“どんな夜も明けない夜はない”
“本当だろうか?”
“君は、それを証明できるかい?”
2003年のBUCK-TICKという存在を象徴する一曲が、
この「Mona Lisa」であることには、誰もが異論ないだろう。
アルバム『Mona Lisa OVERDRIVE』の中核を成す“存在感”。
それは、先行シングル盤のタイトル・ナンバー「残骸」のストレートなロック・スピリッツも、
そのシングル盤のカップリングの愛らしい「GIRL」のポップ・センスも、
“存在感”という点においては、「Mona Lisa」には譲らざる得ないだろう。
この“存在感”という観点では、前日12月28日に演奏された
「相変わらずの「アレ」のカタマリがのさばる反吐の底の吹き溜まり」に近しいものと感じる。
アルバム『darker than darkness -style93-』から「神風」、
アルバム『狂った太陽』から「エンジェルフィッシュ」に続き、
アルバム『Six/Nine』からのセットアップとなった「相変わらずの…」
同曲の演奏が始まった瞬間、日本武道館がどよめき出した。
そして、12月29日の日本武道館。
アルバム『darker than darkness -style93-』から「Deep Slow」のどす黒い猥雑さの後、
この「Mona Lisa」が、我々の魂を抉るのだ。
すべてのBUCK-TICK・LOVERSの妄想が現実化してしまう
【THE DAY IN QUESTION】。
毎年、意外な選曲と、まるで“i pod”のシャッフル・プレイを、
ライヴで見せつけられているような偶発性を持つインプロヴィゼーション。
この年のライヴツアーでは、クライマックスの一曲と言ってよかった「Mona Lisa」の登場に、
この後の展開は、まったく予想がつかないものとなった。
この“不安感”と“期待”の入り混じった感覚を楽しむかのように、
今井寿が、お得意のポジションまで、マイク・スタンドを下げて唄う。
「Kraus の Hyper opera voice song
響き渡る Adios Amigo ゴミの山あさる Alchemist」
この“Kraus”とは、一体誰なのだろうか?
Alfredo Kraus?、Klaus Nomi?、Klaus Voormann?
恐らくは、今井寿の創作人物と定義するのが、妥当ではあろうが、
どうやら、ドイツ人らしきのその名の持ち主が、この“不安感”と“期待”の入り混じった
レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画『モナ・リザ』にインスピレーションを受け、
張り上げる歌声が、今井独特のラップ・ヴォイスに重なり合い脳髄を直接震わせてくれる。
そう、ゴミの山の頂上での絶叫。
その声に共鳴するかのように、櫻井敦司もまた、震えだす。
赤ワインを片手に、座りこんで唄い出す櫻井敦司のヴォイスもまた、
我々に溢れ出す感情をワインに変えて注ぎ込んでいるようだ。
この二人の関係は、まるで、運命の糸で繋がれたかのように、
人間の“業”を、冷たい炎で焼き尽くすのだ。
さらに、今井“Kraus”寿は、唄う。
「生ぬるい雫 糸を引く もう二度と会えないんだ」
此処のフレーズを聴いた時、僕の背筋は凍りついた。
誰にも、いつか、必ず、訪れる“別れ”。
しかも、なごり惜しそうに、“その雫”は、“糸を引く”。
運命の糸を。
櫻井敦司は唄う。
「たとえ嫌われ口もきかない ああそれでも君が要れば」
そう…、
たとえ、笑われても、撃ち抜かれても、君のこと 聞かせて欲しい。
そうしないと、この“不安感”から来る震えは止まらない。
本当に夜は、明けるのか?
僕は以前、言った。
愛する人の“瞳”に、自分がどう映っているのだろうか?
それは、永遠の謎である、と。
でも、それを気にしている余裕すら、すでにないのかもしれない。
もし、この限られた時間の中で、許されるなら、君のことを聞かせて欲しい。
それで、嫌われてしまっても…、それでも構わないから。
「密室」を曝け出そう。あなたにだけは…。
醜く、穢れ、脆く、移ろいゆく「密室」を…。
あなたにだけは、見ていて欲しい。
Mona Lisaよ。
凍りつきそうなんだ。
この俺は。
だから…
「触れていてくれ」
Mona Lisaよ…。
Mona Lisa
(作詞・作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
眠れ明日が欲しいだろう 震え出したら夜明けまで待てない
I hear nothing see nothing say nothing
Kraus の Hyper opera voice song
響き渡る Adios Amigo ゴミの山あさる Alchemist
Long long ago 冷たい指 肉につき立て 二人が抱き合った
凍りつきそうなんだ 君のことを
震えが止まるように 聞かせてよ
凍りつきそうなんだ 君のことを
震えが止まるように 君のこと 聞かせてよ
教えて欲しい聞かせて欲しい 汚れているか おかしいか
それでもかまわないか
笑って欲しい見ていて欲しい それならここを撃ち抜いて
くれてもかまわないさ
サバンナが見渡せる丘 Son of a gun by oneself 泣き出す
そこにいるのか さわっていてくれ 体中が震え出した
構の奥まで鳥肌で埋まる 痙攣が抱擁 耳鳴りがしゃべリかける
Long long ago 生ぬるい雫 糸を引く もう二度と会えないんだ
凍りつきそうなんだ 君のことを
震えが止まるように 聞かせてよ
凍りつきそうなんだ 君のことを
震えが止まるように 君のこと 聞かせてよ
教えて欲しい聞かせて欲しい 汚れているか おかしいか
それでもかまわないか
笑って欲しい見ていて欲しい それならここを撃ち抜いて
くれてもかまわないさ
教えて欲しい聞かせて欲しい 汚れているか おかしいか
それでもかまわないか
笑って欲しい見ていて欲しい それならここを撃ち抜いて
くれてもかまわないさ
教えて欲しい聞かせて欲しい 汚れているか おかしいか
それでもかまわないか
笑って欲しい見ていて欲しい それならここを撃ち抜いて
くれてもかまわないさ
