「お前がいればいいのさ」

2003年12月29日、日本武道館。
【THE DAY IN QUESTION】第2夜目の2曲目は、2003年ライヴツアーの代名詞。
歌詞には「SEX for YOU」、「SIX or NINE」、「JUST ONE MORE KISS」等、
過去の楽曲や作品を連想させるフレーズが猥雑に折り込まれている。
【THE DAY IN QUESTION】をミニマムに凝縮すると、この楽曲が出来上がるのかも知れない。

それは、“今”でも“過去”でも、そして“未来”でもない刻。
すべてが、曖昧な夢のような、中途半端な時間。
今井寿のテクノ・フレイヴァーと櫻井敦司のセックスが混ざり逢う受胎の刻。

「LIMBO」

いや、この夜の「LIMBO」は、まだ“前戯”と言うべきか?

樋口豊のベース・フレーズが、深く深く日本武道館を抉るレイヴだ。
打ち込みDATサウンドで、リズムを構成したアルバム収録のアレンジから、
樋口豊とヤガミトールのBUCK-TICK心臓部の鼓動が乗り移ったかのような、
ライヴ・アレンジは、櫻井敦司の「解き放て!」というMCとともに、
我々を、すべて柵から脱出させるパワーを放出している。

今井寿のキック一発で、まるで覚醒した欲情が顔を出す。



最高に艶のあるこの日の櫻井敦司は、羽根付きハットが、まるで貴公子のようでありながら、
淫らな宴をじっくりと楽しむ下拵えを間違いなく作り出そうとしている。

そうだ、2夜目も最高のセックス・ショウになることは間違いない。

その為、この「LIMBO」は、前夜から二日通じてセット・リストに選ばれた。

バンドとファンたちの愛の社交場、今宵も日本武道館がじっとりと濡れる。



「愛を交わそう たとえ地獄でも 炎に濡れて SEX for YOU」

オーディエンスも【THE DAY IN QUESTION】第2夜が、どんなプレイになるか、
少し様子を伺っている節もある。
前夜の情事が強烈であり過ぎた為に、別メニューとなる第2夜では、
一体どんな“刺激”的なパフォーマンスが、我々をエレクトさせてくれるのだろうか?
今夜のハードルは、高い。

「血は滾り 肉躍り狂う 飛び散る蜜は SIX or NINE」

そんな気構えを感じるファン達に向けて、

櫻井敦司は、むしろ、じっくりと料理の下拵えをしているように見える。

観客は、その一瞬を無駄にしないように、目当てのメンバーを凝視しているが、
バンドも、また、彼女彼等を、じっくりと観察し、
最高のエクスタシーを与えるには、どう料理してやろうか、とイメージを広げる。

愛の交換…。

ライヴは、まさに、セックスだ。




双方の快楽が絶頂を、解き放てるように…。
しっかりと“前戯”が必要だ。

「愛を交わそうたとえ地獄でも 炎に濡れて JUST ONE MORE KISS」

そんな、クールな下拵え。
それが、この夜の「LIMBO」の役割であった。


櫻井敦司は、オーディエンスの現実という鎧を一枚づつ剥いでいく。
さあ、ゆっくり、ほら…。

「眼を閉じてりゃいいのさ 感じてればいいのさ」

徐々に、彼女彼等の核心部へ。

ゆっくりと向かっていく。

そして、身体も、精神も、解き放ち、混ざり合おう。

今宵も【THE DAY IN QUESTION】。



「お前がいればいいのさ 狂っちまえばいいのさ
 狂っちまえば・・・」


何が起こっても不思議ではない……。

そう…、何が起こっても…

「生きている証と 罪と罰のせいさ」

この愛と死の狭間で……。

LIMBO。



LIMBO
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)



お前が流す 涙その理由は 忍び寄る終末に 怯え嘆くせいか
お前が流す 赤い血の意味は 生きている証と 罪と罰のせいさ

愛を交わそう たとえ地獄でも 炎に濡れて SEX for YOU

壊れちまえばいいのさ 解き放てばいいのさ

お前に触れる 熱い子宮震わす 揺るぎなの無い真実よ メクルメク愛よ

血は滾り 肉躍り狂う 飛び散る蜜は SIX or NINE

眼を閉じてりゃいいのさ 感じてればいいのさ

愛を交わそうたとえ地獄でも 炎に濡れて JUST ONE MORE KISS

お前がいればいいのさ 狂っちまえばいいのさ
お前がいればいいのさ 狂っちまえばいいのさ
狂っちまえば・・・

【ROMANCE】