「止まない激しい雨は 誰の鎮魂歌」
【-XANADU-】
「ナカユビ」に続くセットリストは「残骸」。
これは、アルバム『Mona Lisa OVERDRIVE』ツアーで一貫してプレイされてきた通りだ。
『Mona Lisa OVERDRIVE』の先行シングル・リリースされた同曲は
オリコンシングルランキング初登場4位とTOP10入りを果たし、
テレビ朝日系列の番組「たけしのTVタックル」のエンディングにも使われた。
アルバムには、タイトルが「残骸 -Shape2-」とされ、
ミックスが多少異なるヴァージョンが収録された。
そして「残骸」は言わば、当時、近年で最もメジャーな一曲と言えた。
そのヴィデオ・クリップも、かつてオリコン初登場1位を獲得した
大ヒットシングル「惡の華」がモチーフとされた。
プレミアム・ライヴの抽選もセールスに拍車をかけ、
戦略はズバリと、ハマッたと言えるだろう。
しかし、BUCK-TICKが、この「残骸」に込めた想いは、全く別の所にあった。
「一番シンプルな考え」
と、今井寿がストレートなギター一本で制作された極上ロックンロール。
そこには、真空に近い“ロック”への想いが込められる。
凝ったギミックに、どこまでも、溺れていく自分を、
一発のギター・リフが、救い上げてくれる。
今井寿の脳裏には、その時、“ロックの神様”が、舞い降りた。
そして、その楽曲に櫻井敦司が、“生命力”を吹き込む。
BUCK-TICKの5人が、渾然一体となって、真摯に挑む“ギター・ロック”。
この“パワー”が、この“攻撃力”が、この“生命力”が、
人生のすべてだ。
何ものにも勝る、息吹が、鼓動が、此処にはある。
それで、充分だ。
そして、櫻井敦司の歌詞。
今まで、繰り返してきた数えきれない、
“過ち”“後悔”“苦悩”“欺瞞”
そんな、己へのコンプレックスを全て賭けてでも、
得るべきものがある。
それが、“生きる道”。
激しい雨が、突き刺ささる、抜けがらのような自分だけれど、
そこに、それが、もし、少しでも“残像”が残っているのなら…
かき集めてでも、もう一度、頼む、と。
全身を投げ出して、挑む価値のある“愛の残骸”“夢の残骸”。
もし、それが、“残酷”に燃え尽きてしまう事がわかっていたとしても、
それでも、それを、試さずには、死ぬことすら出来ない。
そんな、彼の“残骸”は、恐らく、燃え尽きた後に白い灰すら残ってはいまい。
“完全燃焼”するんだ。その“命”を。
「残骸」は、そんな櫻井敦司の祈りにも似た“欲望”そのものじゃないか?
彼は唄う。
「戯れ言は お終いだ 欲望だけだ
俺はもう夢見ない 明日が来ることを」
その己への深い“欲望”を解き放て!
そして、此処にあるのは、過去でも未来でもなく「今」だけだ。
だから、もう“明日を夢みはしない”のだ。
その“欲望”の先には、穢れてしまった自分が、
麗しいお前を汚す結果が待ち受けているかも知れない。
愛する人を傷つけてしまうかもしれない。
それでも、腐りきった日々も、砕け散った日々も、
最期に、死が訪れた時、お前の元へ召されるならば、それで本望だ。
櫻井敦司にとって、BUCK-TICKにとって、そして、すべてリスナーにとって、
この「残骸」は、
アルバム『Six/Nine』収録の「唄」以来の
生命の叫びだ。
そして、「残骸」は、挑戦を辞めようとしないすべての人の生きた証。
すなはち「遺書」だ。
残骸 -Shape2-
(作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
瓦礫の上で歌う 気の狂えた天使
静かに叩きつける 雨は鎮魂歌
残骸が 残像が 残酷に燃える
お前は夢見る 明日が来ることを
雨に 撃たれ
止まない激しい雨は 誰の鎮魂歌
麗しいお前の肌を 俺は汚すだろう
戯れ言は お終いだ 欲望だけだ
俺はもう夢見ない 明日が来ることを
深く もっと深く 俺は穢れて行く
腐りきった日々よ 最後は お前の中で 深く…
残骸が 残像が 残酷に燃える
お前は夢見る 明日が来ることを
戯れ言は お終いだが 絶望だけだ
俺はもう夢見ない 明日が来ることを
深く もっと深く 俺は穢れて行く
腐りきった日々よ 最後は お前の中で
深く もっと深く 深く 愛してくれよ
砕け散った日々よ 最後はお前の中で
深く …深く
雨に 撃たれ
