“雨”が、あなたを連れ去る。僕は“夜”。


「雨が降り出すと 
どこからか降りて来て
 今夜も秘密のドアを叩く」


2003年12月3日、シングル盤『幻想の花/ノクターン - RAIN SONG -』は、
初回限定DVD付きにて発売されている。

前シングル『残骸/GIRL』のオリコン最高位5位に続き、
『幻想の花/ノクターン - RAIN SONG -』は、最高位11位まで、チャートを駆け登った。

BMGファンハウスからの第一弾シングル『GLAMOROUS/TRANS』が最高位17位ということを考えても、
最新アルバム『memento mori』の先行シングル『HEAVEN/真っ赤な夜』の最高位5位と、
それに続く『GALAXY/セレナーデ -愛しのアンブレラ-』の最高位6位の連続トップテン入りが、
彼らにとって、いかに快挙であったことかを物語っているだろう。

昨今ヤガミ“アニイ”トールは、この快挙を、
「「惡の華」が、色んなところで、チャート1位を獲得しまくった時よりも嬉しい」
と語っていたが、
それに及ばないまでも、この2003年のシングル・セールスは、好成績だった言えるだろう。

アルバム『ONE LIFE、ONE DEATH』以降の外へ放たれる強い“光”は、
此処に結実を見たとも言えるだろう。


いずれにしろ、それまでBUCK-TICKのやや難解な世界観を、
今井寿のポップ・センスと星野英彦のポピュラー性で“ヴェール”に包みこんで、
意識的に、BUCK-TICKを象徴するシングル楽曲をリリースし続けた結果だろう。

やはり、このシングル盤『幻想の花/ノクターン - RAIN SONG -』は、
素晴らしいクオリティーであった。

シングル・リリース直後の日本武道館【THE DAY IN QUESTION】。
12月28日のアンコール1曲目「幻想の花」を演奏して、
その余韻を残したまま、
カップリング楽曲「ノクターン - RAIN SONG -」が、ライヴ初登場する。


まず、注目すべきは、今井寿と星野英彦のダブル・アコースティックのアンサンブルで、
アコースティック・ギターを首から下げる今井寿のプレイが披露された点だ。

楽曲が技巧派:今井楽曲であった事から、
バックには、ドラマティックなシンセサイザーが、空間を埋めているが、
このアコギ・プレイこそ、前作『極東I LOVE YOU』全編に散りばめられていたニュアンスだったから、
この楽曲も、原案は、2枚組構想時のアルバム『極東I LOVE YOU』制作時に創られたものであろうか?



そして、スペシャルな舞台演出が、
更に初登場の「ノクターン - RAIN SONG -」の魅力に拍車をかけた。

客席の最前列周辺に、ステージをおおうように“雪”が舞い降りたのだ。

この舞台演出で、日本武道館の温度が下がったように感じる。
丁度、彼らにしては、“熱過ぎる”ロックンロールを突き詰めたバンド自体を冷却するかのように…。

「Palala… Palala…」

この深々と舞い降りる演出の中、
雨が、雪に変わったこの年末の日本武道館で、
「ノクターン - RAIN SONG -」を唄い終えた櫻井敦司は、

「良い曲だね……」

と感慨深く語った。

櫻井敦司がライヴで、そう語るのは、2001年の【THE DAY IN QUESTION】。
「さくら」を演った時以来ではなかろうか。



翌12月29日の第2夜【THE DAY IN QUESTION】日本武道館。
本編の終盤にエントリーした「さくら」。

そして、アンコールの演目も前日と同じく「幻想の花」⇒「ノクターン - RAIN SONG -」へと進む。

結論から述べると、第2夜の「ノクターン - RAIN SONG -」で、
この“雪の舞台演出”は、なかった。

この年ラスト・ソング「JUPITER」に、この目玉とも言える
ロマンティックな舞台演出のこの“雪”は、配置を変え、2003年を締めくくっている。

それでも、星野英彦とともに、アコーステックを奏でる今井寿の姿と、
その調べに乗って、世界観を展開する櫻井敦司を見る素晴らしい瞬間であった。



この櫻井敦司の唄う歌詞。(※作詞:今井寿)

深夜に降り続く“雨”が、主人公の「密室」のドアをノックし、
愛しき人の処へ“WARP”を誘うのだ。
この瞬間移動で、自分は“雨”となり、自由に夜を駆け巡るのである。
それは、まぎれもなく“思惟”の交信である。

「光よりも早いスピードで 衝動はどこへも連れてく」

そして、またこの“雨”が降るのも、心の中の「密室」であり、
今夜もその“雨”が、“密室”のドアを叩く。
そこには、傘をささない愛するあなたが立ちすくんでいる。


瞬間、僕の中の「密室」は、鍵を開け放たれ、
夜がはみ出して、惑星が裏返る。
愛しき人は、「FLAME」となって、夕暮れとともに沈むのだ。

“思惟”は一瞬で、天空に舞い上がり、
“雨”となって地上に降り注ぐ。

気が付けば…
僕は、“雨”に撃たれながら、路頭に迷っている。
あなたを求め続けながら…。

そんな“WARP”を繰り返しながら、僕は、あなたに辿りつくのだ。

僕は、夜になる。

僕は、雨になる。

あなたに、触れるために。

「この世でただ一つだけ 光を超えるスピードで」

この“思惟”は、ネットで駆け巡るこの仮想現実世界の如く、
あなたの「密室」に接続される。

まるで、手渡された“鍵”すら、必要としない早さで夜の闇を切り裂くかのように、“WARP”し、

あなたのもとへ。







12月29日【THE DAY IN QUESTION】。
そして、2003年のラスト・ナンバーは、雪降る「JUPITER」。

雪の夜を、月の螺旋の昇り、彼らは、一度、召される。







BUCK-TICKよ

また、逢おう、

悪魔とフロイドの宴で。



眠り続けている君の夢へ

黒いドレスで待っていて欲しい…。

午前零時 針は震え

十三秒を過ぎ その時は来る。




ノクターン -RAIN SONG-
 (作詞:今井寿 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)


雨が降り出すと どこからか降りて来て
今夜も秘密のドアを叩く

まるで影の移動 気付いたらそこにいて
僕を隠れ家から 誘い出す

光よりも早いスピードで
衝動はどこへも連れてく


閉じ始めた情熱 雨が降る僕の中
傘をささない君 佇む

夜がはみ出して 惑星が 裏返る
君は夕暮れに 沈む 炎

僕は雨に 這いずる銀色
濡れた迷路で 探してる


Palala…

降り続ける 雨はカミソリ
キリギリスの唄が 震える

Palala…
Palala…

この世でただ一つだけ 光を超えるスピードで
想いは夜 駆け巡る 自由に夜 駆け巡る


【ROMANCE】