「続くんだろうと思ってたし、続けたいと思ってたし。
辞める理由、解散する理由もないし。
惰性でやってるわけじゃないですよ、もちろん。
もしそうだったとしたら、それが解散の理由になっちゃいますから。
ホントにないんですよ、これを続けられない理由が」
2002年夏の今井寿の発言である。
この言葉はとてつもなく強い。
“根拠のない自信”ってものの前ではどんな理屈も歯が立たないのと同じで、
“理由があって存在するもの”の説得力なんて“存在理由を考えるまでもないもの”のそれに比べたら無に等しい。
2002年はBUCK-TICKにとってデビュー15周年の記念すべき時であった。
が、彼らはこのことについて、あまり多くを語ろうとしなかった。
ただし、勿論それは、彼ら自身がその事実の重みを理解していないということではない。
「重みですか。もちろん自然と歳は食ってますからそれは感じますけど、祝おうとかいう感じではないですね。
逆にこれからもムチ打っていこうかな、みたいな(笑)。
実際これまでも“ぬるま湯”ではなかったけれども」
ヤガミトールはこう語り、さらに
「ここで引退でもするならあれこれ振り返るんでしょうけどね。どう振り返っていいのかわからないんで」と続ける。
「昔の姿?恥ずかしいですよ」と笑うは星野英彦だ。
そして樋口豊がその“恥ずかしい”の意味を語る。
「たとえば女の子が昔の写真を見たら眉が太くてヘンな感じだったり、
再放送のドラマ見たら微妙に古さを感じたりするじゃないですか。
そういう感触なんですですよね。
実際、自分でも復刻版DVDとか見て“若いなぁ!”とか思いましたけどもね、自分たちのこと。
つい最近のことだと思ってたのがすごい前のことだったり。
自分たちの映像って普段、ほとんど見ない人なんで」
彼らはまるで過去を振り返ろうとしない。何故か。
ヤガミトールの発言からもわかるとおり、その必然が皆無だからだ。
そして何故それが存在しないのかといえば、
BUCK-TICKが現在も倦怠と背中合わせの安定とは無関係の状態で走り続けているからだ。
さらに、どうして倦怠と無関係の状態あり続けることが出来るとか考えてみると、
詰まるところ“彼らが常に自然体であり続けているから”というシンプルな結論に辿り着く。
同時にそれは彼らが“変化を恐れなかった”ということ、
そして、“等身大の自分たち”を確実に把握し続けてきたことを意味する。
2002年にリリースされたデビュー15周年記念5本組ヴィデオBOX『B-T PITURE PRODUCT』
の見所は、【Vol. 1(e・rot・i・ca)】【Vol. 2(cha・os)】に収録された
歴代のヴィデオ・クリップの時系列的なラインナップも豪華の一言に尽きるが、
(中でも、現在はヴィデオでしか確認出来ないクリップのDVD化とアルバム『惡の華』全収録楽曲は圧巻)
本命は秘蔵映像をドキュメンタリータッチに編集した【Vol. 3(sen・sor)】 【Vol. 4(warp)】 であろう。
デビュー前の町のチンピラのようなメンバーの前橋RATTANでのステージを見るとその初々しさに驚く。
センセーショナルなメジャー・デビュー時の尖ったルックスと、
夢を叶えたビッグ・ホールでのライヴ実現時の映像に目頭が熱くなる。
また、いつまでも、ライヴハウスでギグと演じたがった魂に将来への可能性を見る。
初期の櫻井敦司のMCも初々しいく響き渡る。
彼らのヴィジュアル戦略は、ヴィデオ・クリップだけではなくライヴにも強力に力が注がれていることがわかる。
ライヴ映像にも反映されていることだが、『Climax Together』は
日本の多くの後続バンドに影響を与えたと言っても過言ではない程斬新なライヴである。
それはアーティスティックな『SWEET STRANGE LIVE FILM』のライヴでも同じだ。
現在でも衝撃を受けるほどの独自性と世界観ではないか?
『2000年日本武道館 ONE LIFE,ONE DEATH CUT UP』でのある意味では完成された姿を、
見せてくれた彼らに感謝したい気持ちになる。
また、それまで商品化されたことのなかった
1995年に全国7箇所で実施されたフィルム・ギグ【新作完全再生劇場版】における、
渾身の名作『Six/Nine』の全楽曲を収録した【Vol. 5(nex.us)】 でトドメを刺されることになる。
この5本組『B-T PITURE PRODUCT』の貴重な映像は、
BTメンバー自身にも、貴重な彼らのメモリアルになったハズだ。
結成初期からバンドの舵取りを担当してきた樋口豊は語る。
(※『UV』誌より引用、抜粋)
樋口豊
―――デビュー15周年って、さんざん周りから言われていると思いますが。
「ヤバイですね。リサイタルでもしないと(笑)。あとDVD&VIDEOのBOXが出るじゃないですか、チェックしてて笑っちゃいましたよ。何だこの眉毛、CGで直してくれないかなって(笑)。自分の顔見て笑っちゃいました。あっちゃんの喋りも笑っちゃいますね」
―――そういうことでもない限り、昔の映像を見直したりしないですか?
「あんまり見ないですね。だからびっくりしました。大丈夫かな、これ。顔だけモザイク入れてくれないかな(笑)」
―――でも、ある意味、貴重ですよ。
「見たことない映像もあったし。こんなインタヴュー、どこでしたんだろうって。完璧に忘れてますね」
―――バンドで15年って、想像できました?
「いやー。昔、インタヴューで10年後に何してますかって聞かれて、バンドがやれてたらいいですねって言ったけど、やっちゃってますからね(笑)。映像を見ると、昔だな、若いなみんなって。忙しかった記憶はありますね。あと、その時の出来事とか思い出したり。前のマネージャーがベース・アンプ落して、俺の部屋の窓ガラスわったなとか。東京ドームの映像見たら、これ、緞帳が落ちなかったんだよなとか。西武球場(現:西武ドーム)の映像は初めて見ました」
―――懐かしがる人もいれば、初めて見て新鮮なファンもいたり。
「でしょうね。また、すごい衣装着てましたから。どうしたんだっていう(笑)。でっかいリボンを首にしてたり。笑えますね。たぶん、何もわかってないんだろうな(笑)」
―――15周年だからってわけじゃないですけど、この先、20年、30年と……。
「いや、あまり考えないようにしているんです。考えちゃうとレールに乗っているようで嫌じゃないですか。逆に、何も考えないで、いいアルバム作って、いいツアーやって、と考えたほうがいいですね」
※以上、引用、抜粋。
この15年を想い起せば、
彼らに似ているものはあるけれど、彼らは誰にも似ていない。
今井寿がどこまでもエキセントリックでひずんだメロディーをかき鳴らそうとも、
美麗のヴォーカリスト櫻井敦司がどんなに卑猥な言葉を吐き出しても、
BUCK-TICKのDNAに共通する品格のようなものが俗悪に感じさせない。
自在に色と形を変え続けながらも、変わらない核の部分を持っているから、
ディティールに至るまで完成しつくされた『Six/Nine』の楽曲の【Vol. 5(nex.us)】至ると
もう、言葉を失って、何も言えなくなってしまう。
「鼓動」でメンバーの衣装や背景が白く統一された中、雲の様な影が高速で流れる様は圧巻の一言。
櫻井敦司の動きも鬼気迫るものがある。
「密室」でもがき「デタラメ野郎」で血反吐と吐くような唄いっぷりも見事で眼が潤む。
日本ロック界で常にメジャー&カルトであり続けた彼らの音楽に心臓を「Kick」されれば、
全身のアドレナリンが歓喜の雄叫びをあげることになる。
BUCK-TICKが繊細な悪魔みたいに素直にカッコイイバンドであると再確認するしか術はない。

HURRY UP MODE
(作詞・作曲:HISASHI / 編曲:BUCK-TICK)
NIGHTLESS BABYLON Media をはおり
NIGHTLESS BABYLON Safety zone へ逃げこんで
NIGHTLESS BABYLON General 気取り
NIGHTLESS BABYLON Abnormal かもし出す
Lost in the night
Out on the street
Lost in the night
Out on the street
