2002年3月6日にBMGファンハウスよりリリースされた『極東 I LOVE YOU』。
BMGファンハウス移籍後2枚目のアルバムとなる本作は、
溢れ出す今井寿のイマジネーションに拍車がかかり(まるで『Six/Nine』の時と同じく)
収録時には本作に収められていない楽曲も何曲かレコーディングされていたが、
曲順等を決める際にどうにも収まりが悪く溢れてしまい、
2枚組にする案も出たがそれには曲数が足りず、何より締め切りが迫っていた為、
とりあえず保留ということになり、その時点ではその数曲をミニアルバムとしてリリースするという話が挙がっていた。
結局は翌年2003年に新たに楽曲を追加し、『Mona Lisa OVERDRIVE』としてリリースとなる。
(※一節によるとほとんどの楽曲を、新しく作り直したと今井寿が語っている)
これにより次作『Mona Lisa OVERDRIVE』と本作『極東 I LOVE YOU』とは、
対を成すアルバムとして位置付けられており、
シアトリカルな『極東 I LOVE YOU』と攻撃性に満ちた『Mona Lisa OVERDRIVE』は
対照的な内容の双子アルバムと位置付けられる。
また、それぞれの1曲目と最後の曲が互いに繋がるような構成になっており、
最後の楽曲のタイトルもそれぞれ「Continue(続く)」、「Continuous(連続的な、途切れない)」と、
2作品が対を成していることを示唆している。
【TOUR2002 WARP DAYS】の最終公演2002年6月16日の BAY NK HALLの模様を収録した
DVD/VIDEO『BUCK-TICK TOUR2002 WARP DAYS 20020616 BAY NK HALL』 (2002年12月4日リリース)
のオープニング「SE」では、早くも『Mona Lisa OVERDRIVE』の最後の楽曲で
「Continuous」(作曲・編曲:今井寿)を聴くことが出来る。
(※『極東 I LOVE YOU』のオープニングナンバー「疾風のブレードランナー」を解体、再構築したインスト楽曲)
ここから繋がる「疾風のブレードランナー」の導入部分の感動的なカウントダウン
(まるで、David Bowieの「Space Oddity」だ!)
「Ten death Waiting for every one
Nine goddes Eight hole boots
Seventh Heaven Six gun Five, Four star
Three Angels fly fly fly
A Boy and a Girl fall in love
Every one a pleasure song
Zero 」
が、非常に刺激的かつ感動的な【WARP DAYS】が開幕となる。
この“臨場感”に観客も早くも興奮の絶頂に達しているようだ。
シルエットの今井寿が期待感を煽り、櫻井敦司が後光の中、登場する。
さしずめ
「青の世界へ、ようこそ!!」
といったところだろう。
今井寿の眼帯には、CCDのマイクロ・カメラが仕込まれており、
そこから、ノイジーなメンバーや機材、観客の模様もカっトインするアーティスティックな作品となる。
一時代の集大成と言える前作ライヴ映像『ONE LIFE,ONE DEATH CUT UP』とは異なり、
BUCK-TICKらしいスリリングなパフォーマンスが、
むしろ1998年リリースの『SWEET STRANGE LIVE FILM』の前衛性を感じさせる内容となっている。
アルバム『極東 I LOVE YOU』自体は、アコースティックを全編に取り入れ、
落ち着きのある本格ロック・コンセプト・アルバムという風貌であるが、
ライヴ・ステージで登場したBUCK-TICKの姿は、凶暴度増した悪魔たちのようであり、
非常に尖がったサウンドとアクションをまざまざと見せつけてくれる。
そういった意味でも
DVD/VIDEO『BUCK-TICK TOUR2002 WARP DAYS 20020616 BAY NK HALL』は、
奇跡のライヴと言って過言ではない。
完成度という点では『ONE LIFE,ONE DEATH CUT UP』に譲るが、
ハングリーな、そして、センシティヴな面では、アルバム『Six/Nine』の
【Somewhere Nowhere Tour 1995】を彷彿させる気迫のライヴだとも言える。
セットリストのオープニングを飾る「疾風のブレードランナー」は、
作詞・作曲ともに今井寿の作品で、前作収録の「細胞具ドリー:ソラミミ:PHANTOM」で展開した
映画『ブレードランナー』の世界観がモチーフで、先行シングル「21st Cherry boy」と双璧を為す、
BTグラム・ロックの屈指の傑作で、この楽曲がシングルであっても全く違和感はなかっただろう。
ポジティヴにキラメクような今井寿の詞の世界も秀逸で、
『ブレードランナー』の情景の中を雨に打たれながら“新世界創造”の場面に立ち会っているかのようだ。
この前傾姿勢の光を放つ「疾風のブレードランナー」から、
アルバム『極東 I LOVE YOU』の非常にセンシティヴな世界が繰り広げられて逝く。
これは、ファンタジックな感じでもあり、かつ、この後、語られる物語性の深さに、胸が詰まることになる。
そして、先行シングル「21st Cherry boy」とは連作となっており、
今井寿のギター・ソロから、次のプレイリスト「21st Cherry boy」に繋がる一節には、
誰も、鳥肌が立つ思いで、BUCK-TICKの姿を見つめることになる。

疾風のブレードランナー
(作詞・作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
降りしきる酸性雨 黒い雲
風が吹き 雷が鳴り響いている
感じるか 愛しいものの気配を
そうだろう なんて素敵は光景
Baby Maybe 共に青い春を駆け抜はよう
Baby Maybe 思うまま 叶うはず
崩れてく黄昏 -SUNSET- 走り抜け
加速する 俺は疾風 お前はロータス
聞こえるか 風は狼のブルース
忘れるな 世界は輝いている
Baby Maybe その向こうに風が吹いている
Baby Maybe わかるだろう叶うはず 祝福だ
今夜 お前に届けよう 宝物だ 約束だ
頬をつたう酸性雨 青空の下で あふれてる
夜を彩る あの星座 見つけたんだ 永遠だ
心を奪う感覚 -SENSATION- 闇にひとつ 流れてる
