「祈りは空を目指す 救いそれは雨に変わる」

この2002年6月16日の【WARP DAYS】東京BAY NK HALL最終公演を除き、
【TOUR2002 WARP DAYS】では
「TRIGGER」⇒「謝肉祭 -カーニバル-」⇒「GHOST」の順でセットリストされたが、
この日の最終公演のみ
「TRIGGER」⇒「GHOST」⇒「謝肉祭 -カーニバル-」の順でパフォーマンスされている。

後にこの公演は『BUCK-TICK TOUR2002 WARP DAYS 20020616 BAY NK HALL』としてDVDリリースされたので、
こちらの順で『極東I LOVE YOU』のストーリーを辿るのがポピュラーになっているが、
このアルバムの不思議な一面で、
どの楽曲を、どこに差し込んでも物語性が失われないコンセプト・アルバムに仕上がっている。


櫻井/星野作品である、この楽曲「謝肉祭-カーニバル-」は、
展開と言い、歌詞と言い、アルバム『Six/Nine』に収録された名作「密室」の焼き直しの如き名曲だ。

メロディアスなギター・アンサンブルと樋口“U-TA”豊だ紡ぎ出すベース旋律。
歌メロも、物悲しく、響き渡るポピュラーさ。

「密室」では人の心の奥底にある“恋愛感情”の本質を、
激しい欲望表現で描いているが、これは、すべて願望の形で描写されていて、
“犯罪者心理”であるとか、“監禁願望”を意味するという解釈が(恐らく今も)繰り返しなされている。

しかし、これは、作者:櫻井敦司の胸の奥に燃える秘密の「部屋」の出来事で、
ある意味においては、究極の愛し方を表しているという説も挙がっている。
どんなに嫌われ、口もきかない状態でも、それでも君が欲しいと願う“愛”。
それが、究極の“愛”である、と。

今回の「謝肉祭-カーニバル-」では、
自分の外側の起こるカーニバルに対比して、自分の内で起こる葛藤がクローズ・アップされる。
始めは、「もう愛などいらぬ」とばかりに、甘い幻想を抱く自分を諫めているようだ。

「愛するとか生きるとか 傷つけ合うってしまうだけ
 絶望とか希望とか 傷の痛み知らないで 」


結局は、傷付けあってしまうだけ…、そんな“愛”の真実を自戒するかのように。

そして、やがて、自分の身体の外側で起こるカーニバルが、自身と混ざり合う。
例え、傷付いても、愛していると気付くのだ。

「幾千の月の夜も 息を殺し誰かを待つ
 灼熱の砂を噛んで 傷の痛み忘れて 」


もう、自分の感情には、嘘を付けなくなってしまった自分。
なんて、弱い自分。これを認識してしまうと、もう、堰を切ったように溢れ出す激情。


「仮面の夜のカーニバル 狂乱のパレード
 ほんの少し血を流したら 愛し合って
 許しあって さあ笑って…」



“愛”の真実。そして本質を、ドラマチックに。
マダム帽を被った“悪魔”櫻井敦司は、愛し合う者を諭すかのように優しく唄う。
灯篭の炎のが浮かぶ、『極東I LOVE YOU』の世界の中で…。


「あなたは愛で溢れ 強く深く愛されている 」


【ROMANCE】


謝肉祭-カーニバル-
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:星野英彦 / 編曲:BUCK-TICK)


溶け合うな入り込むな 傷つけ合うってしまうだけ
震えても涙するな 傷の場所も知らないで

愛するとか生きるとか 傷つけ合うってしまうだけ
絶望とか希望とか 傷の痛み知らないで

祈りは空を目指す 救いそれは雨に変わる

幾千の月の夜も 息を殺し誰かを待つ
灼熱の砂を噛んで 傷の痛み忘れて

市場は妖しい匂い 広場はもう踊り狂い

仮面の夜のカーニバル 狂乱のパレード
ほんの少し血を流したら 愛し合って…

あなたは愛で溢れ 強く深く愛されている

仮面の夜のカーニバル 狂乱のパレード
ほんの少し血を流したら 愛し合って
許しあって さあ笑って…