「お前の中に俺がいる 俺の中に お前がいる」
非常にリスキーな、ドラッグ・ソングである。
真っ白な粉末のライン…
何処までも、ブっ飛んでしまう身体…
頭の中で、凶暴な“MONSTER”が暴れ出す…
BTトリビュート・アルバム『PARADE~RESPECTIVE TRACKS OF BUCK-TICK~』では、
RUNAWAY BOYS (kyo and nackie) がこの「MONSTER」をカバーしている。
全員がライダースの皮ジャンを着こんで疾走しているようだ、
と比喩される星野英彦、快心の爆走型ロック・チューン。
以前ほど、このドラッキーな雰囲気が薄れていたBUCK-TICKの楽曲の中で、
久々にヤヴァさ満点のスリリングな歌詞を櫻井敦司はこの星野楽曲に載せ、
アルバム『Mona Lisa OVERDRIVE』の加速度を更に上昇させた。
しかも、そこにあるのは、“熱さ”はなく、ひたすら“クール”な感触だ。
歌詞にも、登場するが(この頃より、過去の楽曲を匂わせるテクニックを櫻井披露し出す)
ドライヴする感覚が、新世界へ旅立ったドラッグ・アルバムの傑作『狂った太陽』の
「MACHINE」の疾走感を感じさせる楽曲だ。
このドラックのイメージが、爆走する真夜中のハイウェイとクロスする。
“覚醒する真っ白なライン”は、高速の車線のラインと、テーブルの上の粉末のライン…。
自分の頭の中の化物は、深層心理に潜む心境、“スピード”を徐々にあげていく。
高まる鼓動に反比例して、冷めて覚醒していく意識。
ドクン、ドクンと脈打つサウンドが聴こえてきそうだ。
この3曲目にして、観衆はすでに、暖まったエンジンをフル回転にシフトしている。
アルバム『Mona Lisa OVERDRIVE』では「原罪」からの流れで後半の最後のラストスパートを、
この「MONSTER」で全力疾走し、エンディングの「愛ノ歌」を迎えることになる。
ライヴツアーでは、逆に先行シングル「残骸」を聴かせた後、
ギグの景気付けの一発として、この位置にセットされている。
この【-XANADU-】は、さすがに貫禄のパフォーマンスだ。
このセットリストはホールライヴツアー【Mona Lisa OVERDRIVE TOUR】
そしてライヴハウス・ツアー【“TOUR Here we go again!”】を通して一貫している。
この集大成の【-XANADU-】は、野外という特異性があるものの、
今井寿が語っていた通り「普通にやります」と今年やってきた来た事を、
そのまま、日比谷野音にぶつけるのみだ。
そして、今井寿は、スタビライザーに替え、この「MONSTER」で噂の新ギターを持ち出した。
最初は「極東より愛を込めて」で御馴染の“テルミン搭載”WHITE POTが
照明でそんな色に見えたか映った。
しかし明らかに「銀色」輝くギターで、これが噂の今井メイク新ギターか!?と観衆をうねらせる。
“SILVER POT”!
今井寿も、新兵器を手に、「どうだ!」とばかりに、ハードなプレイを展開する。
こういった星野楽曲での今井寿の暴れっぷりが、
2003年の彼のエキセントリックぶりを象徴していると言えるだろう。
今井寿は突っ走ることを辞めない。
また、星野楽曲の特色は、もう一つ。
荒々しい樋口“U-TA”豊のベース・プレイも見事だ。
U-TAベースのリードする星野楽曲は、そのアレンジに幅広さ関わらず、
今回の“暴走モード”で、発揮されたという訳だ。
唸るビートを追いかけるように、オーディエンスもスピードを上げていく。
「ツイテコレルカナ?」
櫻井敦司が、捲し立てる。
「ブッ壊れるまで、アクセルを踏め」
今井寿が、クールな眼差しを観衆に向ける。
渾然一体のBUCK-TICKビートが、真っ白に溶けていく。
“野音”がハイウェイに変わっていく。
都心に“夜”がもう其処まで迫っている。
MONSTER
(作詞:櫻井敦司 / 作曲:星野英彦 / 編曲:BUCK-TICK)
俺はブッ飛ばしている 夜をブッ飛ばしている
頭の化物が俺の中で ブッ壊れている
暴れる MACHINE ケツが滑る 震える鼓動 光が包む
俺はブッ壊れている 夜にブッ壊れている
頭の化物が 俺の中でブッ飛ばしている
狂える MACHINE 闇に吠える 全開な鼓動 光が包む
覚醒する真っ白なライン 溶かしてくれ
何処までも高く飛ぶさ 溶かしてくれ
お前の中に俺がいる 俺の中に お前がいる
俺はブッ飛ばしている 夜をブッ飛ばしている
頭の化物が 俺の中でブッ壊れている
狂える MACHINE ゲツが滑る 震える鼓動 光が包む
覚醒する真っ白なライン 溶かしてくれ
何処までも高く飛ぶさ 溶かしてくれ
覚醒する真っ白なライン 溶かしてくれ
何処までも高く飛ぶさ 溶かしてくれ
お前の中に俺がいる 俺の中に お前がいる
