「深く もっと深く 深く 愛してくれよ
 砕け散った日々よ 最後はお前の中で」



確かにライヴハウス・ツアーは、BUCK-TICKの初期衝動を呼び戻す“TRIGGER”。
ポップ・センスと闇の世界観の融合。
そこに、初期のビート・スピリッツが混ざり合って、
渾然一体の“CHAOS”そのものがぶつかってくる。

それこそ、今回の今井寿の狙い。
ロックンロール・アルバム。
それを示唆していたのは、先行シングル「残骸」に他ならない。

そして、そこに加えて、裏で躍動するテクノ打ち込みのリズム。
アルバム『Mona Lisa OVERDRIVE』前半の「ナカユビ」から「LIMBO」までのスピード感は、
リズム裏で培われた、打ち込みの融合による規則性ハンマービートの存在も見逃せない。

そんな、ミックスチャーがジャイヴする「LIMBO」。

まさに核心部のタイトルナンバー「Mona Lisa」への導入部の役割を持つ。
「LIMBO」は今井寿のテクノ魂の爆発だ。
そして、見事に彼のラップ・ヴォイスに流れていく。

そして、生身のライヴ・パフォーマンスで実現する作業。

この楽曲でのライヴ演奏での苦労を、
ダイナミックなバンド・サウンドの躍動感を伝えるドラマー、ヤガミ“アニイ”トールが伝えている。



「ツアーのこと考えたときに、まずタイヘンなのは「LIMBO」なんです。
これ、全部打ち込みなんで、改めてちゃんと覚えて、自分でやらなきゃいけないんで(笑)。

デモをもらったとき、これはテンポ的に人間がやるより打ち込みでやったほうがいいんじゃないか
と思ったんで、ユータと相談して今井にそう進言したんですよ。

実際、打ち込みの王道的なテンポじゃないですか。
でも、今となっては“ああ、自分でやっとけばよかったな”って(笑)。
自分でやってないから、思い出しようがねえなって(笑)」

(ヤガミ・トール)


その“攻撃性”は、メンバーの身体にもダメージを与えるものだったのだろうか?
再び、バックステージでは、ソファーに倒れこむ櫻井敦司。




そして、ライヴ・ハウスツアー【“TOUR Here we go again!”】では、
アルバム『SiX/Nine』からの象徴的な一曲「見えない物を見ようとする誤解全て誤解だ」が、
セットリストに加えられた。
ホールツアーの【“Mona Lisa OVERDRIVE TOUR”】で演奏された「限りなく鼠」に変わって選曲された
「見えない物を見ようとする誤解全て誤解だ」は、
ライヴ・ハウスの闇の中で、何倍にも増幅したダイナミズムを持って復活している。
星野英彦のギター・カッティングから今井寿の独特なアンサンブル。
この一曲も、BUCK-TICK史から、外す事の出来ない一曲。

「宇宙(ソラ)へ  出かけよう」

そして、ライヴハウスでは強力な「ICONOCLASM」での、お馴染みの破壊活動。
必殺技「極東より愛を込めて」目潰しフラッシュに続く。
BUCK-TICKの“攻撃的”な一面を突き詰めるツアーだ。
真っ赤な炎が会場を焼き尽くす。


新曲「原罪」。

「溢れる 欲望 お前に 突き刺す
突き刺す 突き刺す 突き刺す 突き刺す」


これも欲望を突き刺す“攻撃性”の満ち満ちたナンバーだ。
目を潰すくらいフラッシュの中で、欲望の“頭の化物”と成り果てる人間。
この欲望を超越するには、己の制御ではなく、己の革新を試みる必要があるようだ。
そして、その衝動を変換するのが、血を流しながら生きていると実感する生命の力。

そう、傷付いたのは、生きた証なのだ。

そのままアルバム『Mona Lisa OVERDRIVE』でも、
星野英彦の爆走型「MONSTER」へ繋がっていく。

前作『極東I LOVE YOU』では、美しいメロディを提供した星野英彦が作り上げた
BUCK-TICKの暴走ロック・チューン。

欲望の虜になった、怪物と化した自身の姿を、
超越することでしか、恐らく、欲望の呪縛からは逃れられはしない。

いや、
“欲望”を超えるには、
“欲望”を制するには、
“欲望”を押さえ込むのではなく、
“欲望”を愛すことが、必要なのだ。

だから、たとえ化物に姿を変えたとしても、

「何処までも高く飛ぶさ 溶かしてくれ」

そんな、櫻井敦司の自分に向かう“攻撃性”を表すナンバーであろう。

「原罪」、そして「MONSTER」…




星野英彦は、語る。
コンポーザーとしての相棒、今井寿との方向性のシンクロ二シティーとは?
そして、BUCK-TICK5人の波長とは?

以下、『UV』誌より引用抜粋。




――そして「MONSTER」は暴走型チューンというか。
機会を窺ってたんじゃないですか、こういう曲を出す。

「んー、まあ、“たまにはこういうのも作りたい”っていうのもありますけど(笑)。
でも、これも、そんなにも……結局はギター・リフものっていうかそういう感じだから」

――オソロシく速い曲というわけじゃないんですよね。
だけどタイトルや歌詞も含めて、曲そのものがとにかく走ってる。
ここまで疾走してるのも珍しいな、と。
実際こういう歌詞、載ってくると思ってました?

「いや、どういう歌詞がくるかとかはもう全然考えないで。
確かに珍しくはありますよね、こういう歌詞が載ってくるのは。
なんか生々しいというか」

――全員ライダース着てる感じですもん。

「ええ(笑)。
常にこういうの作りたいっておう欲求があるわけじゃないんですけど、
たぶん前のツアーをやってるなかで欲するようになった要素だったりとか、
ある種の反動でもあるとは思うんですよ。
こっちのほうに欲求が向かうんじゃないかっていう予感も、なんとなくありましたしね。
ツアー中から」

――反動というと言葉にネガティヴな響きもありますけど、
結果、それがバンドにとっての振り幅にも繋がるというか。

「うん。きっと何かしら、常に次に繋がってるんじゃないかと思いますけど」

――今春のツアーは、前作のときとは全然違うものなるはずですよね、きっと。

「そうですね。
前回のがすごく“観せる”感じだったとすれば、今回は“暴れる”感じになるんじゃないですかね。
少なくとも前回よりはずっと“走った”感じのものになるだろうし、
生々しいものになると思いますけど」

――今回、今井さんの炸裂具合が非常に強烈ですけど、
前作から今作にかけての今井さんの変化というのは、星野さんの目にはどんなふうに映ってます?

「きっと、気持ち的な流れみたいなものは同じじゃないかなっていうか」

――バイオリズムみたいなものですか?
やっぱり無意識のうちに5人とも同じような波長で動いてるんでしょうか?

「いや、どうでしょうね(笑)。
意識はしてないですけど、きっと……。
誰かの波長に合わせるって感じではないし、
きっとどこか似てるというか、重なってるところが元々あるんでしょうね。
合いやすいっていうか(笑)」

――だからこそ、安心してどんな曲でもぶつけられるんでしょうね。
“このアルバムならこういう曲”という考え方ではなくて、
どんなものを持ち込もうとその波長さえ合っていれば面白いものになり得るというか。

「それはもう、ずっと前から思ってましたね。
結局、自分ひとりでデモ・テープとか録ってやってると“ん!?”って思うかもしれないけど、
5人でやって、あっちゃんが歌っちゃえば全然大丈夫だなっていうのを、相当前から味わってきたから」

――なるほど、さて、このアルバムができたことによって出てくる次の欲求って、
また全然違ったカタチにのものになるんでしょうか。
もしかしたら、もうすでに次に作りたいものが見えてたりします。

「いや、さすがにまだそういうのは全然ないですけど。
やっぱりツアーとかやってみたりしてからじゃないと。
ツアーで作り替えるというか、壊しながら再構築するというか……
そうやってアルバムを噛み砕くワン・ステップがあってから、
“次”に発想が向かうんじゃないでしょうかね」

――つまり、ツアーの先にあることまでは考えてない、と。

「まだツアーのことすら考えてないです(笑)。
今はあんまり何もないですね、アタマのなかには。
先のことを考えなきゃならない局面というのもあるだろうけど、
あんまり考えたくないっていうのもあるし(笑)」

――ちなみに『Mona Lisa OVERDRIVE』というタイトルそのものについて、星野さんはどんな印象を?

「すごくモダンな感じっていうか・近未来的モダンというか……よくわからないですけど(笑)。
でも実際、オーバードライヴな感じのアルバムだと思うんです」

――まさにこの攻撃性を言葉に置き換えた感じですよね。
でも人間って年々、攻撃性をうしなっていきがちなものじゃないですか。
それをこうして維持したり膨張させたりできてるのは、何故だと思います。

「こういう職業だからできる、というか。変な言い方ですけど(笑)。
非日常性みたいなものを平気で出せちゃう場が、公的、社会的に認められてわけですからね(笑)」

――つまりバンドという発散の場がなかったら鬱積するのも大きかったかもしれない、と?

「そうですね。
バンドがなかったら……犯罪でも犯してたかもしれない(笑)。
いや、もちろんそんな人間じゃないですけど(笑)」

以上、引用抜粋。




そうやって、己の身体の中で鬱積した欲求を爆発させながら、
ライヴツアー【“TOUR Here we go again!”】の疾走は続く…。




残骸
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)


瓦礫の上で歌う 気の狂えた天使
静かに叩きつける 雨は鎮魂歌

残骸が 残像が 残酷に燃える
お前は夢見る 明日が来ることを
雨に 撃たれ

止まない激しい雨は 誰の鎮魂歌
麗しいお前の肌を 俺は汚すだろう
戯れ言は お終いだ 欲望だけだ
俺はもう夢見ない 明日が来ることを

深く もっと深く 俺は穢れて行く
腐りきった日々よ 最後は お前の中で 深く…

残骸が 残像が 残酷に燃える
お前は夢見る 明日が来ることを

戯れ言は お終いだが 絶望だけだ
俺はもう夢見ない 明日が来ることを

深く もっと深く 俺は穢れて行く
腐りきった日々よ 最後は お前の中で

深く もっと深く 深く 愛してくれよ
砕け散った日々よ 最後はお前の中で

深く …深く

雨に 撃たれ


原罪
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)


火を噴くようなアルコール 四つんばいの眼
ウンザリ錆びたカミソリじゃ オレも殺せない

悪魔からのギフト 僕の窓辺に
狂乱 狂気 月明かりを どっさりブチ込む

夢中さ とってもハイなんだ
鏡に映るあんたに

溢れる 欲望 お前に 突き刺す

足枷軋む聖地 踵返せば
ムチ鬱 叫び声の オレは罪人

いつかの青い星も 今じゃ灰色
カワイイゼ 豚に真珠 愛に原罪

キライだ 大キライなんだ
鏡に映るあんたが

溢れる 欲望 お前に 突き刺す

夢中さ とってもハイなんだ
鏡に映るあんたに

溢れる 欲望 お前に 突き刺す
突き刺す 突き刺す 突き刺す 突き刺す



MONSTER
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:星野英彦 / 編曲:BUCK-TICK)


俺はブッ飛ばしている 夜をブッ飛ばしている
頭の化物が俺の中で ブッ壊れている

暴れる MACHINE ゲツが滑る 震える鼓動 光が包む

俺はブッ壊れている 夜にブッ壊れている
頭の化物が 俺の中でブッ飛ばしている

狂える MACHINE 闇に吠える 全開な鼓動 光が包む

覚醒する真っ白なライン 溶かしてくれ
何処までも高く飛ぶさ 溶かしてくれ

お前の中に俺がいる 俺の中に お前がいる

俺はブッ飛ばしている 夜をブッ飛ばしている
頭の化物が 俺の中でブッ壊れている

狂える MACHINE ゲツが滑る 震える鼓動 光が包む

覚醒する真っ白なライン 溶かしてくれ
何処までも高く飛ぶさ 溶かしてくれ
覚醒する真っ白なライン 溶かしてくれ
何処までも高く飛ぶさ 溶かしてくれ

お前の中に俺がいる 俺の中に お前がいる


【ROMANCE】