「陽炎の中を 女神は舞い降り」

2000年後半の、時期的には長いとは言えないが、精力的な活動の中で、
この「女神」ほどステージを重ねるごとに圧倒的な凄味と壮絶さを増していった楽曲はない。

この美しい星野英彦楽曲は、
もしかすると「FLAME」同様、ライヴ向きの楽曲ではないかもしれない。
しかし、絶対にはずすこと出来ない存在。
そんな一曲だ。

ライブツアー【TOUR ONE LIFE, ONE DEATH】日本武道館公演で、
櫻井敦司は、水を被って分らなくなってしまったが、
彼の目には、確かに“涙”が浮かんでいる。

彼にとっての“女神”とは…。

そして、我々に取って“女神”とは…。

個人的な見解で申し訳ないが、“女神”とは決して“神”=“GOD”ではなく、
普通の女性(もしくは男性)なのではないか?

歌詞の最後

「優しいんだな 君だけは
 こんな僕に 君だけは」


ここで、決まりであろう。

あなたさえ、僕の事をわかってくれるのならば、
きっと、僕は自分を突き通して生きていける…。

そんな気持ちを持つ事が出来る状態。
“愛”に満たされるとは、そういう事なのではないだろうか?

例え、全世界を敵に回しても、自分をわかってくれる存在、見つめていてくれる存在。

それは、恋人とは限らない。

あるいは、母親や父親かも知れない。
供に闘い抜いた戦友かも知れない。
もしかすると、そんな存在は、すでに天に召されているのかも知れない。


しかし、絶対に外すことのできない存在。

それが、“女神”だ。

「CHECK UP」での、逃げ場のない最前線の究極の人生選択も、
自分がもう、本当に自分なのか?わからなくなってしまう「細胞具ドリー」も、
永遠の嘆き続ける宿命の「カイン」も、
闇の心の密室に巣食う「Death wish」という殺意も、

この「女神」降臨で、突き抜けていける。

そんな一曲であった。



「叫び声俺は破裂した 狂おしく愛しい
 恐怖に歪む横顔さえ 美しく愛しい」



そして、そんな、かけがいのない人は、突如、降臨するのだ。

ありがとう。  女神よ…



そして、また

あなたも、

誰かの女神かも知れない…

誰かの女神になってほしい…



【ROMANCE】2008年のラスト・ソングが、この楽曲でよかった。

そう、思う。





女神
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:星野英彦 / 編曲:BUCK-TICK)


陽炎の中を 女神は舞い降り
もう孤独じゃない と 願いを叶えて

吹き出す激情に狂っては 何度も慰め
罪を犯し罰待ち侘びて 汚れていくだけ

背徳に悶え 予感に震える
僕に笑いかけて 願いを叶えて

叫び声俺は破裂した 狂おしく愛しい
恐怖に歪む横顔さえ 美しく愛しい

滅茶苦茶になれよ 俺の前で
抱き締めてくれよ 何も見えない