「疾風のブレードランナー」「21st Cherry Boy」は連作であった。

楽曲制作時から連作であったのか、
もしくはセルフ・カバー・アルバム『殺シノ調ベ ~This is NOT Greatest Hits~ 』の
「…IN HEAVEN…&MOONLIGHT」や「TABOO&HYPER LOVE」のように
後からアレンジて結び付けられたかは不明であるが、兎に角、この2曲は一緒に聴きたい。
いつも、そんな衝動に駆られる。

ある意味では、アルバム『極東I LOVE YOU』の収録楽曲の中でも、
この2曲だけは、少しイメージが異なる異質な存在ではある。

むしろ、マーキュリー時代の「BRAN-NEW LOVER」を受けてのアンサー・ソングにも聴こえてくる。
「BRAN-NEW LOVER」で“新世紀”への嵐の中での恐怖を、

「世界ノ終わりなら 真夏の海辺
 怖がらず目を閉じ抱き合っていよう 」

と唄っていた世紀末世界は、“新世紀”“新世界”を迎え、
それがこの2曲に、表現されていると言える。

今井寿は「疾風のブレードランナー」

「感じるか 愛しいものの気配を
 そうだろう なんて素敵は光景 」

「聞こえるか 風は狼のブルース
 忘れるな 世界は輝いている 」

と唄い。

そして、櫻井敦司は「21st Cherry Boy」で

「罪深きこの手に 降り注ぐ愛の歌にまみれて 踊ろう
 飾り立てたならおいで悪魔の夜は抱き合っていよう 」

「俺もお前も独りだ強く、この世界で 躍るだけだ
 飾り立てたならおいで悪魔の夜は抱き合っていよう 」

と踊りに誘う。

そんな、新世界が訪れたのだ。

それは決して、天獄のような、万能の世の中ではない。
しかし、言い知れぬ“無限の可能性”と“根拠のない希望”に帰結して行く。
苦悩は、まだまだ、終わらない。
しかし、この【新世界】には、人間の意思による未来の光が輝いている。




そんな2曲を煌びやかにパッケージした
『BUCK-TICK TOUR2002 WARP DAYS 20020616 BAY NK HALL』でのパフォーマンスは、
オープニングで早くも観衆と“Climax Together”してしまっている。

初めから容赦なしだ。

『UV』誌では、これを“前傾姿勢”として、櫻井敦司にインタヴューしている。

以下、『UV』誌より、引用、抜粋。




―――なんか前傾姿勢のアルバムだな、と。

「そうですね。実際、そんなにもつんのめった感じでは決してないんだけども、
具体的に言えば1曲目(=「疾風のブレードランナー」)とかすごい前向きだし、
そこには当然、そういった意識をもって進んでいくんだっていう意味も含まれてると思うし。
自分から出てきたものとかから気持ち的なものを判断しようとすると、
今までの個人的性質と比べてもさほど変わってはいないんですよ。
だけどもそこで“潔く言い切っている”って感じがあって
……それが前傾姿勢な印象に繋がったのかもしれませんね」

―――潔い。確かにキッパリとした、それぞれの楽曲の色が明確な作品でもありますよね。

「ええ。ここ2~3作のなかでは特に、曲の色味っていうものがものすごくハッキリと出てると思うんです。
元々ポップだったものを今まではアレンジでちょっと濁してみたり、
ノイズで照れ隠ししてみたりしてた部分もあると思うんですけど、
今回はメロディ・ラインが、ホントにしっかりと中央に置かれてるんで」

―――で、今作では今井さんの作品が大半を占めているわけですが、
そのメロディ自体の質感が、ある意味で昔に戻ってるというか、
より本質に近いものになってる気がするんですよ。

「素直、ですよね(笑)。
やっぱり“ひねってナンボ”みたいなのが今井にあると思うんですけども、
それを意識しながらも、とても素直なメロディを作ってきたなと俺は思います。
ま、そこに“立ち返った”っていうのではないと思うんですけども、
タイミングがそうさせたんだと思いますね。精神的な周期というか」

―――完成直後の手応えというのは、過去の作品の場合と比べてどうでしたか?

「今まで……というかどうしても前作、前々作あたりと比べちゃいますけども、
今回は自分ですごく認識できてるというか。
ちょっと変な言い方だけども、ちょっと前だと“自分たちがわかってない”みたいなところがあって。
結果が全然見えてなかったっていういうのもありますけど。
でも今回は、なんか自分のなかで解釈できてる。今の段階でも。
これまでのはむしろ、今みたいな段階になっても……」

―――噛み砕ききれてなかった、と?

「ええ。そういうことです。
ただ、今回にしても完成図があらかじめ見えてたということではないんです。
できあがってみて……変な話ですけども、曲順が決まって、全部の音がミックスされて、
アルバムというカタチになった時に、なんとかそれが“自分に近い”って感じられて。
そういう意味での距離感が違うんですよね。
前はすごく遠くに感じてた。
もっと言ってしまうと、なんだか“自分のものだけど自分のものじゃない”みたいな感覚あって」

以上、引用、抜粋。



“15年”という決して短くないキャリアの中で、自己認知メタファーが、
彼らの中で、自然な流れとして、湧き起こっていたのであろうか?

兎に角、この2曲のフッ切れ方はハンパじゃない。
宇宙の彼方に、ひとっ飛びという感覚だ。

そして、この後、展開される『極東I LOVE YOU』の世界観には、
必要な、勢いであったこと間違いない。
それほど、までにセンシティヴな作品となったアルバム『極東I LOVE YOU』の世界に、
我々は、文字通り“WARP”していくことになる…。



“WARP”しよう!




【ROMANCE】




疾風のブレードランナー
 (作詞・作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)



今夜 お前に届けよう 宝物だ 約束だ
頬をつたう酸性雨 青空の下で あふれてる
夜を彩る あの星座 見つけたんだ 永遠だ
心を奪う感覚 -SENSATION- 闇にひとつ 流れてる

Baby Maybe 共に青い春を駆け抜はよう
Baby Maybe 思うまま 叶うはず
Baby Maybe その向こうに風が吹いている
Baby Maybe わかるだろう叶うはず 祝福だ

今夜 お前に届けよう 宝物だ 約束だ
頬をつたう酸性雨 青空の下で あふれてる
夜を彩る あの星座 見つけたんだ 永遠だ
心を奪う感覚 -SENSATION- 闇にひとつ 流れてる






21st Cherry Boy
 (作詞:櫻井敦司・今井寿 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)


輝くんだ 世界中 目覚めてくれ
深い闇で生まれたお前は愛
狂おしく無邪気な残酷さ
君のその欲望は綺麗で汚い愛しい

罪深きこの手に 降り注ぐ愛の歌にまみれて 踊ろう
飾り立てたならおいで悪魔の夜は抱き合っていよう

俺に触れてくれ その唇であなたの愛の息吹を
さあ 神となって

21st Cherry Boy Too young to die.
21st Cherry Boy I wanna be your toy.
21st Cherry Boy Too young to die.
21st Cherry Boy I wanna be your toy.

俺もお前も独りだ強く、この世界で 躍るだけだ
飾り立てたならおいで悪魔の夜は抱き合っていよう

そして触れてくれその唇で あなたの愛の息吹を
さあ 神となって