2003年2月9日、NHK音楽情報番組『BEAT MOTION』にメンバー全員で、ゲスト出演した映像。
前回、出演時と同じく、司会者は、LUNA SEAの慎矢が担当している。
この時のインタヴューも、非常に彼ららしい“自然体”のトーク内容となっている。
この年、デビュー16周年ということで、どのマスメディアに登場しても、
そのキャリアの長さに注目される日本ロック界でも稀有な存在となっていたBUCK-TICK。
冒頭は、そんな彼らに投げかけられる最も多い質問であったかも知れない(未だ多い)。
Q:バンド・デビュー16周年、長続きの秘訣は?
櫻井 「……わかりません……」(大爆笑)
彼には、もう、何度も訊かれる最もポピュラー質問である。
それを、実は、真っ正面から、回答しているのである。
彼は、決して、ウケを狙って、コメントするタイプの人間ではない。
アナウンサー 「そうですか…。なんかイメージも変わらないですよね」
櫻井 「どんなんですか?」
アナウンサー 「ずっと、こう、悪さ満点!みたいな…。
今回の新曲(残骸)なんかも、毒っ気たっぷり、っていう…」(爆笑)
このイメージには、始終、寡黙な今井寿、星野英彦もニヤりと笑ってしまう。
インタヴューは続く
Q:一番の思い出は?
アナウンサー 「ヤガミさん。“新宿ライヴハウス動員2名の最低記録”」
ヤガミ 「チケット売らなかったんですよ。あえてノルマをしなくって。
当て込んだんですよ、対バンのお客を。
そしたら、俺ら、なんか、トリにさせられて、出て行く時に、みんな帰っちゃって(笑)」
アナウンサー 「で、その時は、どんなMCとか…、したんですか?」
櫻井 「いや~、もう憶えてないですけど……。
丁寧にアタマ下げたと思いますけど……。コノヤローって(笑)」
Q:今まで機会を失って言えなかったこと?
アナウンサー 「櫻井さん。“実は『南極物語』が好きだ”」
櫻井 「別に……(笑)。こういうトコで言うことじゃないですけど(笑)。
あまりハードな告白だと、放送にならないんで……、ソフトなところで
動物モノ、弱いんです」
ペット好きで、有名な櫻井敦司の無難な回答であった。
Q:もしミュージシャンに、なっていなかったら?
アナウンサー 「樋口さん。歴史の先生」
樋口 「カッコ悪いですね~~(笑)。歴史好きのロッカーなんで。
だからNHKは、かかさず見てるんですけどね。
いつかゲストに出してくんないかな、って(笑)。
カッコ悪いなぁ~なんか」
アナウンサー 「ファン、増えると思いますよ」
これは樋口“U-TA”豊の放送局まで踏まえた上での気遣いの回答と言えるだろう。
こういう所ににも、彼の人間性が現れる。
Q:今後のライヴは何か新しいが?
櫻井 「ええ、まあ。新しいアルバムが出るんで、
新曲…やる…まあ、それくらいですけど……。
特に…新しいことってのは……ないですけど……。
なんか……しめっぽくないました?(笑)」
そして、最新シングルの地上波公開となる。
やはり、2003年は、このBUCK-TICK極上のロックンロール「残骸」。
TVスタジオのパフォーマンスであるが、丁寧に表現しているのが分る。
すでに、マスメディアとは、ある程度の距離を置いた活動を続けて久しい彼らであるが、
こういったトークにも、独特の彼ららしいウィットを感じさせてくれる。
と同時に、いつまでも変わらない“自然体”の彼ら。
結局、今回も今井寿と星野英彦は、一言もしゃべらずトーク部分は終わっている。
このいつまでも変わらないキャラは、長寿バンドの秘訣そのものだろう。
この“自然体”と、ロックンロールの“攻撃性”がキーワードとなる『Mona Lisa OVERDRIVE』。
しかし、“自然体”と“攻撃性”のふたつとも、普遍的な概念ではある。
それを、尽き詰めることは、すなはち、ロックンロールという、
今や最も普遍的な音楽ジャンルを語ることになるだろう。
果たして、当時のBUCK-TICKにとってのロックンロールは一体なんだったのだろうか?
そして、彼らは、そんな普遍的な存在から遠ざかろうと独特な世界観と構築してきたハズなのだ。
“個性的”であろうとすることで至った、それこそ、今井寿の言葉を借りれば、
「一番、シンプルな考え」
という結論へとそれこそ“Loop”していく彼らの様は、
16年という長い螺旋階段の中で、根本的な“音楽”への回帰を促していたのかも知れない。
しかし、そこは、今井寿率いるBUCK-TICK。
決して、一筋縄ではいかないロックンロールの真髄を見せてくれることになる。
これは、キャッチーな歌メロ路線へ回帰したと言われるアルバム『COSMOS』や、
新たなるBUCK-TICKスタンダードを意義付けたアルバム『ONE LIFE、ONE DEATH』とも、
感触の異なる、一風独特なBUCK-TICK流ロックンロールであった。
その新アルバム『Mona Lisa OVERDRIVE』の世界に入っていくことにしよう。
残骸
(作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
瓦礫の上で歌う 気の狂えた天使
静かに叩きつける 雨は鎮魂歌
残骸が 残像が 残酷に燃える
お前は夢見る 明日が来ることを
雨に 撃たれ
止まない激しい雨は 誰の鎮魂歌
麗しいお前の肌を 俺は汚すだろう
戯れ言は お終いだ 欲望だけだ
俺はもう夢見ない 明日が来ることを
深く もっと深く 俺は穢れて行く
腐りきった日々よ 最後は お前の中で 深く…
残骸が 残像が 残酷に燃える
お前は夢見る 明日が来ることを
戯れ言は お終いだが 絶望だけだ
俺はもう夢見ない 明日が来ることを
深く もっと深く 俺は穢れて行く
腐りきった日々よ 最後は お前の中で
深く もっと深く 深く 愛してくれよ
砕け散った日々よ 最後はお前の中で
深く …深く
雨に 撃たれ
