「眠れ明日が欲しいだろう 震え出したら夜明けまで待てない」
バックモニターにサイバーな“Mona Lisa”が映し出される。
Aメロは今井寿の本格ラップ。
デモテープの段階ではメロディーがあったが、レコーディングの際にラップに変更した「Mona Lisa」。
今井寿の恐らくは「RHAPSODY」(アルバム『ONE LIFE,ONE DEATH』収録)に次ぐ超大作。
タイトルを見てわかるように、今作『Mona Lisa OVERDRIVE』の主題となる楽曲であろう。
ゾクゾクと背筋に伝わるようなメロディと今井特有のサイバーテイストが、
Bメロ以降の櫻井敦司の哲学めいた、“濃いヴォイス”と混ざり合う。
これこそ、BUCK-TICKのオリジナル・ブレンドの極みだ。
どこまでも、スリリングに、境界線をフルスピードで爆走する今井寿と、
深く深く、潜り込むような、深淵な闇から突き抜ける櫻井敦司。
もしくは、“魔王”への阿修羅の道を独り突き進むのが櫻井敦司であるなら、
今井寿は、どこまでも透明に、広く膨張し続ける“宇宙”へ羽ばたく神だ。
「Long long ago 冷たい指 肉につき立て 二人が抱き合った」
「凍りつきそうなんだ 君のことを 震えが止まるように 君のこと 聞かせてよ」
と炎と氷の狭間で、2大カリスマが奏でる「Mona Lisa」は恐るべき“攻撃性”を秘めている。
まさに、アルバムを包括する内容と言える。
こんな楽曲が出来あがる過程を樋口“U-TA”豊がメインコンポザー今井寿の姿を語る。
以下『UV』誌より引用、抜粋。
――で、肝心のアルバムの話なんですが。
こういった攻撃的作品になることは、ユータさんには予測できてました?
「まんなかへんくらいからですね、作業の。ヒデ(星野)の曲のほうから先にできてたから。
今井くんの場合、後半になってからボッコボッコ曲出してくるんで(笑)。
でも、その中盤あたりには、前作に比べると相当攻撃的な感じになるんじゃないかなっていう予想は出てきてて」
――こういった流れへの、予兆みたいなものは何かあったんですか?
「今井くんが最初に“ロックンロール・アルバム”な感じにしたい」って言ってて。
でもロックンロールってひとことで言われると逆に難しいんじゃないですか、解釈が。
急に曲が全部3コードになっちゃうのかな、とか(笑)。
で、当初は前作で使わなかった曲がいくつか残ってたんで、
それを使いながら作っていくのかなって思ってたら、
今井くんが“前の曲は入れたくない”って言ってきて。そこで気付いたんです。
アコギとか入れるの避けたいのかなって。
前作の曲はだいたいどれもアコギが入ってるんです」
――耳につく感じじゃなくて、むしろ空気みたいな感じで入ってましたね。
「ええ。だからそういった曲を外したいって言ってきた時点で、
もうモードが切り替わってたんじゃないのかな」
――今井さんの口からロックンロールっていう言葉を聞いた後、
結果的に思い浮かべたのってどういうものでした?
「ノリのいいもの。攻撃的なもの。
やっぱりお客さんをすごく扇動する“行くぞ!”って感じのものですよね」
――結果的には“ロックンロール・アルバム=束縛の少ない攻撃的作品”ってことなんですかね。
でも攻撃って、完全な歩調の合致じゃないにしても、
それなりに個々のモードが重なってないと実践しにくいものだと思うんですよ。実際はどうだったんです?
「どうなんだろう?ツアーまわってるなかで、結構みんなそういう感覚になってたんじゃないかな。
前作が落ち着き過ぎだったとは言わないけど、ちょっと“聴かせるモード”だったっていうか。
そこに起伏をつけるために昔の曲を持ってきてるってイメージもあったじゃないですか」
――それに代わる、新しい起爆剤みたいな存在になり得る曲を欲してたんでしょうか?
「ああ、そうかもしれない。
俺自身はもう、ベースの音とかも攻撃的な、荒い感じでいこうっていう気持ちになってたんで
……何曲かできてきたときに、自分ではそういう感覚でとらえていたんですね。
今井くんから出てくる曲が訴えてくるものが、そういう方向に仕向けてくれたっていうか」
――なるほど。ところでユータさんはこのアルバム・タイトルについてはどんな印象を?
「ていうか「Mona Lisa」って曲あるじゃないですか。
あれをタイトル・チューンにしたいんじゃないかなって思ってたですよ。ところが違う、と。
“ああ、そうなんだー!?”って(笑)」
――そういうところって相変わらず確認のないまま進んでいっちゃってるんですね。
「全然ないですね。そういうのは(笑)」
――確認できなくて、不安とかないですか?
「それも全然ないですよ(笑)」
――たとえばこういった作品完成に伴う取材のときとか、
全員の意見をあらかじめ揃えてから臨んでくるバンドもいるじゃないですか。
「ええ。そういうことも一切ないですね。
元々みんなで集まって“こういうふうにしょう”みたいな話もあんまりしないんで。
今さらそういうことするのも妙だし、たぶん誰かしら“イヤだなー”って顔するだろうし(笑)。
でも、アルバム・タイトルの話に戻ると、やっぱり今井くんらしいなーって感じはしますよね。
うちのアルバムってずっと、今井くんかあっちゃんのどっちかがタイトル付けてきたし。
このタイトルとかに限らず、今回とかって、
ほとんど1曲1曲すべてに今井くんがすごく明確なアイディア持ってたんじゃないかなって思うんですよ。
“この曲はこう行きたい”っていうのを。
シングルにしても「残骸」と「GIRL」の両極端を狙ってたようなところ感じるし
……要するに、“やりたいことやっちゃえばいいんだ”ってことなんじゃないかな。
曲ができてくると……変な言い方ですけど、
“あ、たぶんこの曲、アルバム4曲目あたりかな!?”とかそういうのあるじゃないですか(笑)」
――1曲目とかラストとかじゃなくて。
「ええ。それが悪い曲とか地味とかそういう意味じゃないんですけど。
でも今回はそういうのが全然なくて。
今井くんともずっと“曲順、大変そうだよねー”って言ってたんです。
アタマとケツはもうある意味、作る前から決めてたわけですけど」
――曲順決定が最大の難関だった、と?
「でもみんなで飲み屋に行って、曲目書いて切った紙を並べていったら、
結構みんな重なる部分が多かったんですよ。
だから思いのほかスンナリ決まっちゃって」
――山とか谷の決め方、起伏の好みがみなさん似てるんですね、きっと。
でも、やっぱり、そういうこと決めるのも会議とかじゃなくて飲み屋なんですね(笑)。
「ええ。“ミーティングしようよ!”って言って(笑)」
――ま、大事なこと決めるときには燃料も必要ですもんね(笑)。
でも、そういう意味でも前作とかなり性質が違うんですね。
『極東 I LOVE YOU』って、曲の置き場所がすごくはっきりしてたと思うんです。
「確かにそうですね。
いろいろな意味で、今回はとことん大胆にやれてるアルバムだと思うんですよ。
実は昨日、あっちゃんとラジオ出てたんですけど、
“今回のアルバムを、リスナーにわかるように簡単に教えて下さい”って言われた時に、
あっちゃんが、“前はオトナな感じで、今回は若い感じ”だっていってて。
上手いこと言うなって思って(笑)」
――なるほど。今、ふと思ったんですけど、
10のパンチ力があったとき、相手を8で倒すことができるなら8以上出そうとしないじゃないですか、オトナって。
でも無謀な若者は12の力を出そうとする。
「ええ。そういう“とことん”なんだと思うんですよ。
実際自分でも、若いアルバムだなと思いますよ。若いっつーか……だからって、
演奏ぶりが若いって意味じゃないですよ(笑)」
以上、抜粋引用。
溢れだす今井寿の創作意欲は、今回に限ったことではない、が、
アルバム『Mona Lisa OVERDRIVE』のエナジーは、今までにないテンションと、
“若気の至り”とも言える“攻撃性”を有していた。
それが、神がかり的と言えるのは、制作まで3年の月日を経た『ONE LIFE,ONE DEATH』と同等のテンションを、
前作『極東 I LOVE YOU』から、わずか11か月でアウトプットしている点である。
ライヴツアー【Mona Lisa OVERDRIVE】のアンコール・ナンバーとしてセットアップされた
狂奏戯曲「細胞具ドリー:ソラミミ:PHANTOM」を聴くと、
この『Mona Lisa OVERDRIVE』と『ONE LIFE,ONE DEATH』の感電しそうな臨場感の類似に気が付く。
あの時の、音楽への“渇望”が、維持している証拠だ。
「救われたいなんて思わない 報われたいなんて思わない」
「存在 自体 オレはシンプル そうさ大体 オレがオリジナル」
「始まリガアリ 終わりがある オレタチは直線上の存在」
「一度 生まれて 一度死ぬ 命短し 恋せよ乙女」
そんな不思議な臨場感を全体を覆うような、スリリングなライヴツアーだった。
「笑って欲しい 見ていて欲しい
それならここを撃ち抜いて くれてもかまわないさ」
そして、再度言おう“とことん過激”だ。
Mona Lisa
(作詞・作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
眠れ明日が欲しいだろう 震え出したら夜明けまで待てない
I hear nothing see nothing say nothing
Kraus の Hyper opera voice song
響き渡る Adios Amigo ゴミの山あさる Alchemist
Long long ago 冷たい指 肉につき立て 二人が抱き合った
凍りつきそうなんだ 君のことを
震えが止まるように 聞かせてよ
凍りつきそうなんだ 君のことを
震えが止まるように 君のこと 聞かせてよ
教えて欲しい聞かせて欲しい 汚れているか おかしいか
それでもかまわないか
笑って欲しい見ていて欲しい それならここを撃ち抜いて
くれてもかまわないさ
サバンナが見渡せる丘 Son of a gun by oneself 泣き出す
そこにいるのか さわっていてくれ 体中が震え出した
構の奥まで鳥肌で埋まる 痙攣が抱擁 耳鳴りがしゃべリかける
Long long ago 生ぬるい雫 糸を引く もう二度と会えないんだ
凍りつきそうなんだ 君のことを
震えが止まるように 聞かせてよ
凍りつきそうなんだ 君のことを
震えが止まるように 君のこと 聞かせてよ
教えて欲しい聞かせて欲しい 汚れているか おかしいか
それでもかまわないか
笑って欲しい見ていて欲しい それならここを撃ち抜いて
くれてもかまわないさ
教えて欲しい聞かせて欲しい 汚れているか おかしいか
それでもかまわないか
笑って欲しい見ていて欲しい それならここを撃ち抜いて
くれてもかまわないさ
教えて欲しい聞かせて欲しい 汚れているか おかしいか
それでもかまわないか
笑って欲しい見ていて欲しい それならここを撃ち抜いて
くれてもかまわないさ
細胞具ドリー:ソラミミ:PHANTOM
(作詞・作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
救われたいなんて思わない 報われたいなんて思わない
存在 自体 オレはシンプル そうさ大体 オレがオリジナル
始まリガアリ 終わりがある オレタチは直線上の存在
一度 生まれて 一度死ぬ 命短し 恋せよ乙女
眠れない夜 ドリーは殖える ホラ後に同じ顔
細胞具は ドリーの夢をみるか 柵を飛び越えLoop the Sheep
救われたいなんて思わない 報われたいなんて思わない
存在自体 キミがサンプル そうさ大体 キミがパイオニア
始まりがあり 終わりがある キミは元来 直線上の存在
一度生まれて 一度死ぬ たった一度 一度死ぬ
ドリーが 1 匹、ドリーが 2 匹 オレの肉たいイレモノ ホンモノか?
ドリーが 3 匹、ドリーが4 匹 越えるオレは細胞具
ソラミミが聴こえる ボサノバ始まる
救われたいなんて思わない 報われたいなんて思わない
存在自体 キミがサンプル そうさ大体 キミがパイオニア
始まりがあり 終わりがある キミは元来 直線上の存在
柵を飛び越えLoop the Sheep うなれ PHANTOM Loop the Sheep
眠れない夜 ドリーは殖える ホラ後に同じ顔
細胞具は ドリーの夢をみるか 柵を飛び越えLoop the Sheep
ドリーが 1 匹、ドリーが 2 匹 オレの肉たいイレモノ ホンモノか?
ドリーが 3 匹、ドリーが4 匹 個性がインフレ、頭打ち
ソラミミが聴こえる ボサノバ始まる
ソラミミが聴こえる ナキゴエが聴こえる
