「ダイヤモンドちらつかせ 操り人形踊らせる
大義の炎で 世界中を焼き尽くす 」
【Mona Lisa OVERDRIVE -XANADU-】は、ここから、象徴的BUCK-TICK名曲集と
その様相を変えていく。
櫻井敦司も、映像作品で入っていない楽曲や、この年のライヴツアーで演っていない楽曲も、
意識的に盛り込んだと言及している。
日比谷野外音楽堂を“闇”が包みこむように夜が広がっていく。
明らかに、この会場には、過剰と言える膨大な照明が光を放つ。
トップ・バッターは、マーキュリー時代を象徴するアルバム『SEXY STREAM LINER』から、
痛烈に“戦争”を皮肉った「無知の涙」。
この楽曲は、この年のライヴツアー【Mona Lisa OVERDRIVE TOUR】では、
本編に採用され一貫してパフォーマンスされてきた。
今井寿に言わせると、この「成り切れないヒップホップ」は、
“闇”を本格的に描いたアルバム『darker than darkness -style 93-』の頃から、
今井寿の頭の中に構想があり、公開の機会を窺っていた経緯があった。
先に星野英彦の「楽園」がアルバム『Six/Nine』で、櫻井敦司の歌詞による
同じ“戦争”への皮肉というモチーフで登場し、
更に、公開が先に伸びた可能性があるが、全編テクノ仕様の『SEXY STREAM LINER』の中で、
ラウドなギター・ロック・テイストの「無知の涙」は、異質な迫力で我々の耳を奪った。
このラウド・サウンドのキメ手は、今井寿のフライングVのギター・フレーズ。
これは、まさに歪んだギター・サウンドで、ロックの可能性を極める方向性へ舵を取った
『darker than darkness -style 93-』を匂わせる作風と言える。
このDVD『Mona Lisa OVERDRIVE -XANADU-』では、2003年6月28日と29日の映像が、
混入してリリースされているが、序盤のセット・リストでも、
やや暗がりに見えるシーンが、雨の為リハーサルが遅れ、マキ状態でスタートした6月28日の映像、
逆に、青い空が広がり、気球が上空に浮かぶ明るいシーンが、開場時刻を早めた6月29日の映像と判断できる。
そして、決定的なのが、この「無知の涙」で、
お決まりのアクションとして、櫻井敦司が、今回のツアーで大活躍の
女体マイク・スタンドをマシンガンに見立てて連射するかのような振りをした後、
ステージの床に、叩きつけ、この象徴的マイク・スタンドに折り曲げてしまったのが、
2日目のステージ、6月29日のパフォーマンスである。
従って「無知の涙」以降のセット・リストで、
真っ直ぐなマイク・スタンドを使用しているのが、初日6月28日の映像で、
マイク・スタンドが折れ曲がっているシーンが2日目6月29日の映像である。
(※その他、6月29日には、櫻井敦司が、頭にターバンを巻いて登場した)
この【-XANADU-】のライト・アップが、都内のビル街に巨大な光を放ち、
日比谷野外音楽堂を更に、一種独特の世界観が包みこむ。
映像作品としては、
この「無知の涙」もVIDEO/DVDの『SWEET STRANGE LIVE FILM』以来の登場となるが、
櫻井敦司の舞も、まるで亡霊のように揺れて、幽幻的なイメージだ。
指先で、“ダイヤモンド”をぶら下げるような仕草と、
“操り人形”のようなアクションをしたり、かなり、凝ったギミックが、
まるで『SEXY STREAM LINER』当時に立ち還ったようにも映る。
今井寿のアディダスとヨージ・ヤマモトのダブルネームのロングカットバッシュが、
リズム隊の機動する重たいグルーヴに合わせて調子を取る。
「Love & Peace 切り裂いて ブリキの兵隊繰り出す
あぶないオモチャで あの娘までも焼き尽くす 」
二本指をこめかみに当てて、発射する櫻井敦司は、
「Mona Lisa」でも見せるSUICIDEを決め込む。
グリーンとオレンジのライトアップがメンバーを包み込む“野音”。
このルーズなノリこそが、
「セルロイドのスローダンス 」だ。
濃厚な舞いを見せるBUCK-TICK。
この後、非常にドラマチックな展開を見せる【-XANADU-】。
【WARP DAYS】で、激しい楽曲で、メロウなアルバム楽曲をカバーした前年のツアーとは反対に、
疾走感、暴力性、攻撃性を発揮する『Mona Lisa OVERDRIVE』では、
非常にシリアスな楽曲群が、そのライヴ・ステージで世界観を見せつける。
BUCK-TICKというバンドの奥深さ、幅広さ、そのキャパシティは恐るべき可能性を秘めることを、
この時間の少ない“野音”のステージでも証明して見せた。
無知の涙
(作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
テディベア カボチャの馬車 見世物小屋でスローダンス
戦闘機 飛び交う部屋 あの娘と踊るスローダンス
マシンガン抱いた少女 セルロイドの少女
ダイヤモンドちらつかせ 操り人形踊らせる
大義の炎で 世界中を焼き尽くす
ママは何処 何処にいる 悪魔達はスローダンス
流れない 無知の涙 綺麗な髪の少女
マシンガン放つ少女 セルロイドのスローダンス
Love & Peace 切り裂いて ブリキの兵隊繰り出す
あぶないオモチャで あの娘までも焼き尽くす
マシンガン抱いてスローダンス セルロイドのスローダンス
ダイヤモンドちらつかせ 操り人形踊らせる
大義の炎で 世界中を焼き尽くす
Love & Peace 切り裂いて ブリキの兵隊繰り出す
あぶないオモチャで あの娘までも焼き尽くす
