「細胞具は ドリーの夢をみるか?」

今井寿による、ファンタジック・ワールドが展開され、
20世紀最後のBUCK-TICKショーも折り返し地点を迎える。
「細胞具ドリー:ソラミミ:PHANTOM」はBUCK-TICK一流のパロディ作品で、
バロックの調べをスペイシーに変換したようななSEでスタートする。

冒頭に記した歌詞は、世界一多くのパロディ作品を生み出したSF小説
『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(1968年)からの今井寿流返答か?
本作は1982年ハリソン・フォード主演映画
『ブレードランナー』(原題Blade Runner)の原作となった。
作者はフィリップ・K・ディック。


第三次世界大戦後のサンフランシスコを舞台とし、賞金稼ぎのリック・デッカードが、
火星から逃亡してきた8体の人造人間を「処理」するという物語。

電気動物やムードオルガン、マーサー教などディック独自の世界観の上に描かれている。
この世界では自然が壊滅的打撃を受けているために、
生物は昆虫一匹と言えども法によって厳重に保護されている。
一方で科学技術が発達し、本物そっくりの機械仕掛けの生物が存在している。
そしてその技術により生み出された人造人間は感情も記憶も持ち、
自分自身ですら自分が機械であることを認識できないほどのものすら存在している。
主人公リックは、他者への共感の度合いを測定するテスト(フォークト=カンプフ感情移入度測定法)
によって人造人間を判別し、廃棄する賞金稼ぎである。
この世界での生物は無条件の保護を受ける一方で、
逃亡した人造人間は発見即廃棄という扱いとなっており、
主人公のような賞金稼ぎの生活の糧となっている。

題名「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」は特徴のある一見すると奇妙な問いかけである。
主人公リック・デッカードは人造人間を処理していく中であまりに人間らしい人造人間に会いすぎ、
次第に人間と人造人間の区別を付けられなくなってゆく。

人間とは何か? 人間と人工知能の違いは? 果たして自分はオリジナルなのか?

作品の根源的な思想を、素朴な問いかけに集約したこの一言がそのまま多くのパロディを生んだ
本作品の題名となっている。

(あらすじはWikipediaより)


もうひとつのモチーフ、“ドリー”とはクローン羊のことであり、
クローンのように似通ったものが量産される
昨今の音楽シーンを大胆に皮肉った今井寿の反骨精神の具現化で、
【TOUR ONE LIFE, ONE DEATH】はクライマックスへの階段を駆け上がる。


今回の第一ライヴツアー【PHANTOM TOUR】では新アルバム『ONE LIFE,ONE DEATH』同様に
ノリノリのデジタル・ロックの傑作「Baby,I want you.」でスタートするが、
次のライヴハウスツアー【OTHER PHANTOM TOUR】では、
この今井寿SF傑作「細胞具ドリー:ソラミミ:PHANTOM」がオープニングにセット・アップされている。

総まとめの【TOUR ONE LIFE, ONE DEATH】ではそれが、先行シングルの「GLAMOROUS」へと
変わったが、中盤BUCK-TICK渾身の名曲集レパートリーが終わると、
日本武道館もこの「細胞具ドリー:ソラミミ:PHANTOM」から再び『ONE LIFE,ONE DEATH』の
世界観に戻って行くのだ。

本当に自分は自分なのか?

本当に自分が人類なのか?

本当に自分は現実なのか?

本当に自分は生きているのか?

そして、本当に自分は死ぬのか?

そんな、ヴァーチャル・リアリティな疑問が、ファンタジックに今井寿の脳から次々と放出される。

しかし、現実は今の自分しか存在しない(例えそれが夢でも…)
兎に角、今を生き抜くのだ!


「一度 生まれて 一度死ぬ 命短し 恋せよ乙女」



細胞具ドリー:ソラミミ:PHANTOM
 (作詞・作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)


眠れない夜 ドリーは殖える ホラ後に同じ顔
細胞具は ドリーの夢をみるか 柵を飛び越えLoop the Sheep