「俺もお前も独りだ 強く、この世界で 躍るだけだ
 飾り立てたならおいで悪魔の夜は抱き合っていよう 」


2001年11月21日、待望のシングル「21st Cherry Boy」がリリースされる。
この楽曲が、ヤガミ&U-TAのインタヴューにあった
SCHWEIN活動期間中にレコーディングされた楽曲かはわからない。
しかし、樋口“U-TA”豊が、
「ポップと言ったら、今井さんが怒るかもしれないけど…」
といったコメントから類推するとその可能性は高いだろう。

コンセプトは、新世紀【21世紀】の到来。

「21st Cherry Boy Too young to die.
 21st Cherry Boy I wanna be your toy. 」

のサビの歌詞とタイトルから明解な解釈は、誰もが判るように、
1970年代のグラム・ロックの雄T-REXの最も著名なシングル「20th Centruy Boy」からパロディ。
この楽曲は、浦沢直樹の大ヒット漫画『20世紀少年』のモチーフにもなったが、
これも、同世代の今井寿が遊び心一杯に一足先に“グラム・サイバー・ロック”に仕上げていたと言える。

作詞の方は珍しく、櫻井敦司と今井寿の共作という事になっている。
しかし、どのパートをどちらが作成したかも、意外とわかり易いのではないだろうか。
それほど、両名の作風は、個性的であり、まったく異なるファクターを混ぜ合わせる科学反応が、
この「21st Cherry Boy」で起こっていると言えるだろう。

それにしても、“20世紀童貞少年”というセンスは間違いなく今井寿によるものだろうし、
「俺に触れてくれ その唇であなたの愛の息吹を さあ 神となって」
という一行は、まさしく櫻井敦司にしか書けないだろう。

そして、外へのエネルギーを充満させたアルバム『ONE LIFE,ONE DEATH』に収録されていても、
おかしくないようなポジティヴさを兼ね備えたBUCK-TICK流のグラマラス・ロックであったから、
シングル・リリースとしては非常に明るい未来を感じた楽曲となった。


また、ヴィデオ・クリップが秀逸で、
初めてダンサブルで陽気な外国人女性ダンサー2名がフューチャーされ、
一緒に踊るダークな櫻井敦司との違和感がなんとも言えなく艶めかしい。
星野英彦が、ハンマーでミルク・パックを潰すと、そのハネッ返りが、今井寿の顔面にかかるシーンや、
今井寿のキメのポーズを、櫻井敦司が真似をしたりとマニアには名シーンが満載の内容となった。

映像としても、また、2001年のBUCK-TICK活動再開に相応しい内容を伴った名作
「21st Cherry Boy」は、SCHWEIN活動を除き、
マイペースな活動内容となったこの年のBUCK-TICKにとって、
充分に、その存在感を示す楽曲となり、ファンにとっては、期待感を発露する起爆剤となる。



年末の12月19日には、契約条件消化と言われるベスト・アルバムで
マーキュリー在籍時代の楽曲を集めた『SUPER VALUE BUCK-TICK』をリリースするも
この「21st Cherry Boy」一曲のインパクトに勝るものはなかった。



そして、この年より、遂にBUCK-TICKファンには堪らない内容のステージ
12月29日、日本武道館公演【THE DAY IN QUESTION】がスタートしている。
これは、スペシャル・ライヴというだけではなく、
2001年という年に、BUCK-TICKが国内のライヴとして開催された
一夜限りの【THE DAY IN QUESTION】が唯一のパフォーマンスであった。

以来、年末に武道館でライヴを行なう事が恒例化し、タイトルは
この年に使われた【THE DAY IN QUESTION】が以降使用されることとなった。



この2001年12月29日の【THE DAY IN QUESTION】のセットリストはファンであれば、
本当に溜息が零れるような内容である。

   1.ICONOCLASM
   2.NATIONAL MEDIA BOYS
   3.MACHINE
   4.楽園
   5.JUPITER
   6.21st Cherry Boy
   7.薔薇色の日々
   8.悪の華
   9.密室
   10.太陽ニ殺サレタ
   11.さくら
   12.スピード
   13.LOVE ME
   14.MY FUCKIN’ VALENTINE
   15.Ash-ra
   16.die

アンコール-1
   17.FLAME
   18.RHAPSODY

アンコール-2
   19.…IN HEAVEN…
   20.Moon Light
   21.COSMOS

この日本武道館で6曲目にセットされた「21st Cherry Boy」の櫻井敦司のMCは、

「しゃべらせてもらいます。
 今年は初めてのライヴで、もう最後のライヴですけど・・・
 いろいろやっていました。
 その結果を次の曲で・・・、皆さん、コーラスを一緒にして下さい」


SCHWEINでの、「本気の浮気」を経験した櫻井敦司にとっては、
BUCK-TICKという本家の活動に戻るリハビリ的な活動と言える韓国での初公演は行っているものの、
やはり、日本のロック・バンドとしての活動が一夜限りという刹那的な感情と不安感が伴ったようだ。

そして、そこで披露することになった新曲。

BUCK-TICKにとっても、そしてファンにとっても、「回帰」という意味で、
新たなる歴史を刻む年末のスペシャル・イベントとして【THE DAY IN QUESTION】の意義は大きい。
それは、誰よりも、聴き続けてくれるファン達へ贈り物として、最高の形を実現したライヴとなった。

わざとファンを遠ざけるようなパフォーマンスを繰り広げた時期もあった…
それは、クリエイターとしての苦悩のひとつでもあったかも知れないし、
すべての“予定調和”への反骨精神の表れであったかも知れない。

ただ、活動内容が少ないと言われた、この2001年に、彼らは、経験という価値を加えて「回帰」した。
ファンをその創作活動の力に取り込む努力、そしてライヴというバンドとファンの共同作業。
これは、パラドクス的であるが、独創的であり続ける上で大きな収穫となった。
彼らには、彼らの歴史を実証してくれる証人があるという自信。

変わり続けることと、変わらないものの“調和”を覚えたBUCK-TICKにとって、
このニュー・シングル「21st Cherry Boy」と【THE DAY IN QUESTION】は、
新世紀の始まりにエンジンを駆けると同時に、過去への「Loop」を可能にするハンドルを手に入れたようだ。


眩い“光”を放射しながら…

「君が駆け抜ける」



21st Cherry Boy
 (作詞:櫻井敦司・今井寿 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)


輝くんだ 世界中 目覚めてくれ
深い闇で生まれたお前は愛
狂おしく無邪気な残酷さ
君のその欲望は綺麗で汚い愛しい

罪深きこの手に 降り注ぐ愛の歌にまみれて 踊ろう
飾り立てたならおいで悪魔の夜は抱き合っていよう

俺に触れてくれ その唇であなたの愛の息吹を
さあ 神となって

21st Cherry Boy Too young to die.
21st Cherry Boy I wanna be your toy.