「愛と死 激情が ドロドロに溶け迫り来る」

さて、【BUCK-TICK TOUR2002 WARP DAYS】最終公演の【東京ベイNKホール】も、
ここより、『極東I LOVE YOU』の核心部に入る。

極めてコンセプチャルなアルバム『極東I LOVE YOU』の収録曲順では、
この中盤に「Long Distance Call」「極東より愛を込めて」(※「GHOST」を挟み)「Brilliant」。
この日の6月16日の【東京ベイNKホール】では「極東より愛を込めて」「Long Distance Call」「Brilliant」の曲順。
これは、【WARP DAYS】の公演セットに共通する。
(ライヴハウスツアー【WARP DAYS - AFTER DARK -】と沖縄公演を除く)

物語性を重視すべき『極東I LOVE YOU』では、曲順にこだわりたいところであるが、
この個々の楽曲が持つ情景は、映画でいうと、演出を彩る別カット・シーンのようなもので、
そのシネマの編集の妙で幾らでも演出を変化させて、アレンジできるようになっている。

すなわち、演出効果をBUCK-TICKは、ライヴという生モノの媒体でベストの状態のアレンジを仕掛けたと言える。
まずは、この激しい戦場の様子を「極東より愛を込めて」で見せておいて、
後に「Long Distance Call」で、戦場からの戦士の愛のメッセージを送り、
「Brilliant」でその結末を見せつけるのだ。

アルバム演出と対比すると、「Long Distance Call」と「極東より愛を込めて」が逆になっているが、
これも、全く問題ないばかりか、例え最期の「Brilliant」が始めに位置していても、
物語の結末から始まり、その回想録として展開する映画の演出は、世界中に溢れている。
そんな、カット・シーンを繋ぎ合わせたようなコンセプト・アルバムが『極東I LOVE YOU』の正体である。

このアルバムは、冒頭の「疾走のブレードランナー」「21st Cherry Boy」と
映画エンドロールと言える「王国 Kingdom come~moon rise~」と「Continue」さえこのポジションを守っていれば、
様々な表情の演出で楽しめる万能な楽曲集と言えた。

この日のツアー最終公演でも、過酷な戦場での戦士の葛藤を描く「極東より愛を込めて」は、
真っ赤な照明でNKホールが包まれると、遂に“開戦”の刻が訪れ、
これでもか、と言わんばかりフラッシュがオーディエンスの目をくらましスタートした。

我々は、まざまざと始まってしまった戦闘を固唾を呑んで直視するしかない。
まさに

「見つめろ 目の前を 顔を背けるな」

と宣誓されたようだ。

会場の大観衆が、雄叫びをあげ、この先行シングル「極東より愛を込めて」迎え入れる。
櫻井敦司はオーディエンスに二本指を指さし付け開戦の狼煙をあげる。
燃え盛るステージで胸を叩き、この痛みを刻みこむ。
今井寿の新兵器テルミン内臓“Black Pod”が、観衆の想いを焼き尽くす。
真紅に染まったステージ上では、もうメンバーのシルエットしか確認出来なくなってしまう。


もう、「楽園」で目を背けたように、現実を見ない訳にはいかない。
極東日本も、そして人類も、すでにそういった局面に直面している時期であった。


【ROMANCE】



極東より愛を込めて
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)


見つめろ 目の前を 顔を背けるな
愛と死 激情が ドロドロに溶け迫り来る

そいつが 俺だろう

俺らはミナシゴ 強さ身に付け
大地に聳え立つ
光り輝くこの身体

そいつが お前だろう
今こそ この世に生きる意味を

愛を込め歌おう アジアの果てで
汝の敵を 愛する事が 君に出来るか
愛を込め歌おう 極東の地にて
悲哀の敵 愛する事が 俺に出来るか

泣き出す 女の子
「ねえママ 抱き締めていて もっと強く!」

愛を込め歌おう アジアの果てで
汝の敵を 愛する事が 君に出来るか
愛を込め歌おう 極東の地にて
悲哀の敵 愛する事が 俺に出来るか

見つめろ 目の前に 顔を背けるな
愛と死 激情が ドロドロに溶け迫り来る