「GA GA DISCO」はLucy楽曲でも、今井寿色の強い作品だ。
ある意味では、BUCK-TICKで演っても遜色ない楽曲だろう。
しかし、これが、バンド・オヴ・トリオ“Lucy”で演ると、また格別だ。

これも“ロケン”の範疇に入るのであろうか?

「しょぼいディスコ」

と作者の今井寿が言及しているが、
なにか、いかがわしいナイト・クラブでの熱狂が、伝わってくる曲である。

Lucyでは“禁じ手”とされたとする“デジロック”の味付けがなされている。
岡崎達成のアレンジによるものだろうが、
これは、BUCK-TICKお得意の打ち込みと生音の融合が、
そのビートに根強く、地中に伸びている。

今井寿と岡崎達成の、バカっぽいディスコ・ダンスが、
この楽曲の持つ“キテレツ”な空気感を良く表現していると言える。

YMOをお手本に、テクノの独自な英才教育で培われた
今井寿、独特のディスコ・テイストである。

こういった3人の持つパーソナルな癖が、
ダイレクトに詰め込まれるのも、このLucyの特徴のひとつだ。
そして、それは、やはりこの3人“Lucy”でしか実現出来ない音となって、
オーディエンスに訴えかけている。


本家BUCK-TICKのギタリストであり、
メインコンポーザーとしてサウンド面でも大きなイニシアチヴを握る今井寿。
1991年のSCHAFT、2001年のSCHWHEINと、これまでもユニット活動を行った経験があるが、
今回はBUCK-TICKを基盤としたサウンドというより、
新たに結成したバンドLucyとしての音を発信したいと語る。

そして、自身のバンドmedia youthのほか、
hide with Spread Beaverなど数多くのバンドでのサポート経験豊かなKiyoshi。
テクニックとアイデアも豊富だが、なんといってもその交友範囲の広さが彼の信頼感を裏付けている。

また、M-AGEを経て、現在はAGE OF PUNKのドラマーであり、
BUCK-TICKのリズム・プログラマーといても活躍する岡崎達成。
デジタルな要素とドラマーとしての感性を同時に発揮できる存在。


本日は『UV』誌から、彼ら3人の言葉から、結成の経緯、
Lucyのデビュー・アルバム『ROCKAROLLICA』に制作状況について引用抜粋する。



(以下『UV』誌から引用抜粋)




――ふたりの作業は別々に進んでいたんですか、途中で音を聴かせた合ったりとかは?

今井「それもほとんどないですね。
お互いの家でアイデアの交換もあるかなと思っていたけど。
始まってみたら、スタジオに入ってそこで音を重ねていく作業でしたから」

――現場で聴いて、その場で反応して作っていく?

今井「そうです」

Kiyoshi「デモどおりやるときもあるけど、とりあえずこんな感じって思って作ってるから、
スタジオに入ってからインスピレーションを湧かすことが多いですね。
それは今井くんの曲でも一緒かな。
前もって作り込むことはないです、面倒臭いので(笑)」

――大枠だけできていれば。

Kiyoshi「そうですね。コードだけわかっていれば、あとはなんとかなるかな」

――作業自体はスムーズだったんですか?

Kiyoshi「僕のクセと今井くんのクセは違うから、そういう部分で慣れるのに時間がかかりましたけど。
でも一回コツをつかむと大丈夫で、それはそんなに苦なことではないし。
逆に刺激的かな」

――確かに、お互いのクセってあると思うんですけど、それは1曲の中で混ぜてしまうんですか、
それとも別物として入れておく?

Kiyoshi「そのまま残すほうがいいかなと。ケース・バイ・ケースですけど。
でも、そういうふうに決めないで、出たとこ勝負でいいかなと思っていて。
個性を出さなきゃっていうものにすると、堅苦しいかな」

――最終的に作者の意図を最大限に生かして?

Kiyoshi「そういうことですね、曲に対してどうかっていうのがいちばん大事だし」

――岡崎さんは、上がってきた曲に対して注文があったり?

岡崎「いえ、具体的にあるわけではなくて曲の雰囲気で。
こう叩くって決めて臨むわけでもなく。
1曲1曲を聴いて反応してましたね。
やる前に聴き込んで、という感じではなかったです」

――それだけ、お互いに信頼して任せてあるからなんでしょうね?

岡崎「やっぱり、音を消す前の付き合いが長いから。そういうのでなんとなく雰囲気はわかると思います」

――迷っていると作品のスピード感がなくなる?

岡崎「そうですね。
自分の中では立ち止まる瞬間もありましたけど。
トントン進んでたので、これでいいかなって。
そのうちダビングが始まって、そういう感じで流れていくのかってわかってきて」

――スムーズに進みすぎて怖い、みたいな?

岡崎「ま、ドラムの録りは最初なので(笑)」

――打ち込みの曲もありますけど。

岡崎「それはデモの段階で入っているイメージがそれで出来上がっていたので。
そこはやる前にどういうふうにするか話はしましたけど。
打ち込みで生ドラムもあるとか。
そういうところは楽しませてもらいましたね」

――「GA GA DISCO」って打ち込みなんですか?

岡崎「半々ですね。基本は生ドラムと打ち込み。
これが全部打ち込みだったら、また違う感じだと思うんです。
ロケンという意味でも(笑)」

――どこかに生っぽさがないと?

岡崎「そういう決まりも別にないんですけど」

――2曲、岡崎さんのインストゥルメンタル曲が入ってますけど。

岡崎「3人で飲んでいたときに、インストがあったらいいんじゃないかっていう話になって。
それでちょっとイメージして、紆余曲折しましたけど作りまして。
入れる場所はKiyoshiくんが決めてくれて。
間があると、次に移りやすいからって。

「Drum'n+」は、今井くんにアイデアがあったので、話をしながらやらせてもらったんですけど」

(以上、引用抜粋)




Lucyのヴァラエティ性は、バランス・キーマン岡崎達成なのかも知れない。
彼の存在があるからこそ、超個性的な今井寿、Kiyoshiのふたりは、
“ロケン”の名のもとに、クリエイティヴな世界を、心おきなく展開出来たと言える。







【ROMANCE】