2003年6月28日29日【Mona Lisa OVERDRIVE -XANADU-】

初日6月28日

心配されていた6月の雨も、開演前にはなんとか止んで、夕方にかかる涼しい空気に包まれてる。
地下鉄を降りて地上に出る直前から耳に届く、都心ビル街の響き渡る爆音。
まだリハーサルが続いているようだ。
まるで切り取られた風景のように、その一画だけが別世界。
日比谷公園は、日常と非日常が侵食し合って膨大な熱量が空中に向けて吹き上げられている。
その熱量は、ライヴ開始を少し遅らせることで、よりその起爆力を高める結果となった。

BUCK-TICKにとって初の日比谷野外音楽堂、2DAYSの初日となるこの日は、
曇り空の下、予定されていた開演時間を少し過ぎてスタートした。
実は、“野音”は音が出せる時間に制限があり、
特に土曜日にはリハーサル開始そのものが遅い時刻に設定されている為、かなり不利な条件にある。
直前までリハを続けていた彼らに、どこか張り詰めた空気が漂う。

「開演しまーす」
6時28日、午後6時27分。

日比谷野外音楽堂にコンサート運営スタッフの声が響く。
2夜連続で繰り広げられるBUCK-TICK史上初の“野音”公演、その初日の開演予定時刻は6時30分。
しかし実を言えば、メンバーたちはつい先程リハーサルを終えたばかりなのだ。

こんなことを活字にすると怒られそうな気もするが、彼らのライヴが定刻に開始されることは、まずない。
少なくともともここ僕の記憶ではそんな実例を思い出すことことができない。
観衆もそれを熟知しているのか、午後7時、開演が間もないことを告げるアナウンスが流れても、
少しも動じることがない。

が、この夜のライヴは、本当にそれから10分と経たないうちに始まった。
そして、それから約1時間半後には幕を閉じていた。
予定されていた演奏メニューは間違いなくすべて消化された。

しかし、アンコールはたった1曲だけだった。
何故そんなことになったかといえば、そこが“野音”だったからである。

野外でありしかも都心に位置する厳しい制限下にあるというのは、
ある意味この世界においては常識である。

だからこそ開演時刻厳守が鉄則だったりもするのだが、そこで今回、悪天候が災いした。
雨のためにステージ設営が大幅に遅れてしまったのである。

そして当然のごとくリハーサル開始も遅れ、
結果、メンバーたちは一刻も早い開演を実現させるため、
めちゃくちゃ慌ただしい時間を過ごすことになった。

べつにバンド側の肩を持つわけじゃないが、
あの状況で彼らが7時すぎにステージに登場し得たこと自体、奇跡的快挙だったと言っていい。

しかし、ライヴが始まれば、そんな緊張感を逆にバンド内のテンションの高さに結びつけるような、
素晴らしい内容を展開した。


翌日、6月29日は気持ちのいい天候に恵まれた。
野音の上空にはこの日のライヴ・タイトルを記したバルーンも浮かんでいる。
そこだけ見れば、平和な日曜日の光景だ。

しかし、この後には、非日常の極みが待ち受ける。
そんな、時空の歪みを体感するような“日比谷野外音楽堂”。



アルバム『Mona Lisa OVERDRIVE』の楽曲を、
この“ロックンロール”の充満する流れの中で、このセットリストで“目撃”出来るのは、
この2日間で、最後であろう。

“ライヴ”の感覚を特殊な野外の、しかも、伝説の“ヤオン”で目撃する事実。
ひょっとすると、それだけで、充分に奇跡的な事柄なのであるが、
これが『Mona Lisa OVERDRIVE』の楽曲で構成されるという“奇跡”に感謝したい。

恐らく、“ロックンロール”の神様は、実在するのだ。




【6月28日日比谷野音セット・リスト】

オープニングSE: Continue
   1.ナカユビ
   2.残骸
   3.MONSTER
   4.BUSTER
   5.LIMBO
   6.原罪
   7.BLACK CHERRY
   8.Sid Vicious ON THE BEACH
   9.GIRL
   10.無知の涙
   11.楽園
   12.太陽ニ殺サレタ
   13.idol
   14.Long Distance Call
   15.極東より愛を込めて
   16.愛ノ歌
   17.Mona Lisa

アンコール-1
   18.新曲

  SE: Continuous


【6月29日日比谷野音セット・リスト】

 オープニングSE: Continue
   1.ナカユビ
   2.残骸
   3.MONSTER
   4.BUSTER
   5.LIMBO
   6.原罪
   7.BLACK CHERRY
   8.Sid Vicious ON THE BEACH
   9.GIRL
   10.無知の涙
   11.楽園
   12.太陽ニ殺サレタ
   13.idol
   14.Long Distance Call
   15.極東より愛を込めて
   16.愛ノ歌
   17.Mona Lisa

アンコール-1
   18.新曲
   19.FLAME
   20.Ash-ra
   21.TO SEARCH

  SE: Continuous


   


【ROMANCE】