「なぜ生まれた 解らない それでも激しく」

2003年【THE DAY IN QUESTION】本編のトリは、
12月28日が「MY EYES & YOUR EYES」という意外性で、往年のファンのハートを掴むと、
翌12月29日には、「鼓動」アルバム『Six/Nine』ヴァージョンで、感動的に締める。
この緩急と所有する楽曲の幅に、やはりベテラン・バンドという価値を再認識する。

「鼓動」

は、やや長いOFF期間を経て、活動再開の狼煙を上げたシングル盤『唄/君へ』に続き、
1995年4月21日に、シングル盤『鼓動/楽園』としてリリースされた。

立て続けに、翌月5月15日に最高傑作と誉れ高きアルバム『Six/Nine』がリリースされるのであるが、
この3か月連続リリースまでの期間に、待ち焦がれたBTファンは、まさに不安の入り混じった時間を過ごした。

まず、メンバーは、OFF期間に、それぞれ個人的な活動をしていた点が挙げられる。
BUCK-TICKが解散してしまうのではないか?という噂も流れ出す。

1993年にBUCK-TICKは、それまでの最高数のライヴ・アクトをこなしてた。

その後、今井寿は、息統合したSOFT BALLETの藤井麻輝と音楽ユニットSCAHFTを結成し、
1994年に本格始動、9月には1stアルバム『SWITCHBLADE』を発表する。
このアルバムにはヴォーカルにPIGのレイモンド・ワッツを迎え入れ、
海外を意識したインダストリアル・ワールドを展開し始めた。

そのBUCK-TICKとの音楽性の違いに、その後のBUCK-TICK本体の存在が揺らいだのである。

そして、リリースされた「唄」で、装いも新たに登場したBUCK-TICK。
少なからず、ファン達は、それまでの彼らの姿との異変に気付いていた。

確かに、暗く重い前作『darker than darknessーstyle93ー』時にも感じた
何か、我々を突き放すような、そんな姿勢を感じてはいた。

そして、再び現れた彼らの姿は、キラメキの中にいた過去を、
すべて、消し去ってしまったかのような“印象”があった。

ストレートな、心の“叫び”「唄」と、
それに、続く、生命の躍動を唄う「鼓動」…。

これは、前作、美しき問題作「die」に対する“解答”のようでもあった。



丁度、この2003年の年末も、近年にないライヴ数とイベント参加を経て、
初の2日間連続開催の【THE DAY IN QUESTION】と、
何かにケリをつけようと、彼らにしては、盛り沢山の活動内容であったと言える。

12月29日の「鼓動」は本編ラストを飾るに相応しい感動を持ってパフォーマンスされる。
新たに大幅に加えられた今井寿の銀河の彼方まで、“WARP”するような、
スビライザーのスペイシーな嘶きアレンジが、日本武道館を包みこむ。

この「鼓動」には、他の楽曲にはない、“ナニカ”が存在する。
それは、神秘的な“ナニカ”で、言葉にすることは難しい。
それでも、この楽曲を聴くと、心が浄化され、涙が零れるのだ。

そして、いつも言うことではあるが、
その“理由”を探そうとすること、それ自体が“誤解”なのだろう。

「感じる」のだ。

それしか、道はない。

生まれ、生きている。

それこそ、すべてなのかも知れない。


まさに、胎児が、母親の子宮から目覚める瞬間を切り取った「鼓動」。

これ以上に、感謝と神秘を感じる刹那は存在しない。

ただ、心から、ありがとう。

そう、想うしかないのだ。





歪んだこの世界に、産まれ出でし、“神の子”。

赤子の“ソラ”は、僕に夢で、話しかける。

僕が、あなたに出逢う理由を教えてくれる。



アルバム『Six/Nine』に収録された「鼓動」には、
今井寿とマニュピュレータ―横山和俊の手によって、膨大なノイズが加えられた。
これは、胎児が聞いている子宮の音を表している。
このノイズによって、胎児は会話をする。

「生きていたいと思う 愛されているなら

 ごめんなさい ありがとう」


胎児の、なんと、純粋で、謙虚な姿勢であろうか!

親は、ことばを返す。

「この世に生きるあなたの鼓動 儚い だけど美しく
 この世に生ける全ての鼓動 儚い だけど輝いて

 この世に生きるあなたの鼓動 悲しい事は何もない
 この世に生ける愛する人 悲しい事は何もない」


産まれてくれて、それだけで、感謝。

21st Cherry Boy よ

「輝くんだ 世界中 目覚めてくれ
 深い闇で生まれたお前は“” 」


そう、“愛”は産まれたのだ。



苦しみのこの世界へ、ようこそ。

あなたこそ、降臨する“愛”だ。

ありがとう。


「なぜ生きてる 知らないけど それでも激しく」


なんの因果かわからないがこの世に、この時代に生まれ堕ちたあなたへ。

100年に一度の金融不況だ、なんだと、世間は騒ぐが、
どうせ過去の事例は、全く役に立たないだろう。
100年前とは、状況が、全く異なるから。



だから、これから、僕に、とっても、あなたに、とっても、

本当に未知の世界への旅立ちだ。



せっかく、生まれ堕ちたのだ

さあ  羽ばたけ。








鼓動
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)


完璧な幸せ いつも包まれていた
苦しみのこの世界 ある日生まれ声を上げた

抱かれてた母星に さよならを告げよう
胸の音聞こえる 確かに鼓動震え出す目醒めだ

なぜ生きてる 知らないけど それでも激しく

生きていたいと思う 愛されているなら
ごめんなさい ありがとう

この世に生きるあなたの鼓動 儚い だけど美しく
この世に生ける全ての鼓動 儚い だけど輝いて

絶対の安らぎ あの日抱かれていた
悲しみのこの世界 ある日あなたに包まれた

見守る母の星 静かに今消えて
胸の音聞こえる 確かに鼓動震え出す目醒めだ

なぜ生まれた 解らない それでも激しく

生きていたいと思う 愛されているなら
生きていたいと願う 愛されているなら
ごめんなさい ありがとう

この世に生きるあなたの鼓動 儚い だけど美しく
この世に生ける全ての鼓動 儚い だけど輝いて

この世に生きるあなたの鼓動 悲しい事は何もない
この世に生ける愛する人 悲しい事は何もない


【ROMANCE】