「琥珀色の 陽炎が いつまでも このまぶた焦がす 」
【TOUR ONE LIFE,ONE DEATH】アンコール「ドレス」に続く第二のプレゼント・ソング。
「idol」。
ビクター時代最期のアルバム『COSMOS』からの今井寿らしいかき鳴らし系のギター・サウンドと、
星野英彦の揺れ動く様なシンセサイザーが見事にアンサンブルを創り出す傑作。
そこに櫻井敦司のディープな血が、混ざり合って、涙線の弱い人間なら必ず涙していまうようなナンバーだ。
イントロから、星野英彦のシンセ・サウンドに、感情を掻き乱されまくる。
この揺れるような“不安感”を醸し出す技は、まさに“神業”であろう。
そこに、耳に散ずく今井寿特有のギター・カッティングが被さり、
聴いている方は、もう、この劇的な展開にいたたまれない気持ちになってくる。
アルバム『COSMOS』は、前作の渾身超大作『Six/Nine』と対極にある作品とされる。
あまりにも精神世界の深い処に到達した『Six/Nine』の次作にメディアが同じ物を期待したことに、
コンポーザー今井寿が反発して出来上がった『COSMOS』であるが、
リリース時には、その王道ロック路線が、原点回帰として評価され、今井寿の落胆は大きかったと言われる。
(※その分、ライヴツアーでは、エキセントリックに徹して、ファンを突き放しているとまで言われた)
しかし、一見シンプルなこの『COSMOS』ほど、
実験精神に満ちた、そして渾然一体のサウンドの塊はなかった。
BUCK-TICKは『Six/Nine』で絶頂を迎え、この『COSMOS』でその完成形を見たと言っても過言ではない。
その後、レコード会社をマーキュリーに移籍した後リリースした『SEXY STREAM LINER』では、
BUCK-TICKは、すでに完全に変身を遂げていたのだから…。
そんな集大成的な意味も込めて、この楽曲「idol」の存在は大きい。
正直、この「idol」の歌詞には、櫻井敦司に好きそうな【ことば】が、
まるで【CUT UP】されて羅列されているように感じ、意味は非常に難解だと言わざるえない。
しかし、そのコンセプトは明解で「破壊と誕生」。
BUCK-TICKが、最も熱心に取り組んだテーマと言える。
この情景には、「病室」とあり、これが心の中の「密室」ことなのか、
実際に、縛り付けられている(抜け出すことの出来ない状態)現実社会を比喩したものかは分らない。
しかし、「BRAN-NEW LOVER」のヴィデオ・クリップにある白の拘束衣を着用した
櫻井敦司の姿が浮かびあがる。
彼は、その自身の内なる「破壊と誕生」を苦痛を供に向かえている様なのか?
「ICONOCLASM」では、その「idol=偶像」の破壊を試みているが、
その破壊の末に、新たなる偶像の誕生の瞬間を切り取った情景が浮かびあがってくる。
もがきながらも新生を迎える「idol」。
それは、「Loop」を繰り返した末の完成形であり、
「JUPITER」「さくら」の聖母への憧憬と
「鼓動」を引き継ぐ“輪廻”の末の偶像であろう。
そして最後の歌詞は文字通り素晴らしい
「素晴らしい 破壊 そして誕生 果てる事の無い宇宙
美しい まるで母の内へと 尽きる事の無い愛
怖がらず 君は神になるだろう 終る事の無い宇宙
美しい 全て輝けるだろう 尽きる事の無い愛」
無限の宇宙と尽きない愛…
まさに、櫻井敦司の創り上げた完璧な偶像“idol”の姿である。
idol
(作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
白い病室 縛られていた 視線の先に バラの花園が
ここは地獄か それとも夢 こめかみ響く 針が突き刺さる
琥珀色の 陽炎が いつまでも このまぶた焦がす
夜が流れる 月が満ちてく 人身蛇尾の 神々舞い降り
俺を誘いに 闇をまとって あふれる程の 愛を掲げてる
剥がれ落ちた 鱗は ひとつずつ この肌祝う
