましい変化が起こっているように僕には感じるのだ。
そしてそれは、日本のシーンをより面白いものにするための必要条件なのである。
さて、このアルバム『DANCE 2 NOISE 001』の話に移ろう。
“新時代のダンス・ミュージック”とでも呼べそうな、タイプの異なる14の楽曲からなるこのアルバムだが、
まず、驚くべきはそのメンツの豪華さだ。
BUCK-TICKの星野英彦、今井寿のギタリスト2人、
SOFT BALLETの過激派として知られる藤井麻輝を始め、
レピッシュのタツ、デル・ジベットのISSAY、ソドムの福富、
そしてアンダーグラウンド・シーンのドンともいえるYBO2の北村昌士に至るまで、
まさに個性的で優れた才能の持ち主たちが名を連ねている。
そして、まだデビューを果たしていないアーティストたちも、
それに負けないだけのクオリティーを持つ作品を作りあげているのだ。
断言してもいい。
ここに収められたすべての作品は、“邦楽<洋楽”という一般的なリスナー間での認識を、
たやすく打ち破るに足る、極めて高い完成度を秘めた傑作ばかりである、と。
“同時代性”という言葉を最近よく耳にするが、
ぼくはまさにこれらのアーティストんそれを強く感じるのである。
彼らは、イギリスそしてアメリカなどの新世代アーティスト達とシンクロしながら、
それを越えていくだけの可能性を十分に持ち合わせているのだ。
(~~中略~~)
ここ数年、見直されている“日本のロック”なるものの多くが、
いまだ国内のみ有効な、言わば自慰行為で終わっているのに対し、
この『DANCE 2 NOISE 001』が今後もたらすだろう成果は、限りなく大きなものに違いない。
たしかに、コマーシャルな作品とは言いがたいし、もっとハッキリ言えば、
現状ではまだまだ聞き手を選ぶ要素の多分に強いアルバムである。
しかし、広く世界に目を向けた時、
これまでにない多大な評価を受け得る可能性を十分にもっと作品である事もまたたしかなのだ。
本当の意味での“日本のロック”、そしてその輝ける未来。
それは、間違いなく この 『DANCE 2 NOISE 001』の中にある。
そして、それを実現していくのは、あなた方ひとりひとりなのだ。
1991年8月27日 久保田稔人
(以上、引用抜粋)
こう高らかに記されたライナーノーツからも分る通り、
時代は、既成の物とは、異なる新たなる世界を望んでいた。
そのひとつが、紛れもなく、BUCK-TICKという荒唐無稽のバンドであったかも知れない。
そして、ギタリストの星野英彦、今井寿に、一作遅れて登場した櫻井敦司。
それから、時間は経った。
しかし、今、聴いても遜色のない楽曲のクオリティと、
変わらない櫻井敦司の唄声……。
この『DANCE 2 NOISE』の二作目に櫻井敦司が参加し、
この「予感」は、この世に生まれ堕ちた。
「おぼえていますか?
あの日僕の泣き顔を
きこえていますか?
僕の泣き声を」
櫻井敦司のソロライヴ【EXPLOSION 愛の惑星 Live 2004】。
NHKホールで、演奏される、この「予感」を田中淳一は、どんな気持ちで聴いていたろうか。
ステージバックに、映し出される“愛の惑星”に乱れ咲く赤い花。
それまでの(「ハレルヤ!」までの)、少し観客を突き離すような前衛的な演出も、
深い歪みのエフェクト処理された櫻井敦司のヴォーカルに、
“不安感”を持ちながら、この櫻井敦司の初のソロ・ライヴを眺めていたファン達も、
このナチュラルに流れるテクノ・ポップ「予感」で、
いつもの“櫻井敦司”の唄声が還って来た、と感じたのではないだろうか?
ここから、櫻井敦司のソロライヴ【愛の惑星 LIVE2004】の本領は発揮される。
「狂おしい この肌が 君にとける」
デレクター田中淳一の抱いた“妄想”は、此処に花を咲かせる。
櫻井敦司という“幻想の花”を…。
時を超えて……。
1991年、新たなる時代の到来の“予感”を、“可能性”を、
2004年の時代から眺める櫻井敦司と田中淳一。
「予感がする……
僕に薔薇の死の訪れ」
時は、明らかに“Loop”する。
そして、想う。
やっと「予感」をライヴで聴けた、と。
だから、一緒に“Loop”しよう。
「帰りたい 帰れない」
