Kiyoshiの突き刺さるような鋭角のギター・イントロ、
これに、今井寿のスタビライザーから、ノイジーな分厚いリフが重なり合う。

へヴィメタルのスピード感とルーズなハードロックを持つ「NIGHTRIDE」。
Kiyoshiのルーツとも言える、この“悪さ”は格別だ。

この“悪さ”は、今井とKiyoshiと岡崎とあなたを、
懐かしきロック・キッズに還してくれる。

音楽性は異なっていながらも、それぞれ十分にキャリアを積んでいる3人だけに、
何か作ろうと意気投合するだけでそれなりのものはできるだろう。

が、『ROCKAROLLICA』で聴けるのは決してそれなりのものではなく、
それどころか非常にクオリティの高い楽曲ばかりだ。

アルバム『ROCKAROLLICA』全16曲に、捨て曲は一切ない。

パンキッシュでロケンロール、ポップでどこかいかがわしい、スピード感に満ちた世界。
それでいて勢いでやっつけたようなお手軽感はなく、
どれもしっかりとしたアレンジが施されている。

何より曲のポップさに驚かされる。
シンプルなのに歌ものとしての完成度の高い、コンパクトな作品ぞろい。

歌い方であえてヤンチャな感じを出してはいるが、
ヤバそうな匂いを放つところも十分意図するところだ。

それらがデジタルな要素も残しつつ、
バンドの一体感とともにすべての曲で展開。
ガレージな感じ、ラフな感じではないところも彼らの音に対するこだわりが感じられる。

玄人のよる“計算し尽くされた”スリル。
少し、忘れかけたスピリッツに再び、火を付けられたようだ…。



(以下、『UV』誌より引用抜粋)



――録りのスピードは速かったですか?

Kiyoshi「速いと思うけど、ニュートラルな感じでできましたね。
そんなに急いでパーッとやってる感じではなかったです」

――曲ごとに勢いはあるけど、勢いのみの作りっぱなしという感じでもないし。

Kiyoshi「そうですね。16曲もあるし。ヴァラエティに富んでいるし」

――曲数も、たくさん入れようということだったんですか?

Kiyoshi「いや、そうでもなかったんですけど。
ライヴのことを考えると16~17曲はないと、ライヴできないねって言ってて。
アルバムは10曲ちょっとあればいいわけだけれど。
アルバム作る前に、アルバムに入れない曲があってもいいんじゃないかって考えて、
なるべく多めに作りたいという話はしていたんですよ」

――でも、全部は入っちゃった?

Kiyoshi「全部入れないとつまらない(笑)。
今井くんのデモを聴いたときに、これは絶対にこぼしたくないなとと思って。
自分の曲も、これは入れなくてもいいかなっていうのもあったんですけど、
曲が出そろってみて1曲もこぼしたくないなって思えて。
レコーディングが進めば進むほど、そういう気持ちが強くなってきましたね。
お互い、そんなに曲が書けると思わなかったから。特に今井くんは(笑)。
気持ちの負担を軽くするために多めに書く、ということだったんですけど」

今井「入れなくていいやっていう曲だと、たぶんすごくラフにやっちゃうと思うんです。
悪い意味で適当な(笑)。いいじゃんこれで、みたいに。
でも1曲1曲も短いし、全部入れようって思えてきて」

――それでいて、似たような曲がないですね。ロケンというくくりはあるにせよ。

今井「ええ、曲が短いから、ダラけた感じはないと思うんですけど。
あと1曲1曲のキャラがビシッと来るかなっていうところで。
そこを判断するのは自分たちだけど、これだったらいけるかなと」

――結果的に、個性的な曲が多いですね。

今井「個性的ですか。普通にやったらこうなったというか。普通ですけどね」

――でも「GA GA DISCO」とかはこれまでになかったタイプの曲ですよね?

今井「あ、そうですね。
デジタルな方向だったら、その曲ももっとありがちな方向にイメージが浮かんだと思うんですけど。
そうじゃなくて、ロケンなところからのアプローチだから、結構面白く仕上がったと思います。
しょぼいディスコ(笑)。ガレージな感じ」

――あと「GLIDER」とか、昔の歌謡曲のような懐かしさのあるメロディもあったり。

今井「ええ、ちょっとメロディっくな感じで。
コードが3つ4つをただずっと繰り返してるパターンを作りたくて。それはうまい感じにできました」

――アルバムの後半、そういう曲が多いですね、マイナー調の曲が多かったり。

今井「前半、バカっぽい曲が多いですから(笑)。丸出しな感じですよ(笑)」

――それもメリハリになっていて。3~4分台の曲が多いですけど、
「HALLELUJAH」はいちばん長くて、6分以上ありますね?

Kiyoshi「バカっぽい曲ばかりじゃヤバいから(笑)。
作っていて途中で煮詰まって、ガーッとした曲がそのとき出てこなかったんです。
出てこないなら真逆にやってみようって作ったのが「HALLELUJAH」。
歌詞が少なくて長い曲を作ろうと」

――ロケンなくくりだけでも、そういう壁にあたっちゃうんですね?

Kiyoshi「やっぱり行ったり来たりしたいんでしょうね。バカなんですけど(笑)」


(以上、抜粋引用)


プロ中のプロのヤンチャを垣間見せられた。
感想は、やはり、勢いだけのガキには、無理だろうな、とうなずかずに要られない。
大人の本気の喧嘩は、やはり、一味違うのだ。

だから、これは、単なるノスタルジーではない。

“ロケン”は、Lucyによる、新しい“ロック・スタイル”だ。

酸欠状態で、駆け抜けるしかない。




【ROMANCE】