「ここにも そこにも 溢れてる」
2003年3月4日、ライヴツアー【Mona Lisa OVERDRIVE】が松戸森のホール21よりスタートする。
オープニングは、新アルバム『Mona Lisa OVERDRIVE』同様、
「Continue」「ナカユビ」の流れだ。
緞帳には、赤い文字で“BUCK-TICK”、その下に“Mona Lisa OVERDRIVE”と映し出され、
青、そして白と色が変わっていく、「ナカユビ」だ。
同時に、この巨大な緞帳が落ち、メンバーが姿を表す。
衣装は、全体に“ロックンロール”をイメージするブラッキーなスタイル。
前ツアーで、すでに“魔王”の称号を与えられた櫻井敦司は、サテンのロングコートを纏い、
貫禄充分に、我々の前に帰ってきた。
このツアーで暴走を極める、今井寿も、デビルの如きメイキャップに黒のジャケット。
星野英彦は、【WARP DAYS】からのサングラスを着用し、少しロカビリー風のスタイル。
過激ナンバーに備える“心臓部”リズム隊のアニイ&U-TAも黒を基調としたドレススーツに身を包み、
スピディーかつ生身のライヴ・アクトがスタートする。
二本指を観客に突き射すオールバック櫻井敦司。
このツアーから初登場の女体をあしらったマイクスタンドが艶めかしいエロスを放つ!
「HERE WE GO!!」
このセンセーショナルなオープニング。
どこまでも“過激”だ。
仕掛け人、今井寿は、このアルバムを
「“ロックンロール・アルバム”な感じに」
と各メンバーにオーダーしたらしい。
彼は新アルバム『Mona Lisa OVERDRIVE』のキーワード“攻撃性”について語る。
以下『UV』誌より、引用、抜粋。
――“攻撃”にベクトルが向かった原因って何だととらえてます?
たとえば世の中のムードとかも関係あるんでしょうか。
「そういうのもあるだろうし、前のアルバムの影響っていうのもあるだろうし。
こういう曲をカラダが欲していたというか」
――当初は2枚組になるはずだったのが別個の作品になって
……今井さん自身のなかでは今もこの2枚(『極東I LOVE YOU』と『Mona Lisa OVERDRIVE』)
が対を成している感じですか?
「いや、やっぱり別モノといえば別モノだし。あんま、考えてないですね。
でも、曲でぐるっと繋がってる感じだけは出したいなって」
――聞くところによると、前作から漏れた曲はあえて捨て去った状態で曲を揃えたとか。
そこまでキッパリと切り離すことができたのかは、それだけこのアルバムに対するヴィジョンが明確だったってことですか?
「アルバム全体を……スピード感であったりとか、曲の短さみたいなことであったりとか、
“わかりやすい攻撃性”っていうところは、かなり意識してたと思うんです」
――わかりやすい攻撃性。つまり“実はジワジワ効いてくる”とかじゃなく、
誰がどう見ても強力、みたいなものを求めていた、と?
「ええ。そうです。
で、アルバム全体がそういうトーンでできてるっていうのは、今まで作ったことがなかったんで。
そういう部分も含めて面白いかなっていう」
――やったことのないのないことをやってみたいという、好奇心に等しい動機だったわけですか?
「ええ。でも、それは作ってる途中で気付いたことなんですけどね。
“あ、そういえばやったことないな”って(笑)」
――攻撃性と自然体ってなかなか同居しにくいものでもあると思うんですよ。
無意識なものであるはずの自然体と、意識的行為であるはずの攻撃。
だけど今井さんにとっては攻撃も自然な行動ってことですか?
「そこはもうホントにシンプルな考え方で、勢いのある曲をガーッとやろうという感じで。
1曲1曲については、それなりにいろいろ考えたり選んだりだりっていう作業もあったんですけど、
前のアルバムでの1曲1曲の作り方とは、なんかこう、意識が違うっていうか」
――逆説的に解釈すると、前作では、“考えながら構築していく”感じだった、と?
「そうですね。
で、音も、シンセにしろギターにしろ、ひとつひとつの要素が、向こうのほうがノイジーではあるんですね。
ノイズ度っていうところでは向こうほうが全然高い。こっちほうがもっとわかりやすい音ですね」
――つまり今回は濁らせていない、と?
「そう……かな」
――ノリ一発と言うと語弊もあるでしょうけど、各曲の根本にあるアイディアに忠実に突っ走った、
という感じなんでしょうか?
「ええ。今までになく本能的なところにって則作った曲が多いかな。もしくは衝動」
――ここでいくつかの収録曲について。
まずは1曲目の「ナカユビ」ですけど、いったい何が今井さんにこれを書かせたんです?
「これは「ナカユビ」っていうタイトルがまずあって、そこから膨らませていったんです。
中指の使い方ですよね、書いた内容は」
――書いたとき、何かムカつくことでも?
「いや、べつにそういうことは。ひとりで家で怒ってたりしないですよ(笑)。むしろ淡々と書きましたね。
曲であり、歌詞なんで。日記とかそういうもんだったら、怒りをぶちまければいいと思うんですけど、
一応、そこにテンポとリズムとメロディがあり、その兼ね合いがあるわけじゃないですか。
だから、むしろ冷静に」
――ちなみに日記なんかつけてたりは?
「しないですよ!(笑)」
以上、抜粋、引用。
とにかく、先行シングル「残骸」とこのオープニング・ナンバー「ナカユビ」を聴いただけで、
彼らが、欲していた“攻撃性”の本質が掴めるだろう。
しかも今井寿は、それが“自然”発生的に湧きあがってきた感情であったと語っている。
それも、一筋縄のパンクな“怒り”ではない。
前作『極東』の深淵な世界観を逆手に取った、コントラストは、戦略的な計算である。
彼の頭の中は、それが、過激であれば、過激であるほど、“冷静”に計算する。
まさに、情熱と冷静の間に生み出される、シンプルなロックンロールの衝動といったところだろう。
そして、このパンチには“即効性”がある。
決して、ボディ・ブローではなく、いきなりのストレート。
DVD『at the night side』では、ドキュメンタリーとして、ステージ以外の
BUCK-TICKの姿が今までにないくらい豊富に映し出される。
楽屋でも、明るいU-TA&アニイの樋口兄弟やリラックスした星野英彦。
そして、なにか考えているようないないような不思議な雰囲気の今井寿。
楽屋裏でも、シリアスな表情の櫻井敦司。
「世界を踏み潰すBUSTER 悪性遺伝子病」
そして、前年の年末に、一度だけ披露した「BUSTER」。
ステージバックの中央のヴィジョンに、いきなりミサイルや爆弾の映像が映り、
臨戦態勢であることを観客に告ぐ!!
歌詞は『極東I LOVE YOU』に続き、
北朝鮮やアメリカ同時多発テロ事件をモチーフにしているといわれる問題作。
櫻井と今井のダブル・ヴォーカルが、過激に襲いかかる。
「悪性遺伝子病」は、かつて「Madman Blues -ミナシ児ノ憂鬱-」で唄われた
「別ノレヴェルノ超生物 新ラシイタイプノ超生物」のなれの果てか?
この時期、世界が
「秩序ヲ失クシタ負ノパワー 200%ノ負ノパワー」
に覆われようとしていた事実。
それを、今井寿はすでに見破っていたのであろうか?
兎にも角にも、このオープニングの今井:作詞作曲の2曲だけで、
我々はすでにダウン寸前のカウンターパンチを食らったようなものだ。
しかし、彼らから“自然”発生した“攻撃力”はこれだけではなかった。
ナカユビ
(作詞・作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
HERE WE GO!!
Fuck up! Go fuck yourself!
Lift up your middle fingers
Say "Fuck you" or "Fuck off"
Get it up! Get it up!
ツキタテロ
I HATE YOU SO FUCK IT
ここにも そこにも 溢れてる
BUSTER
(作詞・作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
世界を踏み潰すBUSTER 悪性遺伝子病
我が物顔の足跡 狙いを定めてSwallow dive
破壊が美徳の creatures
唯一無二さ The only one
破壊が美徳の creatures
唯一無二さ The only one
お前は喰い潰すEATER 悪性遺伝子病
喰い散らかして飲み込む 肉からMETALまで OK!
破壊が美徳の creatures
唯一無二さ The only one
破壊が美徳の creatures
唯一無二さ The only one
La La La…生まれたか La La La…殻を破った
La La La…生まれたか La La La…お前は誰だ
La La La…生まれたか La La La…殻を破った
La La La…生まれたか La La La…お前は誰だ
穴を掘ってるのはDIGGER 悪性遺伝子病
辺りかまわず掘っても 掘っても掘ってもまだ足りない
深い暗い巨大な穴 そろそろ気が付く頃だ
深い暗い巨大な穴 お前の墓の穴だ Bingo!
La La La…生まれたか La La La…殻を破った
La La La…生まれたか La La La…お前は誰だ
La La La…生まれたか La La La…殻を破った
La La La…生まれたか La La La…お前は誰だ
