
2009年2月18日、BUCK-TICKの
アルバム『memento mori』が発売される。
2007年、20周年を記念して、BUCK-TICKは、大々的にセレモニーを行った。
それは、対バン形式のライヴ・ツアー【PARADE】から始まり、
9月8日には、デビュー20周年記念イベントとして横浜みなとみらい 新港埠頭特設野外ステージにて
【BUCK-TICK FEST 2007 ON PARADE】を開催した。
その後、9月19日にはアルバム『天使のリボルバー』をリリースし、
9月22日から再び新アルバムを引っ下げてライヴ・ツアー【天使のリボルバー】を開始。
恒例となる12月29日の日本武道館公演もアニヴァーサリーライヴを迎える。
そして、翌2008年1月20日、
台風で延期となっていた沖縄ナムラホールのライヴ【PARADE】振替公演を開催。
さしずめ、コレは後夜祭の賑わい。
しかし、祭りは、必ず終わる。
僕は、その穴を埋めようと【ROMANCE】を書き始めた。
実は、書き始めた当初、その穴が埋まったら、
すなわち、
「次のアルバムがリリースされたら、辞めよう」
と考えていた。
自分でも驚くくらい、すごく漠然とした予定であったが、それまでに、
きっとアルバム『十三階は月光』くらいまでは、書けるような気がしていた。
それで、タイトルを【ROMANCE】とした。
この【ROMANCE】には、モデルとなったサイトが幾つかあった。
まったく別のバンドを取り扱ったサイトであったが、
YouTubeから流れるサウンドと、それとリンクする情報がそこにはあった。
心地いいな、と思った。
これを、大好きなBUCK-TICKでやってみたいな、と思ったのが、“表の切欠”であった。
結局、僕は、【ROMANCE】を書きながら、ずるずるとノスタルジックな世界に、
自らハマり込み、現在を迎える。
見ての通り、当初の予測よりも、BUCK-TICK本体の活動開始が早かったこともあるが、
計画通りに、『天使のリヴォルバー』に至るどころか…、
タイトルとした楽曲「ROMANCE」にも、辿り着けていない。
~月夜の花嫁・・・
そして、少しプライベートなことだけれども、
【ROMANCE】を書き始めたのには、
“表の切欠”のほかに、“裏の意図”があった。
それを、僕は、【ROMANCE】の最終回に書こうと、思っていた。
なんのことはない。
個人的な失恋の思い出だ。
初め、この【ROMANCE】は、その人への届かない「恋文」の続きのようなものだった。
もう十何年も昔の話である・・・
彼女は、BUCK-TICKの熱狂的なファン、所謂、熱心な追っかけで、
僕のBUCK-TICK初期の知識のほとんどは、彼女の英才教育によるものだ。
彼女の口癖は、
「あっちゃんはね。・・・あっちゃんはね。・・・」
飯を食べていても、酒を呑んでいても、ベットでも、どこでも、この調子…。
「・・・ああ、そうですか」と。
僕よりも二つ年上の彼女に、正直、つき合ってもらっていたかも今では定かではない。
でも、彼女の笑顔と見たかった僕は、彼女につき合った。
まさに“狂いそうに嫉妬しながら”、BUCK-TICKを聴き、ライヴにも行った。
そして、いつしか、僕自身も、BUCK-TICKの楽曲と世界観に心を奪われ、魅かれていった。
そんな魅力が、櫻井敦司氏とBUCK-TICKには、あった。
僕は、一度、東京三宿のバーで、櫻井敦司氏とお逢いしたことがある。
彼女の言っていたことは“真実”だった。
櫻井さんは、本当にこの世のものとは、思えないくらい“美しく”て。
まだ、長すぎるほどのロングヘアーから、時折光る眼光は鋭かった。
それまで、所謂、“芸能人”を見ることはあったが、
全く、“別格”の存在だった。
陳腐なことばだが、本物のロックスターとは、こういう存在だと思った。
“嫉妬”をすら超越する“存在感”。
“認めざる得ない”そんな絶対的な存在。
僕は、馬鹿なことに、懸命に彼を追いかける愛しい彼女の存在に、
彼が気付いてくれたらいいのに、とさえ思えた。
そんな内容を彼女に宛てた「恋文」に書いた。
その瞬間、彼女は、僕の前から姿を消した…。
すべてが消えた。


『memento mori』
本当に彼ららしい。
いい言葉だ。
このアルバムが、どんな意味を持つアルバムなのか?
それは、聴く方々が、独自に意味を付ければいい。
先行の「HEAVEN」にしろ「GALAXY」にしろ、まだ、誰にも本当の姿はわからない。
でも、きっと、4月からのライヴ・ツアーが終わる頃には、
どんな意味を持つのか、おぼろげながら見えてくるのではないだろうか?
ひとつ言えるのは、きっと、これまでのアルバムとは、
全く異なったカタチや意味を持つだろう、という事だけだ。
それは、BUCK-TICKにも、そして、我々にも…。
今の【ROMANCE】は、もう、その彼女への「恋文」じゃない。
読んでくれている方々の想いが、もう、僕のコントロールを超えた。
先は、僕にも予想がつかない。
狂ったこの世界で
【ROMANCE】を読んでくれるあなたへの「愛ノ歌」だ。
だから僕も、もう少し、【ROMANCE】を書き続けようと思う。
「人生が自分の計画通りに行くなんてことは、ないのだ」
また、そんな事を彼らから、教わったような気がする。

【幻想の花】よ
あなたは言った。
「死は、いつか誰にでも訪れる…私にも、あなたにも、そして、彼女にも…」
「Over The Rainbow」
雨上がりの“虹”を超えて、ともに生きよう、この世は素晴らしい。
“愛と死を想いながら”
memento mori...
yas