「DOWN」と「ASYLUM GARDEN」は、この一連の活動を通してセットで扱われ、
両曲はドラマチックに進化していったといえる。

実際、ライヴで扱われれば扱われるほどに、この2曲のポテンシャルは向上し、
自身の内面の解体と再構築。
いわゆるリストラクチャリングが繰り返し行われていたことになろう。

特に「ASYLUM GARDEN」イントロの今井寿のフレーズは、神がかり的なノイズ・サウンドの傑作であるが、
日増しに向上するギター・バランスのお陰で、クオリティーもベストの状態である。

星野英彦担当の作曲楽曲では、しばし、今井寿には珍しいギタリストとしての
配役を見事にこなしている点は注目すべき事実である。

よく、ギタリストとしては、技術的にイマイチと評価されることのある彼であるが、
(しかし、この評価すら、彼の場合はポジティヴな評価とされることが多い。
 その不安定な演奏の揺らぎが独特の世界を紡ぐからだ)
彼が、ギタリストとしての楽曲への貢献は、実は、技術的な要素が高い。
独特のノイズバランスで、挿入されるサウンドと、モロ今井フレーズを轟音でかき鳴らす楽曲に分かれるが、
この「ASYLUM GARDEN」では、彼のギターノイズサウンドは幽玄の極みであり、
後期にライヴでアレンジ挿入される「JUPITER」の流星の如き世界を描くプレイに彷彿させる。

一言でいうとノイズ・プレイには、この危うい不安感が必要不可欠なのだ。
今井寿は、この「ASYLUM GARDEN」でも増幅される幻想的不安定な世界を毎回忠実に再現している。
この技術は、彼が世界でも屈指のギタリストである証左である。

そして、この楽曲のコンポーザー星野英彦の広がりのあるストローク・プレイ
ドラマチックな樋口“U-TA”豊のベースの重い調べと重なり、
渾然一体としたBUCK-TICK絶品のプレイが展開されている。

基本的には、BT流ダークロック定番のスロウ・テンポで展開されるが、
グルーヴィな『ONE LIFE,ONE DEATH』の新曲達と比較すると、
マーキュリーのBUCK-TICK変革期の構成の“ゆらぎ”は、どこか不安定であり、
それがかえってリスナーの心を震わせる。
まさに、音楽的に過渡期に作成された楽曲だけに、感じるこの“不安感”は、
この時期の彼等は、次に待つトンネルの先のおぼろげな“光”を目指しているかのようだ。

櫻井敦司は唄う

「気味悪い 記憶の 糸を手繰れば 虫の様に 這い出す この身体 」

自身の中に存在するasylum gardenの入り口には、この“光”が灯る。
それを辿りつつ真実の扉に辿りつくのだ。



その“光”とは?



この日、12月29日、日本武道館の客席までもを包みこんだ“黄色い光”。



この光に映し出された観客席は、それまでのライヴの盛り上がりとは逆に、
誰もが、まるで、“祈り”を捧げているかのような“静寂”の光景であった。




ASTYLUM GARDEN
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:星野英彦 / 編曲:BUCK-TICK)



Trash 気味悪い 記憶の 糸を手繰れば
虫の様に 這い出す この身体

太陽に背を向け asylum garden 歩いた
時は止まり 黒い影がそこにある

太陽に背を向け asylum garden 歩いた
時は止まり 黒い影がそこにある

黒色い光と キャンバスの向日葵
黒色い光と キャンバスの糸杉
黒色い光と キャンバスの自画像

キャンバスの自画像